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91 新たな世界
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♢♦♢
~リューティス王国~
見事深淵神アビスを倒した俺達。
あれから早くも数ヶ月が経ち、世界は大きな変化を見せていた。
深淵神アビスの力が無くなった事により、スキルの力を失った多くの人間達は皆大いに戸惑った。だがハク達3神柱によって今回の全貌を伝えられた多くの民達はリューティス王国やスキルの歴史、そして国王やアビスの思惑、終焉の真相等全てを知らされた。
真相を知った民達はスキルや武器の力を忌み嫌ったが、その力によって王国や暮らしが豊かになり平和になっていたのも事実であったと改めて思い知らされた。既にスキルの力がほぼ全ての民にとって必要不可欠な力であると悟ったハク達は、消え去ったアビスの力の代わりに自分達の魔力を新たな力として与えてくれたの。
しかしこれはアビスの様に戦う為の力ではない。国、人、動物、モンスター……生きとし生けるもの全てが平和で豊かに共存していける為の力だとハク達は皆に伝えた。
初めのうちは各地で大きな戸惑いが生まれていたそうだが、皆が、世界が少しづつ着実に前を向いて進み出していた。今の時代を作れるのは今を生きている者達だけ。この世界は大きな変化に見回れたが、それでも確実に新たな平和な世界へと動き出していた――。
そして……。
**
「もう行くのか?」
「うん。元々私達3神柱はいていない様な存在。まだまだ他の世界にも行かないといけないから」
「そうなんだね……。寂しいな」
深淵神アビスとの壮大な戦いに終止符が打たれ、世界も徐々に落ち着きを見せ始めた頃、ハク、イヴ、ドラドムートの3神柱はこの世界を離れる事になった。
とは言っても元からハク達は神の存在。今回は俺達の世界がアビスによって滅ぼされるのを防ぐ為に、彼女達は来るべき日に備えてその身を潜ませていたに過ぎない。本来であればいる方が稀なケースだと言っていた。だから使命を終えたハク達がこの世界から離れるのはごく自然な流れだろう。
「ヒッヒッヒッヒッ。まぁアンタら人間は寿命が短いからねぇ。死ぬ時までに会えるか分かったもんじゃない」
「ちょっとイヴ! そんな言い方しないでよ」
「本当の事を言って何が悪いんだいシシガミや」
ハクもイヴも相変わらず。世界が変わってもここだけは何も変わらない。
「短い時間だったとはいえ、改めて別れとなると名残惜しくもある。次会う時には主と過ごした辺境の森も、今よりもっと元気な姿で拝みたいものだ」
「そうだな。アビスを倒して一気にやる事もなくなったからさ、俺が頑張って森を回復させるよ。俺の家でもあるからな」
「グリムが初めて森に訪れた日がつい昨日の事のようである。己で墓も建てたから、余生も心配いらぬな」
「ハハハハ! 確かに」
多くの民が自然と3神柱を崇拝する様になった事により、ハク達はこの世界で本来の力を取り戻していた。だからドラドムートも今では最初に見たあの黒龍の姿に。改めて見ると凄い存在感だよな。普通に会話しているのが何か可笑しくて笑えてくる。
「それじゃあそろそろ行きましょうか」
「今回は大分体力を使ったからねぇ。暫く静かに時間を過ごしたいものだ」
「どの世界も平和ならばそうなるだろう」
そう言うと、ハク達は神々しい光にその身を包んで空に飛びあがった。
「グリム、エミリア、フーリン。絶対にまた会おう! 元気でね!」
「おう。お前達も元気でな!」
「ゔゔッ……ハクちゃん、イヴ……ドラドムート……!」
「げッ、泣くなよエミリア」
「結局お前達と手合わせ出来なかったな。今度来た時は必ず手合わせしてくれ」
「泣いてるエミリアもだけど、それもどうかと思うぞフーリン」
何時もの様な他愛もない会話。俺達はそんな言葉を交わしながらハク達に別れを告げた。
「じゃあな、ハク! イヴ! ドラドムート! 生きていたらまた会おうぜ! お互いにな――!」
そう言いながら大きく手を振る俺達。
ハクがこちらに手を振り返すと、ハク達は強い光に包まれるや否や天高く舞い上がっていった。
ハク達のその光は一瞬で空の彼方へ消えると、そのまま見えなくなってしまった。
