だって私は、真の悪役なのだから。

wawa

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アーナスター編

リリー50 (十七歳)

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  空のあれ、ライトでもイルミネーションでもなかったんだよね。だからコンセントも電源も何処にもなかった。

   知ってはいたけど、似たようなスイッチシステム、魔法でもなんでもあるものかなって思っていた。

   でもブチッともポチッとも、どうにも簡単ではないみたい。

   皆を苦しめる境会の悪の象徴。

   映画や漫画では模様が綺麗だねー魔方陣かっこいいよねーって見てたけど、ここの魔方槍は厚くて重い。

   現実に、赤色の分厚い硝子の板みたいな物がドカーンドカーンて、空から降ってくるとかなり怖い。だから常に、空ばっかり見てしまう。

   「……」

   皆は大丈夫かなって振り返ると、苦しそうに立っているピアンちゃん……いや、ピアンくんと、何とか立っているうちの二人の護衛たち。

   (ピアンくん……いや、ピアンちゃん。この色んなものに追い詰められた状況で、そこで発覚した多様性というあれこれに、心の整理が出来ていない)

   そもそもピアンちゃん、女の子だって思っていたのは私だけだったのか?

   いやでも、街で会った時、ドレス着ていたんだよね。間違いない。私の勘違いじゃないんだよ。お復習して、LGBTQの中のどれかに当てはまるかもしれない。

   (もしかして、身体は女の子なのに、心が男の子の場合だってある)

   次男て世間では認識されてるみたいだし、本人も男だって言っていたから、男性として対応するのは間違いなし。

   あれ?

   だけど、やっぱりドレス着ていたんだよな…。

   あれって、男性による女装コスプレだったのか、もしかして、お家の人に着なさいって無理やり着せられているとか? 見た目は女の子だけど中身が男の子で、LでもGでもB……、あれ? そもそもこれって恋愛対象による……?

   T……Q……。

   「なりません、姫様」

   あ、ヤバい。迷宮入りしてた。そういう話じゃなかったんだよ。

   後からやって来たセオさんは、相変わらず二人に警戒されているけれど、彼は昔からいい人なのでそこは全然心配していない。

   「大丈夫よ」

   だってセオさん、私の罪悪感を、肩代わりしてくれた。

   エンヴィー祭司にフェアリオさんの石を破壊したら? って言われて、いろいろごちゃごちゃしてて、初めは何の事かわからなかった。

   だけど考えたら、思い出した彼の言っていた、穴から出して、石を外したら命が止まるって物騒な内容。

   彼女たち、電池みたいに使って、空の魔法紋に繋げてあるよって、命は止まるけどこの状況の改善に、破壊すれば? って、そんなこと言ってたエンヴィー祭司に、酷い奴って思わず口走ったけれど、実は私も酷いこと考えてた。

   生きていても、動けずに、土を見ているだけの二人。

   もう、それしか選択肢が無いのなら、今も、これからもずっとずっと穴の中で土を見続けなければいけないのなら、それは、私だったらとても辛い。

   だから穴から出して、石を外して、目を閉じさせてあげたほうが、フェアリオさんたち疲れないんじゃないかなって。

   でも人の命の期限を決めるのは難しくて、本人は土の中でも大丈夫って、思ってたらどうしよう、どうしようって空を気にしながら考えてたら、セオさんが代わりに行ってくれた。

   私、卑怯者。

   現在世では、過去世と違って強権力使って、嫌なこと、見ない振りだけはしないようにって思っていたのに、一人になって、追い詰められたら、結局セオさんに押し付けた。

  でも空の変化に気付いて、私たちのやってる事は間違えてなかったよって自分に言い聞かせて、せめてセオさんには応援だけでも手伝おうって必死だったんだけど、やっぱり来たよね、ここに来て最大の悪役フラグ。

   ガラーンガラーンて、不吉な防災訓練音。その鐘を合図に、エンヴィー祭司がやって来て私に言った。

   「最後は貴女です」

   過去世の世界に帰っていいよって。

   エンヴィー祭司に、転生者だって教えなければよかった。

   って思いと、

   エンヴィー祭司に、転生者だって教えてよかった。

   って思いが同時にきた。

   いや結局は、良かったんだよね。だってこの現場の解決法が、一つ増えたんだから。

   そしてセオさんに嫌な事を押し付けた卑怯者には、しっかりと悪役フラグが立つってことも分かったし。

   私に甘いセオさんは相変わらず私を庇って甘やかせてくれたけど、でも、ここはやっぱり私の出番。

   きっと惨事の後には、真の主人公が良いとこ取りでスタッと突然現れて、この場を丸く収めて、全て自分の手柄にして持っていくかもね。

   安心したよ。

   思い残す事は何もない。

   きっと悪役が居なくなったら、高確率でハッピーエンドが待っている。

   「…………」

   ごくり。

   (あの光の中に入るのはちょっと、かなり怖いけど)

   私、ブランコにも酔っちゃう、遊園地のバイキングなんて、乗ったらきっとゲー吐いちゃう自信があるけど。 

   エレベーターみたいにスマートに浮遊感なく行けるの? とか、今さら過去世に戻ったって、リリーの私がどこに着地出来るのかとか、実は不安が一杯で、現在世の家族の皆さまとか、皆とか、皆にもう会えなくなるの、悲しくなるのを考えないように踏ん張ってる。

   (大丈夫だよ、きっと)

   私って、大吉を引くと、今日のラッキーはこれ以上は無いんだなって、がっかり落ち込む貪欲タイプ。

   で、あるならば?

   逆に悪役どん底である私が、これ以下に下がる事は無いって、ポジティブ変換も出来るのよ。

   大丈夫。

   私、頑張る。  

   頑張れるよ。

  「わかったわ」

   だって私は、真の悪役なのだから、こういう時こそ、ぐいぐい前に出ようと思う。
   
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