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ニコニ

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スリの野望と現実

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 「オヌマ………っ様、アルダス様がお呼びです。」

 スリは歯切れが悪そうに小沼の名前のあとに様をつけて呼ぶ。やはり気に入らないのだろう、元々は自分食われる筈の存在が自分をこき使った挙句、慇懃に働かなくてはならないことが。

 しかし、それも今日で終わるとスリは思った。今日はアルダスが小沼に与えられた三日間の最後の日。アルダスはその成果を問う為に小沼を呼びつけたのだ。
 スリはニヤニヤしながら小沼を見る。この三日間、小沼が何かを製作したところは見たことがない。

 初日は慌てて手当たり次第に材料を集めたものの、何もできなかったのだろう。二日目も何も作らずにぐうたらして過ごしているところから見て、諦めたに違いない。
 スリはそう予測していた。小沼を見る目はまるで獲物を見る目だった。どの部位をどうやって食べようと考えている最中に、涎が垂れそうなのを急いで手で拭く。

 今日はアルダスだけでなく、アリス姫も小沼が何を作り出すのかを見る為に来ている。ここで粗相を見せてしまうようでは騎士にしてもらうことに遅れが生じる。
 スリは今度は自分が漆黒の鎧を身につけてナイトメアに乗って、アリスの前で陞爵する場面を想像する。

 それによって再び涎が垂れそうになるが、それをぐっと堪える。





 スリは正式な教育を受けていないから知る筈がないのだが、彼の夢想が叶うことは天地がひっくり返ることと比べても、その難易度はあまり変わらない。

 まず、ナイトメアに乗ってのところから常識的にはありえない。
 平民が王族、又は上位貴族から爵位を授かるのは確かに可能である。5~6の平民が準騎士や騎士になることは毎年の恒例、男爵位を授かるのも珍しいが、ない訳じゃない。

 しかし、乗馬して爵位を授かるのは普通ではありえない。この国の現行法では乗馬して爵位を受けようとするのは終身刑か死刑である。

 唯一の例外を強いてあげるのなら、それはが戴冠式を行う時のみである。王は貴族ではないし、爵位ではなく王位を、授かるのではなく自らが宣言するものなので陞爵という概念からそもそも離れている。

 次に、ナイトメアは気性は荒くないが、臆病でもなければ温厚でもない。故に、スリのようなが背に乗ろうとすれば永遠の悪夢を見させられて死ぬことも簡単にできない。





 最後に、ここは最も重要なところである。





 そもそも、





 小沼が失敗したからって、





 このことは、





 どうやって、






 スリが騎士になることに、







 繋がるのだろうか。
















 そう、別に小沼が失敗して実験台になったところで、それはただの逆戻りでスリの手柄ではないし、スリ以外に小沼の失敗を望んでいる者はいない。
 アルダスは小沼に、あの神々に対抗し得る遺産を再現してほしい。アリスも単純に面白いことがあればいいのではなく、小沼の手を借りて自分の姉の影響力を高めたい。

 もし、ここで小沼がしくじれば、一番の危機に瀕しているのはむしろスリだ。アルダスはともかく、アリスは我慢強い性格とは大きくかけ離れている。
 それでも、神に対抗することができる武器を作るのは凄まじく難しいということはわかっている。

 アルダスとアリスが三日間という短い期間を設けたのは小沼にプレッシャーをかける為で、別に何も作れなくたっていいのだ。
 何も出来ずに三日間が終わった時、アルダスが小沼を処断使用しているところをアリスが止めて小沼を助けて優しく語りかける。
 そうすれば、小沼はアリスに恩義を感じてアリスに自分の秘密を話してくれるかもしれない。

 その三文芝居をする為に三日間を設けたのだ。

 しかし、だからと言って彼らが苛立ちを覚えないかと言ったらそうでもない。長い年月を要するのは覚悟している。だが一刻も早く成果が欲しい。

 その苛立ちをどこかで発散しなければならない。その矛先が小沼に抜けられることはない、ならばこの実験室で一番の生命危機を面することになるのは誰なのかは、言うまでもないだろう。
 
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