キャプテン・ヴァージャス!

大場里桜

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1章 キャプテン・ヴァージャス誕生!

3話.魔法訓練と先輩冒険者

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 ギルド職員のアイリさんに紹介された魔法の指導者に会って戸惑う。どう見ても10才位の子供にしか見えない。

「アイリさん。このお嬢さんはーー」
「嬢さんとは何だ! 私は男で、ギルドの魔法教官のラナだ!」

 男?! 男と言っていたが、どう見ても茶髪のワンカールボブの可愛い女の子にしか見えない。水色のローブが可愛さに拍車をかけている。戸惑う僕にアイリさんが説明してくれた。

「ラナ様はエルフなので、見た目が幼いだけですよ」
「確かにエルフなら幼く見えてもおかしくないけど、ラナって女性っぽい響きの名前ですよね?」
「エルフは名前に濁音など使わず、優しい響きの名前をつける習慣があります。女性の名前の様な響きの名前をエルフの男性につけるのは普通ですよ」

 そんな設定アニメでもラノベでも聞いた事無かったよな。釈然としなかったが、そういう設定の世界だと思う事にした。

「どうでもいいが先にすすめるぞ。そこの杖を使うがいい」

 慌ててラナの指示に従い、壁に立てかけてあった杖を手に取る。

「魔法は精神の集中が大事だ。初心者は杖やオーブを使用する。杖やオーブは精神を集中させる効果が付与されているし、目の前に精神を集中させる物がある方が精神を集中させやすいからな」
「ここには杖しか置いてないですが、杖とオーブの違いはなんですか?」
「杖は殴れる。違いはそれだけだ」

 身も蓋もない説明に呆れていると、ラナ教官が追加で説明してくれた。

「魔法使いとはいえ冒険に出る以上、近接攻撃の手段は必要となる。見せかけのオーブなど役にたたぬ」
「それなら剣でも良いのでは?」

 近接攻撃の手段が必要であれば剣の方が無難だと思う。剣と魔法の世界だから魔法使いとしてのイメージが大事なのだろうか?

「剣は金属だから駄目だ。金属の光沢は人の意識を飲む。それ故に初心者が剣を使用して精神を集中させる事は難しい」

 完全に理解するのは難しいが、何となく分かったような気がする。

「まずはライトの魔法を教える。これは光を灯す魔法だ。第一に杖の先端に意識を集中させる。第二に杖の先端に光が集中するイメージを持て。最後にライトと唱えろ」

 結構簡単そうだな。詠唱が無いから覚えるのも楽だし。ラナ教官の説明の通り、杖の先端に意識を集中し呪文を唱える。

「ライト!」

 しかし、何も起こらなかった。慣れていないだけと思い何度も唱える。

「ライト! ライトォ! ライトォーーーーッ!」

 何度唱えようと何も起こらない。子供がアニメの必殺技を連呼して練習しているような、微妙な恥ずかしさを覚え赤面する。異世界の常識は知らないが完全に黒歴史に認定だな……

「どうやら魔法の適正が全く無いようだな。そこのアイリでもライト程度は10分で習得出来た」

 ラナ教官に言われるまでもなく魔法が使えない事は理解出来たさ。MP以外取り柄が無いステータスなのに、魔法が使えないのか。あまりに残念な結果を知って、アイリさんが申し訳なさそうに謝ってきた。

「期待させてしまい、大変申し訳御座いませんでした」
「アイリさんは悪くないですよ。でも魔法が使えなかったら剣士でも目指せばいいのかな? 才能なさそうだけど」
「それが無難だと思います。お詫びとしてギルド支給用の鉄の剣を手配しますね。ケンさんは武器を持っていないようなので」
「いや。初対面でいきなり頂けないですよ。お金ないし、返せるか分からないですから」

 突然ラナ教官が割ってはいる。

「そんな事は聞くな。黙って受け取って去れ」

 そして、ラナ教官に部屋から追い出された。ラナ教官は何であんなに怒っていたのだろう? よく分からないがギルドの支給品である鉄の剣を受け取りギルドの入り口に戻った。

「書類手続きは明日までに進めておきますね」

 去り際にそう伝えたアイリさんの顔は、どこか悲しげに見えた……



 釈然としないまま鉄の剣を抱えて噴水広場で座っていると、最初にギルドの場所を教えてくれた冒険者が通りがかり、僕に話しかけてきた。

「おう。無事に登録出来たかい?」
「おかげさまで登録出来ました」
「その割には浮かない顔してるねぇ」

 冒険者なら事情通だと思いギルドでの顛末を説明した。

「おぉ。MP1,000,000とはとんでもないねぇ。でもステータスなんて物は、おいそれと他人に言うもんじゃないぜ」
「そうゆうものなんですか?」
「ステータス次第で差別される事があるからな。ステータスが低いとパーティーに参加出来なくなったりする」
「それは困りますね」

 素直に話を聞いている事に満足しているのか、冒険者の男性が嬉しそうに頷く。

「だろう? 後、鉄の剣の事は気にしなくてもいいぞ」
「何故ですか?」
「大抵、遺留品としてギルドに回収されるから心配無い。その剣も、前の持ち主が死んで回収された物だろうな」

 冒険者の男が天気の話しをするかのように軽く死について語った。

「冗談ですよね」
「何を言っている。冗談で言える事じゃねぇ。初心者はゴブリン程度のザコの討伐依頼でも1割は死んでいる」

 ゴブリン程度で1割……普通そんなに死ぬものか? 幾ら何でも多すぎるだろ。初心者だからって、からかわれているのか?

「多すぎませんか?」
「本当の事だ。訓練を受けた騎士ならゴブリンなどに負けないだろう。しかし、冒険者は別だ。訓練以前に生活費を稼ぐ必要がある。そして未熟なまま戦いに出て死んでいく。多くの村人が生活の為に冒険者になって死んでいったのさ……」

 去り際にアイリさんが悲しげな表情をしていたのはそういう事か。今まで何人もの冒険者をギルドから送り出して、多くの冒険者が戻らなかったのか。ラナ教官に追い出されたのも、そんな話をアイリさんに言わせたくなかったのだろう。最初に能力値を確認した時のような、凄い存在だったら気を遣わせる必要がなかったのにな。

「冒険者として生きるって、大変な事なんですね」
「いや、その様子だと全く伝わって無いだろうな。アイリの嬢ちゃんが心配するのも分かるねぇ。お前さん冒険者らしくないんだよ。他の仕事探した方がいいと思うぜ」
「夢があるんです。だから冒険者として生きてみたいんです」

 折角の新しい人生で直ぐに死にたくは無いが、憧れのスーパーヒーローになるには冒険者として活躍するしかない。

「そうかい、なら止めんよ。今日の宿決まって無いなら家に泊まっていくかい? 話し込んだせいで日も暮れたしな」

 そう言われて辺りが暗くなっている事に気づく。 随分、夢中になって話し込んでいたのだな。

「俺の名前はイル・ファナル。剣士だ」
「カガミ・ケンです。剣士を目指しています」

 お金もなければ家もないので、イルさんの誘いは有り難かった。
 そして、イルさんに借りた部屋で異世界での初めての夜を過ごすのであった。
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