72 / 211
リリー28 (十六歳)
しおりを挟むグーさんと会うたびに、どこからともなくやって来る白ウサギとバチバチしつつ、これといったイベントも特に無く、学院に通い続けてる。
その間、ピアンちゃんには完全に新しいお友達が出来たみたいで、私に入り込む余地はない。
そうだよね、同じ教室の深緑さんたちの方が、いいわよね…。
顔ははっきり見たことがない。
ただお昼休みに、いっつも中庭で二人で楽しそうにおしゃべりしているのを、二階の窓から私が指をくわえて見てるだけ。
茶髪、ロン毛、細身の後ろ姿。
双眼鏡が手元にあれば、もっとじっくりと観察出来るのだけど、さすがにそれはしていない。
黒色メンバーズに、ピアンちゃんが誰と仲良しなのか、聞かないのかって?
一人だけのお友達が別のこに取られたのが、思った以上にダメージで。私は内心でいじけていて、お友達取られた事もなんだか身内に打ち明けるのが恥ずかしくて、表では平気なふりをしている。
だからテーブルに小さなのの字を書くだけで、このイジイジはやり過ごしているの。
そんな感じでいじけていたら、授業中に、さりげなく隣の席のこからお手紙まわってきた。
どこから来たのか、差出人のわからない、クラスメイト間を渡り歩いてたどり着いたお手紙。宛先だけ、私の名前が記入されている。
「……」
授業中、先生はこちらを見ていない。脱悪役したばかりなのに、ここで教師に目をつけられる悪い子は、即家の者たちに報告されてしまうかもしれない。
細心の注意をはらい、手紙の封筒をチェックする。
この手の差出人不明のお手紙には、封筒にカミソリが仕込まれているって、過去世の漫画で学習済みなの。
(……大丈夫そう)
封筒のボディーチェックを完了し、教師の動向を確認しながら慎重に中身を開く。
「……む、」
これって……。
ーーアーナスターについて、至急、お伝えしたいことがございます。詳細は旧教の講堂にーー
かなり怪しい内容だ。だけどピアンちゃんの事で至急って……。
まさかまた、あの中途半端な悪役たちが、ピアンちゃんをいじめているとか?
そして私は閃いた。
授業中、不自然なお手紙、ピアンちゃんに関する至急、それがかつての悪役である私の元に到着。
これってきっと、深緑さんの誰かが、ピアンちゃんが今も中途半端な悪役たちに絡まれているから、自分ではどうにも出来なくて、助けてって、ヘルプしてきたとか!
……それとも影の薄い番長が待ち構えていて、逆に悪役であった私に、今さらタイマンしよって言い出したりしないだろうな……。
(……どうかな。名探偵しすぎ?)
手紙を送ってきたのは誰か、ここで思い出すのはピアンちゃんのニューフレンドさん。
番長や私に対する別の挑戦も思い浮かぶけど、敵と呼べる白色メンバーズは、きっとこんな面倒で姑息な事はしなさそう。
白色は、光だの名誉だのをいつも全面に押し出して皆の前でバチバチしたいだけの、ただの目立ちたがりなだけだから。
影でこそこそ、しかも境会の講堂よりも小さな、物置小屋感が否めない、旧講堂に来いなんて言わなさそう。
(ふーーむ……)
やっぱり差出人は、深緑さんの誰かの可能性が高いよね。しかも末尾のこれ。
ーー必ずお一人でーー
きっとこれ、ピアンちゃんと違って、黒色メンバーズが怖くて、彼らの壁を突破出来ない深緑さん。
(でもいつって、時間指定ないんだよね)
なので私は、黒色仲間たちが割りと集まりにくい授業中。お手洗いに行くって席を外して、ちょっとだけ旧講堂を覗いてみる事にした。
脱悪役したのに不良でしょ?
けっこう規則正しく優良学生続けている私。初めて授業をさぼった背徳感に、今はムフフってあまり感じない。
強権力の私が今さら番長によって、どうにかなるとは思っていないんだけど、なんかこの呼び出しにはちょっとだけ不安。
(……)
教室からは差ほど離れていない。意外と近かった旧講堂。
(誰もいない……)
それはそうだよね。お手紙もらって、気まぐれに様子見に立ち寄っただけなんだもの。
ほとんど使用されない、薄暗くて小さな講堂。灯りなんか点いてなくて、天窓からうっすらと光が射し込んでいる。
「……」
「お久しぶりです」
教室に帰ろうとしたら、後ろから声をかけられて身体が上下に揺れたよね。
「……あら、……?」
振り返って、声がした席の最後尾、薄暗い席にピアンちゃんがって喜んだのに、よく見ると別人。そして近寄ってきたその人の顔には、大きな傷がついていた。
0
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる