123 / 135
第2章 これはもしかしてデートなのでは?
3ー14
しおりを挟む
「――とくん! 隼人くん!」
「――む……むう……」
身体を揺すられる感覚に脳が覚醒を告げる。やけに頭が重い。
未成年なので経験した事も無いし、もちろん飲酒もしていないが、二日酔いとはこういう感じなのだろうか。
窓の外に目を向ければ、柔らかな光が射し込み朝が訪れていた。
美奈が心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
時間を見ると八の時を少し過ぎた頃。
やはり相当疲弊していたのか。思ったよりも寝坊してしまってようだ。
周りに目を向ければ、椎名は昨日ボロボロだった衣服を着替え、宿屋の借り物なのかポンチョのようなだぼだぼな衣服に着替えていた。
アリーシャもいつもの鎧に身を包み、凛とした表情で出発を待ち構えている。
「うなされてたみたいだけど、大丈夫?」
美奈が私の前髪をかき分けながら目を見つめてくる。
どうやらかなり心配を掛けてしまったようだ。
「かなり疲れていたからな。少し寝過ぎてしまったようだ。だがもう大丈夫。問題はない」
「悪い夢でも見てたの?」
心配そうに私の顔を覗き込む美奈。ぺたぺたと頬やおでこを触られる。
悪い気はしないが、少し恥ずかしい。
というか椎名の視線が痛い。
「――ああ。見ていたかもしれないが……、よく覚えていないのだ」
夢というものは醒めれば殆どの事を忘れてしまうものだ。
今回の事も例外ではなかった。夢の中で誰かに会ったような気はするのだが――。
「……そっか……」
「美奈ってば心配しすぎっ! 朝から見せつけてくれちゃってっ。隼人くん、早く支度してよね」
椎名にそう言われてしまい、私は少しの気まずさを胸の内に押し込めつつソファから起き上がった。
いざ起き上がってみると、一晩寝ただけあり体の方はすっかり元気を取り戻していた。
目を覚ました瞬間は重かった頭も次第にすっきりし、支度を済ませる頃には本調子と言って差し障り無い程の状態となった。
「出発する前に少し街で買い出しをしようと思うのだが、構わないか?」
出発を急ぎたいのは山々であったが、馬車に蓄えていた水や食糧は殆ど無くなってしまっていた。
何よりこちらの世界に来て初めて訪れた街だ。
少し見回ってみたい気持ちもあった。
勿論観光とかそんな浮わついた気持ちではなく、これからの戦いに備えて装備を新調しておきたいという考えでだ。
アリーシャの話では、武器屋や防具屋といった類いの店もあるようなのだ。
武器はいいとしても、防具はしっかりとしたものを選んでおきたい。
先の戦いでも装備がもう少ししっかりしていれば、幾分ましだったのではないかと思うのだ。
「それ賛成! 私も服ボロボロになっちゃったし。こんなんじゃ戦いになったらまたすぐ服破けちゃうもの」
椎名は二つ返事で賛成してくれた。
確かに椎名はちゃんと服着ろよ。と思わなくもなかったが、ここは一旦黙っておく。
「うむ、私も賛成だ。君達の装備、武器はともかく防具は心許ないからな」
アリーシャも私と同意見だったようだ。
アリーシャの鎧は騎士の装い。
身を守るという点で私達の中では特別しっかりしている。
そんな彼女から見たら私達の格好は戦いとは程遠いものなのかもしれない。
「私も構わないよ? それに、私もちょっと、行ってみたいところ、あったんだ」
美奈もすんなりと同意してくれた。
どうやら結局皆、それぞれ行きたい場所があったようだ。ならば話は早い。
「よし、ではまずは――」
さてこれから皆で街へと繰り出そうという時、私のお腹がぐうう、と凄い音を立てて鳴った。
「くくく……」
椎名が笑う。
と同時に今度は彼女のお腹がきゅるきゅるとすごい音を立てて鳴り響いたのだ。
皆が一斉に椎名の方を見た。
私のものよりも数段上のお腹の鳴りに、完全に室内の主役は椎名になったのだ。
「ふ……ふんっ! 隼人くんのえっちっ」
「なぜそうなる!?」
気まずそうに顔を赤らめ椎名がそっぽを向く。
これはこれでまあ、可愛くはある。
「とにかくまずは腹ごしらえからだな」
「昨日は皆全然食べれてなかったもんね。下に食堂があるよ」
美奈が微笑みながらそう教えてくれた。
「おっけっ!! 私もう、お腹ぺっこぺこ!」
椎名は開き直ったように目を輝かせながら再びお腹をきゅるりと鳴らしたのだ。
