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タイムマシーンに乗って
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突然だが、今から私が開発した、タイムマシーンを紹介しよう。
高さ1メートル、横幅50センチの白くて四角いフォルム。上下にある扉は、手動での開閉が自由自在。まるで、食物を保存したり、氷を製造することが出来そうではないか。
そう、これは皆さまご存知の、冷蔵庫を改造したタイムマシーンである。冷凍室があった上の扉を開くと、タッチパネル式の液晶モニターが登場する。これに、行きたい年月日と場所を入力できるようになっている。そして、冷蔵室があった下の扉を開くと、人がひとり入れるスペースと、スタートボタンがある。先の説明通りに、行きたい時代を入力し、このボタンを押せば、自在にタイムトラベルが可能というわけだ。
まだ実験すらしてないが、私の持論が正しければ、まず成功は間違いないだろう。
私は別段、天才でもなければ、有能な科学者でもない。安い給料でこき使われてる、普通のサラリーマンだ。では、こんな私がなぜ、タイムマシーンを作ろうと思ったのか。それには、マリアナ海溝よりも深い事情がある。
実は私は、今の妻と結婚したことを後悔しているのだ。
聞くも涙、語るも涙な話だが、まあ聞いてほしい。私の妻は、とんでもないグータラ妻なのだ。食事の支度、洗濯、掃除はもちろんしない。ずっと、お気に入りのソファーに寝転がり、テレビを見ながら煎餅を食う。決して、その場所から動かない。というか、動いたのを見たことがない。
まさにこれは「動かざるごと妻の如し」。風林火山ならぬ、風林火妻と呼ぶにふさわしい光景だ。
結婚した当初の妻は美しかった。あれから二十五年。今となっては、その面影は微塵も感じさせないほどの豹変ぶりである。結婚当初の妻を動物に例えるならば、機敏な動きでぴょんぴょんと跳びはねる、可愛いウサギちゃん。それが今では、まったく動かない、太ったナマケモノちゃんになってしまったのだ。
妻と出会ったのは、私が大学生の頃──。告白してきたのは妻のほうからだった。しかし、その当時、私には付き合っている彼女がいた。
私は、悪いと思いつつも、妻と彼女を両天秤にかけた。彼女は妻に比べたら、見劣りはしたが、私に尽くしてくれるいい女だった。だが、私も若かったのだろう。彼女に別れを告げ、見た目がいい妻のほうを選んでしまったのだ。
そして、大学を卒業し、就職したところで、私と妻は結婚し、一人の息子を授かった。
それからだ、妻が変わってしまったのは──。
妻は、子供を産んだ途端に太り出した。まるで、浮輪を膨らませるポンプでもついているかのように、ぶくぶくぶくぶく太る一方だった。太るだけならまだしも、それに準じて、動くことすら面倒なのか知らないが、ソファーの上からピクリとも動かなくなってしまった。
当然のように、私は会社に勤めながらも、家事全般をこなした。息子の世話をしたのも、妻ではない。私だ。私が育てたのだ。
そしてようやく、息子も独り立ちしてくれたので、ここでふと、怒涛のように駆け巡った結婚生活を振り返って、私はこう思う。
「大学の頃へ戻って、やり直したい」と。
そう、あの時は、やはり彼女と別れるべきではなかったのだ。彼女と結婚していれば、私はこんなに苦労することは、なかったはず。
その思いが、私をタイムマシーンの制作へと駆り立てた。もちろん、過去の自分に会い、彼女と別れたら不幸になるとアドバイスするために。
では今から、私がタイムマシーンをどのように制作したかをお教えしよう。
作り方はいたって簡単。ネットで「タイムマシーンの作り方」を入力し、検索。するとどうだろう、次から次へと、タイムマシーン制作に関する情報が、溢れてるではないか。
私はその中から、有力だと思われる情報だけをピックアップし、冷蔵庫をベースとした、オリジナルのタイムマシーンを作ったというわけだ。我ながら、斬新なアイディアだと思う。諸君も興味があったら、是非やってみてはいかがだろうか。
私は、タッチパネルに、妻が告白してきた年月日を入力した。場所は、私が通っていた大学のキャンパスにしよう。
そして、運命の扉を開き、いざ乗り込む。少々狭いようだが、身体を極限まで折り畳んで、ようやく扉を閉めることに成功した。
さて、あとはこのボタンを押すだけだ。
さらば、今の妻よ。そしてこんにちは、新しい妻よ。きっと、帰ってきたら、別れたはずの彼女が妻になってるに違いない。
さあ、運命を分けたあの時代へと私をいざない、本来掴むべきだった幸せを、見事に勝ち取るのだ。
