好きな世界を選んでいいと言われたんですが、多すぎるから分裂しちゃいました。

ニコニ

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第ニ章

アルバァ 第1.5話

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 ワグゼ・ヌーロはいつものようにデムラピス山脈に向かう。

 周辺の住民はグアランツァン山脈と呼んでいるが、それは正式の呼び名ではない。
 だからと言って、ワグゼ・ヌーロはそれを訂正しようとは思わなかった。

 200年程前に起きた勇者とドラゴンの闘いはあまりにも有名で、かつての呼び名を忘れさせるくらいは簡単だった。

 (それを今更訂正したところで、特に何もならない上に変な目で見られかねない。熱狂的勇者信者なら更に変なことをしでかす。)

 それが彼の実直な思いだった。
 実際、彼は酒場で一度さり気なく元の呼び名を使ったことがあったのだが、偶々近くにいた熱狂的勇者信者が『勇者様がつけた名前を否定するのか!!』と言って殴りかかった。

 その時に居合わせた他の客たちに抑えられたからヌーロは怪我こそしなかったものの、あれ以来は勇者信者からは距離を取ることにした。

 (そもそも、勇者様はドラゴンを埋めた場所を『グアランツァン洞窟』と名をつけただけで、デムラピス山脈全体の改名を仄めかした記録は一切ない!!)

 しかし、彼はそれを声に出して言ったことはあまりなかった。彼からすれば、『熱狂的勇者信者』は何か別の種族だった。話が通じないのは仕方ない。

 そうに違いない。彼はそう考えることにした。


 そして、彼がこんなマイナーの呼び名を知っているのは理由がある。
 こんな忘れ去られる寸前の呼び名を、未だに使っている業界にいるからだ。

 彼の種族はドワーフで、鉱石や金属を採掘する鉱夫をやっている。

 エルフやドラゴンなどは長命種族として名を馳せているが、あまり知られていないことにドワーフもまた長命種族である。

 ドラゴンのように万年単位で歳を数える程寿命は長くないが、エルフと同じように千年以上は生きることが可能だ。

 彼は子供の頃に父親にここは『デムラピス山脈』に教えられた。それがたったの200年程度でこんなガラリと変わってしまったことに彼のほうが戸惑った。

 そして、ここが『デムラピス山脈』と呼ばれる理由を彼は知っていた。

 今ではほぼ知る者もいなくなってしまったが、『デムラピス』という鉱石がある。そのこの鉱石から精錬した金属は『付与』や『エンチャント』に最適な金属とされている。
 この山脈からはそれが大量に採れるからそのまま『デムラピス山脈』と先人たちが名付けた。

 しかし、『グアランツァン』を封印した地として名を馳せた為、ここに鉱夫は寄りつかなくなった。
 もとの名を知る者が散り散りにこの地を去って仕舞えば、もうここに大量の貴重な鉱石が眠っていることを知る者はいない。

 ただ一人、ワグゼ・ヌーロを除いて。








 ワグゼ・ヌーロの父親のワグゼ・ピラクはドラゴンが封印されたのではなく、確実に殺されたと知っている。息子のヌーロもそれを知っていて、ドラゴンを恐れて鉱山を離れたドワーフたちを残念に思った。

 鉱夫が少なければ少ない分、儲けは増えるが、ヌーロ一人では逆に少な過ぎる。
 掘削、坑道の補強、丁寧な採掘、鉱石の仕分けなどを一人でやらなくてはならない。
 前までは父親も一緒に仕事をやっていたのだが、その父親も数年前に死んだ。

 ドワーフの寿命の限界は千年以上あるとは言ったものの、それは健康状態が良い場合であって、食い扶持もままならないヌーロの父親はそう長くは持たなかった。



 その後に、彼は知った。彼らは商人たちに買い叩かれていた。ここら一帯の鉱業が盛んな時代は商売上手なドワーフも大勢いた為そのようなことは起きなかったが、ヌーロはその大勢の中に入っていなかった。

 親子揃って商売のことに疎かった為に、適正価格など知ることもなく只管ひたすらに鉱石を掘っていた。

 町に出て父親の葬式道具を買っていた時だった、彼は商人が8倍くらいの価格で原石を売っているところを見た。
 精錬されてインゴットでもなければ、不純物を取り除こうという試みも見られない。ヌーロが渡したそのままの状態で店頭に並んでいた。

 そこそこ(ドワーフのヌーロから見れば酷く拙く、不純物がかなり混じっている)錬成されたインゴットは30倍以上の価格で売られてあった。

 ヌーロはその晩泣き止まなかった。
 本来、ドワーフの葬式は泣いてはならないという決まりがある。何故なら、死ぬことは大地の神に召されることと同義だからだ。

 なのに、ヌーロはそんなことを構うこともなくただただ泣いた。



 それから彼は賢くなった。商人を仲介せずに、彼は自分でこれインゴットを売り始めた。
 最初は店舗を構える程よ資金はなかったので露店という形式だが、彼は自分がいつか大店を開けることに疑いはなかった。

 (あんなクズさえ成功した。オレが成功しない訳がない。)










 彼は父親が死んだ二年後、ドワーフ生最高の転機と出会った。
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