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リリー9 (十五歳)
しおりを挟む毎年恒例となっていた、マミープロデュースの豪華絢爛お誕生日会。だが私が王族のグーさんを無視したことで気まずくなり、十五歳は身内だけで行った。
内心では、知らない人たちが集う挨拶握手会よりも、顔見知りの警備員たちとの気楽な飲食会だったので、こっちの方が楽しかった。
それはそうとこちらの世界での成人式を終え、今後の進路について、真面目に考えたいと思う。
選択肢は二つ。
悪役からの加害者レベルアップ!
だがサイコパス実験の失敗により、加害者レベルアップ出来なかった私としては、二つ目の選択肢として、脱悪役が掲げられる。
脱・悪・役!
悪役を満喫利用する気は満々だけど、悪役とは、いずれ間抜けにやられることが決まりごと。
なので速やかに、軽やかに、それとなく、なんとなく、悪役というポジションから席を立たなければならないんだ。
脱悪役に欠かせない願望として、第一に生存権の主張、そして次のステージはスローライフや飲食店の開業などがあげられる。
どれもいいよね。
でも、様々な前向き特技を頑張る悪役たちとは違い、私に趣味特技は特にない。
お料理だって、絶品卵焼きとカレーはスマホレシピ無しでいけるかな? いけないかな? フライパンしだいかな? 程度である。
間違ってもパンなんて焼けないよ。おにぎりは握れても、お米なんか炊けないし。
だから飲食店開業の願望は薄めである。
そして特に、田舎暮らしにも今のところ興味が無い。
だって今現在が、大きなお城に住んでたって、山々に囲まれた、まさに田舎暮らしそのものだから。
それに自慢じゃないけど、転生してからのこの衣装、ドレスだって一人じゃ着れないよ。背中の紐なんて、蝶々結び出来っこないよ。
あれ? なんにも出来ないじゃん?
でも近づくのは、あと少しで十六歳という現実。そして十七歳を突破したら、次の時代の幕開けなのだと思ってる。
記念日には、何をしようかな?
むふっ!
苺ケーキ、三段重ねを一人で独占する?
そればっかり考えてる。
だからそのために、必ず悪役を取り外したい。
中学から高校入学。部活は帰宅部で、アルバイトはこれからしようと思っていたが、する前にここに来た。だからバイト経験も無い私。
(脱悪役はいいけど、本当に、何しようかな…)
強権力を持っているなら、なんでもしたい放題でしょ?
そう思うでしょ?
でもそれは、強権力を使う人にもよるのだと、使ってみて初めて実感した。
だってサイコパス実験では、私はパピーの権力を活用しても、気に入らないおじさんにナメられたままだった。
そしておじさんは警備員師匠に取り上げられて、その後は私が施設の立ち入り禁止を言いつけられている…。
私の異世界歴史に、黒色が一枚追加された。
「姫様、お手紙が届きました」
そうこう考えていたいたらやって来た、グーさんの片道通信。この数年、無視に無視を重ねた私に対し、彼は根気強く、飽きずにたまーに業務連絡をしてくる。
「おや?」
なんと、彼は今年から二年間、学校に通うらしい。グーさんは私よりも一つ上の十六歳。私と似たり寄ったりの家庭教師教育を受けていて、なんだか学習塾にも行っていたみたいだが、この二年は普通の学校に通うって書いてある。
『学園ライフ…』
私も行くんだよね? みたいな、これに通わなきゃ流石に貴族でもヤバイよね? みたいな、そんな内容にも読み取れる。
「ふーーん…」
そういえば、うちのスーパークールとヤングレも、定期的に数ヶ月居なくなっていた次期があった。よく考えたら、警備員の子供たちも、最近は見かけないなって事もあった。
よくよく考えたら、私の身のまわりのお世話をしてくれるお姉さんたちも…。
みんな、学校行ってたの…?
なのでお城の中で遭遇した、ヤングレタお兄さまに聞いてみた。
私の武器は、素手と足。
お兄さまはきっと、あの上着の内側に様々な武器を隠し持ってるにちがいない。
ファイトっ!
「メルお兄さまって、スクラローサ王立学院て知ってる?」
「ああ、だから去年、ほとんどこっちに居なかったろ?」
「じゃあ私も、来年から通うのよね」
「………」
おや? 私によく似た、猫目の目つきが鋭くなった。碧色危険信号が点滅している。
「…お前は、行かないだろ」
「なんで? だって来年、十六歳なのよ。貴族の子供は十歳とか、もっと前から通うこも居るらしいわよ」
「なんだそれ、誰がそんなこと言った?」
話の矛先が逸れたので、私はその場をなんとか逃げ出した。
次はマミーに聞いてみよ!
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