スキル「共感覚」のおかげで最強の魔法使いになったので魔人を集めて魔王になることにしました 〜最恐魔王の手さぐり建国ライフ!〜

熊乃げん骨

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第一章 ○○世界における魔王国建国の経緯(いきさつ)

第8話 強襲

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 ズゴオオオォン!!!


 爆音と衝撃が体を飲み込み、私はみっともなく地面を転がる。

 体中に激しい痛みを感じる。どうやら全身に打撲と切り傷を負ったみたいだ。

「うぅ……」

「いやいやー、今のを食らって生きてるなんて流石だよ舞衣ちゃん!今の術は土行の中でも最高の威力を誇る秘技中の秘技!それを初見で防いで見せるなんてやはり僕の目に狂いは無かった!」

 なにやら過大評価されてるが、正直今のをしのげたのは運によるところが大きい。

 逆アーチ形の堅木を複数召喚する術『木行・ 木叢返こむらがえし』。
 この技の強度はそれほど高くないのだが、強力な魔法を使うに値する魔力を練る余裕が無かった為にこの技を使った。
 結果として奴の技と相性が良かったのか、光線は木の反れた部分に沿うようにして動き、その大部分を受け流すことに成功した。

 もしただ正面から防ぐ術だったなら、私は術もろともこの世から消し飛んでいただろう。


「そうだ、種明かしをしないとね」

 奴がパチン、と指を鳴らすと金糸雀きんしじゃくを飲み込んだ土が崩れる。

「なに……!?」

 そこにいたのはパンパンに膨れ上がり飛べなくなった金糸雀きんしじゃくだった。

「この技は威力こそないけど、土のエネルギーをたくさん練り込んでるんだ。その中に入った金属性の魔法はそのエネルギーを過剰に取り込み、機動性を失うというワケさ」

 なるほど、こいつの考えそうな効率的でいやらしいやり方だ。
 しかし、最も不可解な点は別にある。


「なぜ貴様が九星の技を……?」
「ふふふ、気になるよねー?」

 九星とは陰陽師に伝わる重要な九つの星の名前で、先ほど奴が口にした『五黄』はその星の一つだ。
 星の名前を用いる魔法は神の名を用いるのと同じく、使用する『資格』を持っていないとまともに使えないはずだ。
 こいつがなぜその名を冠した魔法を使える?

「僕は謹慎処分を受けていた時、それはそれは深く反省したんだ。もう二度と卑劣な真似はしないって天に誓ったんだよ。そしたらさ! 目覚めたんだよ贈呈物ギフトが! 興奮したね。直前にした下らない反省なんて忘れるくらいにさ!」

「……そういえば天上院家が力を持つようになったのは、強力な贈呈物ギフトを持った者が極稀に生まれるようになってからだったわね」

「そう!  その名も『九星の加護』! この力がある限り僕は無敵だ!!」

 「だけど」と、奴はそう前置き濁った眼で私を見つめる。

「僕は君も知っての通り魔法感覚マジック・センスが2つしかない。だけどもし君の『五行相克』と僕の『九星の加護』が合わさった子が産まれたら凄いと思わないか? 世界すら手中に収められるかもしれない!!」

 目を見開き狂ったように奴は笑う。
 もう奴は手遅れだ。完全に力に取り憑かれてしまっている。

 ならば。

「せめて同僚わたしの手で葬ってやるよ……!!」
「やーってみな!!」

 私は全身に魔力を漲らせる。
 出し惜しみなんかしてられない。

「全力で行く!!五行纏身ごぎょうてんしん!!」

 五行全ての力を身に纏い、身体能力と魔力共に極限まで上昇させる秘技だ。
 当然魔力の消費は激しいが、私の傷の深さを考えると長期戦は避けなければならない。

「いいねー、肌がピリつく魔力。ますます君が欲しくなったよ」
「ほざけ!」

 私は今までとは比べ物にならない速さで駆けだす。
 防御に回す魔力を捨て、右手に残りの全魔力を凝縮する。

 この一撃に、勝負をかける。

「僕も本気を出すよ!!火行奥義・九紫星拳きゅうしせいけん!!」

 凄まじい火の魔力が奴の右腕に集まり拳の形になる。
 どうやら奴も一撃に賭けるようだ、気にくわない奴だが陰陽師としての矜持きょうじくらいはあるようだ。

「ハアアァァーーッ!!」

 全集中力を奴に向ける。
 余計な情報を排除し、まるでこの世界に奴と私しかいない錯覚に陥る。
 感じるのは目の前の憎き相手の動きと身体を脈動する魔力のみ。
 奴がどんなアクションを起こそうが対応できるだろう。


