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3章
10話 伯爵家の後始末
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飽きました。
ユーキ殿の教育は遅々として進みません。
その原因はわかっています。彼は人の話を聞かない。
マヒロさんが言うには、あちらにいた頃からそういった傾向はあったそうですが、ここまで酷くはなかったそうです。
「ああ、わかった。それはわかった。けど、俺だって、ゴブリンくらい倒せるはずだ」
ゴブリンは魔物の中でも弱い部類に入りますけど、それでもゴブリンを侮る冒険者は少ないそうです。
ゴブリンの最大の強みは、集団戦における連携にあると言われています。警戒心も強く、勝てる相手しか襲わない。知能もそこそこあるので、時に罠を仕掛けたりもする。
なので、ゴブリンを相手にする場合は、常に周囲を警戒し、冷静に戦わなければいけない。
マゴイチ様の記憶にあった、ロジーネ殿のお父上の教えです。
ですから、ホブゴブリンに腰を抜かしたユーキ殿には、冷静に戦うのは無理でしょう。
それを御影様が丁寧に説明します。
しかし。
「俺には眠った力がある。あのデカいゴブリンだって、俺の眠れる力で倒したんだ」
マゴイチ様の狙撃ではなく、自分の力で倒したと言い張る彼の言い分を、わたくしたちは呆れ顔で聞きます。
何度説明しても、「あれは俺の力」と言い張ります。
「ねぇ、イルムヒルデ姉さん」
後ろから肩をチョンチョンするユカリ様に振り向くと、手招きされます。
大人しくついて行くと、マゴイチ様の今の状況を聞かされます。ついでに、ドローンのリアルタイム映像へのアクセス権をいただきました。
蛙面を被って映像を表示させると、ここの領地の前当主である老人の姿が、窓越しに見えました。
最後にお会いしたのは三年くらい前だったと思いますけど、その頃は、まだ伯爵位をご子息に譲る前だったと記憶しています。しかし、ご子息は生まれつき体が弱いそうで、ご子息にはお会いしたことがありません。宮中の噂で、病の床に臥せっていて、領地の運営は前伯爵に任せっきり、とだけ聞いたことがあります。
ということは、隣に座っている可愛らしいお嬢さんは、お孫さんでしょうか?
断片的でハッキリとは言えませんが、ドローンの拾う音によると、侯爵家による伯爵家の乗っ取りでしょう。
こんなことをする侯爵家に、一つ心当たりがあります。
伯爵領の南に広がる広大な領地を治める侯爵家です。現侯爵に代替わりして急速に勢力を拡大した手腕は大変素晴らしいものがありますが、黒い噂の絶えない人でもあります。
なぜか、彼の政敵は病に倒れる。
あまりにも多いので、父上が侯爵を呼び出し彼のクラスを調べたほどだ。まあ、その結果は、「問題ない」という、気になるものでしたけど……。
「どうやら、兄さんは、自分を餌にして釣りをするつもりのようですね」
そのような会話はなかったと思うのですが……え? マゴイチ様が前伯爵に自分を餌にすると言いました。どうしてわかったんでしょう?
「次は……伯爵の呪いを解呪できる人を呼ぶはず。……ユリアーナ姉さん。イルムヒルデ姉さんに行ってもらおうと思うんだけど」
いつの間にか、わたくしの後ろにいたユリアーナ様がいた。彼女に言ったユカリ様の言葉に、首を傾げる。
「うん。いいんじゃない?」
「わたくし、ですか?」
自分の〈呪術〉を解呪するのは【呪術士】にとっての基本ですが、他人の〈呪術〉を解呪するのは高度な技術です。わたくしにできるのでしょうか?
「急に強くなったから自覚がないんだよねぇ。けど、イルムヒルデならできるわよ」
「急に強くなったのは確かにそうなんですけど、自覚がないのは姉さんたちの強さに全然追い付けないからでは?」
そうですね。ユカリ様の言う通りです。強くなっても、比較対象が目の前の【創造神】ですから。まだ人の身にすぎないわたくしでは、強くなった自覚なんてありません。
「空間転移は使えたわよね?」
人族にしては魔法の素質があったようで、〈空間魔法〉も使いこなせます。
「けど、転移してすぐはパスが切れてることがあるから気をつけて。マゴイチならすぐ繋いでくれるから、パニックにならないようにね」
それは行きたくないですね。
徒歩じゃダメですか? ダメ? インパクトが大事?
