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第一章 チュートリアル
平川のノート『歴史』⑥
しおりを挟む前回、授業時間の関係で終わらせられなかったペコサ人の動きについて記す。
本来なら前回の授業で全部終わるはずだったが、先生のクラテー殿が急用で席を外してしまって中途半端に終わってしまった。
クラテー殿は自分に常識を教える先生であると同時にこの国の宰相でもある。自分よりも国家の有事を優先するのは当然のこと。
私的な原因を述べるのはこれで終了とする。これは自分が歴史について考え、その結果を記すノートなのだから。
ペコサ人はケーネセ山脈を越えるのは容易ではないと判断するや直ぐに、視線を他の方向に向けた。
彼らが住む地域の北に位置するネホヌ諸島である。ヌエニ人が『コカラ島』を占領し、フェス二人が『ホーセ島』を占領したという情報を彼らも知っている。
だが、フェス二人はムヤ人に対抗するだけで精一杯だろうし、ヌエニ人がムヤ人に負けているという情報も伝わっている為、大して脅威に感じなかった。
なお、原住民であるカムル人の抵抗は考えていなかったらしい。ヌエニ人にも、フェス二人にも負けて、強くないのだろうと彼らは思った。
その考えが彼らに大損害を出させた。
カムル人は、決して弱かった訳ではない。ヌエニ人の海でのあまりの強さを目の当たりにして、賢明な判断を下したのである。
実際、フェス二人に抵抗した時はかなり粘ったのだ。周囲の海を知り尽くした彼らがとった『海のゲリラ戦術』はフェス二人を、一時は「進出を中断させるべきではないか」という声を上げさせる程に強かった。
しかし、『コカラ島』の陥落は彼らにとって看過できないものだった。これ以上の抵抗は無駄な出血を増やすばかりだと考えた彼らは二島を譲渡することと引き換えに『保護』を求めた。
それからは前にも記したとおり、ヌエニ人とフェス二人はこれに同意してそれぞれ一島ずつ手に入れた。
重要なことだからもう一度記すが、彼らは決して弱くない。
そう、騎兵などの陸軍に特化したペコサ人のショボい海軍を退けるくらい弱くないのだ。
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