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第12章:砂の国オラシア王国と砂漠の女王編
第5話:砂漠の戦闘
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辺りを見ると、他のパーティもあらかた戦闘が終わったようだ。
皆で前方を見つめる。
そこには、一人でデザートコングと対峙するゼルフィア団長がいた。
「助けなくていいんだろうか……?」
「止めとけ、あの人の武器はタッパのでかい大剣だ。俺たちが周りにいたらかえって邪魔になるよ。……それにあれくらいの敵、あの人なら余裕だ」
俺の呟きに、無精髭冒険者がポンと笑って肩に手を置いてくる。
ここは戦闘を見守ろう。
デザートコングは激しくドラミングをしながら、ゼルフィア団長を威嚇している。
そして、口から砂の弾丸を吐き出してきた。
それを空へと飛んで、避けるゼルフィア団長。
重い大剣を持っているのに、なんて跳躍力だ。
そのままデザートコングの頭上まで飛んでいき——一気に剣を振り下ろしながら下降する!!
「——『断海』!!」
大剣全体に僅かな魔力を帯びる。
そのままデザートコングの脳天に刃が入り——!!
ズドオオオオォォォン!!
剣の音とは思えないほど、鈍い重低音が広がる。
大きく巻き上がった砂煙が晴れる頃には、デザートコングの身体は真っ二つになっているのだった。
「いやはや、素晴らしい手腕ですな」
セガールが舌を巻く。
「今回の援軍には世話役として来た『戦わない冒険者』も多い。先のサンドワームは対応しきれなかったが、『戦える冒険者』たちのみなら……大体、これくらいの実力です」
ゼルフィア団長が凛々しい眼差しで言う。
「なるほど、安心致しました」
その言葉を聞いて、ニッコリと笑うセガール。
さすがは国の重役といったところだろう。
言動こそ柔らかいものの、端々にピリリとした威圧感と緊張感が漂う。
冒険者側にも舐められるわけにはいかないというプライドが見え隠れしている。
立場というものは、どこの世界でもなかなかに面倒くさいものだなと思うのだった。
その後、幾度か戦闘を繰り返す。
最初のサンドワームこそ奇襲を受けて士気が崩れたが、そこはS級の魔物を相手にできる冒険者たち。
すぐに砂漠での戦いに順応し、その後の戦いでは見事なまでの腕前を披露して、苦戦することなく王国への道を進んでいった。
初見の魔物も数種類確認された。
まんまるな球体の身体に、ぎょろりとした大きな一つ目を持つサボテンの魔物『サボテンデビル』、岩の鎧を持つ巨大なサソリの魔物『ロックスコーピオン』、死肉を食らい砂漠の掃除屋とも言われる『デスコンドル』。
どれもこれもアルバイン王国では、まず目にしない珍しい魔物ばかりだ。
俺たちのパーティも言わずもがな敵なしという状況だ。
キアラもリズも戦闘経験が高く上手に戦える上、俺もシャロンからもらった上級魔法があるのでどの魔物も苦労せずに屠ることができる。
なにより、3人の連携がピッタリと取れており一度も態勢を崩されることなく戦闘を終えることができる。
他のパーティの中には、世話役として付き添う2人が全く戦えず、実質戦闘要員が1名のみで対処しているところもあった。
それらに比べれば、俺のパーティはかなり楽な方である。
ゼルフィア団長に至っては、複数の魔物を一人で相手取ってギルド職員を守りつつ普通に勝っている。
ドラゴンゾンビの戦いでは辛酸を舐めさせられたが、こと定型的な遭遇戦においては無敵といった感じである。
そうこうしていると、砂漠の果ての方に揺らめく王宮と街が見えてくる。
「皆さん、お疲れ様でした。あれが、我らがオラシア王国王都カルメンでございます」
セガールが声を張って皆に伝える。
長旅で気が張り、疲労感を感じていた冒険者たちにようやく安堵の息が漏れた。
そこから歩くこと約20分。
一行はオラシア王国王都カルメンの門をくぐった。
「わぁー、すごーい!」
「おお、これはなんと!」
街並みを見た瞬間、リズとキアラが声を上げる。
エルゼリアとはまた違った様相の、活気溢れる街。
人々は皆、ターバンを付けたり、金のアクセサリを付けたりいかにもアラビアンな格好である。
露天商が砂漠の果物やら干物やらを賑やかに呼びかけて売りさばいている。
子供たちが元気に走り回り、人々は頭に籠を担いで歩いている。
また、露出度の高いお姉様方がそこかしこで客引きをしている。
高級バーや、その先の風俗通りへのお誘いらしい。
エルゼリアからの派遣団も皆「おおーっ」という歓声を上げていた。
「レオ! すごくない!? こんな珍しいものいっぱいの街、見たことないよ!」
リズが目を輝かせて言う。
俺は前の世界のテレビやら雑誌やらで砂漠の街がどんなものなのかある程度知っていたから、感動こそすれ驚きはなかったが、初見でこの光景を見れば声が出てしまうのも解る気がする。
「感激していただいたようで、良かったです。観光といきたいでしょうが、まずは王宮の方にお出向きください。そこで、女王様から今回の援軍を要請した目的等の詳細をお聞き願いたく思います」
「分かりました、セガール殿。皆、ここには仕事で来たのだ! まずは王宮に向かうぞ!」
セガールの言葉を受け、浮足立つ一同に対してビシッと呼びかけるゼルフィア団長。
「おや、あれは外国の兵隊さんたちかい……?」
「ママー、あの人たち誰ー?」
「んー? 女王様のお客人よ。多分」
俺たちを見ながら、ざわつきだす民衆たち。
彼らからの好奇の視線を感じつつ、俺たちはセガールに先導されて王宮の中へ入るのだった。
皆で前方を見つめる。
そこには、一人でデザートコングと対峙するゼルフィア団長がいた。
「助けなくていいんだろうか……?」
「止めとけ、あの人の武器はタッパのでかい大剣だ。俺たちが周りにいたらかえって邪魔になるよ。……それにあれくらいの敵、あの人なら余裕だ」
俺の呟きに、無精髭冒険者がポンと笑って肩に手を置いてくる。
ここは戦闘を見守ろう。
デザートコングは激しくドラミングをしながら、ゼルフィア団長を威嚇している。
そして、口から砂の弾丸を吐き出してきた。
それを空へと飛んで、避けるゼルフィア団長。
重い大剣を持っているのに、なんて跳躍力だ。
そのままデザートコングの頭上まで飛んでいき——一気に剣を振り下ろしながら下降する!!
「——『断海』!!」
大剣全体に僅かな魔力を帯びる。
そのままデザートコングの脳天に刃が入り——!!
ズドオオオオォォォン!!
剣の音とは思えないほど、鈍い重低音が広がる。
大きく巻き上がった砂煙が晴れる頃には、デザートコングの身体は真っ二つになっているのだった。
「いやはや、素晴らしい手腕ですな」
セガールが舌を巻く。
「今回の援軍には世話役として来た『戦わない冒険者』も多い。先のサンドワームは対応しきれなかったが、『戦える冒険者』たちのみなら……大体、これくらいの実力です」
ゼルフィア団長が凛々しい眼差しで言う。
「なるほど、安心致しました」
その言葉を聞いて、ニッコリと笑うセガール。
さすがは国の重役といったところだろう。
言動こそ柔らかいものの、端々にピリリとした威圧感と緊張感が漂う。
冒険者側にも舐められるわけにはいかないというプライドが見え隠れしている。
立場というものは、どこの世界でもなかなかに面倒くさいものだなと思うのだった。
その後、幾度か戦闘を繰り返す。
最初のサンドワームこそ奇襲を受けて士気が崩れたが、そこはS級の魔物を相手にできる冒険者たち。
すぐに砂漠での戦いに順応し、その後の戦いでは見事なまでの腕前を披露して、苦戦することなく王国への道を進んでいった。
初見の魔物も数種類確認された。
まんまるな球体の身体に、ぎょろりとした大きな一つ目を持つサボテンの魔物『サボテンデビル』、岩の鎧を持つ巨大なサソリの魔物『ロックスコーピオン』、死肉を食らい砂漠の掃除屋とも言われる『デスコンドル』。
どれもこれもアルバイン王国では、まず目にしない珍しい魔物ばかりだ。
俺たちのパーティも言わずもがな敵なしという状況だ。
キアラもリズも戦闘経験が高く上手に戦える上、俺もシャロンからもらった上級魔法があるのでどの魔物も苦労せずに屠ることができる。
なにより、3人の連携がピッタリと取れており一度も態勢を崩されることなく戦闘を終えることができる。
他のパーティの中には、世話役として付き添う2人が全く戦えず、実質戦闘要員が1名のみで対処しているところもあった。
それらに比べれば、俺のパーティはかなり楽な方である。
ゼルフィア団長に至っては、複数の魔物を一人で相手取ってギルド職員を守りつつ普通に勝っている。
ドラゴンゾンビの戦いでは辛酸を舐めさせられたが、こと定型的な遭遇戦においては無敵といった感じである。
そうこうしていると、砂漠の果ての方に揺らめく王宮と街が見えてくる。
「皆さん、お疲れ様でした。あれが、我らがオラシア王国王都カルメンでございます」
セガールが声を張って皆に伝える。
長旅で気が張り、疲労感を感じていた冒険者たちにようやく安堵の息が漏れた。
そこから歩くこと約20分。
一行はオラシア王国王都カルメンの門をくぐった。
「わぁー、すごーい!」
「おお、これはなんと!」
街並みを見た瞬間、リズとキアラが声を上げる。
エルゼリアとはまた違った様相の、活気溢れる街。
人々は皆、ターバンを付けたり、金のアクセサリを付けたりいかにもアラビアンな格好である。
露天商が砂漠の果物やら干物やらを賑やかに呼びかけて売りさばいている。
子供たちが元気に走り回り、人々は頭に籠を担いで歩いている。
また、露出度の高いお姉様方がそこかしこで客引きをしている。
高級バーや、その先の風俗通りへのお誘いらしい。
エルゼリアからの派遣団も皆「おおーっ」という歓声を上げていた。
「レオ! すごくない!? こんな珍しいものいっぱいの街、見たことないよ!」
リズが目を輝かせて言う。
俺は前の世界のテレビやら雑誌やらで砂漠の街がどんなものなのかある程度知っていたから、感動こそすれ驚きはなかったが、初見でこの光景を見れば声が出てしまうのも解る気がする。
「感激していただいたようで、良かったです。観光といきたいでしょうが、まずは王宮の方にお出向きください。そこで、女王様から今回の援軍を要請した目的等の詳細をお聞き願いたく思います」
「分かりました、セガール殿。皆、ここには仕事で来たのだ! まずは王宮に向かうぞ!」
セガールの言葉を受け、浮足立つ一同に対してビシッと呼びかけるゼルフィア団長。
「おや、あれは外国の兵隊さんたちかい……?」
「ママー、あの人たち誰ー?」
「んー? 女王様のお客人よ。多分」
俺たちを見ながら、ざわつきだす民衆たち。
彼らからの好奇の視線を感じつつ、俺たちはセガールに先導されて王宮の中へ入るのだった。
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