言ってる意味はわかりますし賛成だけど、それをやるのが私だと、急に賛成したくなくなります。
「じゃあ、伯爵の解呪、よろしくね。あ、いっそ、術者に返しちゃえ」
侯爵の年齢的に、呪い返しに耐えられないのでは?
まあ、侯爵にはなんの思い入れもないので、やりますけど。
「ついでにデートしてきちゃいなよ」
それは役得ですね。すぐ行きたい。
*
フレキとゲリによって床と仲良しになった三男坊が、僕たちを睨み付ける。
「お、お前ら、わかってんのか? 俺になにかあったら、侯爵家が黙ってないぞ」
「貴族の三男坊が一人、行方不明になっても騒がれませんよ」
彼が言ってたことだ。
きっと、騒ぎになるだろう。伯爵令嬢であれ、侯爵家の三男坊であれ、貴族が一人行方不明になれば、その家は大騒ぎだ。
けど、正式な婚約関係でもないし、侯爵家から難癖つけられても、伯爵家が「当領地にはお宅の三男坊は来ていません」と言い張ればなんとかなるだろう。なんせ、正式な来る理由がないから。
「俺の親父が黙ってないぞ」
でしょうね。
でしょうから、打つべき手を打つ。
「もう一度聞きますけど、侯爵閣下は【呪術士】なんですね?」
これ重要。
【呪術士】に命じた場合と、【呪術士】である自らが〈呪術〉を使ったのでは、この後の対応が変わる。
僕の質問に、「そうだ」と偉そうに答える。床に押し付けられてるのに。
「前伯爵。一人、うちの者を呼んでも宜しいですか?」
「む? ああ、構いませんよ。すぐに門番に伝えましょう」
「あ、大丈夫です。こちらに直接跳ぶので」
意味がわからず首を傾げる前伯爵を放置して、ユリアーナに〈呪術〉を呪い返しできる人を一人派遣するようにメッセージを送ると、一拍も置かずに僕の隣の空間が歪み、そこからイルムヒルデさんが出てくる。
さすがに前伯爵は彼女を知っていたようで、すぐに跪く。その隣で戸惑うローゼさんは、自国の第二王女を知らないみたいだ。
「お久しぶりですね。シュレーゲルミルヒ前伯爵」
「はっ。ご無沙汰しております。姫様」
祖父に「姫様」と呼ばれた相手を前にして、ローゼさんがオロオロする。
「わたくしは王位継承権を放棄して、こちらのマゴイチ様の側室になりましたから、今のわたくしはイルムヒルデ・ヒラガであって、"姫様"ではありませんよ」
「それはまた……陛下はそのことを?」
姫様が姫様じゃなくなったことに、ローゼさんがますます混乱する。
「勿論です。許可もいただきましたし、快く追い出してくださいました」
普通は嫁ぐ娘を"送り出す"もんだけど、あの王のイルムヒルデさんへの仕打ちは"追い出す"が相応しいだろう。
「さて、もう少し旧交を温めたいところですが、マゴイチ様を連れて早く戻らないといけないので、伯爵閣下の解呪を済ませましょう」
三男坊が静かなので不思議に思ったら、フレキとゲリに押さえ付けられたまま気絶していた。
*
解呪は思ったより簡単に終わった。てか、見た目は、イルムヒルデさんが伯爵に触れただけにしか見えなかった。
まあ、正確に言うと解呪したわけじゃないんだ。呪いを術者に送り返しただけ。解呪より高度な技術なんだけど、触れただけにしか見えなかった。
しかも、あの短時間で、伯爵の先天的な病気の治療もしたみたいだ。トークアプリのメッセージによると、縁があらかじめ病名と治療法を調べておいてくれたらしいから、呪い返しと同時に〈治癒魔法〉を使って治したそうだ。こんな高等技術、誰も気づいてないだろうな。僕? メッセージを読むまで気づかなかったよ。
