スキル「共感覚」のおかげで最強の魔法使いになったので魔人を集めて魔王になることにしました 〜最恐魔王の手さぐり建国ライフ!〜

熊乃げん骨

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第五章 氷獄に吠ゆ

第6話 発見

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「ええっと、グリゴリーさん……だったかな? 危ない所をありがとう。たいした戦車だな」

 俺は差し出された手を握り返しながらそう称賛する。
 ちなみにここで自らの名を明かすような愚行はしない。ロシアと敵対する気は無いが、別に友好を結ぶ気もないからな。

「そうだろう!我がロシア軍の技術力は世界一だからな! あの魔王国にだって負けはしない、いや上回っている事だろう!」

 まるでこちらを嘲るかのようにそう言い放つグリゴリー。

 こいつカマかけてやがんな?
 そんな見え見えの罠に引っかかるわけ……

「ア゛ア゛ン?」

 いたわ。
 しかも身内に。
 思いっきりガン飛ばしてるじゃないか……勘弁してくれ。

「少し黙っててください」
「ふぐっ!!」

 俺の胸中を察してくれた火凜の肘うちによりヴォルクは腹を押さえその場に崩れる。
 よくやった。

「ん? そちらの御仁はどうされたのかな?」
「気にしないでくれ。変なものでも食べたのだろう」
「そうか……可哀想に」

 勝手に可哀想な奴扱いされてるのは可哀想だが自分で蒔いた種だ。
 反省してくれ。

「ところでこの後時間はあるかな? よければ基地に案内させて欲しいんだ」

「基地?」

「ああ。ここより北東に進んだところに我らの基地がある。たいしたおもてなしは出来ないが暖かい食事と寝床ぐらいは用意できるぞ」

 予想外の申し出に思わず腹がグゥと鳴ってしまう。
 ここ数日は大したものを食えてないからな……
 久しぶりにゆっくりしたい、だけど

「申し訳ないが遠慮させていただくよ。先を急いでいてな、すまない」

 先をい急いでいるのも事実だが、何より彼らを信用できない。
 一見悪い人間には見えないが人間はどこまでも残酷になれる生き物だ。こいつらも裏でどんなことをやってるか分かったもんじゃない。
 考えすぎかも知れないが、俺の選択ミスは仲間の生死にも直結する。
 迂闊な事は出来ない。

「そうか……ならば引き留めまい。もし何か困ったことがあればいつでも訪ねてくるといい、私にできることなら力になろう」

 そういうとグリゴリーは地図を取り出し基地の場所を書き込むと俺に手渡してくる。
 義理堅い奴だ。もしかしたら悪い奴じゃないのかもしれないな。

「これはどうも。何かあったら遠慮なく頼らせてもらうよ」

 俺がそう言うとグリゴリーはニカッと白い歯を輝かせ、再び俺と固い握手をする。
 こういうのも悪くないな。
 城に引きこもっていては出来ない経験だ。

「じゃあな、また会おう」
「ああ、待ってるぞ」

 俺たちとロシア軍の連中はそう言葉を交わすと別れる。

 そして、この時の約束は意外な形で果たされるのだった…………




 ◇



「くそっ! まだ追いつけないのか!?」

 俺たちはロシア軍と別れた後必死に銀狼の去って言った方向を走っていた。

「視界も悪くなった来たましたね。本当にこっちであってるのでしょうか?」

「方向は間違いねえ。あのヤローの匂いならばっちり覚えたからな」

 ヴォルクが自慢げに自分の鼻を指さす。
 頼もしい限りだ。

「ぞれにしても偶然かは分からないが……この方向、最果ての村がある方向と一致している」

 俺は懐から出した古めかしい方位磁針を出してそう結論付ける。
『魔導路針《まどうじしん》』と呼ばれるこの魔道具は古くから使われている魔道具らしく、今回の旅にあたりテレサに借り受けた物だ。

 目的地を記録させると針はその位置を指し示し続ける便利なアイテムで、何より素晴らしいのは魔力を供給しなくても効果を発揮してくれるところだ。
 おかげで魔道具の使えない俺でも問題なく使うことが出来る。

「あの銀狼はとてつもなく強い……いくら魔法使いの村だとしても危ないですね」

「そうだな」

 テレサの話では最果ての村の魔法使いは外界との交流をほとんどせず、独自の魔法文化を築いているらしい。
 もっと詳しい事も知りたかったのだが、なにぶん100年以上前に一回行っただけらしくあまり細かい事は覚えていなかった。

「ここでいくら悩んでも仕方ない。ひとまず村に向かうとしよう。進路はあまりズレないはずだ」

 村が襲われているなら助けなくてはいけない。
 例え友好的でなかったとしても困っている魔人は助けなければならない。
 それが俺の存在理由なのだから。

 もし無事なら銀狼追跡を再開すればいいだけだしな。

「んっ? 大将!! 人の匂いがするぜ!!」

 銀狼との距離はまだ離れているはずだが、確かに吹雪の向こうに村のようなものが見えてきた。
 時間的に考えて銀狼が村を襲ったとは考えにくい。これなら村は無事そうだな。

「よかった……」

 俺はそう呟くと胸をなでおろす。
 もう魔人が傷つくのを見るのはたくさんだ。

「よし! ならば予定通り銀狼追跡を第一目標に……」
「いや、ちと様子がおかしいぜ大将」
「ん?」

 吹雪を抜け視界が良好になった瞬間、俺はヴォルクの言った意味を理解する。

「何だよこれ……」

 それは壊滅した村の姿だった。

 立派であっただろう入り口の門は崩れさり、ほとんどの家屋は穴だらけになっている。
 数少ない田畑も酷く荒らされており、このままでは生活も困難であろう。

「くそっ……!! ここでも・・・・そうなのかよ!!」

 人里離れた秘境ですら魔人《おれたち》は平穏に暮らせないのか!?

「大将!! どうしますか!?」
「愚問だ!!」
「へへ、その言葉を待ってましたぜ!」

 こうして俺たちは急ぎ最果ての村に突入するのだった。
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