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第7章:海竜の洞窟と美人漁師編
第17話:終焉?
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「着いちゃったね……」
「ああ。案外、すんなり到着したな」
俺たちは、今、海竜の洞窟の最奥にある大きな扉の前に立っている。
ブルータートルとの戦闘から進むことしばらく。
数回の戦闘はあったが、問題なく最奥に到達できた。
もっとも、不意打ちをくらった時など、数回ヒヤリとすることはあったが。
「この先がボスか」
「へっへっへ、腕が鳴るぜ!」
キアラとロウナが気合を入れている。
その時——。
「待って……何かおかしい」
リズが首をかしげている。
「どうした?」
「ボスの反応が無いの」
「反応が無いって……ボスがいないってことか?」
「うん。多分」
俺の言葉にリズが答える。
俺は重い扉を開いてみる。
そこには広い空間が広がり、奥には大きな水辺が見える。
だが、ボスらしき魔物の姿はどこにもない。
「なんだよー、拍子抜けだなー」
「……拍子抜けだなー」
ロウナの言葉をシレイドが真似して言う。
「どういうことだ?」
「うーん……分かりませんね……」
キアラとセーラも困惑している。
「とりあえず、一回帰るか」
「うん、そうだね。いざとなれば、レオのワープでボス部屋まで来れるしね」
俺の提案に、リズを始め皆が賛成する。
何もいないところに留まっていても仕方ない。
俺たちは、一回ポートルートに帰ることになった。
俺はワープを使い、皆を宿に送ったその足でエルゼリアのギルドに飛んだ。
「ふぅむぅ……ボスがいないのですかぁ……」
いつもの受付嬢さんに話をしたら、何とも難しい顔をされた。
「実はぁ、洞窟が妙だということで王都から調査団が向かった際もボスが出なかったそうなんですよねぇ……」
「え!? そうなんですか?」
受付嬢さんの言葉に驚く。
「はい~、通常、ダンジョンにはボスモンスターが必ず居るものなんですが、それが出ないとなるとぉ『あれ』かもしれません~」
「『あれ』?」
「『ダンジョンの終焉』です~」
ダンジョンの終焉?
「いくらダンジョンと言っても無限に魔物が湧くわけではありません~。他の物質と同じように朽ち果てていき、最後には魔物がいなくなり、ダンジョンとしての役割が終わります~」
「なるほど。水竜の洞窟はその『終焉』に差し掛かっていると?」
「はい~」
「ですが、入った村人たちが行方不明になったりしてるんですよ?」
「ボスモンスターだけの仕業とは限りません~。あそこには水の魔物が多数います~。例えば、通常モンスターのマーマンなんかに水中に引きずり込まれたら、骨すら残りません~」
そうか……。
リズの一件で、その恐ろしさは目の当たりにしている。
あれなら、死体も残らず行方不明になるのは不自然ではない。
「ともあれ、水竜の洞窟は踏破されたみたいですし、良かったじゃないですか~。ギルドマスターに事情をお伝えして踏破完了扱いにもしてもらえるようにしてみますから~」
「は、はぁ……」
なんとも、気の抜けた返事をして、俺はポートルートに戻った。
「なるほど、ダンジョンの終焉か」
「それなら、辻褄は合うかもなぁ」
キアラとロウナは俺の話を聞いて、納得したようだった。
「町人さんの話では、海竜の洞窟ができたのは今から二百年ほど前と言われているそうです」
「……ん、早めだとは思うけど、終焉になっても不思議ではない」
セーラとシレイドが続いて言う。
「んー……でも、なんか引っかかるなぁ……」
リズが納得いかないという感じで机に突っ伏している。
「どうしてだ? リズ」
「確かに、エネミーカウントには引っかからなかったし、姿も無かった。でも、ボス部屋に入った時、変な寒気がしたんだよねぇ……」
