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第8章:マッサ鉱山と謎のダークエルフ編
第3話:悪徳貴族アロイ
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翌日、談話室に再び集まってもらい昨日の夜の事の顛末をみんなに伝える。
もちろん、報酬については伏せたが。
「ふーん、それでレオはその依頼受けたんだね」
「相談しなくて悪いな。だが、放ってはおけないと思ってしまった」
「いいよ。困ってる人を放っておけない。そこがレオのいいところだもん」
リズの言葉に返すと、彼女はニヘヘと笑って答えてくる。
「アロイといえば、エルゼリアの有力貴族のはずです。キブラとも仲が良かったかと……」
セーラが考え込むように言う。
「ご主人様……アロイのこと調べてきた……!」
「おー、ありがとうな。えらいぞ、シレイド」
「むふー……♪」
シレイドはアロイのことがびっしり書かれた紙を持ってきてすり寄ってくる。
その彼女の頭をよしよしと撫でてやる。
彼女には朝一で事情を話し、アロイのことを調べてきてもらった。
こうした密偵のようなことは闇ギルド時代の仕事で慣れているらしく『自分にまかせてくれ』と進言してくれたのだった。
「アロイはエルゼリアの子爵……大のエルフ愛好家でエルフの奴隷をたくさん持っているらしい……でも、その数と町の奴隷商との契約数に大きな齟齬がある……アイスウッドの森に度々兵隊を送っている事も掴んだ……おそらく、黒……」
「ううむ……エルフ愛好家か……」
淡々と話すシレイドに、顔をしかめるキアラ。
「悪い噂もいっぱいあった……賄賂や密輸が大半……町の査問騎士団も怪しんで調査はしているけど……証拠が無いらしくて捕まえられていない……」
なるほど。
ロザリアの言っていた『悪徳貴族』という点は間違いではないらしい。
「失脚させられたら楽なんだろうけどなぁ」
ロウナがぽつりと呟く。
「そのためにも、マッサ鉱山でさらわれたダークエルフたちを見つけよう。その証言があれば、査問騎士団も逮捕に踏み切れるかもしれない。まあ、証言だけだとはぐらかされてしまうかもしれんが」
俺の言葉に五人が首肯した。
そして、早速やってきたのは件の『マッサ鉱山』。
鉱山らしく、灰色じみたゴツゴツとした大きな山が目の前にドーンとそびえ立っている。
「結構近かったね」
「ああ、町から三十分くらいか。移動で疲れないのはありがたいな」
リズとロウナが話している。
「さて、じゃあ、何からするかな」
俺は受けている依頼を確認する。
『中層のメテオバードの討伐』『上層のゴルゴット鉱石の採集』そして『さらわれたダークエルフの救出』。
メテオバードとゴルゴット鉱石は、場所がある程度割れている。
——とすれば。
「よし。ひとまず、攫われたエルフたちを探しながら、上層のゴルゴット鉱石を目指して行こう。途中、中層でメテオバードを倒せばいいだろう」
俺の言葉に五人が頷く。
そうして、俺たちはマッサ鉱山に入っていった。
マッサ鉱山下層。
入った瞬間、鉱山特有のむわっとした空気に包まれる。
「ふむ……涼しいわけでも熱いわけでもないが、妙に空気が薄いな」
「ええ。圧迫感がありますね」
キアラとセーラが居心地悪そうに顔をしかめて言う。
「瘴気は……良くも悪くもないな」
「だが、このくらいならギリギリ『ワープ』が使えるだろう。ひとまず、ダークエルフの救出に支障はなさそうだ」
「よかったぁ。こんなムシムシした場所で野宿なんて気が滅入るところだったよ」
ロウナの言葉に、頷いて返す。
リズもひとまず安堵したようだった。
まあ、元々鉱山として拓かれたダンジョンらしいからな。
魔物が出るとはいえ、魔法などで瘴気を薄める処置などをしているのだろうか。
依頼された口ぶりから推測するに、ロザリアは『ワープ』が使える瘴気の濃さだと知っていたのだろうな。
とりあえず、気を付けながら進んでいく。
奥の方から『カン! カン!』という音が反響して聞こえてくる。
「どうやら、働いている者がいるみたいだな」
「正確には『働かされている』だろうな。だが、私たちが手を差し伸べられるのはあくまで『不当に誘拐された者たち』だけだ。一般の奴隷に外部の者が口や手を出すことはできない」
俺の言葉に、キアラがはっきりと言う。
「……ん、見分けるには奴隷紋を見ればいい……あの紋は正式な奴隷商でないと付けることができない……奴隷紋がないエルフがいればそれが保護対象……」
「アロイって奴が、不当に奴隷紋を付けることは?」
「……まず、無い……奴隷化には国の厳格な審査が必要……一人一人に番号もつけられて、王国の政府機関で管理もされている……不法行為を行う奴隷商は、国から厳罰に処される……紋だけで奴隷商や持ち主を特定することもできる……査問騎士団も調査してるのに……足がつくやり方はアロイもしない……」
なるほどな。まあ、簡単に分かる方法で悪事を働く奴はいないだろう。
逮捕されてないってことは、それなりに考えながら動いているということだ。
「よし。注意深く進もう。魔物にも気をつけてな」
みんなに喚起を行いながら、鉱山の奥へ進んでいく。
「前方に敵反応だよ……!」
リズが注意を促す。
見てみると、鉱山の天井にびっしりと黒い塊が蠢いている。
「あれは……蝙蝠か!?」
俺たちに気づいた蝙蝠の大群が、一斉に飛び掛かってくる。
それらの頭には小さな角が生えていた。
「鑑定!」
名前:デビルバット
危険度:C
説明:洞窟に潜む蝙蝠の魔物。悪魔の遺伝子を含んでおり、非常に狂暴。生物の血を食料としている。群れに嚙まれると危険。
素材:『悪魔蝙蝠の角』
一匹が小さいので、武器で戦うのは不利だ。
——なら!
「エルフレイム!」
中級炎魔法を放って焼き払う。
ギーギーと不気味な声を上げて、焼け焦げた悪魔蝙蝠たちはボトボトと地に落ちていく。
「反応消滅! 倒せたよ! レオ、すごーい!」
「流石、レオ様ですわ」
リズとセーラが褒めてくれる。
こういう所でリーダーらしい所を見せておかないとな。
気丈に気持ちを引き締めるも、内心、まんざらでもない気持ちになるのだった。
もちろん、報酬については伏せたが。
「ふーん、それでレオはその依頼受けたんだね」
「相談しなくて悪いな。だが、放ってはおけないと思ってしまった」
「いいよ。困ってる人を放っておけない。そこがレオのいいところだもん」
リズの言葉に返すと、彼女はニヘヘと笑って答えてくる。
「アロイといえば、エルゼリアの有力貴族のはずです。キブラとも仲が良かったかと……」
セーラが考え込むように言う。
「ご主人様……アロイのこと調べてきた……!」
「おー、ありがとうな。えらいぞ、シレイド」
「むふー……♪」
シレイドはアロイのことがびっしり書かれた紙を持ってきてすり寄ってくる。
その彼女の頭をよしよしと撫でてやる。
彼女には朝一で事情を話し、アロイのことを調べてきてもらった。
こうした密偵のようなことは闇ギルド時代の仕事で慣れているらしく『自分にまかせてくれ』と進言してくれたのだった。
「アロイはエルゼリアの子爵……大のエルフ愛好家でエルフの奴隷をたくさん持っているらしい……でも、その数と町の奴隷商との契約数に大きな齟齬がある……アイスウッドの森に度々兵隊を送っている事も掴んだ……おそらく、黒……」
「ううむ……エルフ愛好家か……」
淡々と話すシレイドに、顔をしかめるキアラ。
「悪い噂もいっぱいあった……賄賂や密輸が大半……町の査問騎士団も怪しんで調査はしているけど……証拠が無いらしくて捕まえられていない……」
なるほど。
ロザリアの言っていた『悪徳貴族』という点は間違いではないらしい。
「失脚させられたら楽なんだろうけどなぁ」
ロウナがぽつりと呟く。
「そのためにも、マッサ鉱山でさらわれたダークエルフたちを見つけよう。その証言があれば、査問騎士団も逮捕に踏み切れるかもしれない。まあ、証言だけだとはぐらかされてしまうかもしれんが」
