57 / 74
正義も悪も立場次第
しおりを挟む
「俺と、アリーチェと、フィン・クラウザー。」
躊躇うことなく言われたそれに、俺は思わず頭を抱えた。
一気にいろんな事実が押し寄せてきて、正直頭にうまく入ってこない。アリーチェもアドラーも、敵だと思っていたのはこっちだけで、最初から味方でもあったというのか。
(いやそれにしては最初会ったとき本気で殺しにきたような戦いをしかけられたぞ……)
それに3人の真の目的が皇帝暗殺。アリーチェにとっては自分の父親であり、アドラーにとっては守るべき対象の人物。そして俺にとっては。
「なんで、俺が……? 俺は別に皇帝に殺意なんて、持って……。第一、アクセサリー屋の俺がなんでおまえらとそんな目的を……。」
「ヒンメルには暗殺をする組織、わたくしやアドラーの所属していた暗殺部隊と、スパイ活動が主な部隊がありますわ。そしてフィン、あなたは後者に所属していました。大まかな括りでは一緒だったので、気が合ったわたくしたちはよく3人で遊んだりしたものです。」
「今回こうなっちまったのも、元はと言えば皇帝暗殺計画がどこかからか漏れたのが原因でな。しかも何故かテメェの単独犯かのような状態で。それでなんとか助けようとあれこれした結果がこれってわけだ。まぁ立場上ちょっとばかしテメェらを痛めつけることにはなったが。」
俺がヒンメルのスパイであり、暗殺をして生活をしていた。そんな事実を簡単に受け入れられるわけがなかったが、ふと腰にある双剣の存在を思い出す。そうだ、この双剣は汚れていた。それもたくさんの血と、人の脂で。
シンティアに綺麗にしてもらったとき、人を殺してなんかいないと俺は俺を信じたが、実際は本当に大量に殺していたようだ。それどころか、皇帝の暗殺までも企んでいた。そりゃあヒンメル軍に追われるのも納得だ。
(俺が、人殺し。仕事とはいえ、おそらく大量に)
記憶なんてない。だが否定しようにも、もう受け入れるしかないだけの情報が出てきてしまった。そうなのだと思えば、今までの疑問もスルスルと解けていく。
あれだけ知りたかった過去が、重たい事実となって覆い被さってくる。これでは犯罪者は、悪は俺の方だ。
「俺は、俺は……。」
「フィンは! 過去がどうであれ、私と出会ってからのフィンは優しくて、強くて、かっこよくて、みんなのことを一番に考えてくれる、そんな人だから! 私は、今のフィンを、信じてる。」
「リーナ……。」
「過去も仕事だったと割り切るしかありませんわ。それに、犯罪者だともしお考えなら、暗殺部隊にいたわたくしやアドラーだってそうですわ。仕事とはいえ、たくさんの人を葬ってきましたから。でも受け入れて、先に進むしかないんですの。もうこんな思いをする人を増やさないためにも、進むしかないんですわ。」
アリーチェの言葉に、そういえばそうだったと少しだけ思い出す。暗殺も、スパイも嫌いだった。だが生きていくためにはアクセサリー屋だけではやっていけなくて、武器の腕を買われて軍に入った。
俺はそんな自分が嫌いで、同じく本当は人を殺したくなかったアリーチェとアドラーと仲良くなった。暗殺対象も悪人ならまだしも、どれも皇帝が個人的に気に食わないというだけ。中には仲良くしてくれていた人もいて、任務は毎回心が死んでいた。
俺たちはもう、こんな思いをする人を増やさないように計画を立てた。そうだ、俺たちは腐敗した軍を、国を、ひっくり返す。俺を信じてくれたリーナたちのためにも、ここで立ち止まるわけにはいかない。
「ま、うだうだ考えてたって仕方ないっしょ! アドラーとアリーチェが加わったのはデケェし、今夜はパーッと歓迎会でもやろうぜ!」
ルキの声にソフィアやシンティアが早速準備だと部屋を出て行く。その様子にキッチンの案内をしないと、とアリーチェも慌てて出て行った。
「フィン、あのね。」
「なんだ、リーナ。やっぱり俺が怖くなったか?」
静かに話しかけてきたリーナに、思わずそう問いかける。
「違う! 私はもうフィンについてくって決めたの! 今更離れろって言われても絶対ついてくから! それに、私はフィンが……!」
そう力説するリーナに思わず笑みが溢れた。受け入れられるというのはこうも嬉しいものなのか。
「わかったわかった。で、どうしたんだ。」
「あ、その、ほら、歓迎会するなら飾り付けとかしたいし、道具屋とか行ってみない……? 別にその、1人で行けないわけじゃないけど……。」
「ほらほら、デートのお誘い受けてんだからボケーっとしない! キミってホント女心がわかってないなぁその顔で。」
「アリーチェも苦労してきたからなぁ。ま、リーナちゃんも頑張れや。」
「う、うるさいわよルキとアドラー! もう! 行くわよフィン!」
どこにそんな力が、という強さでリーナに腕を引っ張られる。それが初めてリーナとリンドブルムの街中に行ったときを彷彿とさせて、少し気持ちが楽になった。
それはそれとしてルキとアドラーには文句の一つでも言ってやりたい気持ちだ。俺が女心をわかっていないというより、おまえらがイケメンすぎて経験豊富なだけだと。
心の中で毒づきながら俺はリーナについていった。
躊躇うことなく言われたそれに、俺は思わず頭を抱えた。
一気にいろんな事実が押し寄せてきて、正直頭にうまく入ってこない。アリーチェもアドラーも、敵だと思っていたのはこっちだけで、最初から味方でもあったというのか。
(いやそれにしては最初会ったとき本気で殺しにきたような戦いをしかけられたぞ……)
それに3人の真の目的が皇帝暗殺。アリーチェにとっては自分の父親であり、アドラーにとっては守るべき対象の人物。そして俺にとっては。
