追われる身にもなってくれ!

文月つらら

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運が良いのか悪いのか

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 昨日に引き続き、俺たちは懲りずに霧の中を彷徨いながらゲハイムニスを目指していた。正直行き方がわからないゲハイムニスに勘で歩いて行くよりも、もっと確実に辿り着けてヒンメルの軍隊に合わないような場所に向かう方がいいように思う。
 しかしマクシムやシスイは違うようで、行き方もいまいちわかっていないことなど些細なこととでも言うように足取り軽くどんどん先へ進んで行った。本当にその方向にあるという確証もないのに。

「なぁ、ゲハイムニスへの行き方がハッキリわかってから行けば良くないか? それまでは他の場所に行けばいいんだし。」

 思わずそう正直に言うが、マクシムたちは振り返りもせずに俺の言葉に反論する。

「フィンも見たでしょう、あの巨大な影を! もしあれが兵器だったとしたらヒンメルに先に取られるわけには行きません! それに美味しいハチミツを作り出す器具の可能性もありますからね!」

「兵器はありえるだろうが、ハチミツの方はないと思うぞ、多分。」

「だがフィン殿、兵器の方は可能性がないわけではない。それに簡単には辿り着けぬ場所なら、そういうものを何者かが隠していてもおかしくはないからな。その何者かは確実に只者ではないが。」

 シスイの言うことは確かにその通りだろう。誰にも見つからないような場所なら、何を隠しても問題になることはない。だが、だからこそ俺たちがこのまま闇雲に進むのもそのうち限界がくるのではないかと思う。

「わたくしずっと思っていたのですけれど、空中写真で一部分が撮れたのだからもう一度あの機械を飛ばして道を調べれば良いのでは? そうすれば簡単に辿り着くことができると思いますけれど。」

「いやですね、お嬢様。私がそれをしなかったわけがないでしょう。しましたとも。ですが、何度やってももう辿り着けなかったんです。あの一枚の写真が撮れたことが奇跡みたいなものだったんです。なので残念ながらツァオバーが一番近いということ以外何もわからないんですよ。」

 それに、と言いながらマクシムは立ち止まってこちらを見た。

「シスイさんとゲハイムニスに関する資料を調べたこともありますが、不思議なことにどれも位置が違うんです。霧の中、ツァオバーから徒歩圏内、その2つは共通しているのに位置関係はめちゃくちゃでした。」

「もちろん俺とマクシム殿は書かれた場所に行ったが、どこへ行っても辿り着くことはできずだった。普通に考えればありえないことだが、本当にゲハイムニスが存在しているのならば、恐らく土地ごと移動しているのだろう。」

 そんなバカな話があるものか、と思ってしまうがマクシムたちはふざけているようには見えない。それどころかどこか確信を持っているようにも見える。
 だが本当にシスイの言う通り本当にゲハイムニスが土地ごと移動しているとしたら辿り着くかどうかなんて運次第だ。最初にマクシムが運が良ければ辿り着けると言っていたのはこういうことだったのか。

「でもそれならゲハイムニスに行こうとするのは無謀じゃありませんこと? このまま進んだところで……って、な、何かいますわあ!!!」

 アリーチェの叫びに肩をびくつかせながらもその視線の先を見る。するとそこには先ほどまでは絶対にいなかった巨大な影が、ゆっくりとこちらに向かって歩いてきていた。

「まさかあれは写真で見た……!」

 5mは超えているだろうその何かは、足音をさせることもなくただゆっくりと歩いている。霧であまりよくは見えないが、それは第一印象通りロボットのように角ばっていて、頭と胴体、そして手足のようなものがついているようだ。
 色は全体的に黒く、ぱっと見派手な装飾とかもなさそうだ。シンプルなように見えるが、どことなく威圧感のようなものも感じる。近くで見たらその迫力に圧倒されそうだ。
 一体こいつは何者なのかとか、どうやって動いているのかとかいろいろと気になることがありすぎるが、敵か味方かはっきりしない今迂闊に見つかるのは危険だ。まずは見失わず、且つこちらが見つからない距離で行動を観察するのがいいだろう。
 そう思ったのは残念ながら俺だけだったようで、マクシムとシスイは一目散に駆け寄って行った。

「いや危険な物体だったらどうするんだよ! ってもう目の前まで行ってる!」

「わたくしたちも行くしかありませんわ!」

 マクシムの軍師らしからぬ感情的な行動に頭を抱えたくなりつつも、俺とアリーチェは仕方なく2人と1体の側まで走って行った。頼むから絶対に敵対だけはされないでほしい。
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