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第ニ章
ワーヒド 第4話
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様々な問題も考慮した結果、やはり冒険者ギルドの建設は必要不可欠。
シーラン伯爵を怒らせてしまうかもしれないが、それをしなければまずこっちが死にかねない。
だが、ギルドの建設にはどこかでもう一押しがいるようだ。
今回、ギルド建設の候補に挙げられているのはアーラム領だけではない。ウルバン伯爵領、グリザヤル子爵領も候補の中に入っている。
グリザヤル子爵領に建てられるのはともかく、ウルバン伯爵領に建てられるのはたまったものではない。
それをされてしまったら、その瞬間に負けが決定する。
幸いなことに、今のところ最有力候補はアーラム伯爵領だ。その訳は地理的条件にあった。
冒険者ギルド本部は東北部に新たなギルド支部を建てようとしているのは、カムディザル森林から得られる利益が膨大だからだ。
冒険者ギルドの支部をもう一つ建てたほうが収益が大きくなると予想している。
ウルバン伯爵領も、グリザヤル子爵領も位置的には近いものの、直接隣接している訳ではない。
ウルバン伯爵はウリナ地域を合併してカムディザル森林に近づこうとしたが、ウリナ地域は担保になっているだけで、まだ本当にウルバン伯爵領の一部になっていない。
だから、ウリナ地域に冒険者ギルドを建てても利益は全てうちの物になってしまう。ウルバン伯爵はそれをよしとはしないだろう。
しかし、ウリナ地域がウルバン伯爵領の一部になってしまうの時間の問題。宝石で随分と儲けたとはいえ、ウリナを買い戻す程には至らなかった。
本当に、二代目領主はどれだけの財をギャンブルに注ぎ込んだのか。
だから僕は大急ぎで冒険者ギルドの建設に取り込んでいる。
そこで、僕自身が冒険者ギルドに加入して、本部への影響力を持つことも考えた。
ヴィンセントさんとミディールの話によれば、僕はかなりの戦闘力を持っているという話だ。
案外、短時間で結構なところまで登れるかもしれない。行けなくとも、多少の後押しにはなれると思う。
「冒険者ギルドに加入なさるのですか?」
「はい、そのつもりです。冒険者ギルドの建設はアーラム領の一大事ですから。僕が冒険者として力を持てば、多少はこっちの勝算も上がるでしょう。」
こっちの世界の常識はよく知らない。だからウィンセントさんに冒険者ギルドに入る相談をしてみたが、表情を見るに思わしくないようだ。
「ワーヒド様程の強大な力があれば、魔術士ギルドに加入したほうがよろしいかと思いますが。」
うん?そんなギルドもあるのか?
これは盲点だった。というより、僕はそもそも魔術士ギルドの存在すら知らなかった。どれ程僕がこの世界の常識に欠けていることやら。
「それに、もう少しでネヴラーワ大陸全土の魔術士が集う学会がございます。そこで名を広めることができれば、冒険者ギルドも注目することでしょう。」
「では、そこに参加するとしましょう。僕は長い間人と関わらずに魔を研究していましたので、今の常識に疎いのですよ。」
あまりに常識を知らな過ぎたので、僕は不審がられないように嘘の過去をでっち上げた。
嘘の内容をまとめると大体こんな感じだ。
『僕はかなり昔から人と関わりを持たずに、魔の研究をしてきた。』以上。
いきなりのアドリブだったのだから、僕にそれ以上の設定を求めるのは酷だと思う。むしろ、褒められてもいいと思う。
余計な設定をつけて、後で矛盾していると気づかれてしまうと信頼度が落ちる。
そうなってしまうくらいなら、最初からそんな面倒な設定は端折って、一個や二個くらいの設定に止まったほうが良い。
そう、きっとそうだ。決してパニックになった言い訳ではない。
「それならば、こちらで準備を済ませておきましょう。幸いにも、今回の会場はこの国ですので、出国審査などの煩わしい手続きはありません。明後日には出発できましょう。」
「分かりました。準備はそちらにお願いしましょう。」
「私の4番目の息子のミディールも同行させて、身の回りの世話は彼に任せて頂きたく存じます。何かに役立ちましょう。」
「有り難く思います。彼とは仲が良いですし、何かと助かっています。」
これで冒険者ギルドの問題の対策は希望が見えてきた。後は学会で名を馳せれば……
…………
……………………