「なんで、俺が……? 俺は別に皇帝に殺意なんて、持って……。第一、アクセサリー屋の俺がなんでおまえらとそんな目的を……。」
「ヒンメルには暗殺をする組織、わたくしやアドラーの所属していた暗殺部隊と、スパイ活動が主な部隊がありますわ。そしてフィン、あなたは後者に所属していました。大まかな括りでは一緒だったので、気が合ったわたくしたちはよく3人で遊んだりしたものです。」
「今回こうなっちまったのも、元はと言えば皇帝暗殺計画がどこかからか漏れたのが原因でな。しかも何故かテメェの単独犯かのような状態で。それでなんとか助けようとあれこれした結果がこれってわけだ。まぁ立場上ちょっとばかしテメェらを痛めつけることにはなったが。」
俺がヒンメルのスパイであり、暗殺をして生活をしていた。そんな事実を簡単に受け入れられるわけがなかったが、ふと腰にある双剣の存在を思い出す。そうだ、この双剣は汚れていた。それもたくさんの血と、人の脂で。
シンティアに綺麗にしてもらったとき、人を殺してなんかいないと俺は俺を信じたが、実際は本当に大量に殺していたようだ。それどころか、皇帝の暗殺までも企んでいた。そりゃあヒンメル軍に追われるのも納得だ。
(俺が、人殺し。仕事とはいえ、おそらく大量に)
記憶なんてない。だが否定しようにも、もう受け入れるしかないだけの情報が出てきてしまった。そうなのだと思えば、今までの疑問もスルスルと解けていく。
あれだけ知りたかった過去が、重たい事実となって覆い被さってくる。これでは犯罪者は、悪は俺の方だ。
「俺は、俺は……。」
「フィンは! 過去がどうであれ、私と出会ってからのフィンは優しくて、強くて、かっこよくて、みんなのことを一番に考えてくれる、そんな人だから! 私は、今のフィンを、信じてる。」
「リーナ……。」
「過去も仕事だったと割り切るしかありませんわ。それに、犯罪者だともしお考えなら、暗殺部隊にいたわたくしやアドラーだってそうですわ。仕事とはいえ、たくさんの人を葬ってきましたから。でも受け入れて、先に進むしかないんですの。もうこんな思いをする人を増やさないためにも、進むしかないんですわ。」
アリーチェの言葉に、そういえばそうだったと少しだけ思い出す。暗殺も、スパイも嫌いだった。だが生きていくためにはアクセサリー屋だけではやっていけなくて、武器の腕を買われて軍に入った。
俺はそんな自分が嫌いで、同じく本当は人を殺したくなかったアリーチェとアドラーと仲良くなった。暗殺対象も悪人ならまだしも、どれも皇帝が個人的に気に食わないというだけ。中には仲良くしてくれていた人もいて、任務は毎回心が死んでいた。
俺たちはもう、こんな思いをする人を増やさないように計画を立てた。そうだ、俺たちは腐敗した軍を、国を、ひっくり返す。俺を信じてくれたリーナたちのためにも、ここで立ち止まるわけにはいかない。
「ま、うだうだ考えてたって仕方ないっしょ! アドラーとアリーチェが加わったのはデケェし、今夜はパーッと歓迎会でもやろうぜ!」
ルキの声にソフィアやシンティアが早速準備だと部屋を出て行く。その様子にキッチンの案内をしないと、とアリーチェも慌てて出て行った。
「フィン、あのね。」
「なんだ、リーナ。やっぱり俺が怖くなったか?」
静かに話しかけてきたリーナに、思わずそう問いかける。
「違う! 私はもうフィンについてくって決めたの! 今更離れろって言われても絶対ついてくから! それに、私はフィンが……!」
そう力説するリーナに思わず笑みが溢れた。受け入れられるというのはこうも嬉しいものなのか。
「わかったわかった。で、どうしたんだ。」
「あ、その、ほら、歓迎会するなら飾り付けとかしたいし、道具屋とか行ってみない……? 別にその、1人で行けないわけじゃないけど……。」
「ほらほら、デートのお誘い受けてんだからボケーっとしない! キミってホント女心がわかってないなぁその顔で。」
「アリーチェも苦労してきたからなぁ。ま、リーナちゃんも頑張れや。」
「う、うるさいわよルキとアドラー! もう! 行くわよフィン!」
どこにそんな力が、という強さでリーナに腕を引っ張られる。それが初めてリーナとリンドブルムの街中に行ったときを彷彿とさせて、少し気持ちが楽になった。
それはそれとしてルキとアドラーには文句の一つでも言ってやりたい気持ちだ。俺が女心をわかっていないというより、おまえらがイケメンすぎて経験豊富なだけだと。
心の中で毒づきながら俺はリーナについていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
湖畔の賢者
そらまめ
ファンタジー
秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。
ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。
彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。
「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」
そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。
楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。
目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。
そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる