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第10章:ルクシアの町と女を忘れたギルド団長編
第25話:久しぶりの納品依頼
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町に戻ると、辺りはすっかり夕刻だった。
「ヴィヴィの店に行きたかったんだけどな」
ハクオウ山で手に入れた素材を売りたかったのだが、この時間だと開いているかどうか怪しいところである。
「ねぇ……久しぶりにギルドで納品依頼でも見てみない?」
リズが俺に提案してくる。
「私も同意見だ。確かに、ヴィヴィの店で売った方が経済的には良いが、ギルドに所属する以上、たまには点数稼ぎもしないといけないと思うぞ」
キアラも首肯する。
ギルドでの依頼を達成すると、報酬とは別にギルド内での評価が上がる。
そうすれば、受けられるクエストが増えたり、指名依頼をもらえたりする。
エルゼリアの冒険者は星の数ほどいるため、指名依頼をもらえるパーティやクランは、かなり上位の一部のみだ。
俺たちの目標は『最高の人生を歩むこと』。
そのためには、経済面だけではなく、冒険者としての評価の方にも力を入れないといけない。
「よし、それじゃあ今日はギルドで納品依頼をこなそうか」
俺たちは、クエストを受けるためにギルドへと向かった。
ギルドに入り、クエスト掲示板を覗く。
この時間帯は混んでないので、全員で掲示板にかじりついても顰蹙ではなかった。
さて、受けられそうな納品依頼は……と。
「ご主人様……これなんかイイと思う……」
「私も良いのが見つかりましたわ」
シレイドとセーラが、それぞれクエスト用紙を持ってくる。
俺も、現在の素材で対応できそうな納品依頼を持ってきた。
『キングリザードの爪募集!』
依頼主:王国騎士団エルゼリア支部
依頼内容:『王蜥蜴の爪』の納品(数は任意)
メッセージ:弓兵部隊の矢の在庫が少なくなってきた。矢じりに使うためにキングリザードの素材『王蜥蜴の爪』を募集する。数は任せる。
報酬:一枚につき600G
うむ、この辺りが無難だろうな。
今日もかなりの数を狩れたし、過去の分もあり有り余るほど素材を持っている。
『王蜥蜴の爪』のギルドでの卸売単価は530G。
当然、ヴィヴィの店で売った方が稼げるが、この依頼でも約70Gの得である。
今はお金に困ってないし、ギルドのポイント稼ぎに使おう。
『『虚毒竜の猛毒袋』の納品依頼』
依頼主:毒物研究所
依頼内容:『虚毒竜の猛毒袋』三個の納品
メッセージ:自然界の様々な毒物を研究し、王国騎士団の新しい武器を開発中である。狂暴化する対魔物への研究のため、協力を要請する。危険な素材を譲ってくれるということで報酬金だけではなく我々が開発した強力な麻痺武器をオマケにつける。
報酬:5万G、新型暗器『雷鳥針』
これは、シレイドが持ってきた依頼だ。
報酬額は……うむ、卸売り価格よりずっと高い。
やはり、研究所というのは金を持っているのだろうか。
「新型暗器……『雷鳥針』……!!」
それよりもシレイドは、オマケで付いてくる暗器が気になっているようだ。
目をキラキラさせている。
まるでオマケのおもちゃが欲しくて菓子を買う子供のようである。
興奮対象が武器というのは何ともシュールだが。
『ハクオウリュウのヒレ酒を出したい』
依頼主:酒場『粋酔』店主
依頼内容:『白扇竜の美ヒレ』一枚の納品
メッセージ:ウチの店はありとあらゆる和国酒を扱うんだが、この度、新しいメニューを出したいと思ってな。ってわけで、ハクオウ山で出会えるレアモンスター『ハクオウリュウ』のヒレで作ったヒレ酒を造りたい。貴重な品みたいだが、一枚譲ってくれねえか?
