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第6章:灼炎の祠と銀狼獣人編
第5話:魔獣の森浅場・戦い
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翌日、準備を整え、さっそく魔獣の森へ向かう。
魔獣の森は丁度、霧の森の北辺りに位置していた。
霧の森が途切れ、しばらく平原が続いた後に再び森が広がっている感じだ。
魔獣の森の入口で、装備などのチェックを行う。
「よし、みんな。森に入るぞ、準備はいいか?」
俺の言葉に、四人が首肯する。
セーラも、すっかりパーティに馴染んだようだ。
彼女の装備はセイントローブとミスリルロッドという中級冒険者用の装備だ。
どちらも店売りの既製品らしく、ランクにするとキアラの武具と同じ、俺やシレイドの装備の少し下あたりに位置している。
キアラの槍については述べたことは無かったが、ガラテアランスというエルフの国ガラテアの鍛冶師お手製の槍らしい。
なんでも、エルフの兵士の装備は基本的にオーダーメイドで作るらしく、使い勝手は既製品の物より遥かに良いようだ。
前に、武器屋でより強い槍を買ってあげようとしたが、しっくりこなかったらしく今の今まで装備を代えないでいる。
話が逸れてしまったが、早速、魔獣の森を進むことにする。
リズのマッピングを発動させながら、森を歩く。
「広さは霧の森と同じくらいかな。多分、三日もあれば踏破できると思うよ」
スキル『探査』により、魔獣の森の広さを感じ取ったリズが言う。
「それなら、オルガさんの依頼もすぐに達成できそうですね」
「ああ。またワープを使って周回すれば、ボス素材三つなんてすぐだろう」
セーラの言葉に俺が応える。
「みんな、お喋りはそこまでだ……早速、現れたようだぞ」
キアラが前方を睨む。
そこには、真っ赤な狼が三匹、こちらを威嚇していた。
鑑定を行う。
名前:ブラッディウルフ
危険度:C
説明:全身が血のように真っ赤な毛皮におおわれた狼の魔物。獰猛で躊躇なく獲物に襲い掛かる。並の防具は鋭い爪で簡単に引き裂かれてしまう。
素材:『血狼の皮』
レア素材:『血狼の鋭爪』
「ん……シレイドが行く……」
「私も新しい戦い方を試してみたい。レオたちは後方支援を頼む」
タンク役のキアラと、新しいジョブになってウズウズしていたシレイドが先鋒として突撃する。
中級職『チェイサー』になったシレイドは、元々速かった動きがさらに俊敏になっている。
素早い獣の動きを遥かに上回り翻弄している。
あっという間に、血狼の背後に回り、ダガーで首を掻っ切る。
「『精霊強化(スピリットエンチャント)』……!!」
キアラが呪文を唱えると、彼女の体全体が青白く光る。
血狼が爪を振り下ろすが、キアラはそれを簡単に腕で防ぐ。
ダメージは全く無いみたいだ。
そして、目にも止まらぬ速さで血狼の首元を斬り払い絶命させる。
残り一匹になった血狼はブルブルと震えだす。
その刹那、シレイドが間合いを詰めて、これまた簡単に急所を切り裂いて撃破完了する。
一切無駄な動きの無い戦闘だった。
当然、苦戦した様子も全く無い。
霧の森のホワイトチーターと同じ危険度の魔物だったが、難なく倒せるとは……ジョブの力は偉大だな。
素材を採取し終えた二人が戻ってくる。
「また強くなったな。二人とも」
「すごいよ! シレイドちゃん、キアラ!!」
「鮮やかでしたわ」
俺とリズ、セーラに褒められて、くすぐったそうだ。
「ご主人様……!! 新しいジョブ、いい感じ……!! 身体が軽い……!!」
「私も覚えたての付与魔法を身体にかけてみたが、全体的に能力が向上するようで、非常に戦いやすかった。魔法適性の低い私でも精霊術なら存分に扱えるようだし、このジョブにして正解だったな」
それぞれ、所感を述べる。
この分なら、大きな心配はしなくてよさそうだな。
しばらく進むと、毛皮の塊がもそもそと動いている。
子犬ほどの白く小さい毛玉が四体、車ほどの大きな白い毛皮の塊が一体。
「なんだ、あれ?」
鑑定をしてみる。
名前:ネムボウ
危険度:D
説明:ワイズマンボアの幼体。常に眠りながら活動する猪の魔物。周囲に睡眠魔法を散らせながら動いているため、近づくと危険。
素材:『眠猪の毛玉』
レア素材:『ネムボウミート』
名前:ワイズマンボア
危険度:C
説明:魔法を扱う猪の魔物。常に子供であるネムボウと行動している。ネムボウが眠らせた相手を魔法で仕留めて喰らう頭脳派。
素材:『白賢猪の毛皮』
レア素材:『白賢猪の大牙』
「みんな、あの魔物には、接近戦は危険だ。遠距離から仕留める。リズ、セーラ、手伝ってくれ」
「うん!」
「はい、分かりました」
俺とセーラが前に出て魔法を唱える。
リズはクロスボウで矢を射っていく。
「エルブラスト!!」
「エルライトニング!!」
俺が放つ風の中級魔法の練度は、ジョブを『真魔剣士』にしたお陰か、確かに上がっていた。
速度も威力も大違いだ。
鋭い風の波動がネムボウとワイズマンボアにぶち当たる。
だが、あまり効いてないようだ。
傷も無いし、動きも鈍くなっていない。
リズのクロスボウの矢も分厚い毛皮に阻まれて、通らないみたいだ。
セーラの光属性魔法だけは、通りがよかったようで光の束が霧散して猪たちに降り注ぐと「グボォオオオー!!」という呻き声を上げて動かなくなった。
「なんか、俺の魔法は効かなかったみたいだな」
「おそらく基本属性魔法に耐性があったのでしょう。魔法を使えるとありましたし」
俺の言葉にセーラが応える。
これは、かなり厄介だな。
接近戦に持ち込めば、眠らされて斃される。
遠距離からの魔法は効かないし、矢による攻撃も厚い毛皮で防がれる。
セーラの魔法は基本属性ではない特殊なものだから、刺さったようだが。
「これ……鑑定無しに突っ込んだら、冒険者はすぐにお陀仏だな」
「ええ。冒険者は慎重すぎるくらいがちょうどいいのです。ワイズマンボアの対策としては強力な遠距離攻撃を会得するか、睡眠無効のアクセサリなどを用意すると良いかと思いますわ」
苦い顔をした俺にセーラが言う。
「うう……あたしの矢、最近刺さらないことが多いよお……」
マッドドール、リトルゴーレム、そしてワイズマンボアとクロスボウが通じない相手も増えてきた。
まだ大丈夫だが、リズがより良い武器に変える必要に迫られるのはそう遠くないかもしれない。
魔獣の森は丁度、霧の森の北辺りに位置していた。
霧の森が途切れ、しばらく平原が続いた後に再び森が広がっている感じだ。
魔獣の森の入口で、装備などのチェックを行う。
「よし、みんな。森に入るぞ、準備はいいか?」
俺の言葉に、四人が首肯する。
セーラも、すっかりパーティに馴染んだようだ。
彼女の装備はセイントローブとミスリルロッドという中級冒険者用の装備だ。
どちらも店売りの既製品らしく、ランクにするとキアラの武具と同じ、俺やシレイドの装備の少し下あたりに位置している。
キアラの槍については述べたことは無かったが、ガラテアランスというエルフの国ガラテアの鍛冶師お手製の槍らしい。
なんでも、エルフの兵士の装備は基本的にオーダーメイドで作るらしく、使い勝手は既製品の物より遥かに良いようだ。
前に、武器屋でより強い槍を買ってあげようとしたが、しっくりこなかったらしく今の今まで装備を代えないでいる。
話が逸れてしまったが、早速、魔獣の森を進むことにする。
リズのマッピングを発動させながら、森を歩く。
「広さは霧の森と同じくらいかな。多分、三日もあれば踏破できると思うよ」
スキル『探査』により、魔獣の森の広さを感じ取ったリズが言う。
「それなら、オルガさんの依頼もすぐに達成できそうですね」
「ああ。またワープを使って周回すれば、ボス素材三つなんてすぐだろう」
セーラの言葉に俺が応える。
「みんな、お喋りはそこまでだ……早速、現れたようだぞ」
キアラが前方を睨む。
そこには、真っ赤な狼が三匹、こちらを威嚇していた。
鑑定を行う。
名前:ブラッディウルフ
危険度:C
説明:全身が血のように真っ赤な毛皮におおわれた狼の魔物。獰猛で躊躇なく獲物に襲い掛かる。並の防具は鋭い爪で簡単に引き裂かれてしまう。
素材:『血狼の皮』
レア素材:『血狼の鋭爪』
「ん……シレイドが行く……」
「私も新しい戦い方を試してみたい。レオたちは後方支援を頼む」
