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~番外編~
呪いし者の末路 ~???視点~
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※第二章にて、カインを狙い、禁呪を使っていた男の末路です。
残酷流血表現があります。ご注意ください。
――Side ???
暗闇の中で呻く苦しみの声……。
油ぎった汚らしいそれを、私は窓の外から見つめていた。
泡をふいた、その見るのもおぞましい肉だるまのような身体を、部屋の中に転がし身悶える男……。
イリューヴェル皇帝に差し出された側室の兄であり、皇家と繋がりをもった侯爵の男だ。
妹が美しく聡明であっただけで側室となり、そのおこぼれに預かった男。
本当に兄妹なのか疑いたくなるほどに、その美醜には大きな差がある。
「ウアァぁっ……グゥゥアウァァッ……」
この男は、自分の術がもう意味をなさずに消え去ったことを知っているのだろうか?
……もう何も考える事の出来ない壊れた身では、それも叶わない、か。
破られた呪い、悲願を成就したとしても……、どの道死ぬ運命の汚物。
あの方が、せっかくお前のようなゴミに力を貸してくださったというのに、……この役立たずが。
放っておいてもすぐに息絶えるだろうそれに、私は窓を開けて近づいた。
暴れのたうち回る男を侮蔑の眼差しで一瞥すると、私は氷の魔力で創り上げた剣を両手にもって振り上げると、
その男の腹めがけてそれを容赦なく突き刺した。
「グアァアアアアアアアアアアアアアアア」
何度も何度も引き抜いては突き刺し、飛び散り溢れ出てくる血を浴びながら、私は歪んだとわかる己の唇を開き、
「お前のせいで、全部滅茶苦茶……。あの方がくださった恩恵を、仇で返した不届き者が……」
「や、ヤメ……グアァぁっ」
どうせそのうち死ぬなら、もっと痛みと苦痛を与えてやろう。
あの方の労を裏切った罪は重いのだから……。
「ねぇ?痛い?苦しい?辛い? 過ぎたものを求めた結果だから、しょうがないわよね? だけど……、ただじゃ死ねないわよ?」
エリュセードにおいて死した人の魂は、一度神々の元へと還る。
そして、生前の罪や行いを魂の安息所で裁定され、再びエリュセードに新たな命として戻されてゆく。
それが、昔からの決まりごと。だけど……。
「お前のような汚物を、エリュセードの神々は受け入れない。永遠に業苦に苛まれるようにしてあげる……」
めった刺しにしてやった男は、もう動く力もないのかその場でピクピクと身体を痙攣させている。
懐から、小さな金色の小箱を取り出し、その蓋を開く。
中からは澄んだ美しい調べが響きはじめるが、私が小さくある言葉を紡ぐと、その音色は重く息苦しいような錆びた響きを部屋に満たしていった。
「還るべき場所を見失い、責め苦と業火の底に堕ちる道を用意してあげる……」
ニヤ、と自分でも醜悪な笑みを浮かべたことがあるそれを男に向けると、男の身体が大きく跳ねあがった。
その醜い体内からドス黒い光が飛び出し、私の持つ小箱へと吸い込まれていく。
蓋が閉まる直前まで、男の――魂は、逃げ場所を求めるように外へともがいていたが、小箱の音色に引き摺りこまれるかのように、その光は箱の奥へと消えていった……。
「ふふ……。ザマァミロ……」
小箱を懐にしまうと、私は聞こえてきた足音に見つからぬうちに、その部屋をあとにした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「こ……これは……」
イリューヴェル王宮にて、次代の皇帝と噂されていた第一皇子のアースシャルク・イリューヴェルと、それを補佐する有能な第二皇子、グランヴェルト・イリューヴェルは、目の前の光景に口元を覆った。
部屋中に満ちる生臭い血の匂い……。
魔術による明かりで照らし出された部屋の中、無残にも顔の判別もつかないほどに串刺しにされ、切り刻まれた男の遺体が目に映った。
「伯父上……、なのか……?」
「兄上、検分は騎士たちに任せましょう。この部屋……、術の瘴気が酷すぎます……」
「やはり……、伯父上が……、カインを……」
「兄上、それは後ほど……。今はこの場を清め、侯爵殿の遺体を機関に運び、何があったかを明らかにする必要があります」
「……そう、だな……。母上にも……、ご報告……、せねば……」
今にも倒れ込みそうになる眩暈を抑え、第一皇子、アースシャルクは弟に支えられ、部屋を部下たちに任せることにした。無残にも荒れ果てた部屋の中、鼻をつく醜悪な血の匂い、
伯父だったモノ……。全てが偽りであればいいのに、そう思わずにはいられないような悪夢。
容易には受け入れがたいそれに、アースシャルクは自身の決めねばならない道を、その瞼の奥に思い浮べていた……。
残酷流血表現があります。ご注意ください。
――Side ???
暗闇の中で呻く苦しみの声……。
油ぎった汚らしいそれを、私は窓の外から見つめていた。
泡をふいた、その見るのもおぞましい肉だるまのような身体を、部屋の中に転がし身悶える男……。
イリューヴェル皇帝に差し出された側室の兄であり、皇家と繋がりをもった侯爵の男だ。
妹が美しく聡明であっただけで側室となり、そのおこぼれに預かった男。
本当に兄妹なのか疑いたくなるほどに、その美醜には大きな差がある。
「ウアァぁっ……グゥゥアウァァッ……」
この男は、自分の術がもう意味をなさずに消え去ったことを知っているのだろうか?
……もう何も考える事の出来ない壊れた身では、それも叶わない、か。
破られた呪い、悲願を成就したとしても……、どの道死ぬ運命の汚物。
あの方が、せっかくお前のようなゴミに力を貸してくださったというのに、……この役立たずが。
放っておいてもすぐに息絶えるだろうそれに、私は窓を開けて近づいた。
暴れのたうち回る男を侮蔑の眼差しで一瞥すると、私は氷の魔力で創り上げた剣を両手にもって振り上げると、
その男の腹めがけてそれを容赦なく突き刺した。
「グアァアアアアアアアアアアアアアアア」
何度も何度も引き抜いては突き刺し、飛び散り溢れ出てくる血を浴びながら、私は歪んだとわかる己の唇を開き、
「お前のせいで、全部滅茶苦茶……。あの方がくださった恩恵を、仇で返した不届き者が……」
「や、ヤメ……グアァぁっ」
どうせそのうち死ぬなら、もっと痛みと苦痛を与えてやろう。
あの方の労を裏切った罪は重いのだから……。
「ねぇ?痛い?苦しい?辛い? 過ぎたものを求めた結果だから、しょうがないわよね? だけど……、ただじゃ死ねないわよ?」
エリュセードにおいて死した人の魂は、一度神々の元へと還る。
そして、生前の罪や行いを魂の安息所で裁定され、再びエリュセードに新たな命として戻されてゆく。
それが、昔からの決まりごと。だけど……。
「お前のような汚物を、エリュセードの神々は受け入れない。永遠に業苦に苛まれるようにしてあげる……」
めった刺しにしてやった男は、もう動く力もないのかその場でピクピクと身体を痙攣させている。
懐から、小さな金色の小箱を取り出し、その蓋を開く。
中からは澄んだ美しい調べが響きはじめるが、私が小さくある言葉を紡ぐと、その音色は重く息苦しいような錆びた響きを部屋に満たしていった。
「還るべき場所を見失い、責め苦と業火の底に堕ちる道を用意してあげる……」
ニヤ、と自分でも醜悪な笑みを浮かべたことがあるそれを男に向けると、男の身体が大きく跳ねあがった。
その醜い体内からドス黒い光が飛び出し、私の持つ小箱へと吸い込まれていく。
蓋が閉まる直前まで、男の――魂は、逃げ場所を求めるように外へともがいていたが、小箱の音色に引き摺りこまれるかのように、その光は箱の奥へと消えていった……。
「ふふ……。ザマァミロ……」
小箱を懐にしまうと、私は聞こえてきた足音に見つからぬうちに、その部屋をあとにした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「こ……これは……」
イリューヴェル王宮にて、次代の皇帝と噂されていた第一皇子のアースシャルク・イリューヴェルと、それを補佐する有能な第二皇子、グランヴェルト・イリューヴェルは、目の前の光景に口元を覆った。
部屋中に満ちる生臭い血の匂い……。
魔術による明かりで照らし出された部屋の中、無残にも顔の判別もつかないほどに串刺しにされ、切り刻まれた男の遺体が目に映った。
「伯父上……、なのか……?」
「兄上、検分は騎士たちに任せましょう。この部屋……、術の瘴気が酷すぎます……」
「やはり……、伯父上が……、カインを……」
「兄上、それは後ほど……。今はこの場を清め、侯爵殿の遺体を機関に運び、何があったかを明らかにする必要があります」
「……そう、だな……。母上にも……、ご報告……、せねば……」
今にも倒れ込みそうになる眩暈を抑え、第一皇子、アースシャルクは弟に支えられ、部屋を部下たちに任せることにした。無残にも荒れ果てた部屋の中、鼻をつく醜悪な血の匂い、
伯父だったモノ……。全てが偽りであればいいのに、そう思わずにはいられないような悪夢。
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