だって私は、真の悪役なのだから。

wawa

文字の大きさ
2 / 211

リリー 2 (3歳~)


   大きめはお父さま。大きめ女の人はお母さま。少し大きめは一番目のお兄様。小さめは二番目のお兄さま。

   今は寝転がることが仕事。だから暇な私は、彼らを目にすると取りあえず呼ぶことにしている。

   「ふぇーっ、ふぇーっ、」

   「どうした? お腹が空いたのか?」

   見つめるだけの私。毎日忙しい大きめの後ろには、厳めしい顔のおじさんが、書類の束を持ちこちらをにらんでいる。

   「あぶあぶ、ぶぶぶ、」

   意味はない。歯も生えていないので、まだ上手く話せない。だが用もなく呼ばれただけのお父さまもかわいそうなので、ベビーのスペシャル・スマイルをプレゼント。

   にこっ!

   「!!っ、見たかアロー、今、私に微笑んだぞっ!!」

   「……さようでございますね」

   スマイルに撃ち抜かれた親バカパピーを、厳めしいおじさんはクールな感想でさらりとかわす。


**
   

 健やかに、我がままに、周囲を振り回しながら成長した私は三歳になった。

 だが私、中身はもちろん三歳児ではありません。

 これってきっと、転生したのかも。

 ムフッ!

 物語かゲームのヒロイン、それとも悪役令嬢なのか、モブなのか。大きな鏡に映る自分を毎日観察。

「かわゆいかお、くろかみ、あおいめ」

 ほっぺは桃色、色白美人の小さな私。だけど目尻は猫のように上がっている。よくよく考えてみると、美人のマミーもつり目にキリッとしたお顔だち。

「なにしてるの?」

 私より二つ上、五才の小さい方の兄が背後に立った。見上げてみると、彼も同じようなねこ目のつり目。

 つまりそう、

「あくやく」

「えっ?」

 後頭部がむずっとしたので、えいっと頭を背後にそらしてみる。もちろんこれは、攻撃だ。

「わあっ!リリーっ!あぶないよっ!」

 私の攻撃は五歳児に軽くかわされ、何かを感じて逃げる彼を追いかける。だって私は悪役だから。

  「きゃはははっ!」
  「きゃはきゃはっ!」

「お坊ちゃま、お嬢さま、走ると危ないですよ!」

 いつもの係員が慌てるが、私は小さめ兄と家中を走り回った。

 (広い……、)

 部屋数、廊下、中庭は、かつての記憶のどこかのお城。この家は、きっと大金持ちである。

 手加減に私を先導する小さめ兄。だがここから先は駄目と示すように、ぴたりと止まる。私は彼に飛びついた。

   つーかまえた!

   「きゃん!」
   「きゃははっ!」

「二人とも、セオが探していたよ」

「あ、はいっ、あにうえ、リリーいくよ」

 私よりも五つ上の大きめ兄。本を片手にこちらを見ている涼しい瞳。彼はきっと、小さめ兄と私がこの先に突き進んだら、怒ろうと思っていたに違いない。

    どこから見ていたの?

  さすが悪役一家。油断ならない。

 (イケメンお兄さま、八歳なのに、切れ長瞳がクール)

   厳しく笑顔の無いクールな切れ長に、ねこ目の私は通りすがりに微笑んだ。

 にこっ!

 もちろんごまをすったのである。

 その作為にすられたごまに、大きめ兄が目尻を柔らかくゆるめたのを確認した。


感想 5

あなたにおすすめの小説

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

貧乏で凡人な転生令嬢ですが、王宮で成り上がってみせます!

小針ゆき子
ファンタジー
フィオレンツァは前世で日本人だった記憶を持つ伯爵令嬢。しかしこれといった知識もチートもなく、名ばかり伯爵家で貧乏な実家の行く末を案じる毎日。そんな時、国王の三人の王子のうち第一王子と第二王子の妃を決めるために選ばれた貴族令嬢が王宮に半年間の教育を受ける話を聞く。最初は自分には関係のない話だと思うが、その教育係の女性が遠縁で、しかも後継者を探していると知る。 これは高給の職を得るチャンス!フィオレンツァは領地を離れ、王宮付き教育係の後継者候補として王宮に行くことになる。 真面目で機転の利くフィオレンツァは妃候補の令嬢たちからも一目置かれる存在になり、王宮付き教師としての道を順調に歩んでいくかと思われたが…。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

弟に前世を告白され、モブの私は悪役になると決めました

珂里
ファンタジー
第二王子である弟に、ある日突然告白されました。 「自分には前世の記憶がある」と。 弟が言うには、この世界は自分が大好きだったゲームの話にそっくりだとか。 腹違いの王太子の兄。側室の子である第二王子の弟と王女の私。 側室である母が王太子を失脚させようと企み、あの手この手で計画を実行しようとするらしい。ーーって、そんなの駄目に決まってるでしょ!! ……決めました。大好きな兄弟達を守る為、私は悪役になります!

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。