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メガネスーツ女子と未知との遭遇
頁17:言葉とは 2
しおりを挟む災厄の使い? 課題??
「それは…【敵対生物】の事を言ってるんですか!?」
「人は未知の物へ立ち向かう時ほど言葉には頼らない。命を賭け、志を同じくする者と共に進むのみ」
やはり違う。
ならば誰だ、この人は───? いや待て、このくだり何回目だ?
「───歴史ルートで追加された例の職業なんだけどサ、ひろしさんのタイプだけじゃなくて他にも何種類かあるのヨ。みっチョルは知らない世界だろうけど、最近のシステムだとそれぞれの職業に就くキャラ一人一人の性格とかまで複雑に絡んだりすんだよネ」
…あれ? 戻った……戻ったって、何が??
私は何を考えているのだろうか。会話に集中出来ないなんてらしくない。
「そんなデコボコのプレーヤーとキャラ達がパーティー組んだり、また別のパーティーと協力したりしてダンジョン攻略とかボス討伐なんかするワケよ。当然うまくいかない事だってあるし、テレビ画面挟んで向こう側の誰かとガチ喧嘩したりもする。でも何度も試行錯誤して全滅しても繰り返し挑戦してひとつひとつクリアして行くのヨ」
「……」
「それもある意味、相手を知ろうとする努力だと思わない? オレは確かにこの星にモンスターを発生させちゃったケドさ、それによって生まれる連帯感とか結束もあると思うんよネ。や、モチロン自分を正当化しようって意味じゃないよ?」
理屈は何となくだけど分かる。分かるけれど───
「だから言語は統一でも構わないと?」
「言葉が通じるのを敵が待ってくれるわけじゃないでしょ。命懸けのシーンで『言葉が通じませんでした』で誰かが怪我したり死んだりしてもいいの? キミが言ってた『正しさ』ってのが命よりもコダワリを大事にするなら今からでも細かく言語設定するかい? オレは構わないケド」
空論に聞こえなくもない。でもそれはあくまでも元の世界で生きていたならば、の話。
私はこの世界を、死と隣り合わせの人々の日常を知らない。知らなければならない。そう誓ったではないか。
「そんなに強そうには見えないひろしさんがアレだけの信頼を集めてるの、オレ『すげぇ!』って素直に思ったんだヨ。それにどっからどう見てもおかしなヤツラだって分かるオレ達を助けてくれたジャン? その気持ちに【言葉の壁】なんて無粋なイベント、わざわざ挟む必要あるのかな、って」
ひろしさんや村の人達が心から私達を歓迎してくれた事。
その温かさを前に、本当に私は小さくつまらない奴だと思う。
「…ごめんなさい。あなたの言う通りですよね」
「ええええええええ!? ちょ、ご、ごご、ごめ、ごめんなさいって言った!? オレに?? どうしたの!? 毒!?」
「だから私を何だと思ってるんですか!? 私だって間違えたり迷ったりしますよ!」
でも、だからこそ、私は私の小ささ一つ一つと向き合わなければならない。
「…どうしても、自分の内面に蹴りをつけたくて」
誰だって自分自身を胡麻化したカミサマなんかに自分の世界を創造されたくは無いだろう。
「あーあ…、ま~~たそうやってパーフェクト出そうとしてる」
「えっ」
ぶはぁ、と特大のため息を吐かれた。
「ケリなんてつける必要あるの? そりゃオレらは立場的にはカミサマかもしんないけどサ、どこまで行ったって結局は人間でしょ? 間違っちゃったって当たり前ジャン。間違えちゃった時は『間違えちゃった❤ ごめんねテヘぺろ❤』って謝っちゃえばいいだけでしょ?」
誰ですかそんな気の触れた台詞言うの…。
「『間違えたら再スタートするだけ』ってキミが自分で言ったんだヨ? まァ…みさディンが間違える事なんてホトンド無いとは思うけど、相手が男だったらタブンすぐ許してくれるんじゃない? キミみたいなキレイな人なら尚更サ」
セクハラです。
と、言葉は出なかった。後頭部がむず痒い様な感覚を訴えていて。
「それでももし許してもらえない時はしゃーない! 俺が一緒に全裸土下座するヨ! だってパートナーだもん」
この人は、多分本当にそうしてくれるような気がした。
「……その時は、お願いします。でも服は着てて下さい。セクハラで訴えますよ」
「あれェ!? そしたら最終的に責められるのオレだけって事じゃない!?」
彼に見えない様に、心の中でそっと笑った。
その姿を見られるのはまだ悔しい気がしたから。
「さあ、馬鹿な事言ってないで本格的に天地創造を始めましょうか」
どこかで間違えてしまったとしても、隠さずに前を向いて。
(次頁/18-1へ続く)
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