そう思い、ボタンを押した直後、タイムマシーンは大爆発を起こした。
高さ1メートル、横幅50センチの白くて四角いフォルム。上下にある扉は、手動での開閉が自由自在。まるで、食物を保存したり、氷を製造することが出来そうではないか。
そう、これは皆さまご存知の、冷蔵庫を改造したタイムマシーンである。冷凍室があった上の扉を開くと、タッチパネル式の液晶モニターが登場する。これに、行きたい年月日と場所を入力できるようになっている。そして、冷蔵室があった下の扉を開くと、人がひとり入れるスペースと、スタートボタンがある。先の説明通りに、行きたい時代を入力し、このボタンを押せば、自在にタイムトラベルが可能というわけだ。
まだ実験すらしてないが、私の持論が正しければ、まず成功は間違いないだろう。
私は別段、天才でもなければ、有能な科学者でもない。安い給料でこき使われてる、普通のサラリーマンだ。では、こんな私がなぜ、タイムマシーンを作ろうと思ったのか。それには、マリアナ海溝よりも深い事情がある。
実は私は、今の妻と結婚したことを後悔しているのだ。
聞くも涙、語るも涙な話だが、まあ聞いてほしい。私の妻は、とんでもないグータラ妻なのだ。食事の支度、洗濯、掃除はもちろんしない。ずっと、お気に入りのソファーに寝転がり、テレビを見ながら煎餅を食う。決して、その場所から動かない。というか、動いたのを見たことがない。
まさにこれは「動かざるごと妻の如し」。風林火山ならぬ、風林火妻と呼ぶにふさわしい光景だ。
結婚した当初の妻は美しかった。あれから二十五年。今となっては、その面影は微塵も感じさせないほどの豹変ぶりである。結婚当初の妻を動物に例えるならば、機敏な動きでぴょんぴょんと跳びはねる、可愛いウサギちゃん。それが今では、まったく動かない、太ったナマケモノちゃんになってしまったのだ。
妻と出会ったのは、私が大学生の頃──。告白してきたのは妻のほうからだった。しかし、その当時、私には付き合っている彼女がいた。
私は、悪いと思いつつも、妻と彼女を両天秤にかけた。彼女は妻に比べたら、見劣りはしたが、私に尽くしてくれるいい女だった。だが、私も若かったのだろう。彼女に別れを告げ、見た目がいい妻のほうを選んでしまったのだ。
そして、大学を卒業し、就職したところで、私と妻は結婚し、一人の息子を授かった。
それからだ、妻が変わってしまったのは──。
妻は、子供を産んだ途端に太り出した。まるで、浮輪を膨らませるポンプでもついているかのように、ぶくぶくぶくぶく太る一方だった。太るだけならまだしも、それに準じて、動くことすら面倒なのか知らないが、ソファーの上からピクリとも動かなくなってしまった。
当然のように、私は会社に勤めながらも、家事全般をこなした。息子の世話をしたのも、妻ではない。私だ。私が育てたのだ。
そしてようやく、息子も独り立ちしてくれたので、ここでふと、怒涛のように駆け巡った結婚生活を振り返って、私はこう思う。
「大学の頃へ戻って、やり直したい」と。
そう、あの時は、やはり彼女と別れるべきではなかったのだ。彼女と結婚していれば、私はこんなに苦労することは、なかったはず。
その思いが、私をタイムマシーンの制作へと駆り立てた。もちろん、過去の自分に会い、彼女と別れたら不幸になるとアドバイスするために。
では今から、私がタイムマシーンをどのように制作したかをお教えしよう。
作り方はいたって簡単。ネットで「タイムマシーンの作り方」を入力し、検索。するとどうだろう、次から次へと、タイムマシーン制作に関する情報が、溢れてるではないか。
私はその中から、有力だと思われる情報だけをピックアップし、冷蔵庫をベースとした、オリジナルのタイムマシーンを作ったというわけだ。我ながら、斬新なアイディアだと思う。諸君も興味があったら、是非やってみてはいかがだろうか。
私は、タッチパネルに、妻が告白してきた年月日を入力した。場所は、私が通っていた大学のキャンパスにしよう。
そして、運命の扉を開き、いざ乗り込む。少々狭いようだが、身体を極限まで折り畳んで、ようやく扉を閉めることに成功した。
さて、あとはこのボタンを押すだけだ。
さらば、今の妻よ。そしてこんにちは、新しい妻よ。きっと、帰ってきたら、別れたはずの彼女が妻になってるに違いない。
さあ、運命を分けたあの時代へと私をいざない、本来掴むべきだった幸せを、見事に勝ち取るのだ。
そう思い、ボタンを押した直後、タイムマシーンは大爆発を起こした。
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