だって私は、真の悪役なのだから。

wawa

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グランディア編

84(重複のみ)

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   「ナーラ様! エレクトくん! ちょっと、離して!」

   走り続けるエンヴィーに叫んだが、全く聞き入れられない。視界には、緑の草木だけが流れる様に過ぎ去り、腰を持たれた不安な体勢で走り運ばれるリリーは、再び大きな声で叫んだ。

   「離しなさい!!」

   ーードサッ!!

   言われてエンヴィーは本当に手を離した。男の腰辺りから地面に落とされたリリーは、石畳に強かに身体を打ち付ける。

   「……いっ……た……」

   「願いを叶えました」

   「はあ!? すっごく痛かった! 離すにしても、普通に下ろして欲しかった!」

   身体をさするリリーは、いつの間にか開けた森の中、ところどころに瓦礫が積み上げられた場所をぐるりと見回した。

   「……神獣?」

   崩れた小さな祭壇の奥、人の足と思われる石像の隣には、半壊した動物の石像が三体残る。

   「私の願いも叶えて下さい」

   「……!」

   苛立ちに声の主を見上げると、灰色の空の下、よく見ると黒ではない、鈍色の髪の男がこちらを見下ろしている。

   擦りむいた膝を押さえながら立ち上がったリリーは、エンヴィーから数歩下がると人影を求めて周囲を見回す。だが二人だけの状況に更に数歩後退ると、キッと睨み付けた。

   「痛かった。落とされた。無効だわ」

   「それではない。護衛を苦しめないでと言った。それを叶えてあげました」

   「!?」

   エンヴィーの話を余所に、蒼の瞳はすがるように周囲を探るが、何処からも望む者たちの姿は現れない。

   「さすがに走っては追って来なかった。彼らの苦しみが目に見えなくなった」

   「……どういう意味? ナーラ様たちは、もう傷ついていないの?」

   「その場に伏せば、あれ以上の苦しみは無いのでは?」

   「……?」

   求める答えが与えられない。苛立ちに更に強くエンヴィーを睨んだが、会話をしながらもリリーの足は更に数歩後ろに下がる。

   そして男から十分に離れた距離、くるりと後ろを向くと全力で森へ走り出した。

   「可能な限りと言いました」

   「っ!!」

   ゾクリと総毛立つほどに、あっという間に追い付かれて背後から声がした。余所見に足が瓦礫に取られ、リリーの身体はぐらりと傾がる。

   再び腰に伸ばされた男の手、金の刺繍帯が首から下がる胸に引き寄せられたが、前のめりに傾いだ先、石畳が途切れて掘られた土の穴に、何か見えた。

   「ダナーの者達に護られた、貴女なら出来るはず」

   「ちょ、祭司、今、見えたわ」

   「考えていたのです。歴代大公女は計算通りに不幸を与えられたのに、なぜ貴女は簡単にはいかないのか」

   「祭司、あの穴の中に、居るわ、」

   「貴女は、他の大公女よりも、手厚く護られすぎなのです」

   「聞いてます? あの穴の中に、人が居るわ」

   「…………ああ、ですか? 会わせると言ったじゃないですか」

   「え?」

   エンヴィーが前に出た事で、それに捕まるリリーの身体も前進する。恐る恐る確認した穴の中、やはりそこには人が座っている様に見えた。

   「フェアリオです」

   「フェアリオさん!?」

   確かに、土の中に足を崩して座り込む女はフェアリオに見える。青白い顔の口には緑の何かを咥えて、開いたままの目は前を見て動かない。

   「……どうされたの?」  

   「礎です。あちらに、フェアリープも居ます」

   少し離れた瓦礫の間に顔を向けた。よく見ると、瓦礫の橫には土を掘って積み上げられた小さな山がある。

   「フェアリープ……?」

   エンヴィーを見上げたリリーは、再び何も言わず座ったままのフェアリオを確認すると息を飲み、爪先立つ自分の靴の底に、しっかりと踏める足場を探す。

   「いえいえ待って。そうではなくて、何故フェアリオさんがあそこにと、それを聞いているの」

   「復唱はしません。私の願いを叶えて下さい」

   「…………」

   エンヴィーがリリーを支える手を離せば、フェアリオの真上に落ちる体勢。この状況から逃れる手段を少し考えると、「わかったわ」と了承に頷いた。

   光の無い暗い瞳は探るように蒼い瞳を見つめると、崩れた神像の近く、小さな神殿の橫に佇む泉の傍に移動した。

   その岸辺で解放されたリリーは、仲間の人影を求めて周囲を見回す。だが変化の無い景色に落胆し、改めてエンヴィーに向き合った。

   「それでは、何をお望みなのかしら?」

   虚勢に腕を組み、ツンと挑戦的に見上げて言った。そのリリーを無感情に見つめたエンヴィーは、澄んだ泉に目を移し静かに呟いた。

   「私に、愛を与えて下さい」
    
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