55 / 114
メガネスーツ女子と未知との遭遇
頁27:最初の結末とは 1
しおりを挟む「…ハレ…?」
何が起きたのか理解が追い付いていない彼。激突に押し勝った飛ぶ眼は彼の背後の壁に突っ込まない様に角度を調整しながら旋回すると、再び空間の中央付近まで戻って行く。
「神々廻さん!!!」
彼の元に駆け寄る。
「…なんで…? アレ…?」
そして、視線を自分の右の腕に落とした。───衝撃によりズタズタに裂けた肉、あり得ない方向に曲がった腕、折れた骨が皮膚から突き破って露出した手指。脱臼しているのかもしれない腕は肩口の辺りからぶら下がり、普段の腕の長さよりも少し伸びて見えた。
「あ…? うあ……あぎゃあああああああああああああ!!!!」
思考が追い付き同時に痛みが襲ってきたのだろう、凄まじい絶叫を上げる彼。過度の痛みによるショック症状も引き起こしているかもしれない。しかしまだ現状は戦闘中だ。介抱に回る事は出来ない。この怪我の様子では再生までにどれ位の時間を要するか想像もつかない。
どうする…!?
どうするも何も、相手を全滅させない限りどうにも出来ないだろ!
ガクガクと痙攣する彼の横っ面をキツめに引っ叩く。後で謝ろう。
「あぐァ…! あ…? み、 観沙稀ちゃん……オレ…ごめ…」
「全部終わってからにしましょう! 痛いかもしれないけれど下がってて!」
返事を待たずに彼の前に立ち、残る回転型に構えを取る。
やはりこれは『試験』だった。単純に飛んで来る攻撃を見切って反撃するという『基本』を道中で学び、そして威力を増した攻撃をする個体に対してどう対処するかの『応用』。まだ体術で撃退出来るだけ難易度的には高くないのかもしれない。
「ッラァ!!」
咆哮と共に右の足刀を叩き込む。鋭い衝撃により軌道をずらされた砲弾が真下の土を派手に弾き飛ばしつつ地面に埋まり、そのまま生命活動を止めた。
「…痛ッ…!」
まずい、二撃で早くも足に来た。緩やかではあるものの再生されているので痛みが引く感覚はあるが、このペースでは先に体の方がダメになるだろう。痛めた足を軸にするのは頼りないが、蹴り足をスイッチさせて衝撃を分散させるしかない。
二匹連続で突っ込んで来る回転体。溜め無しに二匹目は倒せない、ならば一匹目を倒して二匹目は躱す!
「疾ッ!!」
足を入れ替え姿勢をスイッチ、左の前蹴りで一匹目を押し返し、衝突の際のインパクトを利用してバックステップの要領で二匹目を回避する。
───心算だった。
「ぁぐ…!」
入れ替えて軸足にした右足に想定外の激痛が走る。もしかしたら骨にヒビが入っていたのかもしれない。
一匹目は撃退出来たが…二匹目は…!
迫り来る衝撃に不覚にも目を閉じてしまった。
「……!」
…あれ。
覚悟していた衝撃はタイミングを過ぎても訪れず、代わりに響いたのは───
「ぅオウらぁ!!!」
『彼』の叫びと、真横から蹴られて軌道が狂い、壁に激突して絶命した飛ぶ眼の姿だった。
「成程、重心を意識した蹴りなら何とかなるみたいだな」
「シュウさん!? 『彼』は!?」
「引っ込ませた。邪魔だ」
「邪魔って…」
だからと言って怪我が完治した訳ではない。シュウさんに入れ替わってもその体は相変わらず大量の脂汗を吹き出し続け、右腕は力無くぶら下がっている。そもそも使い物にならないどころか痛みという妨害を絶え間なく送り続けてくる腕を抱えてまともな蹴りが繰り出せる訳が無い。
「無理しないで下さい!」
「何言ってる? あんた、今死んだぞ」
「う…」
確かに、助けてもらわなければ死にこそはしないとは思うが重篤なダメージを受けていただろう。私も行動不能になればそれは即ち全滅を意味する。
「…助けて頂きありがとうございました」
「お互い様だ」
(次頁/27-2へ続く)
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
狼になっちゃった!
家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで?
色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!?
……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう?
これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる