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第四十七話 継承者の証
しおりを挟むウロウロしていたビクターがピタリと止まったのを見て何か良い案でも浮かんだのかとびす子は聞いてみた。
びす子:どうした。何か良い案でも見つかったのか?
ビクター:いいえ、全く・・。そもそもどうしてこんな事が起きてるのかと思ったのです。
びす子:うーん・・。カイの話だと、私とマツダ親子が邪魔だと思っている人物の仕業じゃないかって言ってたな。
ビクター:それは私も思ったのですが心当たる人物があまり思い浮かばなくて・・。
びす子:ふむ。メイからの話だと王妃が怪しいとも聞いたが?
ビクター:ええ。ここ数ヶ月ですが王妃様の行動がとても奇妙で。
びす子:王妃ってペルーサのお母さんだよね?
ビクター:そうです。パウエル様の母君は若くして流行病で亡くなられており、数年後に国王様が近隣の国から貴族の方であるオルテーヴェル様を妃にお迎えになられたお方です。
びす子:なるほど。それで王妃の奇妙な行動って?
ビクター:それがびす子様をこの国に招くという話が持ち上がった頃からでして。突然、娘であるペルーサ様をパヨペウン王国軍隊長のブルーノとの婚約を発表されたのです。
びす子:私はこの国に来たの初めてだから分からないけど、それっておかしな事なの?
ビクター:本来ならば王室の方々はオルテーヴェル様のように、近隣や諸外国からの貴族や高貴な出の方をお迎えするのが仕来たりなのですが・・。
びす子:そうなんだね。でも、何故軍人はだめなのさ。
ビクター:私達は国王の為に命を捧げると誓った身です。そのような者がペルーサ様と婚姻した場合に軍人としての職務を全うする事が出来ません。
びす子:ふむ・・。でも、ペルーサとブルーノが愛し合ってたら問題ないのでは?
ビクター:それはそうですが・・今まで二人が仲睦まじくしているところなど見た事がありません・・。
びす子:・・・って事は?
ビクター:ブルーノが怪しいと?
びす子:うん。
ビクター:ですが、ペルーサ様には王位継承権が御座いません。
びす子:え、何で?
ビクター:パヨペウン建国のお話はご存じかもしれませんが、その後のお話はびす子様は知らないのでは?
びす子:どういう事?
ビクター:パヨとペウンは二人が国王になった後、自分達の子供を結婚させ跡を継がせたのです。
びす子:それで?
ビクター:その後、パヨとペウンの子孫はオッドアイの子供が生まれるようになり、その目を持つ者に王位継承させているのです。
びす子:その話を聞くと嫌な予感しかないんだが。
ビクター:そうです。まさしくびす子様、あなた様が王位継承権をお持ちなのです。
びす子:まじか?!そういえば、ペルーサは両眼ブラウンだった。
ビクター:はい。
びす子:・・しくった。
びす子は王位継承問題に巻き込まれるとは知らずに観光気分で訪れていた自分に腹が立った。
ペルーサは何度かびす子に会いに来てくれてはいたが王位継承の話はしてくれなかった。
今思えばびす子がパヨペウン国に来る事はないだろうと思っていたかもしれないし、逆に王位継承に興味を持たれては困ると思ったのかもしれない。
だが、そもそも本人に真意を聞かないと分からないし、ペルーサが人を陥れるような人間にはびす子は思えなかった。
ビクター:びす子様・・大丈夫ですか?
何も喋らなくなったびす子を慮ってかビクターが心配そうに声かけた。
びす子:ごめん。大丈夫。ちょっと色々考えさせられちゃって・・。
ビクター:びす子様ほどの重責は私には御座いませんが、ここに来てから私も色々と考えさせれる事がありました。
びす子:うん・・。そういえば、お爺ちゃんはこの状況は知ってるのかな?
ビクター:その事なのですが、国王は数ヶ月前から体調が悪く伏せる事が多くなり、王妃が気を遣って国王には何かあっても言わないようにと言われております。
びす子:むぅ・・。じゃ今回のクーデターの事も知らない可能性があるって事?
ビクター:そうなります。
びす子:爺ちゃんが心配だなぁ。んー、他に何かおかしな事は起きてないの?
ビクター:そうですねぇ・・・・、あっ!
そういえば、宮廷魔術師のナツが同じ時期に城から追い出されました。
びす子:ナツ・・?もしかして、ジプシーみたいな格好をした人?
ビクター:そうです。ご存知でしたか。
びす子:ま、まぁ・・。
会った時はただの占い師だと思っていたが、三人の素性を言い当てたナツがパヨペウン国と関わりがある事を知って合点がいったびす子だった。
つづく
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