だって私は、真の悪役なのだから。

wawa

文字の大きさ
209 / 211
グランディア編

リリー52(十七歳)

しおりを挟む


   あの威圧的な王様のこと、右側うちの仲間たちは「嘘つき」だって口を揃えて怒ってる。

   そうなんだよね。

   なにもしてないくせに、最後に境会の奴らに全てを押し付けて捕まえたって聞いた。

   新聞では、王様が戦争中に左側あっちにも右側こっちにも援軍送って、さらに北の同盟国まで領地戦に向けて待機させてたとか、良いとこ取りの嘘ばっかり書いてあった。

   あいつ主人公じゃないのに。

   マジ許すまじ。

   彼はグーさんのお父さんなんだけど、あの人、右側うちを敵に回したのは間違いなし。

   うちのパピーをお城に閉じ込めたりもした。

   まあでも、身内の噂話では、パピーのお城での拘束は牢屋の中とかではなくて、普通に部屋でお茶してたって、いつも通りに書類見たり本読んでたって聞いている。

   だからといって、更迭とか拘束とか、私も軟禁されたことは忘れていない…。

   それも含めてグーさんにクレーム入れる。

   そんなわけで乗り込んだのは学院の執務室。

   学院からグーさんの執務室までのあの長ーい廊下はね、今はルール変更により一人ぼっちではないの。護衛のメイヴァーさんとお喋りしながら歩いて来たよ。

   「お待ちしておりました」

   うむ。扉を開いた護衛のサイさんも、なんだか久しぶりだよね。

   それよりも…。

   戦争という大有事があったから仕方がないとは思うけど、あなた、グーさんの護衛なのに、あの森に居ませんでしたね…。

   「……何か?」

   「いえ何も」

   今日はいろいろ文句を言いに来たのだから、その件も、横でしっかり聞いていてね。



 ** **



   目の前から消えた兄。

   そして強く抱き締めたリリーの華奢な身体の温かさ。

   そのリリーが、セオルを失って溢した涙。

   身に起きた異変は全て境会の仕業によるものだったが、それを黙認していた黒幕が国王だと知っている。

   父親でもある国王が、長い年月をかけて企んだ野望の全てを明らかにし糾弾することは、今のグランディアには力が無さすぎた。

   そして無力なグランディアに突き付けられたのは、国王から言い渡された正式なリリーとの婚約破棄だった。

   想像よりも傷付いていた身体は半月の療養を必要とした。その間に決まっていた婚約破棄に、追い討ちに傷心のグランディアは療養を明け、口数少なく黙々と実務をこなす。

   そこに、サイから伝えられた報せに顔を上げた。

   「リリーから、面会希望が来ている?」


 **
  

   「お待ちしておりました」

   サイによって開かれたグランディアの執務室。応接間に案内されたリリーは、用意されていたテーブルのお茶菓子に驚いた。

   「これは、立派なケーキね」

   美しく盛り付けられた焼き菓子の皿。それを鑑定人の様に眺めていた蒼い瞳はきらりと輝く。
   
   「もしかしたら、これは殿下の手作りですか?」  

   前日に届いたリリーの面会希望。その後すぐに立ち上がったグランディアは、第四王妃の元へ向かい城の一室で無心に粉を混ぜた。

   初めて作り上げたケーキは、母親のお墨付きを貰っている。

   「もちろんだよ。王都の店や城の職人の物は、君はもう飽きていると思ってね」

   うんうんと同意したリリーは、パクリと口に運んだケーキに大きく頷いた。

   「良いですね」

   上から感想を言ったリリーに背後に控えるサイは驚愕したが、平静を装うグランディアは内心で手応えに安堵する。

   黙々と食するだけのリリーを観察し、お茶を口にする。完食した皿から次の焼き菓子に手を伸ばしたリリーに、グランディアはふと語り始めた。

   「昔、何代か前の王太子が、ダナーの令嬢と恋に落ち、婚約した記録があります」

   「まあ、初めて聞きました」

   「彼らは、境会アンセーマの聖女の関与により、結ばれる事はなかったそうです」

   「聖女…。成る程。その王太子殿下は、その聖女と結ばれたのですね」

   「いえ。彼は、その後すぐに亡くなったそうです」

   「……まぁ」

   菓子から手を離し、悲恋に深く頷いた。そのリリーを見つめたグランディアは、目線を下に落とした。

   「正式に、私たちの婚約が、破棄されたと聞きました」

   お茶を一口飲み、こくりと頷いた蒼の瞳は真っ直ぐにグランディアを見つめている。

   「ですが改めて、再び申し込もうと思います」

   膝に置かれた拳を握り、胸を張り、真っ直ぐにそれを伝えた。

   「必ず」

   空色の瞳を見つめた蒼の瞳は数回瞬くと、軽くこくりと頷く。了承を見て微笑んだグランディアだが、口許をハンカチで押さえたリリーも姿勢を正した。

   「それは取りあえず置いておいて、今日は殿下に、貴方の護衛の皆様について聞きたい事がありますの」

   「え?」

   「あの森での事なのだけれど、貴方の護衛の皆様は、何処にいらっしゃったのかしら?」

   「ええと」

   「うちの護衛の皆様は、聖堂の見える丘と、私の傍に二人居たのは分かりましたよね?」

   「……ええ、居ましたね。確かに」

   「そこでグーさんの護衛は何人、どちらで何をされていたのか、それをお聞きしたくて、今日こちらに来ましたの」

   「……ああ、えーと、そうですね」

   これにサイは目を見開き、メイヴァーは軽く目を伏せる。グランディアは、こんこんと語るリリーの護衛自慢を、同じ様に身を正して聞いていた。



 ☆☆☆☆☆☆

   リリーVSグランディア

   親密度  55 VS 75  親密度
   期待度  90 VS 75  好感度
   
   
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

処理中です...