スキル「共感覚」のおかげで最強の魔法使いになったので魔人を集めて魔王になることにしました 〜最恐魔王の手さぐり建国ライフ!〜

熊乃げん骨

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第七章 憤怒の果てに

第13話 本当の気持ち

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 シェンの口から語られたのは到底信じられない事実だった。
 俺がたいした人間じゃない事を知っていただって……!? そんなはずがない。だったらなぜお前らはそんな俺の言う事を今まで聞いていたんだ!?

「ありえねえ……そんなことありえねえ! 知っていただって!? 馬鹿も休み休み言えっ! 知っていたならなぜお前はそいつの言う事を聞いていたんだ!?」

 ラースは俺も抱いている疑問をシェンに投げかける。

「正直私も最初は仲間になる気など毛頭もありませんでした。仲間になったふりをして内部に忍び込み、何か大事なものを盗んでやろうと思っていました」

「おいおいそんなこと思ってたのかよ……」

 俺が最初に抱いた危機感もあながち間違っちゃいなかったってワケだ。

「そして初めてジーク様に直接お会いした時、私は体に電流が走るほどの衝撃を覚えました。震える体を押し隠し、それでも必死に強がりながら国のトップとして振る舞うあなた様を見て私は自分の矮小さを恥じました」

「シェン……」

 まさかこいつが俺を見てそんなことを考えていたなんて思いもしなかった……。
 なんとか騙せてると思ってた自分が恥ずかしいぜ。

「きっと他の者も同じでしょう。己の力のなさを理解しながらも前線で戦うジーク様を我々は心より慕っているのです。だから安心してください。あなたは……一人ではない」

 その瞬間。
 俺の胸の奥にずっと刺さっていた棘がスッと抜かれたような気持ちになった。

 俺はずっと後ろめたかったんだ。
 俺を信じてくれる彼らを欺いていることが。

 でもそれは違うと分かった。彼らは俺に騙されるほど愚かではなかったし、俺を見限るほど薄情ではなかった。

「だから一緒に戦いましょう。あの不届きものを倒し、また我らを導いてください」

「ああ、ああ……」

 機械の体でよかった。生身の体だったら涙で戦うどころではなかっただろう。
 俺は胸に滾る熱い気持ちを闘志に変え、シェンの横に並び立つ。

 ラースはそんな俺達を忌々しげに睨みつけながら吐き捨てるように言う。

「……どうやらあくまでオレ様に歯向かうつもりのようだな。後悔するぞ」

「残念だったな。こいつはお前じゃなくて俺がいいってよ」

「ほざけっ!!」

 ラースは怒り狂った様子で無数の刃を飛ばしてくる。
 以前状況が悪いのは変わってない。どうする!?

「ここは私にお任せを」

 シェンはそう言って俺を守るように前に出てくる。

「魔王国幹部シェン=レンの名において防衛装置の起動を認証する!」

 シェンがそう叫ぶと床からぶ厚い魔法障壁がせり上がりラースの攻撃から俺達を守ってくれる。
 これは俺が作った魔王国の警備システムの一つじゃないか。停止していたはずなのになぜ?

「フフ、こんな事もあろうかと警備システムの全権はこっそり私が握っていたのですよ。あやつが不穏な動きを見せたときからこんな事もあろうかと策を講じていたのです」

 シェンは悪人も逃げ出すような凶悪な笑みをこちらに向けながら得意げに言う。

 なんだこいつ有能すぎか?
 だから警備システムは俺を襲わなかったんだな。
 しかもそれだけじゃなくここからは警備システムは俺の味方をしてくれる。

 これなら、これならいけるかもしれない!

「シェン! 援護を頼む! 一気にカタをつけてくる!」

「フフフ! お任せ下さい!」
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