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メガネスーツ女子と無慈悲なる神と終わらない残業
頁05:役割とは 2
しおりを挟む「…随分と大雑把なミッションですね」
すると彼は私をビシっと指さし、
「そう! そうなの! すんごいあやふやでさァ! それに関してだけ何でか細かいヘルプが書かれて無いんだよぉ~…。設定って何よ? テレビの画質調整とかのレベルじゃないでしょ絶対。RGBの数値を弄って全世界B255にするとかって意味じゃない事くらいは分かるけどさァ!」
そんな真っ青な世界やめて下さい。冷え性が悪化しそう。
「そうなると次にオレがしなきゃならないクリエイションコマンドで解放されてるのが『歴史創作』と『詳細設定』なのヨ…」
「『歴史』と、それに対する『詳細設定』という事ですか」
「コン……??? ごめ、日本語でおk?」
はぁ、とため息をひとつ吐いて続ける。次の単語を口に出すのが正直憚られた。
「予想ですが、その…ちょ……『超GOD』…とかいう存在が与えた【地球を創れ】という指令が文字通り天地創造なのであるとしたら、人類が死滅する事無く定着した先に必要なのは文化文明の発展だと思います。発展とはつまり後世における歴史、言わば星の物語です」
「お、おう…」
ちゃんと理解出来てるのだろうかこの人。
「もしあなたが自身に与えられた特権によってこの星に根差す事の出来る文明を自由に決められるのであれば…」
あっ!と何か思い出した表情をすると、目を閉じて何かうんうん唸っている。とりあえず彼の次の反応を見て続けようかしら。
「うん、なんか自由に決められるみたい? どういう世界にしていくかっての」
やはりか。私にもだんだん全容が見えてきた。
これは恐らく、途方もない程の存在が行う【箱庭作り】の様な物なのだろう。スケールが桁外れすぎて頭がおかしくなりそうだけど。
なぜその代行者をわざわざ私達箱庭の住人から選ぶのかは分からない。
多分、ここ以外の平行世界でも同じ使命を与えられた者達がいるのだろう。その数があまりにも天文学的数値過ぎてもしかしたら細かい部分まで気にしていられなくなったのかもしれない。
巨大企業になればなるほど個々の人事にかまけていられなくなるのと感覚的に近いのか。
「とすれば、強制的に根付かせた文明を成長させるための要因や辻褄合わせが必要になる筈です。詳細設定とは恐らくそういった歴史的な歪みを正すための『神視点によるテコ入れ』なのではないでしょうか」
「ほぉ~~…ほぉぉぉぉ~~~…。いや、キミ初めて見た時眼鏡してたから多分頭いいんだろうなって思ってたけど、ホントに頭良かったのネ…」
それは私がじゃなくて眼鏡が頭いいという事になるのでは…?
心底感心した様子でどこから出したのか分からない分厚い本をパラパラめくる彼。そして瞳を閉じると薄く息を吐いた。
「…うんうん、やっぱコレでいいんじゃね?」
って、そのとてつもなく絵面に合わない物体は何?
「ちょ、それ…」
「───ああ、そうしよう」
そうしようって何を?
と声にするよりも先に、彼はホログラム天体にその本を開いてかざした。
そしてワンテンポ遅れ、けたたましい鐘の音がこの2色空間に鳴り響く。思わず耳を両手で塞いで蹲る。
「(うるさいーーーーーーーーー!!!)」
先程のように体は弾けこそしなかったものの、鐘が鳴り止んだ後もその余韻が全身を駆け巡り痺れさせた。
「一体何の…」
《 世界のルートが選択されました。歴史の第一章が開始されます。》
ひどく機械的で且つ中性的な声が、淡々と述べた。
「何をしたんですか!?」
「この星が今後辿る歴史のルート選択をした」
またしても彼の印象がダブる。どうして…?
「ルート…?」
「どういう世界にしていくか。一からシナリオを書いていくのも興味深いが残念ながら俺達には文才が無くてな。都合のいいテンプレ設定にしれくれそうなIfルートがあったからそれを選んだ」
猛烈に嫌な予感しかしなかった。そしてそれはすぐに的中した。
《 歴史の第一章開始に伴い、世界に敵対生物が出現しました。一部、星の歴史に修正が入りました。》
(次頁/06-1へ続く)
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