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1年目 フェゴ編
9. 腐れ縁?
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夜遅く、本来なら門の閉まっている時間だけど、門番に事情を説明して、子どもと王子様と護衛、それにオレだけ街の中に入れてもらった。本当はダメなんだけど、誘拐された子どもが夜遅くに帰ってきたとあって、特例で入れてくれたのだ。
オレはウィオと残る予定だったけど、子どもがオレと別れがたい感じだったので、着いてきている。
王子様がオレとウィオを離すことを気にしているけど、この距離なら問題ないよ。
「おかあさん!」
「ラル! 無事でよかった。本当に心配したのよ……」
門番に案内された家では、お腹の大きなお母さんが待っていて、子どもは気づくとすぐにお母さんへと駆け寄った。
勝手に門の外に出ないようにと涙ながらに叱られて、子どもも神妙な面持ちで聞いている。こうして無事に帰って来ることができたのは、本当に幸運だったのだと、いつか理解するだろう。
「では我々はこれで」
「本当にありがとうございました」
「きつねさん、ばいばい」
『キャン!』
最後は笑顔で終われてよかった。生きるのが厳しいこの世界だけど、やっぱり子どもには笑っていてほしいよね。
これで、子どもを心配していたウィオも安心するでしょう。
「狐くん、もしかして、あの子を眠らせてくれたのかな?」
王子様の肩に乗っているオレに、王子様が内緒話をするように聞いて来た。
さあ、どうかな。
トラウマになってしまった馬車に長時間乗っているのは辛いだろうから、眠っている間に着いたのはラッキーだったよね。
特例で入れてもらったとはいえ、馬車は門の外。つまり今日は門の前で夜営だ。
といってもオレたちは荷台で寝るだけだから、準備も特にいらない。王子様たちはテントを用意している。
走り通してくれたお馬さんに少しだけ治癒の力を流すと、王子様の馬車の馬にもしてあげてとお願いされた。ずっと走ってちょっと足を痛めているらしい。
タタタッと走って王子様のお馬さんに近づくと、すりすりと頬を寄せてくれたので、そっと治癒の力を渡す。たくさん走ってくれてありがとね。
オレはウィオに初めてに会ったとき、一番最初に馬に助けてもらったから、お馬さんのこと好きなんだ。
「おい狐、他人の馬に何をやっている!」
もう、なんだよ。オレの癒しの時間の邪魔をするなよ。
この護衛、最初っからオレたちに対して態度悪いよなあ。
「パース、やめろ!」
「しかし勝手に馬に近寄るなど」
目的は果たしたから、もういいよ。ウィオのところに戻ろう。お馬さん、ばいばい。
護衛が王子様に怒られてるけど、勝手にやって。
王子様とは今度こそ、ここでお別れだよね。
翌朝、門が開くとすぐに街に入って宿をとった。しばらくこの街で、簡単な薬草採取の依頼でも受けながら、のんびりしよう。
チョモマップにここの街のお店も載っていたので、堪能しないとね。
王子様はオレたちの泊る宿にはいないから、別の宿にしたのか、あるいは領主のお屋敷とかに泊っているのかもしれない。
この辺りの街の建物は窓が大きくて、南国っぽい。気温もオルデキアに比べると高いので、ウィオも半袖で胸筋をチラ見せしている。騎士の時はきっちりとした格好だったから、ちょっと新鮮。
そのせいか、ときどき秋波を送られたりもしている。でもウィオは全く気づかない。勝手なイメージだけど、南国って恋にも積極的なイメージがあるから、ウィオも旅先ではっちゃけてみればいいのに。
『今のお姉さん、ウィオに熱い視線を向けてたよ』
「そうか。暑いから氷属性が羨ましいんだろう」
違うでしょ。ちょっとはあるかもしれないけど、違うと思うよ。
ウィオは人間不信気味だから、恋の駆け引きなんて眼中にもないんだろうな。お姉さん、その努力は徒労に終わるから、他にいい人みつけてね。