「――む……むう……」
身体を揺すられる感覚に脳が覚醒を告げる。やけに頭が重い。
未成年なので経験した事も無いし、もちろん飲酒もしていないが、二日酔いとはこういう感じなのだろうか。
窓の外に目を向ければ、柔らかな光が射し込み朝が訪れていた。
美奈が心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
時間を見ると八の時を少し過ぎた頃。
やはり相当疲弊していたのか。思ったよりも寝坊してしまってようだ。
周りに目を向ければ、椎名は昨日ボロボロだった衣服を着替え、宿屋の借り物なのかポンチョのようなだぼだぼな衣服に着替えていた。
アリーシャもいつもの鎧に身を包み、凛とした表情で出発を待ち構えている。
「うなされてたみたいだけど、大丈夫?」
美奈が私の前髪をかき分けながら目を見つめてくる。
どうやらかなり心配を掛けてしまったようだ。
「かなり疲れていたからな。少し寝過ぎてしまったようだ。だがもう大丈夫。問題はない」
「悪い夢でも見てたの?」
心配そうに私の顔を覗き込む美奈。ぺたぺたと頬やおでこを触られる。
悪い気はしないが、少し恥ずかしい。
というか椎名の視線が痛い。
「――ああ。見ていたかもしれないが……、よく覚えていないのだ」
夢というものは醒めれば殆どの事を忘れてしまうものだ。
今回の事も例外ではなかった。夢の中で誰かに会ったような気はするのだが――。
「……そっか……」
「美奈ってば心配しすぎっ! 朝から見せつけてくれちゃってっ。隼人くん、早く支度してよね」
椎名にそう言われてしまい、私は少しの気まずさを胸の内に押し込めつつソファから起き上がった。
いざ起き上がってみると、一晩寝ただけあり体の方はすっかり元気を取り戻していた。
目を覚ました瞬間は重かった頭も次第にすっきりし、支度を済ませる頃には本調子と言って差し障り無い程の状態となった。
「出発する前に少し街で買い出しをしようと思うのだが、構わないか?」
出発を急ぎたいのは山々であったが、馬車に蓄えていた水や食糧は殆ど無くなってしまっていた。
何よりこちらの世界に来て初めて訪れた街だ。
少し見回ってみたい気持ちもあった。
勿論観光とかそんな浮わついた気持ちではなく、これからの戦いに備えて装備を新調しておきたいという考えでだ。
アリーシャの話では、武器屋や防具屋といった類いの店もあるようなのだ。
武器はいいとしても、防具はしっかりとしたものを選んでおきたい。
先の戦いでも装備がもう少ししっかりしていれば、幾分ましだったのではないかと思うのだ。
「それ賛成! 私も服ボロボロになっちゃったし。こんなんじゃ戦いになったらまたすぐ服破けちゃうもの」
椎名は二つ返事で賛成してくれた。
確かに椎名はちゃんと服着ろよ。と思わなくもなかったが、ここは一旦黙っておく。
「うむ、私も賛成だ。君達の装備、武器はともかく防具は心許ないからな」
アリーシャも私と同意見だったようだ。
アリーシャの鎧は騎士の装い。
身を守るという点で私達の中では特別しっかりしている。
そんな彼女から見たら私達の格好は戦いとは程遠いものなのかもしれない。
「私も構わないよ? それに、私もちょっと、行ってみたいところ、あったんだ」
美奈もすんなりと同意してくれた。
どうやら結局皆、それぞれ行きたい場所があったようだ。ならば話は早い。
「よし、ではまずは――」
さてこれから皆で街へと繰り出そうという時、私のお腹がぐうう、と凄い音を立てて鳴った。
「くくく……」
椎名が笑う。
と同時に今度は彼女のお腹がきゅるきゅるとすごい音を立てて鳴り響いたのだ。
皆が一斉に椎名の方を見た。
私のものよりも数段上のお腹の鳴りに、完全に室内の主役は椎名になったのだ。
「ふ……ふんっ! 隼人くんのえっちっ」
「なぜそうなる!?」
気まずそうに顔を赤らめ椎名がそっぽを向く。
これはこれでまあ、可愛くはある。
「とにかくまずは腹ごしらえからだな」
「昨日は皆全然食べれてなかったもんね。下に食堂があるよ」
美奈が微笑みながらそう教えてくれた。
「おっけっ!! 私もう、お腹ぺっこぺこ!」
椎名は開き直ったように目を輝かせながら再びお腹をきゅるりと鳴らしたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる