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リリー48 (十七歳)
しおりを挟む息詰まる会議室からの自室。そこで皆様の邪魔をしただけの自分に反省する。
そもそも、情報遮断されている今、知識不足。
皆が教えてくれない事は、皆に聞いて困らせようとは思わない。でもこのまま一人でケーキを食べ続ける事も、ダメな悪役満喫し過ぎてて断罪までのストーリー通りな気がして落ち着かない。
(セオさんの事と、……エンヴィーって、彼の事も気になるし、きっと、そこにはフェアリオさんも関わっていそう)
何かしよう。出来ること、しよう。
では上の兄にも頼れず、やる事がなくって暇そうにしている歴、かれこれ十七年目の私に出来る事といえば? それはもちろん人間監察しかないのです。
ヒッキー? ニート?
いえいえ、ただの箱入り悪役令嬢です。そんな幼少期から過保護に育てられている私の特技、その一つが、足音だけで誰が廊下を歩いているのか解る地味なクイズ。
正解率は、なんと90%!
残りの10%は、気配も足音もしない、気付いたら傍に居て驚いたよって十枝のメンバーズの10%。というほどの暇さ加減。
つまり何が言いたいかというと、上の兄が実家に帰った今、意外にマナーにはうるさいけれど、グレインフェルドほど神経質ではない、下の兄のメルヴィウス、彼がこの屋敷の頂点にいる今、アレを思いついた。
そうだ、新聞を読もう!
王都にある新聞五社、それが運ばれるのは明け方。騎士の皆様もざわざわ集まって来ない激早朝、兄の執務室に届けられた新聞を、盗み読もうと思う。
グレインフェルドの神経質は、マミー譲りの筋金入りだ。
届けられた新聞紙を、一番初めに開けないと機嫌が悪くなる面倒くささ。
ピシッと折りたたまれている紙が、誰かの手によりシワッと少しずれただけでブスッとするんだよ。
メルヴィウスに関しては、パピーに似たのかその辺は割りと気にしていない。むしろマミーとグレインフェルドの神経質を、大丈夫かなって心配している目でたまに見ている。
というわけで新聞を読みに行こう。
忙しそうに動き回る皆様の事情。ある程度は、新聞の時事で判断出来るだろう。
(……どうしよう。隠されている内容に、王様が怒って私を極刑にするとか騒いでいて、それが一面記事に載っていたら……)
マイナス思考、妄想、深まる。
……取りあえず、読みに行こう。
今、この屋敷には問題の10%が居ない。というか、その10%はそもそも王都よりも、実家のダナーが活動拠点なので、私に足音の死角は無いのだ。
明け方に届けられた新聞五束、それが係員により執務室に運ばれる時間を計算し、パジャマのまま、薄暗い廊下を寝ぼけたふりでてくてく歩く。
誰かに見つかったら、「お手洗いは何処かしら?」って、夢見るていで乗りきろうと思ってる。
朝日が昇る前に廊下を歩き抜けて、見回りの守衛の足音を柱の影でやり過ごし、扉に滑り込む。
今はメルヴィウスが使っている執務室の机の上、重ねられた新聞の一つを手に取った。
ーーカサリ。
(え……、お父様、捕まってるみたいな内容?)
お父様の、更迭軟禁。
他は戦争に関する事ばかりで、それももちろん大変な事なのは分かっているけど、今はお父様の事が心配だった。
私の所為だったら……。
**
結局は何も出来ないでずーんと落ち込んで、バルコニーから空を眺めていると、ファンくんが慰めに来てくれた。
見てわかる程のグズっぷり。小学生に気を遣われるほどのクズっぷり。
「ありがとう、ごめんなさいね」
私、何も出来ずにごめんなさい。
そうしょんぼりしていたら、一緒に外を眺めていたファンくんが、最近空に浮かんでる、赤いやつの説明をしてくれた。
あれ、学院の近くにある、というか王宮の敷地内にある境会の、大聖堂の上から出ていたスポットライト。
初めは、なんか薄いピンクのライトが三本空を照らしてるなーって、正直気にもならなかった。
だって過去世では、夜になるとギラギラに輝くネオンやシンボルタワーが、イベント毎に色違いに着せ替えしていたのを見ていたから。
ピンクのライトが三本空を照してたって、まあ、あるよね、くらいに見ていたのだけれど、最近、それが真っ赤に色が濃くなった。
クリスマスの季節ではない。そもそもクリスマスイベントは現在世では無い。
年末年始より、季節のイベントは春のお肉祭りの方が盛り上がるよね。
「あれはおそらく、悪意の象徴なのです」
ファンくん、なかなかズバリと、的確な境会の悪口言ったよね。
でもなんか、悪意の象徴が私じゃなくて、あのスポットライトって、生意気だよね…。
ファンくんにあの赤い槍の話を聞いて、お兄様と仲間たちが、三本の一本を消したって事も聞いた。
へー…消せるんだ、悪意…。
「なら、あれを全部消せば、少しは皆様のためになるのではないかしら?」
「それは、もちろんそうですが…」
きょとんと私を見上げたファンくん。それに私は良いアイディアだよねってにっこり笑った。
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