呪われた勇者~呪いのスキル『引寄せ』を授かった俺は、災いを引寄せると一族を追放。だが気が付けば災いどころか最強スキルばかり引寄せて最強に~

きょろ

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第4章~奴隷商会~

4-5 グレイとの決闘を引寄せ

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~王都~
 
 決闘当日――。

 グレイが指定した場所まで行くと、そこには見た事もない大きな闘技場が建設されていた。しかもどうやって呼び込んだのか、モンスター討伐会にも引けを取らない大勢の人達が僕とグレイの決闘を観戦しに来ているではないか。

「凄い人の数ね」
「これもレオハルト家の力ってやつか? 大層暇と金を持て余してるんよジークの弟は」
「恐らくグレイ様はこの決闘で、王都中に自分の方がジーク様より上だと証明したいのです」
「成程ね。自分が負けるなんて微塵も思ってないなこれは。もし負けたら取り返しがつかなくなるんよ」

 ルルカの言う通り、きっとグレイも今日全てのケリを着けようとしているんだろう。こんな事をしても無駄だとまだ分かっていないみたいだなグレイ。

「おお! モンスター討伐会優勝者のジーク君だぞ!」
「本当だ、ジークさんサイン下さい!」
「今日も絶対に勝って下さいね! 応援していますから」
「Sランク冒険者の実力を間近で見られる凄い機会だよな!」

 僕が歩いていると、大勢の人達に声を掛けられ声援を送ってもらった。まさかこんな事態になっているとは想像だにしていなかったな。

 僕とグレイの正式な決闘――。
 きっと大半の人がレオハルト家で何が起こっているのか興味津々といったところか。

 呪いのスキルと勇者スキル。
 追放者と跡継ぎ。
 兄と弟。

 皆はそういった様々な要因が絡んだこの決闘にとても関心を抱いている様子だ。

 闘技場は真ん中に広くスペースが設けられており、その周りを取り囲む様に客席がある。言わずもがなあの真ん中が僕とグレイの決闘の場。

「じゃあ行ってくるよ」
「ジーク様なら問題ないと思いますが、気を付けて下さいね」
「まぁ一瞬で片付くだろ」
「早く終わらせてまた美味しいものが食べたいわ」

 闘技場に突如響いたアナウンスによって皆はどんどん客席に移動し、僕は闘技場へと向かう為に一旦レベッカ達と別れた。

 僕はそのまま皆の視線が注がれる中央の闘技場へ。

 そして。

「お久しぶりですね……父上――」
「逃げずに来た様だな」

 闘技場の真ん中に立つ父上とグレイ。
 父は僕と一瞬だけ目を合わせた後、そのまま無言で場を後にした。

「お前の悪運も今日で終わりだ。俺が勝って真の勇者が誰かという事を全員に証明してやる!」
「勇者は自分から証明したり力を誇示する者じゃない。なるべくしてなるんだ。グレイ、もし僕が勝ったら1つだけ要求を聞いてくれないか?」
「どこまで舐めてんだテメェ! お前如きが勇者を語るな! それにもし勝ったら要求を呑めだと? ふざけるのも大概にしろよクソがッ!」
「……!」

 次の瞬間、話し合う余地もなくグレイは剣を抜いて僕に斬りかかって来た。

 ――シュバン。
 何とか反応した僕はサイドステップでグレイの攻撃を躱す。

「さぁ、さっさとお前も剣を取れ。俺はお前と呑気に話し合いをしに来た訳じゃねぇからな!」
「グレイ……。分かったよ。だったら僕も遠慮はしない。勝って無理矢理にでも僕の話を聞いてもらう」
「ハッハッハッハッ! だからテメェと話す事なんてないって言ってんだろう馬鹿が! 死ねッ!」

 殺意を全面に出したグレイは怒涛の連続攻撃を放つ。

「うらあああッ!」

 ――シュバン、シュバン、シュバン、シュバン!
 血相変えたグレイは高速で剣を振るいまくる。

「おお! 凄い剣術だ」
「流石は勇者スキルを授かったレオハルト一族」

 グレイの実力を垣間見た客席からは歓声が上がっていた。
 幼少の頃から一緒に特訓をしてきた僕には分かる。グレイには剣術の才能もあって実力が高いという事を。更に勇者スキルを手にしたグレイはきっと、僕が思っている以上に実力を伸ばしている。

 そう思った。
 いや、確かにそう思っていた筈。

 だが。

「うらうらうらうらぁぁぁ!」

 何だ……この攻撃の“遅さ”は――?

 僕を騙す為の作戦なのか? 
 はたまた何かのスキルの効果か?

 それにしても何の意味があってこんなに攻撃が遅いんだ……。全部余裕で躱せてしまう。

 ――シュバン、シュバン、シュバン!
「ちっ、ちょろちょろ逃げてるんじゃねぇ! 死ねやジークッ!」

 作戦……ではないとするなら、やはりスキルの効果か。
 グレイのゴールドの腕輪が光っているから何かしらのスキルを発動しているんだ。

 だが、これは一体何のスキルだ。

 わざわざ自分のスピードを遅くするスキル? 仮にそうだとしても戦闘で使うスキルではない。だったらこれは何のスキルなんだ。

 僕はグレイの遅い攻撃を躱しながら色々と考えを巡らせていると、ある1つの結論に辿り着いた。

 もしかして……グレイは“スキルを使ってこの速さ”なのか――?

 想定外の仮説に辿り着いた僕は、グレイからのフェイントやカウンター、魔法攻撃等を考慮しながら試しに動いてみた。すると僕の仮説は真実に近付く。

 これはグレイの作戦でもなければ特殊なスキルでも何かを狙っている訳でもない。これがスキルを駆使したグレイの実力なんだ。

「うらぁぁぁ!」

 とても信じ難い結論であったが、僕は全てを確かめる為にスキルも剣も何も使わずただただ空いていた左腕でパンチを放った。

 これでハッキリする。

 グレイが何か切り札を隠しているのならその正体がッ……『ドガッ!』

「え?」
「ゔがッ……!」

 僕の左拳は全く遮られる事無くグレイの脇腹にヒット。
 食らったグレイは悶絶の表情で動きが止まった挙句、余程具合が悪くなる位置に入ったのだろうか、そのまま脇腹を抑えたまま崩れる様に地面に片膝を着いた。

「「うおぉぉぉぉ!!」」
「え……グレイ?」

 決闘に動きが見られた事により、客席は大いに盛り上がりを見せる。

「ぐッ……く、くそがッ! たまたま一撃入れたからって調子に乗るんじゃねぇぞ……! ゲホッゲホッ!」 

 歯を食いしばりながら僕を睨みつけるグレイ。

 ちょっと待て。なんだこの“弱さ”は。
 それとも僕がいつの間にか強くなっているのか?

「畜生、まさかこんなに早く使う事になるとは思わなかったが仕方ねぇ……!」
「――⁉」

 グレイが怒号交じりにそう言い放った瞬間、突如僕の足元に魔法陣が浮かび上がってきた。

「消し飛べ!」

 何が起こるかは分からなかったが、直感で避けた方がいいと思った僕が『神速』スキルを発動して足元の魔法陣から距離を取る。

 すると次の瞬間、魔法陣は強い光と共に激しい爆発を巻き起こした。

「なッ⁉ あ、あそこから躱しただと……⁉」

 今の攻撃はもしかしてグレイにとって重要だったのかな。
 何か企んでいるとは思っていたけど、その切り札がこれなら余りにお粗末だぞ。

 そんな事を思いながらも、僕はそのまま神速のスキルを駆使して一瞬でグレイとの距離を詰める。そしてそのまま剣の切っ先を顔面ギリギリの所まで突きつけた。

「あ……ああッ……」

 僕の攻撃に恐怖を覚えたのか、グレイは震えながら剣を落とすと、糸が切れた人形の如く地面に項垂れてしまった。
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