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第2章~試験と赤髪と海上ギルド~
24 お頭
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~ギルドファクトリー~
「急に呼んで悪かったねジル君」
「いえいえ、そんな事ないですよ」
騎士団入団試験の騒動から約1時間程経った時、海上ギルドの見積もりが出せたとトビオさんから連絡が入り、“僕達”はギルドファクトリーに来ていた。
「もうギルド造れるの?」
「ハハハ。相変わらず元気な奥さんだね」
彼女という響きにも実感がないのに、それを通り越して奥さんなんて言われても全然反応出来ない。
「―何だ。結婚してたのか“お頭”」
驚いている素振りもない、ごく普通のトーンでそう言ったのはディオルドさん。
「してないよ!話が進み過ぎてる」
「でも結婚するのは決まってるから遅かれ早かれよ!」
「へぇ~。じゃあ式挙げる時は呼んでくれよ。いい酒が飲めそうだ。なぁ“お頭”」
「そんな先の話分からないってば!それにその“お頭”って言うの止めて下さいよディオルドさん」
そう。ディオルドさんは僕達の仲間になりました。
いつの話だって? ついさっきだよ。
入団希望者達全員が屯所に向かっていたあの時、試験官さんとゴーキンさん、それにディオルドさんとも別れを告げた筈なのに、試験官さんとゴーキンさんが屯所へ向かおうとした瞬間、ディオルドさんは「行かない」と言い出したんだ。
♢♦♢
~15分前~
「――俺はここに残る」
唐突に言い出したのはディオルドさん。
「何言ってんだお前?」
「俺は騎士団受けるの辞めるって言ってんだ。コイツに付いて行く」
「はぁ⁉」
ゴーキンさんは勿論、僕も滅茶苦茶驚いている。だってそのコイツって、絶対僕の事だもん。ディオルドさんと目合ってるし。
「だから俺はもう騎士団に用はねぇ。ここに残るよ」
「いや、お前……本気で言ってんのか?」
「ああ」
ティファ―ナも試験官さんも驚いているな。当たり前か。いまいち掴めない人だもんなディオルドさんは。でも、今言ってる事が冗談でないと分かる。それを察したゴーキンさんも、もう同じ事を聞こうとはしなかった。
「そうか。まぁ好きにしろや。俺には関係ねぇ話だ。お前の面見なくて済むと思うと清々しいぜ」
「それはこっちの台詞だ。せいぜい受かる様に面接官に胡麻でも摺っとけ」
2人はそう言葉を交わし、ゴーキンさんは屯所へと行ってしまった。
「本当にいいのかい?」
試験官さんがディオルドさんに再度確認する。
「ああ。別にどうしてもなりたい訳じゃないしな」
「君がそう言うなら仕方ないね。その力を騎士団で使ってもらいたかったけど」
「俺の力が見たきゃ年に1回招待してやるよ。その代わりちゃんと吐くとこまで見て帰ってくれよ」
「ハハハ!それはまたユニークなショーだな。まぁ君も気が変わったらいつでも騎士団に来てくれよ。今日は本当に助けられたよ。ありがとう」
試験官さんがその場を立ち去ろうとした時、最後にディオルドさんがこんな事を言った。
「なぁ。あの図体だけの髭筋肉馬鹿だけどさ、確かに口も態度も悪いけど、クレイとは違って根性だけはあるんだ」
「分かるよ。十分見させてもらったからね」
「少しだけでいいから、アイツの態度大目に見てくれるようアンタの口から面接官に言っといてくれよ」
思いがけない言葉に、何故か僕の口が緩んでしまった。
「残念だがそれは出来ない。合否を決めるのは私ではないし、試験の結果を総合的に見て判断しなくてはならない」
返ってきた試験官さんの言葉は思ったより冷たかった。いや、それが当然の事だ。皆が真剣に入団試験を受けに来ているんだから、全てを平等に見て判断するのが当たり前。
でも今回はイレギュラーな事態が起こったとはいえ、それに対応したディオルドさんやゴーキンさんは少しぐらいプラス評価を貰ってもいいんじゃないかな? とか思う僕は甘くて、平等にジャッジする人がこんな風に私情を挟んじゃいけないよねそりゃ。
「だから申し訳ないが、いくら私や他の皆を助けてくれたとしても、君の要望は受け入れられないんだ」
「そっか。そりゃ仕方ねぇ。寧ろ今のナシにしてくれ。柄にもない事言っちまった」
「悪いね。彼が合格出来るかどうかは試験の結果次第。でもこの3日間の彼の成績なら実技は問題なく受かるだろう。後は君も気に掛けている面接だが、私が直接面接官に伝える事は“物理的に不可能”。
何故なら……今年の面接は私も担当するからね!」
悪戯な笑顔を残し、試験官さんはそう言って手を振りながら行ってしまった。
なんて粋なお返しだ。思わず鳥肌が立っちゃったよ。いい人過ぎるよ試験官さん。
「さて、じゃあ俺らも行こうかジル。いや、俺らのリーダーだから“お頭”だな。行こうぜお頭」
「やったねジル!海上ギルドに新らしい仲間が増えた!」
「待って待って!本当に僕と来るんですか?ディオルドさん」
「何だ、ティファ―ナと2人でイチャイチャギルドが良かったか?安心しろ。邪魔しねぇからよ」
「そ、そういう事じゃないですよっ!そんなに強いのにどうして僕なんかと……」
「今日俺の人生に奇跡が起きた。お頭から貰った魔力が俺に凄ぇ影響を与えたんだ。それに俺の直感が言ってるんだ。お頭といれば、この先誰も見た事が無いような面白いことが起こるってな」
真っ直ぐ僕に言うディオルドさん。だからその表情はズルいって。
「……分かりました。僕なんかでよければ仲間になって下さい。ディオルドさんがいれば怖いもの無しですから」
「ああ」
「よ~し!これでディオルドも仲間になったわね!じゃんじゃん仲間集めましょうよ!」
「別に仲間集めが目的じゃないんだよティファ―ナ」
「でもギルド建てるなら人がいて損はねぇだろ」
「まぁそうですけど」
「それと、もうその敬語やめろよな。さん付けも。面倒なんだそういうの。いくら俺のお頭でも、敬語使ったら斬るぜ」
急に物騒な言葉出たぁ~。しかもこんな時に目がマジだぁ~。
分かったよ。こりゃ変に気を遣わず思い切って普通に喋る事にするよ。
「よし。分かったよディオルド!これから宜しく!」
「おう。面白い事やろうぜお頭」
「そのお頭っていうのどうにかならない……?」
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