「行っちゃったな」
「ゔゔッ……! そうやって泣かせるような事言わないでよグリム!」
「別にそんなつもりは全くないんだけど」
「さてと、じゃあ俺はもう行くぞ」
「お前はお前で切り替え早いなおい」
「今度は何処に行くの? フーリン」
「それは決まっていない。きっとまだまだこの世界には俺の知らない強者が沢山いるだろうからな。全員と手合わせを願うだけだ」
「途方の無い旅だなそれはまた。エミリアはどうするんだ?」
「私は特に明確な予定はないけどこの間お父さんから連絡があって、近々会うつもりなの」
「そうなのか。良かったなエミリア!」
「うん、ありがとう。グリムはどうするの?」
エミリアの何気ない問い掛けに、俺は頭を悩ませた。
「う~ん、そうだなぁ……俺も別にする事無いんだよな。でもずっと森にいたからさ、ちょっと外の世界に触れようかなと思ってる。ちょろちょろ出歩きながらドラドムートと約束した通りに、俺はこの森も少しづつ元の姿に戻したいな」
「そっか。私に手伝えることがあったら何時でも言ってねグリム。フーリンもね」
「ああ」
**
こうして、俺達の壮大な旅は幕を下ろした。
思い返せば本当に色々な事があり、毎日がとても濃厚な日々だった。
深淵神アビスを倒すと言う大きな役割は何とか果たす事が出来たけど、俺達の人生の旅はまだまだこれからだろう。今回の様な事はきっとこれからの長い人生の中でも極めて特殊。だが一瞬先から何が起こるのか分からないのが人生だとも今回の事で体感した。
世界は俺が思っている以上に広く壮大だ。
そんな世界を少しづつ自分の目で見て肌で感じるのも悪くないかもな。
さてと……意外とこれは忙しくなりそうか?
まぁ何を始めるにしても色々準備しないといけない。
ホント、この間までの自分からは想像出来ない生活になっているもんな。
「おーい! 何ボーっとしてるのよグリム! 先行っちゃうよ」
「あ、悪い悪い。ちょっと待ってくれって。別にそんな急がなくてもいいだろ――」
俺はいつの間にか先を行ってしまっていたエミリアとフーリンの元へ走って向かう。
走りながら俺は不意にハク達が舞い上がっていった空を見上げていた。
また会おうな、皆で――。
【完】
~リューティス王国~
見事深淵神アビスを倒した俺達。
あれから早くも数ヶ月が経ち、世界は大きな変化を見せていた。
深淵神アビスの力が無くなった事により、スキルの力を失った多くの人間達は皆大いに戸惑った。だがハク達3神柱によって今回の全貌を伝えられた多くの民達はリューティス王国やスキルの歴史、そして国王やアビスの思惑、終焉の真相等全てを知らされた。
真相を知った民達はスキルや武器の力を忌み嫌ったが、その力によって王国や暮らしが豊かになり平和になっていたのも事実であったと改めて思い知らされた。既にスキルの力がほぼ全ての民にとって必要不可欠な力であると悟ったハク達は、消え去ったアビスの力の代わりに自分達の魔力を新たな力として与えてくれたの。
しかしこれはアビスの様に戦う為の力ではない。国、人、動物、モンスター……生きとし生けるもの全てが平和で豊かに共存していける為の力だとハク達は皆に伝えた。
初めのうちは各地で大きな戸惑いが生まれていたそうだが、皆が、世界が少しづつ着実に前を向いて進み出していた。今の時代を作れるのは今を生きている者達だけ。この世界は大きな変化に見回れたが、それでも確実に新たな平和な世界へと動き出していた――。
そして……。
**
「もう行くのか?」
「うん。元々私達3神柱はいていない様な存在。まだまだ他の世界にも行かないといけないから」
「そうなんだね……。寂しいな」
深淵神アビスとの壮大な戦いに終止符が打たれ、世界も徐々に落ち着きを見せ始めた頃、ハク、イヴ、ドラドムートの3神柱はこの世界を離れる事になった。
とは言っても元からハク達は神の存在。今回は俺達の世界がアビスによって滅ぼされるのを防ぐ為に、彼女達は来るべき日に備えてその身を潜ませていたに過ぎない。本来であればいる方が稀なケースだと言っていた。だから使命を終えたハク達がこの世界から離れるのはごく自然な流れだろう。
「ヒッヒッヒッヒッ。まぁアンタら人間は寿命が短いからねぇ。死ぬ時までに会えるか分かったもんじゃない」
