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1年目 スフラル編
8. 宴会中
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「ほら、狐も食べろ!」
『キャン!』
ただいま宴会中。楽しいよ。
飲み会をどこにしようかって地元の冒険者が考えてくれて、広場の一角の机に陣取って、屋台の料理と飲み物を各自買ってくることになった。
そしてどの屋台に何があるか分からないオレたちのために、みんながいろいろ買ってきてくれて、机の上に乗り切らないくらいの料理が並んでいる。ほとんどがオレ用のチョモだ。
ウィオの好きなスパイスが入った肉詰めとかスパイスがかかった串焼きとかもあるので、オレたちは風上に座らせてもらっている。
「あんた、なんでこの国に来たんだ?」
「料理が美味しいと聞いたからだ」
「んで、どうだ?」
「私はこの肉が気に入った。ルジェはチョモが大好物だ」
「お貴族様に気に入ってもらえるとは嬉しいねえ」
ぱくぱく、もぐもぐ。
今日はオレ用の薄い味付けじゃないんだけど、もともとタレをつけて食べるように作られているから、何とか平気。
でも、喉が渇いちゃう。ぐびぐび。
「狐、いい飲みっぷりだな」
『キャン!』
お水をたくさん飲んでたら、隣の冒険者が器に水を追加して注いでくれた。ありがとね。
口の中も落ち着いたところで、次のチョモに行こう。
『ウィオ、右奥のチョモとって』
「これか?」
『その右』
ここは全チョモを制覇しないとね。
中にはこだわって具にスパイスが混ぜられているものもあって、食べた瞬間にびっくりしちゃった。スパイスが口の中を攻撃してきて、スパイスが刺激物だということに納得したよ。
「狐、どれが一番気に入ったんだ?」
『うーん、瓶の横のが薄味でよかった』
「そのワインの横のタレなしがいいそうだ」
タレにこだわったお店だったから、本体は味付けが控えめで美味しかった。本来の評価じゃなくて申し訳ないけど、オレにちょうどよかったんだよ。
オレには机が高すぎるので椅子の上で食べてるんだけど、可愛い狐がお行儀よく椅子の上で食事をしているから、当然目立つ。
冒険者がワイワイしている中に狐がいるから、通りがかるみんなが二度見している。
「ガレン、その狐はどうした」
「城の掃除で一緒になった。可愛いだろう」
なんでか一緒にいる冒険者がオレを撫でながら自慢してるんだけど、ギルドに文句言ってくれたし、可愛いって言ってくれたから許す。
そして、オレの可愛さに魅了された冒険者たちが俺も混ぜてくれと入ってきて、どんどん団体が大きくなっていく。
その度に食べ物も増えていくからオレは大歓迎だよ。
「その狐は何ができるんだ?」
「ちょろっと雪を降らせてくれたぞ。きっと子どもが喜ぶ」
ここは降らせてあげよう。上に向かって、ヒューと息を吹くと、雪が少し吹き出されて降ってくる。
オレの宴会芸に酔っ払いたちから歓声が上がる。その騒ぎにこっちを見た家族連れから、狐さんがいるよという声が聞こえる。
よーし、サービスでもうちょっと降らせちゃうよ。ヒュー、ピュー。
やんややんやと囃し立てる声に、呼ばれる方向に向かって雪を吹き出していたら、騎士たちがやってきた。騒ぎすぎちゃって怒られるのかな。
「騎士様、どうしたんですかい?」
「いや、広場に見慣れぬ動物がいると聞いて、確認に来た」
「そこの銀のの使役獣ですよ。騎士様も一杯どうですかい?」
「任務中だ」
あれ、この騎士さんって途中の街で会った、オレたちの正体を知っている騎士さんだ。もしかしてオレたちがお城に入ったことを知って来たのかな。これはまずいぞって駆けつけてみたら、オレが雪を吹き出してたって感じ?
騎士さんが困惑しているけど、酔っ払いはそんなことは気にしない。
「狐、お気に入りのチョモをもらってきたぞ。食え」
おお、オレが気に入ったっていうお店のを追加で買ってきてくれたみたいだ。
ありがと。いただきます。ぱく。
『ギャン!』
「狐、どうした?」
『熱いよー。火傷しちゃった』
「ルジェ……。心配ない。火傷したらしい」
「雪吹き出せるんだから、冷ましてから食べろよ」
正論だね。でも雪で冷やしたらせっかくのもちもちの皮がべちょべちょになっちゃいそうだから、やっぱり大人しく冷めるまで待つべきかな。
失敗しちゃった。恥ずかしいから、隣に座ってるウィオのお腹に頭をこすりつけて誤魔化そう。すりすり。
「飼い主に甘えてやんの。いいなあ。俺も使役獣欲しい」
「狼がカッコいいだろ」
「そこはやっぱり虎だろ」
「いや、餌が大変だから鳥がいいんじゃないか」
そこからどんな使役獣がいいかで話が盛り上がり始めたけど、騎士さんがまだいるんだよね。
ウィオ、何か言ってあげてよ。気にしてないって。
「騎士様、使役獣は大人しくさせておきます」
「あ、いや、ああ。その、しばらく王都にいるのか?」
「その予定です」
「じゃあ銀の、一緒に依頼受けよーぜ!」
酔っ払いが会話に入ってきた。そして、この場にいる冒険者みんなで行こうって話になっている。
明日になったらこのうちの何人が今の話覚えてるのかな。
会話を邪魔された騎士さんは、オレたちが楽しんでいるようだと判断して、邪魔をして悪かったと苦笑しながら引き上げて行った。
