【R18】異世界魔剣士のハーレム冒険譚~病弱青年は転生し、極上の冒険と性活を目指す~

泰雅

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第1章:病弱青年とある女冒険者編

第17話:まずは捜査と腹ごしらえ

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 サマンサの自宅を出て、十分ほど歩いただろうか。
 小高い丘の上に、木造の建物が見える。
「レオ、リズ! あれが、うちの牛舎だよ!」
 丘を登り、木の柵で覆われている牛舎のある敷地に入る。
 牛だ。
 鼻をつく、獣と糞の臭い。
 この牧場の家畜だと分かるように、牛の首にはサマンサの名前と、それぞれの番号が書いてある首輪が付けられている。
 臭いとは違い、牛舎の中は赤土と干し草が敷き詰められて綺麗だった。
 牛舎と外は仕切りが無く、牛たちが自由に外に出て、草を食べられるようになっている。
 実際、今も牛舎外に放牧されている牛が何頭かいる。
 もっとも、敷地は木の柵で覆われているから、柵を壊さない限り牛が逃げ出すことはできない。

「ここの牛がいなくなってるんだな?」
「そうなんだよ……ちょうど二ヵ月ほど前からかな。一頭、また一頭と段々減っていってるんだよ」
 サマンサの表情が翳る。
「前にウルフの仕業だって言ってたけど、どうして分かるの? ここ、自宅からけっこう離れてるでしょ?」
「いなくなった牛がいた場所に、血の跡があったんだよ。それにウルフの毛と同じ、灰色の毛も。いなくなるのは決まって夜だから夜行性のウルフの仕業かなって」
「それだけ?」
「う、うん。夜中に何度か見に来たこともあったんだけど、その時は空振りで……」
 リズの問いかけに、苦々しく答えるサマンサ。
「あたしも、違うかもって思って……逃げ出しただけかもって、辺りを探したりもしたんだよ?」
 俺たちと前に会ったのは、その時なのだろう。
 盗人が犯人なら、そのままこっそり連れ出すだろうから血は残らない。
 やはり、犯人は牛を餌にする動物か魔物だ。
 おそらく、サマンサが見に来た時は人の気配を感じて警戒したのだろう。
「牛がいなくなる頻度は?」
「大体、一週間に一頭。前にいなくなったのは四日前だったかな」
「分かった。今日の夜からこの牛舎を見張ることにする」
「え? よ、夜通しで?」
「ああ。昼間に寝てれば大丈夫だ」
 驚くサマンサに、平然と答える。
 巣穴がどこにあるか見当がつかないのに、この広い平原を探し回るのはあまりいい策とは思えない。
 ならば、待ち伏せて巣穴に帰るのをつけていくのが最善だろう。
 当然、犯人がどのくらいの数いるのかも分からない。
 慎重に行こう。
 俺たちは、牛舎の位置を確認し、サマンサの家に戻った。

「さあさあ、今日からしばらくここがレオの部屋だよ!!」
 サマンサの自宅の二階にある一室に通される。
 宿の部屋より少し狭いが、良い匂いがする。
 窓から漏れる太陽がベッドのシーツに当たっている。
 太陽の匂いだ。
「リズは、あたしと一緒の部屋ね!! さあさあ、案内するよぉ!!」
「ちょ、ちょっと……そ、そんなにくっつかないでぇ……ぐ、ぐるじい……」
 元気印のサマンサに戸惑うリズが引きずられていく。
「今から寝ておくか……」
 二人が去った後、一人になった俺は何気なくベッドに寝転ぶ。

 ボフンッ!!

「や、柔らかっ!?」
 これはあれだ。アニメで見ていた干し草のベッドだ。
 柔らかくて暖かい、包み込むような感触。
 俺は手を高く上げ、じっと見つめた。
『ファイア』の実証は今日来る時に出会った魔物に試した。
 単純魔法で放つ火球より、速く鋭く魔物を燃やす火の弾丸といった感じだ。
 もちろん、一撃で屠れたが、それは単純魔法でも同じだろう。
 肝心なのは、ウルフに通用するかどうか……。
 あれこれ考えている内に、瞼が重くなってくる。
 干し草ベッドの効果は絶大だ。
「これなら、昼でも問題なく寝れそうだな……ふぁあ……」
 欠伸を一つ浮かべて、俺は意識を手放した。

 夕方、陽が沈んだ頃に起きる。
 装備を整え一階に降りると、なんとも美味そうな匂いを漂わせて、台所でサマンサが料理をしていた。
「あ、起きたんだ! 待っててね、今料理作ってるから!」
 ごついエプロンをつけて、サマンサが言う。
「悪いな」
「何言ってんのさ。あたしが出した依頼のために泊まってくれてんだから当然だろ? それに、報酬にも書いたはずだけど? 『サマンサ特製ご馳走おもてなし』って」
 いかにもサマンサらしい明るく豪快な答えが返ってくる。
 テーブルにつき、サマンサを見つめる。
 こうしていると、新婚カップルのような気もしてくるのは拗らせているだろうか。
 もっとも、サマンサの姿は新婚さんというより、肝っ玉母ちゃんのようだ。
 いや、年は同じくらいだと思うのだが。
 そうこうしてたら、リズも起きてきた。
「おふぁよぉ……ベッドが気持ちよくて、つい寝すぎちゃったよ……」
 寝ぼけ眼を擦りながらテーブルにつく。
 もちろん、装備はバッチリ整えている。

「さあ、出来たよ!! 今日から頑張ってもらわないといけないからね!」
 ドンと大きな鍋に入っているのは、シチューだ。
 まごうことなき、シチュー。
 その横にはパンが置いてあった。
 スープ系のおかずにパンが、この世界の定食のような感じなのだろうか。
 サマンサが取り分けてくれた木皿に入ったシチューを、木のスプーンで掬って飲んでみる。
「美味い、めちゃくちゃ美味い……!!」
「これ、美味しいよ! サマンサ!」
「ははは、二人に喜んでもらえて良かったよ!」
 俺たちの言葉に、屈託のない笑顔で応えるサマンサ。
 女将さんには悪いが、宿で食べた『シチューらしき白いスープ』の比ではない。
 とろみがあり、どこまでもクリーミーでまろやかな塩気と旨味。
 牧場の料理とはこんなに美味いものなのか……?
「料理は好きでよくやってるからね。まあ、ふるまう家族とかいないから、いつも自家消費だけど」
 困ったように笑うサマンサ。
 なるほど、純粋にサマンサの料理の腕がいいのだ。
 それに加えて、ここには新鮮な食材がある。
 相乗効果というやつだ。
「サマンサは、いい嫁さんになりそうだな」
「はぁっ!? え!? ちょ、ちょっと、レオ!? な、なに言って……!?」
 顔を真っ赤にして慌てふためくサマンサ。
 しまった、失言だっただろうか……エプロン姿で調理するところから見ていたから、つい変な言い方をしてしまった。
「あたしも、そう思うよ♪」
「も、もう、リズまでー!」
 被せてくるリズの言葉で、さらに顔を赤くしているサマンサ。
 良かった、変な空気にならなくて……。
 リズも何とも思っていないみたいだ。
 俺の彼女であるリズにとっても面白くない発言だったかもと思ったが、この世界の『複数交際容認』のおかげで何ともなかったようだ。
 女性経験の少ない男は、こういうところで地雷を踏みがちなんだよな。
 まあ、サマンサが真っ赤になっているのは可愛いから良しとしよう。
 その後、和やかな食事は進み、シチューを二杯おかわりして、俺とリズは牛舎に向かった。
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