知識0から創る異世界辞典(ストラペディア)~チャラ駄神を添えて~

degirock/でじろっく

文字の大きさ
69 / 114
メガネスーツ女子と死後?の世界

頁33:気候とは 2

しおりを挟む
        







 ◇◆◇◆◇◆




「に、苦手だったら苦手って言ってくれてもよかったのよ?」
「す、すいません…見栄みえ張ってしまいまして…。皆さんが良くして下さっているのに何もしない訳には!って思いまして…」
「やだよもうこの子ったら」

 よしこさんがカラカラと笑った。しかし他の人達のドン引きの視線は痛かった。もう大人しくしてようそうしよう…。
 ドロドロになった服は時間が経てば恐らくは元通りに再生されるだろうけれど、それを見られたらどう説明すればいいのか分からないのでとりあえず着替えた。
 【力】が制限された状態で箱ティッシュ(しっとり触感)の召喚みたいなのが出来るのか?と思ったけれど、そこは【対象を害する能力はことごとく封印】の制限対象外だったのか問題は無かったみたいだ。いずれ制限される可能性もあるけれど。
 なるべく村の人達の服装に合わせる様なデザインが良いかと思い私が選んだのは、リネン素材で無地の黄緑色Tシャツにデニム生地で茶色のサルエルアラジンパンツ、そしてなるべくデザイン性の薄いサンダル。靴下は履いていない。ついでに簡単なエプロンも一応。
 衣服が体から離れた状態は『再生』の基準ではないらしいのは助かった。この先スーツのままでは困るシーンもあるかもしれないし。

「その…やはり何もしない訳にはいかないので、私でも出来そうな事でお手伝いさせて頂けませんか?」
「そ、そうねぇ…」

 よしこさんの首筋に伝わる汗を見逃さなかった。つらい。

「あ、それなら、お墓を飾る『  』を集めてきてもらえる? 村の中だけでも沢山咲いていると思うから」

 咲いている、ということは『花』だろうか。
 まあ料理は触らせてもらえませんよね。分かります。つらい。

「それなら私でも大丈夫ですね。お任せ下さい」

 自分で言ってて悲しくなった。つらい。

「組み合わせはミサキさんのセンスで好きにしちゃっていいから。よろしくねぇ」
「ではちょっと行ってきます!」

 ここで汚名を返上せねば。
 意気揚々いきようようと私はその場を後にした。





 ◇◆◇◆◇◆





 よく見ると村の中には色とりどりの『花』が咲いていた。私は追加で軍手と剪定鋏せんていばさみを召喚してそれらの花をせっせとみ。…そう言えば今着ている服もそうだが、召喚した物については辞典未登録でも普通に認識出来る。この差は何だろうか…?
 当然ながらどの『花』も名前がまだついていないのでそれら一つ一つの姿を正しく認識する事は出来ないが、ぼやっとした色や形は何となくだが予想はつく。
 摘みながら詳しくない植物の知識の中のいずれかをつい脊椎反射せきついはんしゃで当てめてしまう。多分これも【提案】として送られている事だろう。
 平行世界の地球と言っても恐らくギアナ高地みたいに独立した生態系になっているのだろうと思っていたけれど、意外に知っている形の物が多い様に思えた。
 青く小さな星の花びらはネモフィラ…開いた翼みたいなのはナデシコ…沢山の花弁が集まっているのはアジサイ…大きい星型はキキョウ…あ、この真紅の御座みざはきっと曼珠沙華まんじゅしゃげだ。そして小さく集まって咲く紫色はクロッカス…この特徴的なラッパ型はスイセン………あれ?
 詳しくは無いと言え、流石さすがに異変に気付く。

「…これ、だっけ…?」

 必ずしも元の地球と同じではないとは言え、もしもこの花達の持つ性質が元の地球と限りなく近いとしたならば…

「ちょっと待って、今って何月…?」

 周囲に人がいないのを素早く確認すると【本】を召喚してページを開く。確かこの星も神々廻ししばさんによって一年が12ヶ月365日で設定されていたはずだ。

一月いちがつ…!? 世界地図表示!」

 ページが勝手にめくれ、メルカトル図法の世界地図が表示されたページに切り替わる。
 『たいりく大陸』の位置は…北半球のやや赤道寄り。分かりやすく言えば日本に近い経度緯度だ。どの季節から一月いちがつが始まっているのか分からないが、疑問を確認する術はある。

「えっと…世界の大まかな気温表示って出来ます?」

 本に向かって丁寧語で話しかける姿はさぞかし奇異きいに見える事だろう。すると開かれた地図のページ上にシステムメッセージが。

《 『気温』という概念が定着していません。》

 そりゃそうか。気温という物は元の地球で1850年頃から現在の形式で正式に観測され始めたデータの事だったはずだ。この星には全く関係無い。

《 元の地球の概念を一時的に当て嵌める事が出来ます。実行しますか? 》

 え?
 まさかのメッセージに目を疑う。ああ、、私。

「お願いします」

《 実行中。》

 そして地図上の至る場所に浮かび上がる気温を表す数字。

「やっぱり…!」

 標高の高い土地や砂漠に見える土地、極点などの特徴的な土地以外の気温が判を押したかの様にだった。北半球も南半球も赤道付近も。
 この星には、。いや、まだ四季という概念が無いと言うべきか。
 そう思うと唯一気温の差が付けられている地域も『そういう役割の土地だから』という雑な設定にも見える。
 がまた一つ増えた。

「(私達のミッション2…、手順を誤れば……!)」

 に、神々廻ししばさんからの【承諾しょうだく】はまだされていなかった。


 その時、村の外れから爆発の様な音と、一瞬遅れた振動が辺りを揺るがした。








   (次頁/34-1へ続く)








        
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

狼になっちゃった!

家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで? 色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!? ……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう? これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。

処理中です...