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第三章 大商国ブルム
第十一話 交渉
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王国と商国を行き来する定期便。
王国へ向かうときは荷物を沢山積んでいるが戻りはどうだろうか?
少なくとも俺がさっき見た冒険者のエンブレムが入った荷車にはほとんど商品は乗っていなかった。
だったらそこに俺たちの商品を乗せてもらえばいい。そうしたら今まで通りロバートは王国と商国の行き来だけで商売ができるってわけだ。
「こんな手があったなんて全然気づかなかったっす……!」
ロバートは俺の案を聞いて感動しているようだ。
しかしミギマはまだ納得してない様子だ。
「し、しかし! 確かにそれは理論上は可能ですが、それには冒険者組合の協力が不可欠! あなたにその権限があるのですか!?」
「ああもちろんだ。勿論すんなりとはいかないだろうがアテはある」
冒険者協会には貸しがあるからな。
それくらいだったらなんとかなるだろう。
それにいざとなったらベテラン受付嬢のローナさんに泣きつけばあの人なら何とかしてくれるだろう。
「……なるほど」
ミギマはそれを聞いて考え込む。
今までの情報を整理しているのだろう。少なくとも感情的に断られることはなさそうだ。
「だ、大丈夫っすかね?」
すると沈黙に耐えきれなかったのかロバートが小声で話しかけてくる。
「反応を見るに五分五分といったところだろうな。俺の提案自体は向こうにとっても悪くない話だろうが、いかんせん俺達には『信用』がないからな。本当にこの話を実現する力があるのか疑ってるんだろう」
「なるほどっす。しかしそんなのどうやって証明すればいいんすかね……」
通話装置でもあれば冒険者協会と繋いで今回の件を承認して貰うこともできるんだけどな。
粘体情報網《スライムネットワーク》は商国に繋いでないし、何よりまだ他人に見せるわけにはいかない。万事休すか……。
「ねーねー、まだおはなしおわらないの?」
もぞもぞ、と俺の上着の胸ポケットから出てきて不満を漏らしたのは俺の相棒そらだ。
そらは長旅で疲れていたので商会に入る前にポケットに入れて休ませていたのだ。取引の話なんて暇だろうだからな。
「悪いなそら。もうちょっと待っててくれるか?」
「ん~、わかった~」
寝ぼけた言葉遣いで返事をしながらそらはもぞもぞと俺の肩に登ってくる。俺の右肩はそらのお気に入りポジションになっており、そこについたそらは安心してまた寝てしまった。自由なやつだ。
俺とロバートからしたらいつもの微笑ましい日常なのだが、ミギマはそらの事を見て目を見開く。そうか彼にはまだスライムを見せてなかったな。驚くのも当然だ。
「スライム……! なるほど彼があの……それなら……」
そらを見たミギマは何やらブツブツ呟くが、声が小さくて聞こえない。
いったいどうしたんだろうか?
俺が不思議がっていると、急にミギマは怪訝だった表情をパッと変え出会ったときの陽気な感じに戻る。
「わぁかりましたーぁ!! その契約、結ばせていただきまぁーす!!」
「え!? いいんすかそんな軽く決めて!?」
「もぅちろんですともぅ! ただこの件は大事になりそうなのでウチのもっと偉い人と話さないといけませんけどね。まあ大丈夫でしょぅ!」
何が決め手だったのかはわからないがひとまず危機は脱した様だな。
ふう、危ない橋を渡ったぜ
「ではまずは今回の取引を完了させてしましましょう! 残りの商品を見せていただけますかぁ?」
「は、はいっす!」
ロバートは慌てて積荷を下ろしに行こうとする。
しかし何か俺に用があるのか俺の方へまず走ってくる。
「積荷の確認は時間がかかるっす。その間キクチさんは観光でもしててくださいっす。ここにいれば襲われる心配もないっすからね」
それは嬉しい。
せっかくだから少しは見て回りたいからな。
「じゃあお言葉に甘えようかな。少し行ってくるよ」
「はいっす! それと……本当にありがとうございました。俺っちも少しはデキる男になったつもりだったんすけどね。あの時はビビって何も言えなくなっちゃったっす……」
「気にすんな。お前は十分すごいやつだよ」
そう言って俺はロバートの肩をぽんぽん叩く。
「だから弱気になるなよ? 安心しろ、いざって時はまた俺が助けてやるから」
そう言って俺はシュシュシュとパンチを打つ動作をする。
それを見たロバートは不安そうな表情を引っ込め「ぷふっ!」と笑う。よかったよかった。
「じゃあ行ってくるよ。いくら安全なところに行るからって油断すんなよ?」
「はいっす! キクチさんもお気をつけて!」
こうして俺とロバートは別行動を取るのだった。
王国へ向かうときは荷物を沢山積んでいるが戻りはどうだろうか?
少なくとも俺がさっき見た冒険者のエンブレムが入った荷車にはほとんど商品は乗っていなかった。
だったらそこに俺たちの商品を乗せてもらえばいい。そうしたら今まで通りロバートは王国と商国の行き来だけで商売ができるってわけだ。
「こんな手があったなんて全然気づかなかったっす……!」
ロバートは俺の案を聞いて感動しているようだ。
しかしミギマはまだ納得してない様子だ。
「し、しかし! 確かにそれは理論上は可能ですが、それには冒険者組合の協力が不可欠! あなたにその権限があるのですか!?」
「ああもちろんだ。勿論すんなりとはいかないだろうがアテはある」
冒険者協会には貸しがあるからな。
それくらいだったらなんとかなるだろう。
それにいざとなったらベテラン受付嬢のローナさんに泣きつけばあの人なら何とかしてくれるだろう。
「……なるほど」
ミギマはそれを聞いて考え込む。
今までの情報を整理しているのだろう。少なくとも感情的に断られることはなさそうだ。
「だ、大丈夫っすかね?」
すると沈黙に耐えきれなかったのかロバートが小声で話しかけてくる。
「反応を見るに五分五分といったところだろうな。俺の提案自体は向こうにとっても悪くない話だろうが、いかんせん俺達には『信用』がないからな。本当にこの話を実現する力があるのか疑ってるんだろう」
「なるほどっす。しかしそんなのどうやって証明すればいいんすかね……」
通話装置でもあれば冒険者協会と繋いで今回の件を承認して貰うこともできるんだけどな。
粘体情報網《スライムネットワーク》は商国に繋いでないし、何よりまだ他人に見せるわけにはいかない。万事休すか……。
「ねーねー、まだおはなしおわらないの?」
もぞもぞ、と俺の上着の胸ポケットから出てきて不満を漏らしたのは俺の相棒そらだ。
そらは長旅で疲れていたので商会に入る前にポケットに入れて休ませていたのだ。取引の話なんて暇だろうだからな。
「悪いなそら。もうちょっと待っててくれるか?」
「ん~、わかった~」
寝ぼけた言葉遣いで返事をしながらそらはもぞもぞと俺の肩に登ってくる。俺の右肩はそらのお気に入りポジションになっており、そこについたそらは安心してまた寝てしまった。自由なやつだ。
俺とロバートからしたらいつもの微笑ましい日常なのだが、ミギマはそらの事を見て目を見開く。そうか彼にはまだスライムを見せてなかったな。驚くのも当然だ。
「スライム……! なるほど彼があの……それなら……」
そらを見たミギマは何やらブツブツ呟くが、声が小さくて聞こえない。
いったいどうしたんだろうか?
俺が不思議がっていると、急にミギマは怪訝だった表情をパッと変え出会ったときの陽気な感じに戻る。
「わぁかりましたーぁ!! その契約、結ばせていただきまぁーす!!」
「え!? いいんすかそんな軽く決めて!?」
「もぅちろんですともぅ! ただこの件は大事になりそうなのでウチのもっと偉い人と話さないといけませんけどね。まあ大丈夫でしょぅ!」
何が決め手だったのかはわからないがひとまず危機は脱した様だな。
ふう、危ない橋を渡ったぜ
「ではまずは今回の取引を完了させてしましましょう! 残りの商品を見せていただけますかぁ?」
「は、はいっす!」
ロバートは慌てて積荷を下ろしに行こうとする。
しかし何か俺に用があるのか俺の方へまず走ってくる。
「積荷の確認は時間がかかるっす。その間キクチさんは観光でもしててくださいっす。ここにいれば襲われる心配もないっすからね」
それは嬉しい。
せっかくだから少しは見て回りたいからな。
「じゃあお言葉に甘えようかな。少し行ってくるよ」
「はいっす! それと……本当にありがとうございました。俺っちも少しはデキる男になったつもりだったんすけどね。あの時はビビって何も言えなくなっちゃったっす……」
「気にすんな。お前は十分すごいやつだよ」
そう言って俺はロバートの肩をぽんぽん叩く。
「だから弱気になるなよ? 安心しろ、いざって時はまた俺が助けてやるから」
そう言って俺はシュシュシュとパンチを打つ動作をする。
それを見たロバートは不安そうな表情を引っ込め「ぷふっ!」と笑う。よかったよかった。
「じゃあ行ってくるよ。いくら安全なところに行るからって油断すんなよ?」
「はいっす! キクチさんもお気をつけて!」
こうして俺とロバートは別行動を取るのだった。
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