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リリー26 (十六歳)
しおりを挟む艶やかに波打つ黒髪、ツンと上がった大きな蒼いつり目。マミー譲りの美しいお顔。そして毎日、係のお姉さまたちにお手入れされて、お肌はツルツルに磨き上げられ、身だしなみもしっかりと整えてもらっている。
完全に、彼らが居ないと生きていけない超依存系として完成している。
自他共に認める美人の私。
だけど時々、過去世の癖が出ちゃうんだよね。癖っていうか、まあ、意図的にやってみました確信犯。
珍しく二人のお兄様が朝っぱらから談笑していたから、私も混ぜてって混ざりこむ。彼らは朝から私を持ち上げまくって、係のお姉さん達の力作であるドレス姿も誉めちぎるもんだから、嬉しくなって調子に乗って、思わず過去世のポージングかましてみたの。
写真撮っちゃう?
かっこつけて付き出した右腰に手を置いて、素晴らしい角度にキープされた左手を頭につける。そしてウィンクと共にイェーィってピースきめたら、ポカーーンて口を開いた下の兄。
徐々に顔が赤くなり、ハシタナイって、すんげー勢いで怒鳴られた。
漫画でよく見るあれだよ。
怒鳴られて、突発的強風にさらされて、ワァーって身体が斜めるあれ。メルヴィウスの唾が、全身にぶっかかるかと思ったね。
グレインフェルドお兄様はね、私が強風にさらされている間、うんともすんとも真顔でこちらを眺めていただけだった。
**
朝から刺激的だったけど、今日のお休みはなんと、メルお兄様と街ぶらデートに行く事になった。
いや実は、お兄様が新しい武器を買いにお出かけするって聞いたから、無理やり「行きたーい!」ってわがまま言ってついてきた。
禁断じゃないよ。
ただの兄妹のお買い物。
メルお兄様は、私に唾をぶっかけたお詫びだと思ったのか、いつもみたいにしつこく反対しなかった。
二人で馬車に乗り、のんびり街までドライブする。
お兄様はいつもよりもツンツンしていなくて、目的の武器屋でお買い物済ませた後に、スィーツ巡りの許可をくれた。
あちらこちらの店を巡って、気になる最新スィーツをゲットする。それにお兄様も仲間たちもちょっと呆れて見てたけど、好きなものは好きなのだからしょうがないじゃない?
数件の店をはしごして、最後にあのかき氷屋さんに立ちよった。
昔グーさんがお土産に持ってきてくれたかき氷屋さん。
今は冬でしょ?って?
生まれ育ったダナーでは、冬に暖炉の前でアイスを食べるものなのよ。なので秋の様な気候の王都で、かき氷を食べないわけがないのです。
店内はお菓子屋さんの様なポップなカラー。自然と心はウキウキ上がる。
(グーさんは、メジャーな苺味選んでくれたんだよね)
サンプルは無い。ショーケースに実物も無い。店内はポップで甘い香りが漂うが、黒板にメニューが書かれているだけ。
苺、バナナ、葡萄、オレンジ。
過去世で食べた、舌が青くなるやつはない。
(さて、どうするか…)
悩みに悩んで葡萄に決めた。秋気候なので、紫芋を思い出したから。
「ご利用ありがとうございます」
店内の二階席で食べる事にしたんだけど、現れたパフェみたいな可愛い盛り付けのかき氷に感動する。
グレイお兄様にお土産しようって盛り上がったら、メルお兄様に、今日は保冷庫持って来てないから、後でねって言われた事におやっ? って思ったの。
「保冷庫って、お店にある物では無いの?」
「ここは氷屋だからな、店用のはあるだろうが、屋敷に運ばせるのは、基本は自分で用意するもんだ」
「ええ?」
聞くとこの氷屋さんは貴族の家の経営らしく、一般家庭に冷蔵庫や冷凍庫は普及していないらしい。
過去世では、だいたい一家に一台基本装備だったよね? だって旅行先のホテルや旅館にも一部屋に小さい奴標準装備だったよね?
(貴族だけ……)
メルお兄様は当たり前だろって顔していたけれど、私は少し微妙な気持ちで紫色のかき氷を口に運んだ。
短時間でかき氷満喫。そして店を出てから、窓ガラスを覗き込んで確認する。
(イイネ!)
見事に染まった紫色の舌、見て見てってお兄様に自慢したら、今度は笑えないくらいに怒られた。
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