俺の言葉に五人が首肯した。
そして、早速やってきたのは件の『マッサ鉱山』。
鉱山らしく、灰色じみたゴツゴツとした大きな山が目の前にドーンとそびえ立っている。
「結構近かったね」
「ああ、町から三十分くらいか。移動で疲れないのはありがたいな」
リズとロウナが話している。
「さて、じゃあ、何からするかな」
俺は受けている依頼を確認する。
『中層のメテオバードの討伐』『上層のゴルゴット鉱石の採集』そして『さらわれたダークエルフの救出』。
メテオバードとゴルゴット鉱石は、場所がある程度割れている。
——とすれば。
「よし。ひとまず、攫われたエルフたちを探しながら、上層のゴルゴット鉱石を目指して行こう。途中、中層でメテオバードを倒せばいいだろう」
俺の言葉に五人が頷く。
そうして、俺たちはマッサ鉱山に入っていった。
マッサ鉱山下層。
入った瞬間、鉱山特有のむわっとした空気に包まれる。
「ふむ……涼しいわけでも熱いわけでもないが、妙に空気が薄いな」
「ええ。圧迫感がありますね」
キアラとセーラが居心地悪そうに顔をしかめて言う。
「瘴気は……良くも悪くもないな」
「だが、このくらいならギリギリ『ワープ』が使えるだろう。ひとまず、ダークエルフの救出に支障はなさそうだ」
「よかったぁ。こんなムシムシした場所で野宿なんて気が滅入るところだったよ」
ロウナの言葉に、頷いて返す。
リズもひとまず安堵したようだった。
まあ、元々鉱山として拓かれたダンジョンらしいからな。
魔物が出るとはいえ、魔法などで瘴気を薄める処置などをしているのだろうか。
依頼された口ぶりから推測するに、ロザリアは『ワープ』が使える瘴気の濃さだと知っていたのだろうな。
とりあえず、気を付けながら進んでいく。
奥の方から『カン! カン!』という音が反響して聞こえてくる。
「どうやら、働いている者がいるみたいだな」
「正確には『働かされている』だろうな。だが、私たちが手を差し伸べられるのはあくまで『不当に誘拐された者たち』だけだ。一般の奴隷に外部の者が口や手を出すことはできない」
俺の言葉に、キアラがはっきりと言う。
「……ん、見分けるには奴隷紋を見ればいい……あの紋は正式な奴隷商でないと付けることができない……奴隷紋がないエルフがいればそれが保護対象……」
「アロイって奴が、不当に奴隷紋を付けることは?」
「……まず、無い……奴隷化には国の厳格な審査が必要……一人一人に番号もつけられて、王国の政府機関で管理もされている……不法行為を行う奴隷商は、国から厳罰に処される……紋だけで奴隷商や持ち主を特定することもできる……査問騎士団も調査してるのに……足がつくやり方はアロイもしない……」
なるほどな。まあ、簡単に分かる方法で悪事を働く奴はいないだろう。
逮捕されてないってことは、それなりに考えながら動いているということだ。
「よし。注意深く進もう。魔物にも気をつけてな」
みんなに喚起を行いながら、鉱山の奥へ進んでいく。
「前方に敵反応だよ……!」
リズが注意を促す。
見てみると、鉱山の天井にびっしりと黒い塊が蠢いている。
「あれは……蝙蝠か!?」
俺たちに気づいた蝙蝠の大群が、一斉に飛び掛かってくる。
それらの頭には小さな角が生えていた。
「鑑定!」
名前:デビルバット
危険度:C
説明:洞窟に潜む蝙蝠の魔物。悪魔の遺伝子を含んでおり、非常に狂暴。生物の血を食料としている。群れに嚙まれると危険。
素材:『悪魔蝙蝠の角』
一匹が小さいので、武器で戦うのは不利だ。
——なら!
「エルフレイム!」
中級炎魔法を放って焼き払う。
ギーギーと不気味な声を上げて、焼け焦げた悪魔蝙蝠たちはボトボトと地に落ちていく。
「反応消滅! 倒せたよ! レオ、すごーい!」
「流石、レオ様ですわ」
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