「ルジェ、この店のチョモはもういいのか?」
『うん。美味しかったけど、宿の方が好き』
「そうか。地図に乗っているこの街の店はここで最後だから、今日の夕食は宿でお願いするか」
『キャン』
チョモマップのこの街のお店は制覇したから、何日か宿のご飯を堪能したら、次の街に移動してもいいかも。
そんなある日、依頼の薬草採取へ行こうと、街を出てしばらく走ったところで、遠くから街の鐘が聞こえた。
それを聞いてすぐにウィオは向きを変え、街に向かって全速力で走るようにお馬さんに指示を出した。
通常、街の外の道であっても馬を全力で走らせることは禁止されている。制限速度が決められているみたいなものだ。
けれど戦闘職は緊急時に限っては全力で走っても怒られない。緊急車両扱いなんだろう。
『何が起きたの?』
「分からないがあの鐘は非常事態を知らせるものだ。門か冒険者ギルドに行けば分かる」
そこですぐに動き出すところはさすが元騎士だ。
しばらく走って門にたどり着くと、冒険者ギルドの用意する馬車の周りに緊急招集に応じた冒険者が集まっていた。
「ウィオラス、君も来たのか」
「何があった?」
「近くの村が魔物に襲われたらしい」
オレたちに気付いた王子様が教えてくれた。まだこの街にいたらしい。
逃げ出した村人が街道を進んでいた馬車に助けを求め、一番近い街であるここまで連れてこられたので、これから冒険者と兵士で助けに行くそうだ。
「その、今のうちにここを離れたほうがいいんじゃないか?」
オレを見ながら王子様が心配してくれるけど、身近に現れた魔物の討伐なら普通に冒険者の活動として問題ない。
冒険者はこういう緊急時に協力する義務があるけど、ウィオはそれも免除されている。だから堂々と参加しませんって言えるんだけど、免除されている理由は公にされていないので、もし参加しないならこっそり消えたほうがいい。
「ルジェ、どうする?」
『魔物の討伐なら、ウィオが好きにすればいいよ』
国に協力する気はないけど、目の前で魔物に襲われている人を見捨てるほど人でなしじゃないよ。
オレ狐だから、狐でなし?
オレはウィオと残る予定だったけど、子どもがオレと別れがたい感じだったので、着いてきている。
王子様がオレとウィオを離すことを気にしているけど、この距離なら問題ないよ。
「おかあさん!」
「ラル! 無事でよかった。本当に心配したのよ……」
門番に案内された家では、お腹の大きなお母さんが待っていて、子どもは気づくとすぐにお母さんへと駆け寄った。
勝手に門の外に出ないようにと涙ながらに叱られて、子どもも神妙な面持ちで聞いている。こうして無事に帰って来ることができたのは、本当に幸運だったのだと、いつか理解するだろう。
「では我々はこれで」
「本当にありがとうございました」
「きつねさん、ばいばい」
『キャン!』
最後は笑顔で終われてよかった。生きるのが厳しいこの世界だけど、やっぱり子どもには笑っていてほしいよね。
これで、子どもを心配していたウィオも安心するでしょう。
「狐くん、もしかして、あの子を眠らせてくれたのかな?」
王子様の肩に乗っているオレに、王子様が内緒話をするように聞いて来た。
さあ、どうかな。
トラウマになってしまった馬車に長時間乗っているのは辛いだろうから、眠っている間に着いたのはラッキーだったよね。
特例で入れてもらったとはいえ、馬車は門の外。つまり今日は門の前で夜営だ。
といってもオレたちは荷台で寝るだけだから、準備も特にいらない。王子様たちはテントを用意している。
走り通してくれたお馬さんに少しだけ治癒の力を流すと、王子様の馬車の馬にもしてあげてとお願いされた。ずっと走ってちょっと足を痛めているらしい。
タタタッと走って王子様のお馬さんに近づくと、すりすりと頬を寄せてくれたので、そっと治癒の力を渡す。たくさん走ってくれてありがとね。