「寒気……か」
「うん。いつも探査とかエネミーカウントとかマッピングとか、微弱な魔力で周囲を探る魔法ばかり使っているせいか、過敏になってるだけかもしれないけど」
第六感というやつだろうか。
「まあ、とりあえず、踏破の申請は受付嬢さんがしてくれるみたいだし、明日にでもエルゼリアに戻ろうか。日も傾いてきたし、急ぐわけでもない。せっかくポートルートに来たんだから、もう一泊くらいゆっくりしよう」
「「「「「はーい」」」」」
俺の言葉に、皆も答える。
すっきりしない気分だが、仕方ない。
「じゃあ、夕飯を食べに——」
俺たちが、宿の部屋を出た直後、玄関が騒がしいことに気づく。
向かってみるとそこにはタニスさんがへたり込んでいた。
傍らでは、宿の店主がオロオロしている。
「タニスじゃないか。どうしたんだ?」
「はぁ、はぁ! 助けてほしいんだ! 娘が……ルルが一人で海竜の洞窟に入っていっちまって!!」
「ルルちゃんが!?」
タニスの言葉に、驚く俺たち。
「どうやら、町の人が夫が海竜の洞窟で行方をくらましたことを噂してたみたいで、そこにルルが……『探しに行ってくる』って啖呵を切って走っていってしまったみたいで……。あんたたちがここに泊まってるって聞いて……はぁ、はぁ、一緒に海竜の洞窟にルルを探しに行ってくれないか、頼みに来たんだ!! 今、この町であそこに入れるのは冒険者のあんたたちしかいないんだ……!!」
今にも泣きそうな顔で懇願してくるタニス。
「町の中にはいなかったんですか?」
セーラの問いかけに首を縦に振るタニス。
「漁師仲間の一人が、ルルが海竜の洞窟に入っていくのを見たって言ってて……頼むよぉ!! この通りだ!!」
土下座をするように頭を下げるタニス。
「頭を上げてくれ、タニス。みんな、予定変更だ。すぐに海竜の洞窟に向かうぞ」
俺の言葉に、五人とも首肯する。
こうして、俺たちはタニスを連れて、海竜の洞窟に向かった。
「ああ。案外、すんなり到着したな」
俺たちは、今、海竜の洞窟の最奥にある大きな扉の前に立っている。
ブルータートルとの戦闘から進むことしばらく。
数回の戦闘はあったが、問題なく最奥に到達できた。
もっとも、不意打ちをくらった時など、数回ヒヤリとすることはあったが。
「この先がボスか」
「へっへっへ、腕が鳴るぜ!」
キアラとロウナが気合を入れている。
その時——。
「待って……何かおかしい」
リズが首をかしげている。
「どうした?」
「ボスの反応が無いの」
「反応が無いって……ボスがいないってことか?」
「うん。多分」
俺の言葉にリズが答える。
俺は重い扉を開いてみる。
そこには広い空間が広がり、奥には大きな水辺が見える。
だが、ボスらしき魔物の姿はどこにもない。
「なんだよー、拍子抜けだなー」
「……拍子抜けだなー」
ロウナの言葉をシレイドが真似して言う。
「どういうことだ?」
「うーん……分かりませんね……」
キアラとセーラも困惑している。
「とりあえず、一回帰るか」
「うん、そうだね。いざとなれば、レオのワープでボス部屋まで来れるしね」
俺の提案に、リズを始め皆が賛成する。
何もいないところに留まっていても仕方ない。
俺たちは、一回ポートルートに帰ることになった。
俺はワープを使い、皆を宿に送ったその足でエルゼリアのギルドに飛んだ。
「ふぅむぅ……ボスがいないのですかぁ……」
いつもの受付嬢さんに話をしたら、何とも難しい顔をされた。
「実はぁ、洞窟が妙だということで王都から調査団が向かった際もボスが出なかったそうなんですよねぇ……」
「え!? そうなんですか?」
受付嬢さんの言葉に驚く。
「はい~、通常、ダンジョンにはボスモンスターが必ず居るものなんですが、それが出ないとなるとぉ『あれ』かもしれません~」
「『あれ』?」
「『ダンジョンの終焉』です~」
ダンジョンの終焉?
