ショートな時間

レン太郎

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カキコミ

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 今日は、主人が三ヶ月の出張から帰ってくる。私は、料理の腕を振る舞おうと、スーパーへ買い物に来ていた。 
 合挽ミンチに玉葱、パン粉、牛乳、卵。主人が好きなハンバーグを作ることにした。サラダも作ろうと、キャベツにレタス、プチトマト、生ハムを買い物カゴに放り込む。 
 早々にレジを済ませ、久しぶりに会う愛しい人に想いを馳せ、胸を弾ませながら家路に着いた。 

 家に帰ると、メールの着信音が鳴り響く。主人かと思い、喜び勇んでケータイを開くが違っていた。 
 時間の隙間を埋めるために入会したSNS。そこからのメールだった。 
 メールを読むためにサイトに接続する。実は、この段階でどんなメールかは察しがついていた。 

「死ね! 不細工!」 

 短文で非常に簡潔なメール。このサイトに加入してから、度々このようなメールが送られるようになっていた。 
 そして、自分のページを開き、掲示板を確認する。 

「バカ女!」 
「彼に絡むんじゃないわよ!」 

 この類のカキコミが、延々と書かれているのを見て、ため息がこぼれた。 

 ことの発端は、私がブログにコメントしたことから始まる。何気なく読んだブログに好感を持ち、思ったことをコメントしただけ。それを繰り返しているうちに、時間の隙間を埋める作業から、心の隙間を埋める作業に転換してしまい、自分でも驚くほどの感情むきだしのコメントをしていた。 
 もちろん反感を買ってしまったが、サイト内の一人の男性が私を擁護してくれた。 
 その男性、サイトでは人気者の部類に入り、プロフィール写真もなかなかのイケメン。その彼にひいきにされた私は、当然のように彼のファンから叩かれ、結果、連日のように嫌がらせを受けるようになってしまった。 
 私もいけなかった。売り言葉に買い言葉で、そのファンの人々に噛み付いて、負けじとその掲示板へ飛びカキコミをした。 

「うるせーババァ!」 
「ぶっ殺すぞ!」 

 このやり取りは永遠ループ。 
どちらかが退会するまで終わることのない、いわばネット上のサバイバルマッチ。私は人一倍、負けず嫌いだったので、相手に屈することも考えなかった。 
 今日も例の如く、掲示板に挨拶まわり。普段は絶対に口にしないような汚い言葉で相手を蹴散らし、それが終わると一息入れた。 
 ふと、スーパーの買い物袋を見る。今日が大事な日だったことにハッと気付き時計を見る。 
 そろそろ主人が帰ってくる時間だ。そう思った時、家の扉が開く音がした。 

「ただいま」 

 主人だ。久しぶりに見る顔に安堵して、涙が溢れ出した。 

「どうしたんだ?」 

 心配そうな顔で旅行鞄を投げ捨て、駆け寄ってくる主人に、私はしがみついた。 

「大丈夫。なんでもないから!」 

 そう言って涙を拭きながら、主人の心の掲示板に、私はこうカキコミをした。 

「大好き」 

 ちゃんと伝わっているはず。だって、主人も私の掲示板に同じ言葉をカキコミしてくれたのだから。 

「ごめん。ご飯今からなんだ」 
「あ、いいよ。俺も手伝う」 

 すっかり忘れてた。現実の私は、世界一の幸せ者だということを。 
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