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第十八章 邪神の行方
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信じたくない指摘だった。
「そうだとしたらね。結界があまり役に立たなかったことも理解できるし、覚醒していないにも関わらず、イーグル王にちょっかいをかけられたのも理解できるんだ。それだけ近くにヴァルドがいたからだと思えば不思議はないでしょう」
「覚醒していないヴァルドが相手なら、賢者殿の結界でも通用すると思っていたのに、通用しなかったのは、ヴァルドの本体が思っていた以上に近くにいたから?」
「そういうことになるね。あのときに気づかなかったぼくもどうかしてたよ。動転してそこまで考えが回らなかった」
マリンは落ち込んでいるようだった。
ヴァルドほもう以前の邪神ではないと彼は知っている。
だが、これからも那神として動き、いつかは透に討たれるつもりであることも知っている。
だから、彼は打つ手に詰まっているのだ。
透には本当のことを言えない。
このままでは彼は親殺しをすることになる。
そのことを思うとマリンの気分は暗くなるのだった。
「なんとか誰がヴァルドなのか探り出す手はないのか、マリン?」
婚約者が従兄第の身が気掛かりで、アスベルは落ちつかない。
そんな彼にマリンは苦い笑みを返す。
「こちらでできることはたかが知れてる。ついてきた人間の情報を調べること。
それにしたってログレス側ほど詳しくは調べられないと思う。だから、現状で一番簡単な方法はログレスの王子に事情を詳明して怪しそうな相手を調べてもらうことだと思う」
「どういうのが怪しいんだ。マリン?」
「人間に取り憑いているなら挙動不審な人物。ヴァルドが人間に化けているなら、当然素性の知れない、あるいははっきりしない人物、かな」
「父上っ!」
「ああ。すぐにエドに向かって手紙を書こう。エドなら誰が該当するのかすぐにわかるはずだ。それまでなにも起こらないといいのだが」
不安そうなランドールにアスベルもその瞳に不安を浮かべるのだった。
エドワードの元にランドールから手紙が届いたのは帰国してすぐのことだった。
なんだろう? と思う。
そうして手紙の封を切って青ざめた。
あのときの一行の中にヴァルドがいた?
透の生命を狙う邪神が?
透にヴァルドを近づけたのはエドだった?
「怪しいのは人間に取り憑いている場合、挙動不幸な人物。特に心当たりはないな。挙動不審だった者はいない。あこは本人が人間に化けている場合は、素性のはっきりしない人物、か」
ひとりだけ心当たりがあった。
このログレス城で素性のはっきりしない人物はひとりしかいない。
後はすべて氏素性ははっきりしている。
「オズワルド」
十年前、エドが拾った書年。
記憶を失っていて行くもなかったから、騎士として迎え入れて「オズワルド」と各付けて傍に置いてきた。
今では騎士団長の地位にいる人物。
あの旅でも同行していた。
でも、まさか。
手紙には続きがあって見当がついでも問い詰めたり、そういう行動には出るなと指示している。
もし本人にヴァルドだという自覚がない場合、覚醒させかねないし、もしあった場合、エドワードや周囲の者が危険だからと。
ただ心当たりのある人物のことだけを知らせてほしいと書いてある。
後はただ監視していてほしい、と。
もし本人に自覚がなさそうなら、返事を託した使者のひとりに、その人物を入れてほしいと書いてある。
イーグルで誘い出すから、と。
イーグルにならマリンがいる。
いえ。なによりもヴァルドに対抗できる透がいる。
だから、尻尾を出すか様子をみてみる、と。
でも、それは透を危険に晒すといることだ。
もちろんヴァルド相手にエドになにかができるとは思わない。
でも。
「オズワルドがヴァルド」
信じたくない現実にエドはただ頭を抱え込んだ。
「またイーグルへ?」
旅支度を整えながらオズワルドは呟く。
帰国したばかりでまたイーグルへ行くように命じられたのだ。
好都合といえばいえるが。
神子と引き離されたことで多少なりともイラついていたから、またイーグルへ行けるのは
嬉しい。
しかしエドワードの使者の護衛というのが、なにか引っかかるが。
騎士団長の仕事とは思えないので。
近くに置いていた水晶玉が光を放つ。
そこにひとりの少年の顔が映った。
「なにか用か?」
『神子にはいつ逢わせていただけますか? わたしのご主人様になられるという神子に」
「そう急くこともあるまい? わたしはかならず神子を得る。
イーグル王には渡さない」
「そう急くこともあるまい? わたしは必ず神子を得る。イーグル王には渡さない」
『退屈です 』
「ではあの男と睦みみ合え。神子を満足させられるように、な。いや。わたしを満足させるよろに、睦み合え。その場面をみせよ」
『仰せのままに、ヴァルド様』
遠ざかっていく少年は全裸だった。
これはヴァルドが命じているからだ。
服を着るな、と。
寝台には同じく全裸の話しかけてきた少年よりすこし年上の少年がしどけなく寝ている。
まだ子供といえる年齢でありながら、少年はなんの抵抗もなく、自分より大きな少年を犯し
はじめた。
だが、その情事に煽情的な色はない。
感情がないからだ。
どちらにも感情というものが欠けている。
だから、契ってもその感覚がない。
ただ命じられたからしている。
それだけだった。
「そうだとしたらね。結界があまり役に立たなかったことも理解できるし、覚醒していないにも関わらず、イーグル王にちょっかいをかけられたのも理解できるんだ。それだけ近くにヴァルドがいたからだと思えば不思議はないでしょう」
「覚醒していないヴァルドが相手なら、賢者殿の結界でも通用すると思っていたのに、通用しなかったのは、ヴァルドの本体が思っていた以上に近くにいたから?」
「そういうことになるね。あのときに気づかなかったぼくもどうかしてたよ。動転してそこまで考えが回らなかった」
マリンは落ち込んでいるようだった。
ヴァルドほもう以前の邪神ではないと彼は知っている。
だが、これからも那神として動き、いつかは透に討たれるつもりであることも知っている。
だから、彼は打つ手に詰まっているのだ。
透には本当のことを言えない。
このままでは彼は親殺しをすることになる。
そのことを思うとマリンの気分は暗くなるのだった。
「なんとか誰がヴァルドなのか探り出す手はないのか、マリン?」
婚約者が従兄第の身が気掛かりで、アスベルは落ちつかない。
そんな彼にマリンは苦い笑みを返す。
「こちらでできることはたかが知れてる。ついてきた人間の情報を調べること。
それにしたってログレス側ほど詳しくは調べられないと思う。だから、現状で一番簡単な方法はログレスの王子に事情を詳明して怪しそうな相手を調べてもらうことだと思う」
「どういうのが怪しいんだ。マリン?」
「人間に取り憑いているなら挙動不審な人物。ヴァルドが人間に化けているなら、当然素性の知れない、あるいははっきりしない人物、かな」
「父上っ!」
「ああ。すぐにエドに向かって手紙を書こう。エドなら誰が該当するのかすぐにわかるはずだ。それまでなにも起こらないといいのだが」
不安そうなランドールにアスベルもその瞳に不安を浮かべるのだった。
エドワードの元にランドールから手紙が届いたのは帰国してすぐのことだった。
なんだろう? と思う。
そうして手紙の封を切って青ざめた。
あのときの一行の中にヴァルドがいた?
透の生命を狙う邪神が?
透にヴァルドを近づけたのはエドだった?
「怪しいのは人間に取り憑いている場合、挙動不幸な人物。特に心当たりはないな。挙動不審だった者はいない。あこは本人が人間に化けている場合は、素性のはっきりしない人物、か」
ひとりだけ心当たりがあった。
このログレス城で素性のはっきりしない人物はひとりしかいない。
後はすべて氏素性ははっきりしている。
「オズワルド」
十年前、エドが拾った書年。
記憶を失っていて行くもなかったから、騎士として迎え入れて「オズワルド」と各付けて傍に置いてきた。
今では騎士団長の地位にいる人物。
あの旅でも同行していた。
でも、まさか。
手紙には続きがあって見当がついでも問い詰めたり、そういう行動には出るなと指示している。
もし本人にヴァルドだという自覚がない場合、覚醒させかねないし、もしあった場合、エドワードや周囲の者が危険だからと。
ただ心当たりのある人物のことだけを知らせてほしいと書いてある。
後はただ監視していてほしい、と。
もし本人に自覚がなさそうなら、返事を託した使者のひとりに、その人物を入れてほしいと書いてある。
イーグルで誘い出すから、と。
イーグルにならマリンがいる。
いえ。なによりもヴァルドに対抗できる透がいる。
だから、尻尾を出すか様子をみてみる、と。
でも、それは透を危険に晒すといることだ。
もちろんヴァルド相手にエドになにかができるとは思わない。
でも。
「オズワルドがヴァルド」
信じたくない現実にエドはただ頭を抱え込んだ。
「またイーグルへ?」
旅支度を整えながらオズワルドは呟く。
帰国したばかりでまたイーグルへ行くように命じられたのだ。
好都合といえばいえるが。
神子と引き離されたことで多少なりともイラついていたから、またイーグルへ行けるのは
嬉しい。
しかしエドワードの使者の護衛というのが、なにか引っかかるが。
騎士団長の仕事とは思えないので。
近くに置いていた水晶玉が光を放つ。
そこにひとりの少年の顔が映った。
「なにか用か?」
『神子にはいつ逢わせていただけますか? わたしのご主人様になられるという神子に」
「そう急くこともあるまい? わたしはかならず神子を得る。
イーグル王には渡さない」
「そう急くこともあるまい? わたしは必ず神子を得る。イーグル王には渡さない」
『退屈です 』
「ではあの男と睦みみ合え。神子を満足させられるように、な。いや。わたしを満足させるよろに、睦み合え。その場面をみせよ」
『仰せのままに、ヴァルド様』
遠ざかっていく少年は全裸だった。
これはヴァルドが命じているからだ。
服を着るな、と。
寝台には同じく全裸の話しかけてきた少年よりすこし年上の少年がしどけなく寝ている。
まだ子供といえる年齢でありながら、少年はなんの抵抗もなく、自分より大きな少年を犯し
はじめた。
だが、その情事に煽情的な色はない。
感情がないからだ。
どちらにも感情というものが欠けている。
だから、契ってもその感覚がない。
ただ命じられたからしている。
それだけだった。
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