知識0から創る異世界辞典(ストラペディア)~チャラ駄神を添えて~

degirock/でじろっく

文字の大きさ
49 / 114
メガネスーツ女子と未知との遭遇

頁24:想定外の助っ人とは 3

しおりを挟む
          






 ◇◆◇◆◇◆





「分岐か」

 暫く洞窟内を進むと道が二手ふたてに分かれていた。途中何度か飛ぶ眼フライングアイに遭遇したが、私が全て撃退した。
 この人に任せると凄惨せいさんな倒し方になりそうだしあの図は精神的にしんどいので。
 縮小地図では分岐の奥までは表示しきれない様だ。まあ範囲20メートルだし目視で最奥まで分からなければ縮小地図で分かる訳もないのだが。

「右」

 特に悩んだ様子も無く『彼』はすたすたと進んで行ってしまう。

「ちょ、そんな考えも無しに…」
「考えて何か分かるのか? RPGはいつだって知らない場所の連続だろう。攻略する為に来たなら黙って進めばいい」

 それは…確かに先がどうなっているか分からない以上はその通りかもしれないが…。
 反論出来る材料も無いので再び後を追う。二手に別れる、という方法もあるが、正体不明の彼を放置する訳にもいかないし、そもそも知識ゼロの私が一人で進んで何かしらの展開があった場合に対処しきれない可能性も大いに考えられる。
 ていうかこの人もこんな口調している割にゲーム好きなのだろうか。

「………あの」
「何だ今度は」

 気まずい沈黙につい口を開いてしまった。話しかける内容も決めていないのに。

「…ええと……その…」
「内容を決めてから話せ」
「むぐ…」

 その通りです。分かってます。どうした私。

「…はぁ。、あんた」
「えっ?」

 予想外な言葉に驚いた。

「コイツと話している時は正しさだなんだって景気よく御高説ごこうせつ並べてるのに」
「御高説って…私はただ…」

 御高説…に聞こえるのだろうか。だが少なくとも『彼』にはそう聞こえたのだろう。自分の考えを貫こうとするのはつまりは誰かの考えを押し退けるという事だ。

「俺はあんたの考えは受け入れられない。だがコイツは少なくとも理解しようとしているらしい。ならばそれでいいだろうが」
「え…?」
「元々決まりなんて存在していない。どいつか一人の意見が世界に満たされるなどあり得ない。なら俺は自分の好きな様に生き、あんたも好きな様に御高説を垂れ流せばいい。付いて行きたい奴は勝手に付いてくる。それだけだ」

 ……それはつまり。
 いや、言葉にするのはまだやめておこう。

「あの…、名前は?」
「無い」

 無いのか。まあ、存在的には仕方ないのか───

、な。どこかの馬鹿は勝手に『シュウ』と呼んでる。何が『これでお揃いだ』、なんだかな」

 淡々と冷めた雰囲気の中に、一瞬だけ血がかよった様な気がした。志雄しゆう、シュウ…成程。
 この人はもしかして…

「行き止まりか」
「え?」

 確かに道はそこで途切れている。縮小地図を見ても抜け道のたぐいは無さそうだ。それにしても何と言うか…自然の岩盤にさえぎられて進めないと言うよりは『行き止まりにしたいからそれっぽい物並べて塞ぎました!』という手抜き突貫工事の様にも見えた。

「行き止まりには、だ」








   (次頁/24-4へ続く)





         
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

狼になっちゃった!

家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで? 色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!? ……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう? これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。

処理中です...