説明するとややこしいから、呪い返しと病気の治療は黙って、ただ「解呪成功」とだけ教える。
解呪され、体が楽になった伯爵は、イルムヒルデさんに土下座する勢いで感謝していた。ただし、元々体が弱く、しかも一月以上寝込んでいた体はまともに動かず、寝返りを打つだけで精一杯だったが、息切れの合間に聞こえる言葉から、心の底から感謝しているのが伝わった。
これから、弱った体を鍛え直せば、普通に生きられるようになる。イルムヒルデさんがそう説明すると、伯爵家の三人が、滂沱のように涙を流して喜んでくれた。
*
三人のために席を外し、イルムヒルデさんと二人、応接室で待つことにした。
「帰りはデートしますので、用事を早く終わらせましょう」
ソファに並んで密着するイルムヒルデさんが、お茶を用意している侍女に聞こえるように言った。
なるほど。僕に言ったのではなく、お茶を淹れた後、下がった侍女が前伯爵に早く帰りたい旨を伝えさせるために、大きめの声で話したんだな。これも貴族のマナーなの? 直接「早く帰りたい」と言うより角が立たないとは思うけど、僕としては台詞をもう少し工夫してほしかった。
なんか、遠回しに「伯爵家の将来より僕とのデートの方が重要」って言ってるような気がする。気にしすぎかな? 建前って、わかってくれるかな?
「侯爵は、自分に返ってきた呪いに耐えられると思う?」
お茶を出して、綺麗な礼をして退室した侍女を見送ってから聞いてみた。
「無理でしょう。呪いは返されると倍になって返ってきますので、侯爵の年齢からして、三日と耐えられないと思います」
しかも、返された呪いをさらに返すってことはできないそうだ。〈呪術〉って強力だけどリスクも大きい。
「侯爵の様子は、ロジーネ殿が確認に向かわれましたから、夕方にはわかるはずです」
そうか。調べに行ってくれたか。
なんだか情けなくなってきた。
妻の手を借りなくても厄介事を解決できると思っていたけれど、実際にはガッツリ手を借りてるし、僕の知らない所でもサポートしてくれていた。
「また、みんなの手を借りてしまった。もっと頑張らないとな」
「マゴイチ様は、今のままでいいですよ」
僕の妻はみんな僕にそう言う。僕を甘やかしてくれるのは嬉しいのだけど、それに甘んじていてはいけないと思っている。
「それに、どうせ、過保護な正妻様と過保護なストーカー様が先回りするでしょう。そうなると、みなさん自分も自分もと手を出します。勿論、わたくしもです。しかし、マゴイチ様がそれを嫌がってるのだとしたら……どうしましょう?」
「嫌なわけじゃなく、好きな女の子の前で格好つけたい男の子の精神で、一人で華麗に解決したいだけなんだ。だから、今回も、一人で解決できずに情けなく思う反面、助けてもらえて嬉しく思ってる」
「そうでしたか。でしたら、皆さんの手を借りるのは予定調和だと思ってはいかがでしょうか? そう思っていただければ、みなさん気兼ねなくお手伝いできますし、偶然お一人で解決できた時の喜びも一入かと」
一人で解決するには、偶然に頼らなければいけないのか。ちょっと悲しい。
まあ、いつか一人でなんとかできるように頑張るよ。そんな日が来るとは思えないけどね。
だって、今朝の稽古で見たユリアーナの第一クラスは【創造神】だよ? 二度見しちゃったよ。ついに主神の座に手を伸ばし始めちゃった正妻様の目を掻い潜って一人で解決とか、どっかのスネークさんでも無理ゲーですよ。
あ……気づいてしまった。てことは、正妻様の目を掻い潜って娼館に行くのも、無理ゲーってことじゃん!
十代にして、人生の楽しみの一つを失ってしまった。
*
その後の伯爵家との話し合いは、イルムヒルデさんの活躍により、昼を少し過ぎた頃に終わった。どうやら、建前ではなく、本当に僕とデートしたいから早く終わらせようとしていたようだ。
話し合いで決まったことは、大したことではない。ちょっとしたお願いだ。
僕はベンケン王国と距離を置きたいけど、あちらはそうではないかもしれない。そして、距離を詰める方法として武力を持ち出した場合、伯爵家は派兵を見送ってもらうことにした。
現伯爵は病弱として有名だし、前伯爵は高齢。跡取りのお嬢様も急病ってことにすれば、そう不自然な理由ではないだろう。
こうして具体的な言い訳を用意したのには理由がある。
縁の偵察ドローンが、昨日早朝に王都から出兵を確認したからだ。まだ具体的な目的ははっきりしていないけど、十中八九、僕ら絡みだろう。
一応、前伯爵にはその辺りの事情と、出兵した軍の中に【火の勇者】がいることも伝えてある。
そして、戦を仕掛けられたら返り討ちにできる戦力があることも仄めかしておいたので、伯爵家が連中に合力することはないだろう。
問題は、ただ一人の跡取りであるローゼさんを僕に嫁がせようとしたことだけど、これはイルムヒルデさんが上手く断ってくれた。
嫁ぐことによるメリットとデメリットを提示して、上手くデメリットの方が気になるように会話を誘導していた。素晴らしい交渉術だったけど、決め手になったのは、ローゼさんの「顔が生理的に無理」という一言だった。
わかってはいたけど、言葉にされると胸に刺さる。
結局、ローゼさんは最後まで目の前にいるのが元第二王女ってことを理解できなかったみたいだ。
前伯爵には昼食に誘われたけど、イルムヒルデさんが、目が笑ってない笑顔で丁重にお断りしたので、お昼過ぎに伯爵城館の正門から出ることができた。
「お昼くらい、良かったんじゃないの?」
正直に言うと、一般的な貴族がどんな物を食べているのか気になっていた。
「嫌です。あれ以上、あの子と話していたら殴ってしまいます」
怒ってらっしゃる。
そういえば、食事を断る時、前伯爵がビクってなってたな。
「こんなに腹が立ったのは、妹に"第二王女は男遊びが酷い"って噂を広められた時以来です」
うわー。あの王女、そんなことしてたの?
てか、そのレベルで怒ってくれてたんだ。
「ちょっと嬉しい」
イルムヒルデさんに関しては、ちょっと変わった政略結婚だと思ってた。僕への愛情も希薄であってもしょうがないとも思っていた。
そう言うと、拗ねたようにそっぽ向いてしまった。
「わたくしは、わたくしが選んだ人と結婚しました。わたくしがこの人となら一緒に生きていけると思った人です。そんな風に思われていたのは悲しいです」
「ごめんなさい。考えを改めます」
「許しません。マゴイチ様は、わたくしのことをどう思っているんですか? 教えてくれるまで許しません」
そうか。聞きたいか。
ならば、覚悟するがいい。褒め倒してやる。
「正直に言うと、顔はユリアーナが一番」
まずは落とす。
「けど、イルムヒルデのいい所は内面だ」
こっから持ち上げるよー。ついでに、さりげなく呼び捨てにするよー。
「まず、学習意欲だな。こないだマーヤがアリスとテレスのオムツを交換してる時、マーヤからやり方を教わってただろ? あれを見てユリアーナと感心してたんだよ」
元王族が、差別対象であるオッドアイから、同じく差別対象であるオッドアイで赤目で双子のオムツ交換のやり方を教わってるのを見て、僕はビックリした。一緒に見ていたユリアーナは、感心はしてたけれど、「元々あの子に差別意識はないわよ」と、当然のように言っていた。
「あれは……必要なことですし、いずれはわたくしも……」
む? これ、褒め千切らなくてもいけんじゃね?
「なら、そこの連れ込み宿に寄ってく?」
断りやすいように、軽い感じで言ってみる。
「えっと……お手柔らかに」
イルムヒルデが頬を赤く染めて頷いた。
この子、チョロいよ。チョロすぎる。チョロ姫だよ。
手を繋ぎ、幾分歩調が早くなったのはしょうがない。
昨日と同じ連れ込み宿に、昨日と違う女性を連れ込む蛙面の胡散臭い男に、受付のおばさんが訝しげな目を向けたのもしょうがない。
イレーヌに唆されたらしい、イルムヒルデの縄化粧で、ちょっとばかし興奮した僕が、日が落ちるまで頑張ってしまったのもしょうがない。
ユーキ殿の教育は遅々として進みません。
その原因はわかっています。彼は人の話を聞かない。
マヒロさんが言うには、あちらにいた頃からそういった傾向はあったそうですが、ここまで酷くはなかったそうです。
「ああ、わかった。それはわかった。けど、俺だって、ゴブリンくらい倒せるはずだ」
ゴブリンは魔物の中でも弱い部類に入りますけど、それでもゴブリンを侮る冒険者は少ないそうです。
ゴブリンの最大の強みは、集団戦における連携にあると言われています。警戒心も強く、勝てる相手しか襲わない。知能もそこそこあるので、時に罠を仕掛けたりもする。
なので、ゴブリンを相手にする場合は、常に周囲を警戒し、冷静に戦わなければいけない。
マゴイチ様の記憶にあった、ロジーネ殿のお父上の教えです。
ですから、ホブゴブリンに腰を抜かしたユーキ殿には、冷静に戦うのは無理でしょう。
それを御影様が丁寧に説明します。
しかし。
「俺には眠った力がある。あのデカいゴブリンだって、俺の眠れる力で倒したんだ」
マゴイチ様の狙撃ではなく、自分の力で倒したと言い張る彼の言い分を、わたくしたちは呆れ顔で聞きます。
何度説明しても、「あれは俺の力」と言い張ります。
「ねぇ、イルムヒルデ姉さん」
後ろから肩をチョンチョンするユカリ様に振り向くと、手招きされます。
大人しくついて行くと、マゴイチ様の今の状況を聞かされます。ついでに、ドローンのリアルタイム映像へのアクセス権をいただきました。
蛙面を被って映像を表示させると、ここの領地の前当主である老人の姿が、窓越しに見えました。
最後にお会いしたのは三年くらい前だったと思いますけど、その頃は、まだ伯爵位をご子息に譲る前だったと記憶しています。しかし、ご子息は生まれつき体が弱いそうで、ご子息にはお会いしたことがありません。宮中の噂で、病の床に臥せっていて、領地の運営は前伯爵に任せっきり、とだけ聞いたことがあります。
ということは、隣に座っている可愛らしいお嬢さんは、お孫さんでしょうか?
断片的でハッキリとは言えませんが、ドローンの拾う音によると、侯爵家による伯爵家の乗っ取りでしょう。
こんなことをする侯爵家に、一つ心当たりがあります。
伯爵領の南に広がる広大な領地を治める侯爵家です。現侯爵に代替わりして急速に勢力を拡大した手腕は大変素晴らしいものがありますが、黒い噂の絶えない人でもあります。
なぜか、彼の政敵は病に倒れる。
あまりにも多いので、父上が侯爵を呼び出し彼のクラスを調べたほどだ。まあ、その結果は、「問題ない」という、気になるものでしたけど……。
「どうやら、兄さんは、自分を餌にして釣りをするつもりのようですね」
そのような会話はなかったと思うのですが……え? マゴイチ様が前伯爵に自分を餌にすると言いました。どうしてわかったんでしょう?
「次は……伯爵の呪いを解呪できる人を呼ぶはず。……ユリアーナ姉さん。イルムヒルデ姉さんに行ってもらおうと思うんだけど」
いつの間にか、わたくしの後ろにいたユリアーナ様がいた。彼女に言ったユカリ様の言葉に、首を傾げる。
「うん。いいんじゃない?」
「わたくし、ですか?」
自分の〈呪術〉を解呪するのは【呪術士】にとっての基本ですが、他人の〈呪術〉を解呪するのは高度な技術です。わたくしにできるのでしょうか?
「急に強くなったから自覚がないんだよねぇ。けど、イルムヒルデならできるわよ」
「急に強くなったのは確かにそうなんですけど、自覚がないのは姉さんたちの強さに全然追い付けないからでは?」
そうですね。ユカリ様の言う通りです。強くなっても、比較対象が目の前の【創造神】ですから。まだ人の身にすぎないわたくしでは、強くなった自覚なんてありません。
「空間転移は使えたわよね?」
人族にしては魔法の素質があったようで、〈空間魔法〉も使いこなせます。
「けど、転移してすぐはパスが切れてることがあるから気をつけて。マゴイチならすぐ繋いでくれるから、パニックにならないようにね」
それは行きたくないですね。
徒歩じゃダメですか? ダメ? インパクトが大事?
言ってる意味はわかりますし賛成だけど、それをやるのが私だと、急に賛成したくなくなります。
「じゃあ、伯爵の解呪、よろしくね。あ、いっそ、術者に返しちゃえ」
侯爵の年齢的に、呪い返しに耐えられないのでは?
まあ、侯爵にはなんの思い入れもないので、やりますけど。
「ついでにデートしてきちゃいなよ」
それは役得ですね。すぐ行きたい。
*
フレキとゲリによって床と仲良しになった三男坊が、僕たちを睨み付ける。
「お、お前ら、わかってんのか? 俺になにかあったら、侯爵家が黙ってないぞ」
「貴族の三男坊が一人、行方不明になっても騒がれませんよ」
彼が言ってたことだ。
きっと、騒ぎになるだろう。伯爵令嬢であれ、侯爵家の三男坊であれ、貴族が一人行方不明になれば、その家は大騒ぎだ。
けど、正式な婚約関係でもないし、侯爵家から難癖つけられても、伯爵家が「当領地にはお宅の三男坊は来ていません」と言い張ればなんとかなるだろう。なんせ、正式な来る理由がないから。
「俺の親父が黙ってないぞ」
でしょうね。
でしょうから、打つべき手を打つ。
「もう一度聞きますけど、侯爵閣下は【呪術士】なんですね?」
これ重要。
【呪術士】に命じた場合と、【呪術士】である自らが〈呪術〉を使ったのでは、この後の対応が変わる。
僕の質問に、「そうだ」と偉そうに答える。床に押し付けられてるのに。
「前伯爵。一人、うちの者を呼んでも宜しいですか?」
「む? ああ、構いませんよ。すぐに門番に伝えましょう」
「あ、大丈夫です。こちらに直接跳ぶので」
意味がわからず首を傾げる前伯爵を放置して、ユリアーナに〈呪術〉を呪い返しできる人を一人派遣するようにメッセージを送ると、一拍も置かずに僕の隣の空間が歪み、そこからイルムヒルデさんが出てくる。
さすがに前伯爵は彼女を知っていたようで、すぐに跪く。その隣で戸惑うローゼさんは、自国の第二王女を知らないみたいだ。
「お久しぶりですね。シュレーゲルミルヒ前伯爵」
「はっ。ご無沙汰しております。姫様」
祖父に「姫様」と呼ばれた相手を前にして、ローゼさんがオロオロする。
「わたくしは王位継承権を放棄して、こちらのマゴイチ様の側室になりましたから、今のわたくしはイルムヒルデ・ヒラガであって、"姫様"ではありませんよ」
「それはまた……陛下はそのことを?」
姫様が姫様じゃなくなったことに、ローゼさんがますます混乱する。
「勿論です。許可もいただきましたし、快く追い出してくださいました」
普通は嫁ぐ娘を"送り出す"もんだけど、あの王のイルムヒルデさんへの仕打ちは"追い出す"が相応しいだろう。
「さて、もう少し旧交を温めたいところですが、マゴイチ様を連れて早く戻らないといけないので、伯爵閣下の解呪を済ませましょう」
三男坊が静かなので不思議に思ったら、フレキとゲリに押さえ付けられたまま気絶していた。
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解呪は思ったより簡単に終わった。てか、見た目は、イルムヒルデさんが伯爵に触れただけにしか見えなかった。
まあ、正確に言うと解呪したわけじゃないんだ。呪いを術者に送り返しただけ。解呪より高度な技術なんだけど、触れただけにしか見えなかった。
しかも、あの短時間で、伯爵の先天的な病気の治療もしたみたいだ。トークアプリのメッセージによると、縁があらかじめ病名と治療法を調べておいてくれたらしいから、呪い返しと同時に〈治癒魔法〉を使って治したそうだ。こんな高等技術、誰も気づいてないだろうな。僕? メッセージを読むまで気づかなかったよ。
説明するとややこしいから、呪い返しと病気の治療は黙って、ただ「解呪成功」とだけ教える。
解呪され、体が楽になった伯爵は、イルムヒルデさんに土下座する勢いで感謝していた。ただし、元々体が弱く、しかも一月以上寝込んでいた体はまともに動かず、寝返りを打つだけで精一杯だったが、息切れの合間に聞こえる言葉から、心の底から感謝しているのが伝わった。
これから、弱った体を鍛え直せば、普通に生きられるようになる。イルムヒルデさんがそう説明すると、伯爵家の三人が、滂沱のように涙を流して喜んでくれた。
*
三人のために席を外し、イルムヒルデさんと二人、応接室で待つことにした。
「帰りはデートしますので、用事を早く終わらせましょう」
ソファに並んで密着するイルムヒルデさんが、お茶を用意している侍女に聞こえるように言った。
なるほど。僕に言ったのではなく、お茶を淹れた後、下がった侍女が前伯爵に早く帰りたい旨を伝えさせるために、大きめの声で話したんだな。これも貴族のマナーなの? 直接「早く帰りたい」と言うより角が立たないとは思うけど、僕としては台詞をもう少し工夫してほしかった。
なんか、遠回しに「伯爵家の将来より僕とのデートの方が重要」って言ってるような気がする。気にしすぎかな? 建前って、わかってくれるかな?
「侯爵は、自分に返ってきた呪いに耐えられると思う?」
お茶を出して、綺麗な礼をして退室した侍女を見送ってから聞いてみた。
「無理でしょう。呪いは返されると倍になって返ってきますので、侯爵の年齢からして、三日と耐えられないと思います」
しかも、返された呪いをさらに返すってことはできないそうだ。〈呪術〉って強力だけどリスクも大きい。
「侯爵の様子は、ロジーネ殿が確認に向かわれましたから、夕方にはわかるはずです」
そうか。調べに行ってくれたか。
なんだか情けなくなってきた。
妻の手を借りなくても厄介事を解決できると思っていたけれど、実際にはガッツリ手を借りてるし、僕の知らない所でもサポートしてくれていた。
「また、みんなの手を借りてしまった。もっと頑張らないとな」
「マゴイチ様は、今のままでいいですよ」
僕の妻はみんな僕にそう言う。僕を甘やかしてくれるのは嬉しいのだけど、それに甘んじていてはいけないと思っている。
「それに、どうせ、過保護な正妻様と過保護なストーカー様が先回りするでしょう。そうなると、みなさん自分も自分もと手を出します。勿論、わたくしもです。しかし、マゴイチ様がそれを嫌がってるのだとしたら……どうしましょう?」
「嫌なわけじゃなく、好きな女の子の前で格好つけたい男の子の精神で、一人で華麗に解決したいだけなんだ。だから、今回も、一人で解決できずに情けなく思う反面、助けてもらえて嬉しく思ってる」
「そうでしたか。でしたら、皆さんの手を借りるのは予定調和だと思ってはいかがでしょうか? そう思っていただければ、みなさん気兼ねなくお手伝いできますし、偶然お一人で解決できた時の喜びも一入かと」
一人で解決するには、偶然に頼らなければいけないのか。ちょっと悲しい。
まあ、いつか一人でなんとかできるように頑張るよ。そんな日が来るとは思えないけどね。
だって、今朝の稽古で見たユリアーナの第一クラスは【創造神】だよ? 二度見しちゃったよ。ついに主神の座に手を伸ばし始めちゃった正妻様の目を掻い潜って一人で解決とか、どっかのスネークさんでも無理ゲーですよ。
あ……気づいてしまった。てことは、正妻様の目を掻い潜って娼館に行くのも、無理ゲーってことじゃん!
十代にして、人生の楽しみの一つを失ってしまった。
*
その後の伯爵家との話し合いは、イルムヒルデさんの活躍により、昼を少し過ぎた頃に終わった。どうやら、建前ではなく、本当に僕とデートしたいから早く終わらせようとしていたようだ。
話し合いで決まったことは、大したことではない。ちょっとしたお願いだ。
僕はベンケン王国と距離を置きたいけど、あちらはそうではないかもしれない。そして、距離を詰める方法として武力を持ち出した場合、伯爵家は派兵を見送ってもらうことにした。
現伯爵は病弱として有名だし、前伯爵は高齢。跡取りのお嬢様も急病ってことにすれば、そう不自然な理由ではないだろう。
こうして具体的な言い訳を用意したのには理由がある。
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一応、前伯爵にはその辺りの事情と、出兵した軍の中に【火の勇者】がいることも伝えてある。
そして、戦を仕掛けられたら返り討ちにできる戦力があることも仄めかしておいたので、伯爵家が連中に合力することはないだろう。
問題は、ただ一人の跡取りであるローゼさんを僕に嫁がせようとしたことだけど、これはイルムヒルデさんが上手く断ってくれた。
嫁ぐことによるメリットとデメリットを提示して、上手くデメリットの方が気になるように会話を誘導していた。素晴らしい交渉術だったけど、決め手になったのは、ローゼさんの「顔が生理的に無理」という一言だった。
わかってはいたけど、言葉にされると胸に刺さる。
結局、ローゼさんは最後まで目の前にいるのが元第二王女ってことを理解できなかったみたいだ。
前伯爵には昼食に誘われたけど、イルムヒルデさんが、目が笑ってない笑顔で丁重にお断りしたので、お昼過ぎに伯爵城館の正門から出ることができた。
「お昼くらい、良かったんじゃないの?」
正直に言うと、一般的な貴族がどんな物を食べているのか気になっていた。
「嫌です。あれ以上、あの子と話していたら殴ってしまいます」
怒ってらっしゃる。
そういえば、食事を断る時、前伯爵がビクってなってたな。
「こんなに腹が立ったのは、妹に"第二王女は男遊びが酷い"って噂を広められた時以来です」
うわー。あの王女、そんなことしてたの?
てか、そのレベルで怒ってくれてたんだ。
「ちょっと嬉しい」
イルムヒルデさんに関しては、ちょっと変わった政略結婚だと思ってた。僕への愛情も希薄であってもしょうがないとも思っていた。
そう言うと、拗ねたようにそっぽ向いてしまった。
「わたくしは、わたくしが選んだ人と結婚しました。わたくしがこの人となら一緒に生きていけると思った人です。そんな風に思われていたのは悲しいです」
「ごめんなさい。考えを改めます」
「許しません。マゴイチ様は、わたくしのことをどう思っているんですか? 教えてくれるまで許しません」
そうか。聞きたいか。
ならば、覚悟するがいい。褒め倒してやる。
「正直に言うと、顔はユリアーナが一番」
まずは落とす。
「けど、イルムヒルデのいい所は内面だ」
こっから持ち上げるよー。ついでに、さりげなく呼び捨てにするよー。
「まず、学習意欲だな。こないだマーヤがアリスとテレスのオムツを交換してる時、マーヤからやり方を教わってただろ? あれを見てユリアーナと感心してたんだよ」
元王族が、差別対象であるオッドアイから、同じく差別対象であるオッドアイで赤目で双子のオムツ交換のやり方を教わってるのを見て、僕はビックリした。一緒に見ていたユリアーナは、感心はしてたけれど、「元々あの子に差別意識はないわよ」と、当然のように言っていた。
「あれは……必要なことですし、いずれはわたくしも……」
む? これ、褒め千切らなくてもいけんじゃね?
「なら、そこの連れ込み宿に寄ってく?」
断りやすいように、軽い感じで言ってみる。
「えっと……お手柔らかに」
イルムヒルデが頬を赤く染めて頷いた。
この子、チョロいよ。チョロすぎる。チョロ姫だよ。
手を繋ぎ、幾分歩調が早くなったのはしょうがない。
昨日と同じ連れ込み宿に、昨日と違う女性を連れ込む蛙面の胡散臭い男に、受付のおばさんが訝しげな目を向けたのもしょうがない。
イレーヌに唆されたらしい、イルムヒルデの縄化粧で、ちょっとばかし興奮した僕が、日が落ちるまで頑張ってしまったのもしょうがない。
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異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
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