「いくらダンジョンと言っても無限に魔物が湧くわけではありません~。他の物質と同じように朽ち果てていき、最後には魔物がいなくなり、ダンジョンとしての役割が終わります~」
「なるほど。水竜の洞窟はその『終焉』に差し掛かっていると?」
「はい~」
「ですが、入った村人たちが行方不明になったりしてるんですよ?」
「ボスモンスターだけの仕業とは限りません~。あそこには水の魔物が多数います~。例えば、通常モンスターのマーマンなんかに水中に引きずり込まれたら、骨すら残りません~」
そうか……。
リズの一件で、その恐ろしさは目の当たりにしている。
あれなら、死体も残らず行方不明になるのは不自然ではない。
「ともあれ、水竜の洞窟は踏破されたみたいですし、良かったじゃないですか~。ギルドマスターに事情をお伝えして踏破完了扱いにもしてもらえるようにしてみますから~」
「は、はぁ……」
なんとも、気の抜けた返事をして、俺はポートルートに戻った。
「なるほど、ダンジョンの終焉か」
「それなら、辻褄は合うかもなぁ」
キアラとロウナは俺の話を聞いて、納得したようだった。
「町人さんの話では、海竜の洞窟ができたのは今から二百年ほど前と言われているそうです」
「……ん、早めだとは思うけど、終焉になっても不思議ではない」
セーラとシレイドが続いて言う。
「んー……でも、なんか引っかかるなぁ……」
リズが納得いかないという感じで机に突っ伏している。
「どうしてだ? リズ」
「確かに、エネミーカウントには引っかからなかったし、姿も無かった。でも、ボス部屋に入った時、変な寒気がしたんだよねぇ……」
「寒気……か」
「うん。いつも探査とかエネミーカウントとかマッピングとか、微弱な魔力で周囲を探る魔法ばかり使っているせいか、過敏になってるだけかもしれないけど」
第六感というやつだろうか。
「まあ、とりあえず、踏破の申請は受付嬢さんがしてくれるみたいだし、明日にでもエルゼリアに戻ろうか。日も傾いてきたし、急ぐわけでもない。せっかくポートルートに来たんだから、もう一泊くらいゆっくりしよう」
「「「「「はーい」」」」」
俺の言葉に、皆も答える。
すっきりしない気分だが、仕方ない。
「じゃあ、夕飯を食べに——」
俺たちが、宿の部屋を出た直後、玄関が騒がしいことに気づく。
向かってみるとそこにはタニスさんがへたり込んでいた。
傍らでは、宿の店主がオロオロしている。
「タニスじゃないか。どうしたんだ?」
「はぁ、はぁ! 助けてほしいんだ! 娘が……ルルが一人で海竜の洞窟に入っていっちまって!!」
「ルルちゃんが!?」
タニスの言葉に、驚く俺たち。
「どうやら、町の人が夫が海竜の洞窟で行方をくらましたことを噂してたみたいで、そこにルルが……『探しに行ってくる』って啖呵を切って走っていってしまったみたいで……。あんたたちがここに泊まってるって聞いて……はぁ、はぁ、一緒に海竜の洞窟にルルを探しに行ってくれないか、頼みに来たんだ!! 今、この町であそこに入れるのは冒険者のあんたたちしかいないんだ……!!」
今にも泣きそうな顔で懇願してくるタニス。
「町の中にはいなかったんですか?」
セーラの問いかけに首を縦に振るタニス。
「漁師仲間の一人が、ルルが海竜の洞窟に入っていくのを見たって言ってて……頼むよぉ!! この通りだ!!」
土下座をするように頭を下げるタニス。
「頭を上げてくれ、タニス。みんな、予定変更だ。すぐに海竜の洞窟に向かうぞ」
俺の言葉に、五人とも首肯する。
こうして、俺たちはタニスを連れて、海竜の洞窟に向かった。
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