スキル「共感覚」のおかげで最強の魔法使いになったので魔人を集めて魔王になることにしました 〜最恐魔王の手さぐり建国ライフ!〜

熊乃げん骨

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第一章 ○○世界における魔王国建国の経緯(いきさつ)

第22話 再戦

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「……きて下さい」

 声が聞こえる……

「……起きて下さい」

 誰だ……俺を呼ぶのは……?

 後頭部に柔らかい感触を感じながら目を開けると、白く大きな風船が二つ眼前でぷるぷる揺れていた。

「これは……っておわぁ!!」

 目の前で揺れる物体をまじまじと観察した俺は、その正体に気づくと急いでその場から飛び跳ねて抜け出す。

 もうお気づきだろう。おっぱいだ。
 どうやら俺は白いドレスを着たけしからんおっぱいの女性に膝枕をされていたみたいだ。
 とっさに抜け出してしまったが勿体ない事をしたぜ。

「あ、あああんたは誰だ!?」
「ふふ、もう気づかれているのでしょう?」

 そうだ。表面上何も分からない風に装っているが、冷静にこの現状を理解出来ている自分がいる。
 だけどそれを認めたくないから気づかないフリをしてしまっている。

「そうか……じゃあ君が『マーレ』なんだな?」
「はい、初めまして。私がマーレと申します。以後よろしくお願い致します」

 彼女は上品に一礼しながらそう自己紹介した。

「初めまして……か」

 彼女にはとても失礼だがこの結果は失敗といえよう。
 見た目も中身も違っていては、それはもうあの人ではないのだから。

「失敗などではありませんよ」

 俺の考えを見透かしたかのように彼女は俺に話しかける。
 俺は思わず俯いてた顔を上げ彼女の整った顔に目を向けた。

「どういう事ですか?」
「確かに私は元の人物とは似つかないかもしれません。しかし彼女の記憶、感情は私の中に残っています。そして私が誕生した時彼女の意思と少しの間会話する事ができ、ある言葉も託されました」
「い、いったい何て……」

 彼女は怒っていただろうか、それとも憎んでいただろうか。
 自分が違う存在に変えられる気持ちなど俺には想像つかない。

「『あいつをよろしく頼む』彼女から頼まれたのはそれだけです」
「そんな……」

 彼女は最後まで彼女だった。
 強くて優しくて格好いい彼女だった。

「うぅ……」
 思わず涙がこぼれ落ちる。
 歯を食いしばり嗚咽する俺をマーレは優しく抱きしめてきた。

「泣かないで前を見て下さい。そして決めるのです、あなたと私の選ぶべき道を」

 不思議な気持ちだ。
 マーレはあの人より豊満な胸をしているが抱きしめられる感触は同じものを感じる。

 そうか、あなたはそこにまだいるんですね……

「どうしますか? ここから逃げますか? それとも……」

 普通に考えたら逃げるべきだ。
 だけどあの人はマーレに言った、『よろしく頼む』と。
 最後まであの人は俺に委ねてくれたんだ。
 だったら取るべき道は一つ。

「頼む!」
「!?」

 俺はマーレに向かい土下座して頼み込む。
 こんなパフォーマンスには何の意味もないかもしれないが、こうでもしないと俺の気が収まらない。

「俺は奴を倒したい! 敵討ちだけでなく俺の夢のためにも奴は倒さなくてはいけない! だから力を貸してくれ!」

「顔を上げて下さい」

 顔を上げるとしゃがんで目線を合わせているマーレがすぐそばにいた。
 彼女は慈愛に満ちた表情で口を開く。

「力を貸す? そんなの当たり前です。例え世界が敵に回ろうとも私はあなたの味方でいます」
「なんでそこまで……」
「さて、何でですかね? もしかしたらあの人のあなたを大切に思う気持ちが残ってるのかもしれませんね」
「……っ!!」

 マーレの笑顔があの人と重なり赤面してしまう。
 やれやれ、格好つかないな。

「私は絶対にあなたを否定しません。ですので堂々と振る舞って下さい。あなたは王になるお方なのですから」

 そこまで言われたら尻尾を巻いて逃げ出すワケにはいかないな。

 柄じゃないのは分かってる、分不相応なのも分かってる。
 でも、応援してくれる彼女の為にもならなくてはいけないな。

 堂々とした、王に。

「ではマーレ! 最初の命令を下す! 神を名乗る不届き者を我らが力を持って殲滅する! 力を貸せ」
「!! はい!!」

 少しノリノリだったのは、内緒だ。



 ◇



「よう、待たせたな」
『ヴァ?』

 俺は作戦会議を終え、2人で悪神アンリ・マンユの前に立つ。

「それでは作戦通りに頼むぞ」

 俺の言葉に隣の彼女がコクリと頷く。
 俺はその反応に満足すると再び前を向き言い放つ。

「殲滅開始!!」

 その言葉と共に俺は前に走り出す!
 既に強化魔法はマシマシでかけている。油断はない。

『ヴァア!!』

 悪神はそんな俺に向かって体より無数の触手を生やして、猛スピードで伸ばしてくる。
 触手に当たった岩や地面はドロドロに溶けている。当たると痛いじゃ済まなさそうだな。
 だけどそう簡単にはいかないぜ。

 スパァン!
 俺に接近した触手が突然弾け飛ぶ。
 後ろを見れば彼女が右手の指を銃の形にして構えている。
 指の先には野球の球ほどの大きさの水玉があり、次々とそれを発射して触手を倒している。

「ふふっ、心強いな」

 俺は回避行動に専念し避けきれない触手は彼女に任せる。
 おかげで俺はあっという間に奴のすぐそばまでたどり着く。

巨人兵の小刀ゴライアス・エッジ!!」

 俺は接近する勢いそのままに奴の胴体に魔法を打ち込む。
 巨大な刃は深々と突き刺さり傷口からは溶岩が流れ出るがすぐに冷え固まってしまう。

「元よりこんなのが効くとは思ってないけどな……!!」

 俺は攻撃でひるんだ隙をつき奴の顔の高さまで上昇する。
 狙うのは奴の顔面だ。

「雪崩乱刃《アヴァランチ・エッジ》!!」

 俺の手より放たれる無数の刃。
 氷属性を持つこの魔法だが特筆すべきは放たれる刃の量とスピード。
 悪神にダメージこそ与えられないが、絶えず顔面を襲う衝撃に視覚が奪われ混乱している。

「その分魔力消費も激しいけどな……!!」

 悪神は視覚を奪われて触手と両腕をガムシャラに振り回す。触手は援護射撃で何とかなるが腕は自力で避けなければならない。

「そろそろ回復するか……」

 俺は魔力貯蔵瓶《マジックポーション》を手に取り口元に運ぼうとするが……

 バシィッ!

 何と運悪く触手が手に当たり魔力貯蔵瓶《マジックポーション》を落としてしまう!

「まずい……!」

 魔力が切れたことにより俺の攻撃も止まってしまい、奴が視界を取り戻す。

『ヴァア……』

 しかし、視界を取り戻した奴が視界に入れたのは俺ではなかった。
 そう、援護していた彼女だ。

『ちぃっ……!!』

『ヴォオオッ!!』

 悪神は手に魔力を溜め即座に解き放つ。
 くそっ! 援護が間に合わない!

 ズゴオオオォン!!

 放たれた魔力の塊は彼女の体ごと周囲の大地を焼き払ったのだった。
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