お城に勝手に入ってごめんね。
『キャン!』
ただいま宴会中。楽しいよ。
飲み会をどこにしようかって地元の冒険者が考えてくれて、広場の一角の机に陣取って、屋台の料理と飲み物を各自買ってくることになった。
そしてどの屋台に何があるか分からないオレたちのために、みんながいろいろ買ってきてくれて、机の上に乗り切らないくらいの料理が並んでいる。ほとんどがオレ用のチョモだ。
ウィオの好きなスパイスが入った肉詰めとかスパイスがかかった串焼きとかもあるので、オレたちは風上に座らせてもらっている。
「あんた、なんでこの国に来たんだ?」
「料理が美味しいと聞いたからだ」
「んで、どうだ?」
「私はこの肉が気に入った。ルジェはチョモが大好物だ」
「お貴族様に気に入ってもらえるとは嬉しいねえ」
ぱくぱく、もぐもぐ。
今日はオレ用の薄い味付けじゃないんだけど、もともとタレをつけて食べるように作られているから、何とか平気。
でも、喉が渇いちゃう。ぐびぐび。
「狐、いい飲みっぷりだな」
『キャン!』
お水をたくさん飲んでたら、隣の冒険者が器に水を追加して注いでくれた。ありがとね。
口の中も落ち着いたところで、次のチョモに行こう。
『ウィオ、右奥のチョモとって』
「これか?」
『その右』
ここは全チョモを制覇しないとね。
中にはこだわって具にスパイスが混ぜられているものもあって、食べた瞬間にびっくりしちゃった。スパイスが口の中を攻撃してきて、スパイスが刺激物だということに納得したよ。
「狐、どれが一番気に入ったんだ?」
『うーん、瓶の横のが薄味でよかった』
「そのワインの横のタレなしがいいそうだ」
タレにこだわったお店だったから、本体は味付けが控えめで美味しかった。本来の評価じゃなくて申し訳ないけど、オレにちょうどよかったんだよ。
オレには机が高すぎるので椅子の上で食べてるんだけど、可愛い狐がお行儀よく椅子の上で食事をしているから、当然目立つ。
冒険者がワイワイしている中に狐がいるから、通りがかるみんなが二度見している。
「ガレン、その狐はどうした」
「城の掃除で一緒になった。可愛いだろう」
なんでか一緒にいる冒険者がオレを撫でながら自慢してるんだけど、ギルドに文句言ってくれたし、可愛いって言ってくれたから許す。
そして、オレの可愛さに魅了された冒険者たちが俺も混ぜてくれと入ってきて、どんどん団体が大きくなっていく。
その度に食べ物も増えていくからオレは大歓迎だよ。
「その狐は何ができるんだ?」
「ちょろっと雪を降らせてくれたぞ。きっと子どもが喜ぶ」
ここは降らせてあげよう。上に向かって、ヒューと息を吹くと、雪が少し吹き出されて降ってくる。
オレの宴会芸に酔っ払いたちから歓声が上がる。その騒ぎにこっちを見た家族連れから、狐さんがいるよという声が聞こえる。
よーし、サービスでもうちょっと降らせちゃうよ。ヒュー、ピュー。
やんややんやと囃し立てる声に、呼ばれる方向に向かって雪を吹き出していたら、騎士たちがやってきた。騒ぎすぎちゃって怒られるのかな。
「騎士様、どうしたんですかい?」
「いや、広場に見慣れぬ動物がいると聞いて、確認に来た」
「そこの銀のの使役獣ですよ。騎士様も一杯どうですかい?」
「任務中だ」
あれ、この騎士さんって途中の街で会った、オレたちの正体を知っている騎士さんだ。もしかしてオレたちがお城に入ったことを知って来たのかな。これはまずいぞって駆けつけてみたら、オレが雪を吹き出してたって感じ?
騎士さんが困惑しているけど、酔っ払いはそんなことは気にしない。
「狐、お気に入りのチョモをもらってきたぞ。食え」
おお、オレが気に入ったっていうお店のを追加で買ってきてくれたみたいだ。
ありがと。いただきます。ぱく。
『ギャン!』
「狐、どうした?」
『熱いよー。火傷しちゃった』
「ルジェ……。心配ない。火傷したらしい」
「雪吹き出せるんだから、冷ましてから食べろよ」
正論だね。でも雪で冷やしたらせっかくのもちもちの皮がべちょべちょになっちゃいそうだから、やっぱり大人しく冷めるまで待つべきかな。
失敗しちゃった。恥ずかしいから、隣に座ってるウィオのお腹に頭をこすりつけて誤魔化そう。すりすり。
「飼い主に甘えてやんの。いいなあ。俺も使役獣欲しい」
「狼がカッコいいだろ」
「そこはやっぱり虎だろ」
「いや、餌が大変だから鳥がいいんじゃないか」
そこからどんな使役獣がいいかで話が盛り上がり始めたけど、騎士さんがまだいるんだよね。
ウィオ、何か言ってあげてよ。気にしてないって。
「騎士様、使役獣は大人しくさせておきます」
「あ、いや、ああ。その、しばらく王都にいるのか?」
「その予定です」
「じゃあ銀の、一緒に依頼受けよーぜ!」
酔っ払いが会話に入ってきた。そして、この場にいる冒険者みんなで行こうって話になっている。
明日になったらこのうちの何人が今の話覚えてるのかな。
会話を邪魔された騎士さんは、オレたちが楽しんでいるようだと判断して、邪魔をして悪かったと苦笑しながら引き上げて行った。
お城に勝手に入ってごめんね。
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