「ちょっとイヴ! そんな言い方しないでよ」
「本当の事を言って何が悪いんだいシシガミや」
ハクもイヴも相変わらず。世界が変わってもここだけは何も変わらない。
「短い時間だったとはいえ、改めて別れとなると名残惜しくもある。次会う時には主と過ごした辺境の森も、今よりもっと元気な姿で拝みたいものだ」
「そうだな。アビスを倒して一気にやる事もなくなったからさ、俺が頑張って森を回復させるよ。俺の家でもあるからな」
「グリムが初めて森に訪れた日がつい昨日の事のようである。己で墓も建てたから、余生も心配いらぬな」
「ハハハハ! 確かに」
多くの民が自然と3神柱を崇拝する様になった事により、ハク達はこの世界で本来の力を取り戻していた。だからドラドムートも今では最初に見たあの黒龍の姿に。改めて見ると凄い存在感だよな。普通に会話しているのが何か可笑しくて笑えてくる。
「それじゃあそろそろ行きましょうか」
「今回は大分体力を使ったからねぇ。暫く静かに時間を過ごしたいものだ」
「どの世界も平和ならばそうなるだろう」
そう言うと、ハク達は神々しい光にその身を包んで空に飛びあがった。
「グリム、エミリア、フーリン。絶対にまた会おう! 元気でね!」
「おう。お前達も元気でな!」
「ゔゔッ……ハクちゃん、イヴ……ドラドムート……!」
「げッ、泣くなよエミリア」
「結局お前達と手合わせ出来なかったな。今度来た時は必ず手合わせしてくれ」
「泣いてるエミリアもだけど、それもどうかと思うぞフーリン」
何時もの様な他愛もない会話。俺達はそんな言葉を交わしながらハク達に別れを告げた。
「じゃあな、ハク! イヴ! ドラドムート! 生きていたらまた会おうぜ! お互いにな――!」
そう言いながら大きく手を振る俺達。
ハクがこちらに手を振り返すと、ハク達は強い光に包まれるや否や天高く舞い上がっていった。
ハク達のその光は一瞬で空の彼方へ消えると、そのまま見えなくなってしまった。
「行っちゃったな」
「ゔゔッ……! そうやって泣かせるような事言わないでよグリム!」
「別にそんなつもりは全くないんだけど」
「さてと、じゃあ俺はもう行くぞ」
「お前はお前で切り替え早いなおい」
「今度は何処に行くの? フーリン」
「それは決まっていない。きっとまだまだこの世界には俺の知らない強者が沢山いるだろうからな。全員と手合わせを願うだけだ」
「途方の無い旅だなそれはまた。エミリアはどうするんだ?」
「私は特に明確な予定はないけどこの間お父さんから連絡があって、近々会うつもりなの」
「そうなのか。良かったなエミリア!」
「うん、ありがとう。グリムはどうするの?」
エミリアの何気ない問い掛けに、俺は頭を悩ませた。
「う~ん、そうだなぁ……俺も別にする事無いんだよな。でもずっと森にいたからさ、ちょっと外の世界に触れようかなと思ってる。ちょろちょろ出歩きながらドラドムートと約束した通りに、俺はこの森も少しづつ元の姿に戻したいな」
「そっか。私に手伝えることがあったら何時でも言ってねグリム。フーリンもね」
「ああ」
**
こうして、俺達の壮大な旅は幕を下ろした。
思い返せば本当に色々な事があり、毎日がとても濃厚な日々だった。
深淵神アビスを倒すと言う大きな役割は何とか果たす事が出来たけど、俺達の人生の旅はまだまだこれからだろう。今回の様な事はきっとこれからの長い人生の中でも極めて特殊。だが一瞬先から何が起こるのか分からないのが人生だとも今回の事で体感した。
世界は俺が思っている以上に広く壮大だ。
そんな世界を少しづつ自分の目で見て肌で感じるのも悪くないかもな。
さてと……意外とこれは忙しくなりそうか?
まぁ何を始めるにしても色々準備しないといけない。
ホント、この間までの自分からは想像出来ない生活になっているもんな。
「おーい! 何ボーっとしてるのよグリム! 先行っちゃうよ」
「あ、悪い悪い。ちょっと待ってくれって。別にそんな急がなくてもいいだろ――」
俺はいつの間にか先を行ってしまっていたエミリアとフーリンの元へ走って向かう。
走りながら俺は不意にハク達が舞い上がっていった空を見上げていた。
また会おうな、皆で――。
【完】
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