オレはウィオに初めてに会ったとき、一番最初に馬に助けてもらったから、お馬さんのこと好きなんだ。
「おい狐、他人の馬に何をやっている!」
もう、なんだよ。オレの癒しの時間の邪魔をするなよ。
この護衛、最初っからオレたちに対して態度悪いよなあ。
「パース、やめろ!」
「しかし勝手に馬に近寄るなど」
目的は果たしたから、もういいよ。ウィオのところに戻ろう。お馬さん、ばいばい。
護衛が王子様に怒られてるけど、勝手にやって。
王子様とは今度こそ、ここでお別れだよね。
翌朝、門が開くとすぐに街に入って宿をとった。しばらくこの街で、簡単な薬草採取の依頼でも受けながら、のんびりしよう。
チョモマップにここの街のお店も載っていたので、堪能しないとね。
王子様はオレたちの泊る宿にはいないから、別の宿にしたのか、あるいは領主のお屋敷とかに泊っているのかもしれない。
この辺りの街の建物は窓が大きくて、南国っぽい。気温もオルデキアに比べると高いので、ウィオも半袖で胸筋をチラ見せしている。騎士の時はきっちりとした格好だったから、ちょっと新鮮。
そのせいか、ときどき秋波を送られたりもしている。でもウィオは全く気づかない。勝手なイメージだけど、南国って恋にも積極的なイメージがあるから、ウィオも旅先ではっちゃけてみればいいのに。
『今のお姉さん、ウィオに熱い視線を向けてたよ』
「そうか。暑いから氷属性が羨ましいんだろう」
違うでしょ。ちょっとはあるかもしれないけど、違うと思うよ。
ウィオは人間不信気味だから、恋の駆け引きなんて眼中にもないんだろうな。お姉さん、その努力は徒労に終わるから、他にいい人みつけてね。
「ルジェ、この店のチョモはもういいのか?」
『うん。美味しかったけど、宿の方が好き』
「そうか。地図に乗っているこの街の店はここで最後だから、今日の夕食は宿でお願いするか」
『キャン』
チョモマップのこの街のお店は制覇したから、何日か宿のご飯を堪能したら、次の街に移動してもいいかも。
そんなある日、依頼の薬草採取へ行こうと、街を出てしばらく走ったところで、遠くから街の鐘が聞こえた。
それを聞いてすぐにウィオは向きを変え、街に向かって全速力で走るようにお馬さんに指示を出した。
通常、街の外の道であっても馬を全力で走らせることは禁止されている。制限速度が決められているみたいなものだ。
けれど戦闘職は緊急時に限っては全力で走っても怒られない。緊急車両扱いなんだろう。
『何が起きたの?』
「分からないがあの鐘は非常事態を知らせるものだ。門か冒険者ギルドに行けば分かる」
そこですぐに動き出すところはさすが元騎士だ。
しばらく走って門にたどり着くと、冒険者ギルドの用意する馬車の周りに緊急招集に応じた冒険者が集まっていた。
「ウィオラス、君も来たのか」
「何があった?」
「近くの村が魔物に襲われたらしい」
オレたちに気付いた王子様が教えてくれた。まだこの街にいたらしい。
逃げ出した村人が街道を進んでいた馬車に助けを求め、一番近い街であるここまで連れてこられたので、これから冒険者と兵士で助けに行くそうだ。
「その、今のうちにここを離れたほうがいいんじゃないか?」
オレを見ながら王子様が心配してくれるけど、身近に現れた魔物の討伐なら普通に冒険者の活動として問題ない。
冒険者はこういう緊急時に協力する義務があるけど、ウィオはそれも免除されている。だから堂々と参加しませんって言えるんだけど、免除されている理由は公にされていないので、もし参加しないならこっそり消えたほうがいい。
「ルジェ、どうする?」
『魔物の討伐なら、ウィオが好きにすればいいよ』
国に協力する気はないけど、目の前で魔物に襲われている人を見捨てるほど人でなしじゃないよ。
オレ狐だから、狐でなし?
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