【R18】異世界魔剣士のハーレム冒険譚~病弱青年は転生し、極上の冒険と性活を目指す~

泰雅

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第5章:傲慢貴族と白衣の聖女編

第9話:ハクオウ山の事件

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 ハルカたちが『ハクオウ山』に入って数時間後——。
「静かね……」
 辺りは、動物の気配も魔物の気配もなく、不気味な風の音だけが鳴っていた。
『ハクオウ山』は雪が積もりやすい山で、冬は魔物が凶暴化する危険なダンジョンだと知られている。
 だが、今は夏だ。
 雪など降るはずもなく、緑が生い茂っている自然豊かな普通の山のはずである。
 それでも、気持ちが晴れないのは進むにつれて濃くなっている、この瘴気のせいだろう。
「ケイティ、どう見るかしら?」
「『何か』が魔物を一か所に集めているのは確実みたいね……それが、ボスモンスターである『ホワイトガルーダ』だというのなら、確かにつじつまは合う。だけど、きっかけが分からない……魔物が徒党を組むなんて、そうそう起こることじゃないわ」
 ハルカの問いかけにケイティが眉をひそめて答える。
「んな、心配すんなって! ホワイトガルーダとは、もう何度も戦ったじゃねえか」
 カリーナがケラケラと笑う。
 そう。ハルカたちは、『ハクオウ山』を周回踏破していた時期がある。
 ボスモンスターであるホワイトガルーダを喰らう化け物『ホウオウ』を倒すために。
 その事もあって、今回の指名依頼が自分たちに向いたのだと考える。

 不明なことが多いが、そろそろボス部屋付近だ。
 この小道を抜ければ、開けた崖のようなエリアが見えてくる。
 そう思い、ボス部屋に入った瞬間——飛び込んできたのは、何とも恐ろしい光景だった。
「ほ、ホワイトガルーダが……三体!?」
 間違いない。通常各ダンジョンに一体しかいないボスモンスターである『ホワイトガルーダ』が三体、こちらを睨んで飛んでいた。
 それだけじゃない。
 そこには数えきれないほどの『ハクオウ山』の出現モンスターが集結していた。
 そして、その中央には黒いローブを着た男が立っていた。
「おやおや、ようやくお出ましですか……もう少し遅ければ、暇つぶしにふもとの村に降りていた所でしたよ」
「あなたは……誰!? 何者なの!?」
 おぞましいことをケラケラと笑いながら言うローブの男に、ハルカが言い放つ。
「私が何者でも構わないでしょう? 肝心なのは、私の依頼人が『誰か』ということ……」
「まさか……!?」
 後方を振り返ると、黄金の鎧を着た冒険者たちが怪しい笑みを浮かべてジリジリとにじり寄ってきていた。
「『黄金の騎士団』!? やっぱりあなたたちの仕業なの!?」
「おう、どういう事だ!? 領主からの依頼じゃなかったのか!?」
 ケイティとカリーナも戸惑っている。
「……あなた、闇ギルドね?」
 ハルカがローブの男に問いかけると、男は大きく息を吐きニヤリと笑い頷く。
「いかにも。私は闇ギルド『邪竜の鏡』のメンバーだ」
「依頼書は……領主の印はあなたが作ったの?」
「そうだとも。貴族の印を勝手に使用するのは死罪であるが……我々に恐れるものなどない。お察しの通り、我の依頼者である貴族キブラや、ふてぶてしいギルドマスターにはできない芸当だ」
「怖いもの知らずもここまでくれば、病気ね……」
 悪びれる様子が一切ない闇ギルドの男に、ハルカは恐れと呆れの感情が芽生える。
 だが、それ以上に自分たちを嵌めたキブラに対して、憤りを感じていた。
「あ、そうだった。我にとっては君達の生死など、どうでもいい事なのだがね……。一応、言えという依頼だから言うよ……『キブラの不正の証拠はどこにある? 正直に差し出すのなら、命だけは助けてやる』」
 やはり、キブラは自分たちの動きに感づいていたらしい。
 キブラの不正の証拠を集めていたことはバレていたようだ。
 いや、ギルドマスターの突然の訪問、馬車をあらかじめ用意していた指名依頼から見て、ギリギリ『突き止めた』という方が正しいだろうか。
「仮に証拠を差し出したとして、この殺気満々な魔物や、目の血走った黄金冒険者たちはその後どうするのかしら?」
「そうだなぁ……ふもとの村でも襲わせて欲求解消するだろうな。黄金冒険者の方は知らん」
 ハルカの問いかけに、あっけらかんと答える闇ギルドの男。
 やはり最初から、進むべき道など一つしかなかったようだ。
「なら、要求には『黙秘』ってことで……!!」
「そうか。楽な仕事だと思ったのだがな……残念だよ『赤の女王』」
 闇ギルドの男はサッと手で魔物たちに合図する。
「ギャアアアアアアス!!」
 ホワイトガルーダ三体と魔物たちが一斉に向かってくる。
「者ども!! 魔物たちに続け!! 『赤の女王』をひっ捕らえろ!!」
 黄金冒険者たちも後方から大人数で突撃してくる。
「カリーナ! 私と前に出て!! 魔物を倒すわよ!! ケイティは後方の黄金冒険者の相手を!! みんな、生きて帰るわよ!!」
「「「「「了解!!」」」」」
 ハルカの号令に『赤の女王』のメンバー全員が大きく応えた。

 二時間後——。
 そこには、おびただしい数の魔物の死骸と、怪我をしてうずくまっている黄金冒険者たちが横たわっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ!!」
 なんとか、死線は潜り抜けたものの、当のハルカたちも立っているのがやっとなくらい、ダメージと疲労が蓄積していた。
 何人か、倒れて動けなくなっている仲間もいる。
「なんとまあ……あの大群を屠ってしまうとは……いやはや、素晴らしい強さですね『赤の女王』さん」
「褒められてもうれしくないわね」
 皮肉交じりの男の称賛に返すハルカ。
「ようよう、闇ギルドさんよ!! あとはあんただけだぜ!? 大人しく降伏しやがれ!!」
「それとも、禁忌とされている魔物召喚をまた、するのかしら?」
 カリーナとケイティがまくしたてる。
「いえ。元々いたホワイトガルーダを操り、他の魔物を山頂に集め、新たにホワイトガルーダを二体召喚したところで、我が魔力は尽きてしまいました」
「だったら、大人しく降参することね」
 ハルカが剣先を男に向ける。
「……ふふふ、その必要はありませんね」
 男はニヤリと笑い、小瓶を取り出した。
「ま、まさか!? それは……『揺り籠の小瓶』!?」
「『証拠の場所を喋らないなら生かして捕らえよ』とのことなのでね……それだけ疲労していれば、効果も高いでしょう」
 男が小瓶のふたを開けた直後、美しい歌声が辺りに広がる。
 一人、また一人と、メンバーたちが深い眠りに落ちていく。
「くっ……だめ……このままじゃ……!!」
 ハルカの焦る気持ちとは裏腹に瞼がずーんと重くなっていく。
 振り返ると、一人のメンバーが立ち竦んでいた。
 ララだ。
 彼女には睡眠無効のイヤリングを装備させている。
 そのため、『揺り籠の小瓶』から出る睡眠作用のある歌でも眠くならないのだろう。
「は、ハルカさん……!!」
「ララ……逃げ……て!!」
 最後の力を振り絞って、ララに命ずる。
 次の瞬間、ハルカは深いまどろみの中に身を落としたのだった。

「う、う……うわあああああああぁぁぁ!!」
 ララはハルカの言葉を聞き、全速力で山を下って行った。
「ふぅ……一人、取り逃がしましたか……まあ、いいでしょう。鑑定もしましたが、ジョブレベルも適性も低い新人みたいでしたからね。ふもとの村は今頃もう『無い』でしょうし……。あの新人がエルゼリアまで一人で帰れるとは思えません……。帰ったところで屋敷はすでに抑えられている……。まあ、面倒くさいので、死亡ということにしておきましょう」
 そう言って、男は一枚の羽根を取り出し、空に投げる。
 直後、男の身体とハルカたち、黄金冒険者たちは光に包まれ、綺麗にその場から消えたのだった。

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