タンク役のキアラと、新しいジョブになってウズウズしていたシレイドが先鋒として突撃する。
中級職『チェイサー』になったシレイドは、元々速かった動きがさらに俊敏になっている。
素早い獣の動きを遥かに上回り翻弄している。
あっという間に、血狼の背後に回り、ダガーで首を掻っ切る。
「『精霊強化(スピリットエンチャント)』……!!」
キアラが呪文を唱えると、彼女の体全体が青白く光る。
血狼が爪を振り下ろすが、キアラはそれを簡単に腕で防ぐ。
ダメージは全く無いみたいだ。
そして、目にも止まらぬ速さで血狼の首元を斬り払い絶命させる。
残り一匹になった血狼はブルブルと震えだす。
その刹那、シレイドが間合いを詰めて、これまた簡単に急所を切り裂いて撃破完了する。
一切無駄な動きの無い戦闘だった。
当然、苦戦した様子も全く無い。
霧の森のホワイトチーターと同じ危険度の魔物だったが、難なく倒せるとは……ジョブの力は偉大だな。
素材を採取し終えた二人が戻ってくる。
「また強くなったな。二人とも」
「すごいよ! シレイドちゃん、キアラ!!」
「鮮やかでしたわ」
俺とリズ、セーラに褒められて、くすぐったそうだ。
「ご主人様……!! 新しいジョブ、いい感じ……!! 身体が軽い……!!」
「私も覚えたての付与魔法を身体にかけてみたが、全体的に能力が向上するようで、非常に戦いやすかった。魔法適性の低い私でも精霊術なら存分に扱えるようだし、このジョブにして正解だったな」
それぞれ、所感を述べる。
この分なら、大きな心配はしなくてよさそうだな。
しばらく進むと、毛皮の塊がもそもそと動いている。
子犬ほどの白く小さい毛玉が四体、車ほどの大きな白い毛皮の塊が一体。
「なんだ、あれ?」
鑑定をしてみる。
名前:ネムボウ
危険度:D
説明:ワイズマンボアの幼体。常に眠りながら活動する猪の魔物。周囲に睡眠魔法を散らせながら動いているため、近づくと危険。
素材:『眠猪の毛玉』
レア素材:『ネムボウミート』
名前:ワイズマンボア
危険度:C
説明:魔法を扱う猪の魔物。常に子供であるネムボウと行動している。ネムボウが眠らせた相手を魔法で仕留めて喰らう頭脳派。
素材:『白賢猪の毛皮』
レア素材:『白賢猪の大牙』
「みんな、あの魔物には、接近戦は危険だ。遠距離から仕留める。リズ、セーラ、手伝ってくれ」
「うん!」
「はい、分かりました」
俺とセーラが前に出て魔法を唱える。
リズはクロスボウで矢を射っていく。
「エルブラスト!!」
「エルライトニング!!」
俺が放つ風の中級魔法の練度は、ジョブを『真魔剣士』にしたお陰か、確かに上がっていた。
速度も威力も大違いだ。
鋭い風の波動がネムボウとワイズマンボアにぶち当たる。
だが、あまり効いてないようだ。
傷も無いし、動きも鈍くなっていない。
リズのクロスボウの矢も分厚い毛皮に阻まれて、通らないみたいだ。
セーラの光属性魔法だけは、通りがよかったようで光の束が霧散して猪たちに降り注ぐと「グボォオオオー!!」という呻き声を上げて動かなくなった。
「なんか、俺の魔法は効かなかったみたいだな」
「おそらく基本属性魔法に耐性があったのでしょう。魔法を使えるとありましたし」
俺の言葉にセーラが応える。
これは、かなり厄介だな。
接近戦に持ち込めば、眠らされて斃される。
遠距離からの魔法は効かないし、矢による攻撃も厚い毛皮で防がれる。
セーラの魔法は基本属性ではない特殊なものだから、刺さったようだが。
「これ……鑑定無しに突っ込んだら、冒険者はすぐにお陀仏だな」
「ええ。冒険者は慎重すぎるくらいがちょうどいいのです。ワイズマンボアの対策としては強力な遠距離攻撃を会得するか、睡眠無効のアクセサリなどを用意すると良いかと思いますわ」
苦い顔をした俺にセーラが言う。
「うう……あたしの矢、最近刺さらないことが多いよお……」
マッドドール、リトルゴーレム、そしてワイズマンボアとクロスボウが通じない相手も増えてきた。
まだ大丈夫だが、リズがより良い武器に変える必要に迫られるのはそう遠くないかもしれない。
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