 と、思っていた。


 しかし、



「やれ」と奴の唇が動く。



 私は失念していたのだ。


 奴の本質を。卑劣さを。


「やっと出番か」
「待ちくたびれましたよ」

 奴の合図と共に私のすぐ後ろの地面から男が2人湧き出てくる。

 嵌められた。

 奴は正々堂々戦うつもりなどハナから無かったんだ。

「クソが!!」

氷球撃アイスボール!」
岩塊撃ロックストライク!」
九紫星拳きゅうしせいけん!」

 囲むように三方向から同時に魔法を放たれる。
 防御を捨てている状態でこんなものをくらえばひとたまりもない!

「五行防壁!!」

 咄嗟に右手に溜めていた魔力を防壁に変換する。
 しかし不意打ちしてきた二人からの攻撃は防げても、星の力を得た奴の拳は2人の攻撃で消耗した私の防壁をいとも容易く砕き、その衝撃でまたも私は吹き飛ばされる。

「今度こそチェックメイトかなー、ご苦労さん。藤、松」
「全くですよ、ボス。おかげで土まみれですわ」
「あの女、なかなかイイっすね。俺たちにも回して下さいよ」

 隠れてた男二人は藤と松という名前らしい。
 粗暴で乱暴で頭の悪そうな奴らだ、簡単に天上院に丸め込まれたのだろう。
 まさかこんな奴らに出し抜かれるとは。

 屈辱。


 悔やんでも悔やみきれない。
 情け無さ、無力感、死んだ仲間に対する罪悪感で私の心はズタズタに痛み、冷え切っていく。

 なぜ馬鹿正直に挑んでしまったのか。
 私の仲間があいつにそう簡単に負けるはずがない。
 となれば仲間がいる事など容易に想像できるはずなのに。

 絶体絶命だというのに不意に思い返してしまうのは『あいつ』の事だ。
 偉そうに色々教えたくせにこのザマだ。実に情けない。
 ふふっ、先生失格だな。

 それより、あいつはちゃんと逃げてくれただろうか。
 死ぬことは怖くないが、それだけが心残りだ。

 名前も分からないアイツ。
 自分も大変だというのに私が暗い顔をするとすぐに心配そうな顔をするアイツ。
 すぐ弱音を吐くクセに頑張り屋な不思議なヤツ。

 アイツとの旅は悪くなかった。
 隠してはいたが私は東京でたくさんの仲間を失い、精神的にかなり限界が来ていた。
 アイツとの旅はその傷を忘れさせてくれた。

 私は救われていたんだ、あいつの素直で明るい性格に。

「まだ意識があるな、松」
「はい、凍結する風フロスト・ウインド!」


 全てを失った世界で唯一得られたもの。

 だから、



「生きてくれ……」





「はい。もちろん2人で、ですよね」
「!?」

魔法防壁マジック・ウォール!!」

 氷の風と私を遮るようにして青い透明な壁が現れる。
 下級魔法だがよく練りこまれている。こんな丁寧な魔法を作る知り合いは1人しかいない。


 そう、アイツだ。



「なんで……!? 勝ち目があると思ってるのか?」

 私の悲痛な問いかけにあいつは毅然とした口調で答える。

「俺にはもうあんたしかいないんですよ!」
「!?」

 彼の叫びに私は気づかされる。

 そう……こいつも私と同じ。
 お互い大切なものを失い、それをお互いで埋めあっていた。


「勝手にいなくなるなんて俺が許さない!後は俺に任せてください!」

 あいつは足を震わせながら啖呵を切る。
 当然だ。今まで命を懸けた戦いなど経験したことなど無いのだから。
 
 
 私はこいつの事を信用している、だけど後のことを任せられるかどうかは別の話だ。
 こいつはまだ上手く魔法を使えないし、すぐヘタレるし、人の心配ばかりするし……


 だけど、

 そんなこいつだからこそ任せられる。そうも思った。

「すまない……お前に全てを託していいか?」

 あいつは、私のお願いに待ってましたとばかりに笑みを浮かべ、力強く答える。


「当たり前だ!!!」


 胸の高鳴りと共に、私の心はいつのまにか暖かいもので満たされていたんだ。
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