………………………………
僕って、何も、魔術のこと、知らないんだけど…………………
シーラン伯爵を怒らせてしまうかもしれないが、それをしなければまずこっちが死にかねない。
だが、ギルドの建設にはどこかでもう一押しがいるようだ。
今回、ギルド建設の候補に挙げられているのはアーラム領だけではない。ウルバン伯爵領、グリザヤル子爵領も候補の中に入っている。
グリザヤル子爵領に建てられるのはともかく、ウルバン伯爵領に建てられるのはたまったものではない。
それをされてしまったら、その瞬間に負けが決定する。
幸いなことに、今のところ最有力候補はアーラム伯爵領だ。その訳は地理的条件にあった。
冒険者ギルド本部は東北部に新たなギルド支部を建てようとしているのは、カムディザル森林から得られる利益が膨大だからだ。
冒険者ギルドの支部をもう一つ建てたほうが収益が大きくなると予想している。
ウルバン伯爵領も、グリザヤル子爵領も位置的には近いものの、直接隣接している訳ではない。
ウルバン伯爵はウリナ地域を合併してカムディザル森林に近づこうとしたが、ウリナ地域は担保になっているだけで、まだ本当にウルバン伯爵領の一部になっていない。
だから、ウリナ地域に冒険者ギルドを建てても利益は全てうちの物になってしまう。ウルバン伯爵はそれをよしとはしないだろう。
しかし、ウリナ地域がウルバン伯爵領の一部になってしまうの時間の問題。宝石で随分と儲けたとはいえ、ウリナを買い戻す程には至らなかった。
本当に、二代目領主はどれだけの財をギャンブルに注ぎ込んだのか。
だから僕は大急ぎで冒険者ギルドの建設に取り込んでいる。
そこで、僕自身が冒険者ギルドに加入して、本部への影響力を持つことも考えた。
ヴィンセントさんとミディールの話によれば、僕はかなりの戦闘力を持っているという話だ。
案外、短時間で結構なところまで登れるかもしれない。行けなくとも、多少の後押しにはなれると思う。
「冒険者ギルドに加入なさるのですか?」
「はい、そのつもりです。冒険者ギルドの建設はアーラム領の一大事ですから。僕が冒険者として力を持てば、多少はこっちの勝算も上がるでしょう。」
こっちの世界の常識はよく知らない。だからウィンセントさんに冒険者ギルドに入る相談をしてみたが、表情を見るに思わしくないようだ。
「ワーヒド様程の強大な力があれば、魔術士ギルドに加入したほうがよろしいかと思いますが。」
うん?そんなギルドもあるのか?
これは盲点だった。というより、僕はそもそも魔術士ギルドの存在すら知らなかった。どれ程僕がこの世界の常識に欠けていることやら。
「それに、もう少しでネヴラーワ大陸全土の魔術士が集う学会がございます。そこで名を広めることができれば、冒険者ギルドも注目することでしょう。」
「では、そこに参加するとしましょう。僕は長い間人と関わらずに魔を研究していましたので、今の常識に疎いのですよ。」
あまりに常識を知らな過ぎたので、僕は不審がられないように嘘の過去をでっち上げた。
嘘の内容をまとめると大体こんな感じだ。
『僕はかなり昔から人と関わりを持たずに、魔の研究をしてきた。』以上。
いきなりのアドリブだったのだから、僕にそれ以上の設定を求めるのは酷だと思う。むしろ、褒められてもいいと思う。
余計な設定をつけて、後で矛盾していると気づかれてしまうと信頼度が落ちる。
そうなってしまうくらいなら、最初からそんな面倒な設定は端折って、一個や二個くらいの設定に止まったほうが良い。
そう、きっとそうだ。決してパニックになった言い訳ではない。
「それならば、こちらで準備を済ませておきましょう。幸いにも、今回の会場はこの国ですので、出国審査などの煩わしい手続きはありません。明後日には出発できましょう。」
「分かりました。準備はそちらにお願いしましょう。」
「私の4番目の息子のミディールも同行させて、身の回りの世話は彼に任せて頂きたく存じます。何かに役立ちましょう。」
「有り難く思います。彼とは仲が良いですし、何かと助かっています。」
これで冒険者ギルドの問題の対策は希望が見えてきた。後は学会で名を馳せれば……
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僕って、何も、魔術のこと、知らないんだけど…………………
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