スキル「共感覚」のおかげで最強の魔法使いになったので魔人を集めて魔王になることにしました 〜最恐魔王の手さぐり建国ライフ!〜

熊乃げん骨

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第五章 氷獄に吠ゆ

第8話 誰がために

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 次の日の早朝。
 日が昇ると同時に俺たちは出発の準備を整え用意された宿を後にした。
 村の人たちは俺たちを最大限にもてなしてくれ、昨日までの疲労が嘘のように体が軽い。

「あん? なんか騒がしいな?」

 確かに早朝だというのにあちこちで村人が慌ただしく動いている。
 何かあったのだろうか。

「これはこれはおはようございます。よく眠れましたかな?」

 俺たちが不思議がっていると村長に話しかけられる。
 寒さのせいで髭が少し凍っていて笑いそうにるのをこらえ、俺は質問することにする。

「おはようございます村長殿。おかげさまで皆元気になりました、本当にありがとうございます。ところで村が騒がしいご様子ですが何かあったのですか?」
「なに、心配ありませぬ。村のはずれに大きな魔獣が現れたようですが今はもう村を離れた様子です」

 村長の話によるとその魔獣はここより北。人が踏み込めないほどの豪雪地帯に行ったようだ。
 それなら基地までの道のりでかち合うことはなさそうだな。
 しかし、ただ一人ヴォルクだけはその話を聞いて眉をしかめていた。

「なあ村長さんよ……その魔獣、何か変わったところはなかったか?」

「変わった所とな……うむ、そういえばその魔獣を見かけた者が変なことを言っとったな」
「変なこと?」

「うむ、『その魔獣は角がない狼だった』と言っとったわ。そんな魔獣聞いたことないが本当なのかのう」

「……やっぱりか」
「どういうことだヴォルク!?」
「朝起きた時からあの銀狼の匂いがしてたんですよ大将。確かに匂いはここより北に向かって伸びていやがる」
「ここより北……」

 さっきの話からするとここより北は豪雪地帯。そうなると銀狼の捜索は今以上に困難になってしまう。
 今すぐ軍を潰したとしても移動を含めて一日はかかってしまうだろう、銀狼《やつ》の移動速度を考えると一日のロスは大き過ぎる。
 ほぼ間違いなく俺たちが追いつく頃には豪雪地帯に入ってしまうだろう。

「どうかされましたか?」

 考え込む俺たちに村長が不思議そうに尋ねてくる。
 隠していてもしょうがないので俺はロシアまで来た理由を村長に話した。

「なるほど……さすればそちらを優先しなされ」
「しかし……」

「もとよりこれは村人《われわれ》の問題。そなたたちはそなたたちの事を優先するべきですじゃ」
「ぐ……」

 実際問題ここで銀狼《ターゲット》を逃すのは非常にマズい。
 しかし魔人を助けるのは魔王国の最上目的である。
 俺は……どうしたら……

 その時、悩む俺の首に大きく太い腕が巻かれた。

「なに悩んでんだ大将。ここに頼りになる右腕がいるってのによう」
「ヴォルク……!?」

「俺が銀狼《やつ》とやる。大将たちはサクッと基地を潰してきてくれ」
「しかし……!」

 あの銀狼の力は非常に高い。
 ヴォルクといえど一対一では勝ち目は非常に薄いだろう。援軍も頼れない状態でそれは危険すぎる。

「かかか、心配してくれるのは嬉しいけどよう。少しは俺を信用してくれないか? 俺だって魔王国の幹部、あんな獣畜生に遅れはとらねえぜ」

 ヴォルクは「それに……」と前置くと真剣な面持ちでこう締めくくった。


「あんたに救われたこの命、あんたの為に使わせてくれ。お願いだ」







 ◇




「良かったのですか?」
「何がだ?」

 俺と火凛は現在雪原を猛スピードで移動中だ。
 荷物を村に置いてきたおかげで以前より数段動きが軽やかだ。

「とぼけないでください、ヴォルク様のことですよ」
「あいつが大丈夫と言ったんだ、大丈夫だろ」
「むう……」

 火凛が不安になる気持ちもよく分かる。
 実際俺だって面に出してないだけでめちゃくちゃ不安だ。

 しかし、あの目。
 強固で純粋な意思を感じるあの目を受けた時、不思議と俺はこいつなら大丈夫だと思ったんだ。

「それより、ほら基地が見えてきたぞ。早く片付けて加勢に行こうじゃないか」
「……かしこまりました」

 俺たちの前に現れたのは巨大な門と城壁。
 基地はこの中にあるおかげで魔獣に襲われない様だ。

「してジーク様。どのように攻め込まれるおつもりですか?」
「決まっている、正面突破さ」

 俺はそう言うと20mはあろう石造りの門に手をかけ、力込める。

「ふっ…………んぬあっ!!!」

 俺の掛け声とともにすさまじい力で押された門は、ガゴンッ!!と凄まじい音を鳴らしながら俺たちの前方にすっ飛び基地に直撃する。
 突然の出来事に驚いたのか火凛は「きゃ!!」と小さく悲鳴を上げる。
 可愛い奴だ。

「はは、どうやら外開きの門だったみたいだな」
「『はは』じゃないですよ!! びっくりしました!!」

 こんな風に俺たちがのほほんと会話していると一人の人物が近づいてくる。

「おやおや誰かと思えばあなたたちですか、いったい何のごようですかな?」

 あの時助けた軍人だ。
 確か名前はグレゴリーだったかな?

 それにしてもこんな状況だってのに落ち着き払ってやがる、思っていたより大物みたいだな。
 それとも基地に門が突き刺さっていることに気づいてないのか?
 ……いや、それはないか。

「昨日ぶりですね軍人殿。実は昨日の借りを返してもらいに来たんですよ」
「ほう、それにしては随分な挨拶ですね。その内容によってはこちらも出るとこ出させてもらいますよ?」

 グレゴリーが右手を上げると続々と基地から魔戦車が飛び出し、俺たちを包囲する。
 実に統率の取れた動きだ、しっかり訓練しているのが見て取れる。

「まず一つ、お前らが捕まえた村の人たちを解放するんだ」
「それは難しいですね。魔人を捕らえたのは閣下の命令、私個人の権限ではどうしようもありません」

 グレゴリーは両手を低く上げおどけながらそんなことを言う。

「そうか……それは残念だ。では二つ目のお願いで妥協するとしよう」
「それは賢明な判断だ。我々と敵対したくないだろう? 仲良くしようじゃないか」

 思ってもない事言いやがって。
 こいつの目は魔人を道具か何かとしてしか見てない目だ。
 俺の事もうまく利用出来たらラッキーぐらいのものだろう。

「そうだな……時間を取らせるのも悪いし簡単なものにしよう」
「ほう、無欲だな。何が欲しいんだ」


「そうだな、てめえら全員のやっすい首で我慢してやるよ。はじから切り落としてやるから整列しなクソ野郎どもが!!」

「…………っっ!!! 全員構えっ!!」

 ジャコン!! と一斉に砲身が俺たちにロックオンする。
 どうやらやる気になったみたいだな。

「さあてごみ掃除の始まりだ!」
「はあ、一筋縄では行かなそうですね」
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