スキル「共感覚」のおかげで最強の魔法使いになったので魔人を集めて魔王になることにしました 〜最恐魔王の手さぐり建国ライフ!〜

熊乃げん骨

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第一章 ○○世界における魔王国建国の経緯(いきさつ)

第3話 俺の名は。

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「全てのカードから名前が消えているんです」 

「…………」 
 俺の言葉に舞衣さんはしばらく考えるそぶりをした後、カードを一枚手に取りよく観察する。 

「後から消されたり、塗りつぶされた痕跡も無いわね。何より不思議なのは魔法がかけられた痕跡もないことね」 

 魔法がかけられてない? 
 じゃあどうしたらこんな事がおきるんだ? 

  
「異常が起きたと考えられるのはあなたの脳やカードではなく………あなたの名前、それ自体よ」
「名前自体!?どういうことですか!?」 

「名前と魔法には密接な関係があるわ。例えば火球撃《ファイアーボール》と唱えながら水魔法を撃ったらどうなると思う?」

「えーと……威力が下がりそうですね」 
「正解。ではそれはなぜ?」 
「頭でイメージがしにくいからじゃないですか?」 
「それだと半分ってところね。他にも理由があるわ」 

 ということは火を水とイメージ出来る人でも同じことをやったら威力が下がるってことだよな? 

 となると……。 

  
「魔法は自分だけの力じゃない?」 

「そう、正確には世界の意思みたいなものが魔法には作用しているわ。世界の意思とはすなわち地球に存在する全生物の思考の集合体のこと、つまり火球撃《ファイアーボール》と聞くと火をイメージする人が世界中にたくさんいるから効果が下がるってワケね」  

 話が少し難しいが要約すると魔法名は使う魔法のイメージに合わせないと効果が発揮できないって話だ。 

「魔法名に英語のモノが多いのもそういう理由があるの。英語が地球上で広く普及しているから使用時に具現化しやすくなる。魔力大規模感染《マジカル・パンデミック》後はなぜか日本語の具現化力も上がったけどね。私たち陰陽師は助かっているけど理由は皆目見当つかないわ」

 やれやれ、と彼女は首を振る。

「とにかく、魔法と言語。この二つには切り離せない密接な結びつきがあるの」

「じゃあ例えば強い名前を付ければ強い魔法を使えるってことですか?」 

 ゼウスハンマーとかビッグバンとか安直だけど強そうだ。  

「そうなるわ、察しがいいわね」 

 照れるぜ。 

「だけど、そう上手くはいかないわ。人にはそれぞれ魔法感覚《マジック・センス》といって使える魔法に向き不向きがあって、それには許容限界があるわ。刃や銃弾などの魔法の形だけなら簡単に覚えることが出来るけど、火や水といった属性は多くても2つしか普通の魔法使いは使えないわ」 

「それって魔法の才能みたいなものですか?」 

「そうね。努力で少しはどうにかなるけど右利きを両利きにするくらい面倒くさいわ。それだったら右利きを極めたほうが強くなれる」 

 なるほど。急に左の練習したら右の感覚も狂っちゃうもんな。 

「それに神の名前なんかつけたら更に大変。魔力が足りなくて自らの存在まで消費して魔法を発動しようとしてしまうわ。神の名を使う『資格』を持っているなら話は別だけどね」 

 うへ、試そうとしなくてよかったぜ。 
 それより気になるのは自らの存在が魔力の代わりになるというとこだな。 

「魔力の代替品になる物は他にもあるんですか?」 

「ええ、あるわよ。寿命に魂、聖遺物や魔法感覚《マジック・センス》……そして名前」 
「!?」 

「名前にはとてつもないエネルギーが宿っている。例えば森田という人物が『森』という部分を犠牲にして木の魔法を使えば、それはそれは強力な魔法になるわ。しかし『森田さん』は『田さん』になって、世界中の情報がそれに書き換えられるわ」 


「じゃあもしかして……」 
「ええ、あなたの名前は魔法的な理由で消費されたと考えられるわね」 

 なんだよ魔法的な理由って……。 
 いったいどうしたら帰ってくるんだ……。 

「安心しなさい」 
「へ?」 

「私はこう見えて凄腕の魔法使いなのよ? その私がついているんだからきっと大丈夫」 

 えへん、といった感じで胸を張り舞衣さんは俺を慰めてくれる。 
 自分も大変な状況だというのに本当に優しい人だ。 

「ありがとうございます、舞衣さん。俺、頑張って名前を取り戻して見せます!」 
「うん。いい気合いだ」 

 気づけば俺たちの距離はとても近くなっていて、俺は、おわっと声を出し慌てて舞衣さんから離れる。 
 舞衣さんのまつげ、意外と長かったな……。 

「とにかくヒントを得るためにも手掛かりが必要ね。これに魔力を込めて!」 

 そう言われて渡されたのは一枚の小さな白い紙切れ。 
 一体何に使うんだ? 

「それは魔験紙《まけんし》。魔力を注ぎ込むと、その人の魔法感覚《マジック・センス》が分かる優れものよ」 
「へえ、こんな物が」 

 紙をペラペラと揺らしてみるが、普通の紙と何ら変わったところは見られない。 

「火なら赤、水なら青という風に色が変わるはずです。やってみなさい」 
「よし……。うおおぉぉっ!!」 


 先ほどの魔法を使った時の感覚を思い起こし指に魔力を送り込む!! 

 すると、魔験紙《まけんし》が光だし……。 
  

「色が……変わってない!?」 


 こんなパターン聞いてないぞ! 
 舞衣さんの方を振り向くと、彼女も不思議そうな顔をしている。 

「舞衣さん?」 
「そんな捨てられた子犬みたいな顔されても私も分からないわ。こんなの初めて見たもの」 

 そんなに俺は情けない顔だったか? 

「とにかく、ここで考えてても分からなそうね。ひとまず出発しましょ、旅を続けてればきっと分かることも出てくるわ」 
「そういえば舞衣さんは今何をしているんですか?政府の命令で動いてるんですか?」 

 背中を向け出発しようとしていた舞衣さんの動きが止まり、彼女は背を向けたまま話し始める。 

「そうね、まだ言ってなかったわね。実は私はもう国家陰陽師ではないの」 
「それってどういう……」 

「昨日の昼過ぎの事よ」 


 彼女は振り向きそう前置くと、意を決したように口を開く。 

  
「日本政府は事実上活動を停止したわ。この国はもう、正確には日本ですらないの」 

  
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