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メガネスーツ女子と未知との遭遇
頁13:リアル戦闘とは 2
しおりを挟む「大丈夫かお二人さん? 俺が来たからにはもう大丈夫だ!」
「あ、あなたは…」
「俺か? 俺は人呼んで…『たいりく大陸イチの|猛
者《もさ》☆ひろし』だ!!」
アクション映画とかならここで集中線や爆発みたいな演出が入りそうな気がするが、自称『たいりく大陸イチの猛者☆ひろし』さんとやらは控えめに言っても成人病を疑う毎日を送っていそうなその辺の中年男性と変わりない人物だった。
ていうかひろしって。いやひろしが悪いと言っているのではなくて。ひろしって恐らく日本人の名前でしょう。どうして日本の存在していない世界で日本人名が?
※世界のひろしさん本当に申し訳ございません。
「おいおいおい大丈夫なのかよおっさん!?」
「任せろ若いの。俺を誰だと思ってやがる! ひろしだ!!」
存じ上げません。
「おっさん……かっけぇ……!!」
「正気ですか!?」
相当失礼な事を言われたのも気にせずにひろしさんは背中で笑う。
「戦いは俺の日常よ。なんせ俺は…『 』だからな!」
え? 今何と?
ひろしさんの台詞の途中が突然途切れた。途切れたというか完全な無音だった。
「さあ行くぞ飛ぶ眼め! 俺様の『 』を食らえ!!」
また無音? というか飛ぶ眼って…
浮かんだ疑問を分析するよりも先に、ひろしさんが武器を高らかに構え───うん??
「…なんじゃありゃ?」
「…何でしょうね」
私が率直に感じた事を神々廻さんが代弁した。
「おりゃあああぁぁぁぁ!!」
ひろしさんがソレを敵に向かって振り下ろす。振り下ろせたのかもよく分からないけど。
我々が武器だと一瞬思い込んだそれは、何と言うか…『名状し難きモノ』だった。
何かを持っているのは分かる。分かるけどそれが何なのかが全く分からない。良く見るとひろしさんが持っている物だけではなく『首から下の部位全体を覆っている何か』も同じく良く分からない物だった。
良く分からない物を纏い、良く分からない物を振り回してひろしさんはのっそのっそと奮闘していた。優劣すら予想がつかない。
「…シュールな絵だネ…」
「いやもう全く…。神々廻さん、アレが何なのか分かります?」
「うん、無理。考えようとする事すら出来ないワ」
そうなのだ。
『良く分からない』と表現しているのは『例える物が思いつかない』という意味では無い。例えば『無色透明な何か』だったら『液体のような』という表現が思いつくのだけれど、アレが何なのかと分析しようとすると思考が強制的に停止する。ものすごく気持ちの悪い感覚だ。
「何なんでしょう…。見えてるのに見えない、何かに例えたいのに考えられない…」
「まるでモザイクだねェ…」
モザイク?
私がその発言に対し何かを言おうとしたその時。
「ん??」「えっ?」
二人同時に【本】を召喚した。いや、勝手に出てきたと言うべきか。
その本がひとりでに開き数ページめくられると、そこに書かれていたのは───
「これ、歴史のルート選択した時自動で追加された【職業】の設定ページだね?」
「職業?」
「えーと…職業って言っても元の世界で言う仕事みたいな意味じゃなくて…戦士だとか魔法使いだとかっていう役割? 役職? 肩書? みたいな?」
「あ…見て下さい!」
《『 』の初期装備が設定されました。》
画面に何度か見た事のある表示と同じ雰囲気の文章が。
「初期装備…?」
「ゲームで操作するキャラクターとかを新規で作成した時にもともと装備しているアイテムの事だヨ」
「それがなんで突然……って、これは!?」
「うおっ!?」
《 初期武器:モザイク 》
《 初期防具/胴:モザイク 》
《 初期装備/頭:無し 》
《 初期防具/足:モザイク 》
《 初期防具/腕:モザイク 》
《 初期装備/盾:無し 》
《 初期装備/その他:無し 》
文字の意味を理解し、二人同時にひろしさんの方にバッと振り返ると。
「どわあああああああああ!?」
「ちょっとおおおおぉぉぉ!!」
ひろしさんが、モザイクのかかった物体を振り回してとうとう飛ぶ眼を仕留めた所だった。
…全身にモザイクを纏って。
「ゼェ…ゼェ…見たか、この『モザイク』の威力を…!」
尋常じゃないです! 卑猥です!!
「ふぅ…、おい、大丈夫か二人とも!」
モザイクまみれのひろしさんが、モザイクのかかった何かを握る手を振りこちらにやってくる。もはや完全に放送禁止状態だ。
「ちょ、ま、ひろしさんヤバいですって!?」
「え、どうした?」
そして森に悲鳴がこだましたのであった。
「こっち来ないでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
(次頁/14-1へ続く)
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