報酬:7万G、特製米酒『オロチの六腑』
これはセーラの持ってきたクエスト依頼である。
『白扇竜の美ヒレ』の単純な卸売値は5万G。
1万Gの利益ということか。
だが、それよりも……。
「『オロチの六腑』……どんなお酒なのでしょう♪」
酒豪のセーラが上機嫌である。
二人とも、金よりもオマケの報酬品の方に惹かれているようだ。
俺は、三枚のクエスト用紙を受付に持っていく。
今日の担当は……ラズベリーだ。
「レオさん。御用ですか?」
キリっとしつつも、声色が上機嫌なラズベリー。
久しぶりに仕事で俺に関われるのが嬉しいらしい。
「ああ。この納品クエストを受けたい」
「承知しました。すぐに手続きをします」
テキパキと事務処理をしていくラズベリー。
うむ、手際が良い。
チェリーも早いが、根がキャリアウーマンなラズベリーの速さは群を抜いている。
俺は『王蜥蜴の爪』一〇〇個と、『虚毒竜の猛毒袋』三個、『白扇竜の美ヒレ』一枚を提出する。
「やはり、レオさんはすごいですね。こんなにも難しい納品依頼を難なくこなしてしまうとは。彼女として鼻が高いです」
わずかに口角を上げて褒めてくれる。
仕事モードの時は、イチャイチャしないと言っていた彼女だが、こうしてふとした時にデレてくれる。
彼氏としてはとても嬉しい。
俺はラズベリーから報奨金合計18万Gと、オマケの品である『雷鳥針』数本、米酒『オロチの六腑』1ダースを受け取った。
「ご主人様ー……シレイドの暗器ちょうだい……?」
「ほいほい。これだな」
「……全部シレイドが貰っていいの……?」
「お前しか扱えないだろ? こういう武器は」
上目遣いで見つめてくるシレイドに、微笑みかけて『雷鳥針』を渡してやると「ムフー……♪」と嬉しそうに微笑むのだった。
「れ、レオ様……わ、私のお酒は……?」
お伺いを立てるようにおずおずと聞いてくるセーラ。
「ああ。これだな、1ダース丸々要るか?」
「そ、そんなに頂いては際限なく飲んでしまいそうですわ。聖職者たるもの、自制も必要なのです」
うーむ。依頼を受けて酒を手に入れ、かつ飲もうとしている時点で自制もクソもない気がするのだが……余計なことは言うまい。
「なら、一本渡しておくよ。残りは俺が管理しておく。足りなかったらその都度渡すから、また言ってくれ」
「はい♪」
俺の言葉に、セーラは嬉しそうに微笑むのだった。
こうして、ギルドへの貢献も無事終えて、帰路に就く。
もっとも、思ったより大型の納品依頼は無く、ハクオウ山の素材は殆ど手元に残ってしまったが。
結局、大量に所持している素材を捌くにはヴィヴィのもとに行くのが最善なのだということだ。
明日からは、また皆と話し合って次に攻略するダンジョンを決めようと思う。
アブランの件も気になるが、やはり俺たちは冒険者なのだから。
「ヴィヴィの店に行きたかったんだけどな」
ハクオウ山で手に入れた素材を売りたかったのだが、この時間だと開いているかどうか怪しいところである。
「ねぇ……久しぶりにギルドで納品依頼でも見てみない?」
リズが俺に提案してくる。
「私も同意見だ。確かに、ヴィヴィの店で売った方が経済的には良いが、ギルドに所属する以上、たまには点数稼ぎもしないといけないと思うぞ」
キアラも首肯する。
ギルドでの依頼を達成すると、報酬とは別にギルド内での評価が上がる。
そうすれば、受けられるクエストが増えたり、指名依頼をもらえたりする。
エルゼリアの冒険者は星の数ほどいるため、指名依頼をもらえるパーティやクランは、かなり上位の一部のみだ。
俺たちの目標は『最高の人生を歩むこと』。
そのためには、経済面だけではなく、冒険者としての評価の方にも力を入れないといけない。
「よし、それじゃあ今日はギルドで納品依頼をこなそうか」
俺たちは、クエストを受けるためにギルドへと向かった。
ギルドに入り、クエスト掲示板を覗く。
この時間帯は混んでないので、全員で掲示板にかじりついても顰蹙ではなかった。
さて、受けられそうな納品依頼は……と。
「ご主人様……これなんかイイと思う……」
「私も良いのが見つかりましたわ」
シレイドとセーラが、それぞれクエスト用紙を持ってくる。
俺も、現在の素材で対応できそうな納品依頼を持ってきた。
『キングリザードの爪募集!』
依頼主:王国騎士団エルゼリア支部
依頼内容:『王蜥蜴の爪』の納品(数は任意)
メッセージ:弓兵部隊の矢の在庫が少なくなってきた。矢じりに使うためにキングリザードの素材『王蜥蜴の爪』を募集する。数は任せる。
報酬:一枚につき600G
うむ、この辺りが無難だろうな。
今日もかなりの数を狩れたし、過去の分もあり有り余るほど素材を持っている。
『王蜥蜴の爪』のギルドでの卸売単価は530G。
当然、ヴィヴィの店で売った方が稼げるが、この依頼でも約70Gの得である。
今はお金に困ってないし、ギルドのポイント稼ぎに使おう。
『『虚毒竜の猛毒袋』の納品依頼』
依頼主:毒物研究所
依頼内容:『虚毒竜の猛毒袋』三個の納品
メッセージ:自然界の様々な毒物を研究し、王国騎士団の新しい武器を開発中である。狂暴化する対魔物への研究のため、協力を要請する。危険な素材を譲ってくれるということで報酬金だけではなく我々が開発した強力な麻痺武器をオマケにつける。
報酬:5万G、新型暗器『雷鳥針』
これは、シレイドが持ってきた依頼だ。
報酬額は……うむ、卸売り価格よりずっと高い。
やはり、研究所というのは金を持っているのだろうか。
「新型暗器……『雷鳥針』……!!」
それよりもシレイドは、オマケで付いてくる暗器が気になっているようだ。
目をキラキラさせている。
まるでオマケのおもちゃが欲しくて菓子を買う子供のようである。
興奮対象が武器というのは何ともシュールだが。
『ハクオウリュウのヒレ酒を出したい』
依頼主:酒場『粋酔』店主
依頼内容:『白扇竜の美ヒレ』一枚の納品
メッセージ:ウチの店はありとあらゆる和国酒を扱うんだが、この度、新しいメニューを出したいと思ってな。ってわけで、ハクオウ山で出会えるレアモンスター『ハクオウリュウ』のヒレで作ったヒレ酒を造りたい。貴重な品みたいだが、一枚譲ってくれねえか?
報酬:7万G、特製米酒『オロチの六腑』
これはセーラの持ってきたクエスト依頼である。
『白扇竜の美ヒレ』の単純な卸売値は5万G。
1万Gの利益ということか。
だが、それよりも……。
「『オロチの六腑』……どんなお酒なのでしょう♪」
酒豪のセーラが上機嫌である。
二人とも、金よりもオマケの報酬品の方に惹かれているようだ。
俺は、三枚のクエスト用紙を受付に持っていく。
今日の担当は……ラズベリーだ。
「レオさん。御用ですか?」
キリっとしつつも、声色が上機嫌なラズベリー。
久しぶりに仕事で俺に関われるのが嬉しいらしい。
「ああ。この納品クエストを受けたい」
「承知しました。すぐに手続きをします」
テキパキと事務処理をしていくラズベリー。
うむ、手際が良い。
チェリーも早いが、根がキャリアウーマンなラズベリーの速さは群を抜いている。
俺は『王蜥蜴の爪』一〇〇個と、『虚毒竜の猛毒袋』三個、『白扇竜の美ヒレ』一枚を提出する。
「やはり、レオさんはすごいですね。こんなにも難しい納品依頼を難なくこなしてしまうとは。彼女として鼻が高いです」
わずかに口角を上げて褒めてくれる。
仕事モードの時は、イチャイチャしないと言っていた彼女だが、こうしてふとした時にデレてくれる。
彼氏としてはとても嬉しい。
俺はラズベリーから報奨金合計18万Gと、オマケの品である『雷鳥針』数本、米酒『オロチの六腑』1ダースを受け取った。
「ご主人様ー……シレイドの暗器ちょうだい……?」
「ほいほい。これだな」
「……全部シレイドが貰っていいの……?」
「お前しか扱えないだろ? こういう武器は」
上目遣いで見つめてくるシレイドに、微笑みかけて『雷鳥針』を渡してやると「ムフー……♪」と嬉しそうに微笑むのだった。
「れ、レオ様……わ、私のお酒は……?」
お伺いを立てるようにおずおずと聞いてくるセーラ。
「ああ。これだな、1ダース丸々要るか?」
「そ、そんなに頂いては際限なく飲んでしまいそうですわ。聖職者たるもの、自制も必要なのです」
うーむ。依頼を受けて酒を手に入れ、かつ飲もうとしている時点で自制もクソもない気がするのだが……余計なことは言うまい。
「なら、一本渡しておくよ。残りは俺が管理しておく。足りなかったらその都度渡すから、また言ってくれ」
「はい♪」
俺の言葉に、セーラは嬉しそうに微笑むのだった。
こうして、ギルドへの貢献も無事終えて、帰路に就く。
もっとも、思ったより大型の納品依頼は無く、ハクオウ山の素材は殆ど手元に残ってしまったが。
結局、大量に所持している素材を捌くにはヴィヴィのもとに行くのが最善なのだということだ。
明日からは、また皆と話し合って次に攻略するダンジョンを決めようと思う。
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