スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ

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12 ちょっと強めに振る

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♢♦♢

~洞窟内・空洞前~

「――聞こえた。もう真横だ」
「バウ! バウ!」
「怒ってるのか? だから何度も迷ってごめんって言ってるだろう。まさかここまで道が入り曲がってるとは思わないよな普通。お陰で凄い遠回りしちゃったな。
って言うか、初めから洞窟の壁なんて壊して進めば良かったよなハク」
「バウ」

 道に迷った俺とハクは、何度も何度も魔法団に近付いては遠ざかり、また近づいては遠ざかりを繰り返していた。直ぐ近くにいる筈だったののに道がグニョグニョ蛇行しているせいで大変な目に遭った。

 そんな下らない事をしている間に、いつの間にか魔法団の奴らはノーバディ本体と思われる魔力と対峙していた上に今では多くの足音がどんどん遠くへと走り去っている。

 恐らく真横から感じるこの強い魔力がノーバディ本体であり、大方それを討伐出来なかったアイツらが慌てて逃げているんだろう。

「良かった。あの子も何とか生きているみたいだな」
「バウ!」

 壁の向こうからさっきの女の子の声が確かに聞こえた。その声は消えそうな程小さいし魔力もほぼ感じられない。だが幸い命はある。

「行くぞハク」
 
 ――ドォォォォンッ!
 俺は洞窟の壁を破壊し、広い空洞へと出た。

 すると、思った通り今までとはレベルの違うノーバディの姿と、今まさに奴に食べられそうになっている彼女の姿を捉えた。辺りには他にも多くの魔法団員達が倒れており、皆夥しい量の血を流していた。

 もう息のある者は彼女以外いない。

 突如俺が壁を壊した事により、ノーバディと彼女はほぼ同時に俺の方を向いていた。彼女は余程怖かったのだろうか、その大きな瞳からは涙が溢れている。

「生きてて良かった。これでハクも安心しただろ?」
「バウッ!」
「あ、貴方は……!」

 安易に大丈夫と言える状態ではない。それは勿論分かっている。だが何よりも命があった。それが1番重要だ。ごめんな、もっと早く助けてあげられなくて。

『ャッヴォヴォォォォォォァァァッ!』
「うるさいな。洞窟で余計に音が響くって分からないのかこの馬鹿は」

 何を思っているのかまるで分からないが、4つ頭のノーバディは俺に気付くなり雄叫びを上げて威嚇してきた。馬鹿だが本能は察知している様だな。

 目の前の俺がお前よりも強いという事に――。

「貴方はさっきの……。いや、そ、それよりも……早く! 早く逃げて下さい……ッ! このモンスターは魔法団でも敵わなかったのッ!」

 自分が死にそうな状況なのに、なんて優しくて強い子なんだろう。

「ハハハ、大丈夫。俺は逃げないし、君を絶対に助ける」
「……!?」
『ギィゴゴァァァ!』

 次の瞬間、ノーバディの1つの頭が汚い大口を開けて襲い掛かってきたが、俺は抜いた剣を軽く振って奴の頭を切断した。

 ――ザシュ。
『ヴァッギッ……!?』

 斬った奴の頭がボトッと地面に落ち、切断した場所から緑色の血が溢れ出る。

「嘘……。エンビア様の魔法でも無傷だったのに……」

 彼女は目を見開いて驚いていた。
 ノーバディは頭を斬り落とされ、藻掻きながら悲鳴の様な呻き声を上げている。そのまま戦意喪失するかとも思ったが、奴は残りの3つの口を大きく開き魔力を練り出した。

「やっぱコイツがあの触手の本体か。お前がまだやる気なら付き合ってやるよ。また王都に向かってる途中で襲われても面倒だからな。
ハク、あの子の所に行ってろ。アイツ片付けてくるから」
「バウワウ!」

 俺はハクを彼女の元へ向かわせ、距離を取る為ノーバディを空洞の奥へと誘導する。そしてまんまと付いてきたノーバディは魔力が溜まったのか突如動きを止め、口に蓄えた眩い魔力を俺に放ってきた。

 ――スパァァン。
『……!?』

 しかし、奴が放ってきた魔力の咆哮は一振りで相殺。そしてノーバディに止めを刺すべく俺は剣を振りかぶり、久しぶりにちょっとだけ強めに振るった。

「これで終わりな」

 ――ドパァァァン!
 俺の放った一撃によってノーバディの巨体は勢いよく弾け飛ぶ。

「うわー、やっぱ気持ち悪いな。踏まない様に気を付けないと」

 辺りに散らばったノーバディ肉片と緑色の液体に気を付けながら、ハク達の元へ駆け寄った。

「大丈夫だったか?」
「バウ」
「君はどう?」

 俺はハクの横にいた彼女を見ながら言った。

「あ、はい……何とか大丈夫です……。また助けて頂き、本当にありがとうございましたッ……!」
「だから礼なんていいって。それより、流石にコレは医者に診せないとマズいな」

 彼女の足を潰していた岩をゆっくりと持ち上げると、色白の細い脚がとても痛々しい色に変色して腫れあがっていた。見るからに酷い状態というのが分かる。

 こういう時に回復魔法でも使えればと、無い物ねだりな事を考えながら、俺はせめてもの応急処置にと彼女に薬草を塗った。だがコレはあくまで擦り傷を治す程度。この足の怪我は医者に連れて行かないと治せない。

「俺が担ぐから直ぐ医者に行こう。本体は倒したけど洞窟内にまだ沢山いるから」
「あの……本当にありがとうございます! 何とお礼をすればいいか……」
「だからいいってそんなの。それより君名前は?」
「あ、私はエミリアです……。エミリア・シールベス」
「エミリアね。俺はグリム。宜しくな」

 軽く自己紹介を済ませ、俺が洞窟から出ようとエミリアを担ごうとした時、徐にハクがエミリアの足の上にそっと覆い被さった。

「お、おいハク何してるんだよ。足怪我してるんだぞ!」
「ワウ」
「え……?」

 さっぱり理解出来ない行動。
 そっと触れただけでも激痛が走りそうな彼女の足にハクは乗ってしまった。反射的に焦った俺は慌ててハクを動かそうとしたが、そんな俺を他所に、エミリアは不思議そうな表情で自らの足に覆い被さるハクを見ていた。

「あれ?」
「どうした? やっぱ痛いんだろ? 早くどけってハク!」
「ち、違うんです……! 痛いどころか……逆に何か痛みが和らいでいる様な――」

 え、そんな訳ないだろ。
 予想外過ぎたエミリアの言葉に俺は思わず心の中でツッコんでしまっていた。だってこんな酷い怪我に……。

「バウワウ!」
「ハク?」

 変わらずエミリアの足に覆い被さっているハク。
 しかしよく見ると、青紫色に腫れあがっていた彼女の足が瞬く間に治っていた――。
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