44 / 47
IFルート
IFルート・ルイヴェル編~恋の檻はすぐ傍に~
しおりを挟む
※ウォルヴァンシア王国王宮医師ルイヴェル×幸希のカップリング話です。
まだ、ルイヴェル→幸希への片想い設定です。
――Side ルイヴェル
「すみません、ルイヴェル殿。確かに、この書類は全て漏れなくお預かりいたしました」
「いや、丁度こちらに来る用事もあったからな。特に礼には及ばない」
頼まれていた資料を纏めた書類を、ガデルフォーンの宰相シュディエーラに渡し終わった俺は、茶の席を提案されたが、それを断り、踵を返した。
これからガデルフォーンの城下で昼食をとり、それが終わったらすぐにウォルヴァンシアに戻る。
まだあちらに仕事も残っているからな。
――ガチャ。
「あれ? ルイちゃんじゃない。こっちに来てたんだねー」
「サージェスか。相変わらずストレスのなさそうな顔をしているな」
「あはは……、そうは言うけどね。最近仕事が忙しくて俺も色々大変なんだよ。あ、シュディエーラ、これ騎士団からの報告書。ちゃんと目を通しといてね」
「ご苦労様です。丁度今、ルイヴェル殿をお茶の席にお誘いしたのですが、断られてしまいましてね。貴方の時間が良ければ、いかがですか?」
「うーん、俺としては……、ちょっとまだ仕事が残ってるから、遠慮しとくよ。ごめんね」
「そうですか……。では、『私達』だけでお茶の時間を過ごすしかありませんね」
シュディエーラが自分の足下へと声をかけると、その影から大量の触手が首をもたげ上へと這い出てきた……。
麗しき宰相殿のペット……、もとい、友人である触手達のおでましだ。
シュディエーラに同意を示すように擦り寄り、見た目に反した愛らしい声で泣く様に違和感を覚えずにはいられない。俺が扉へと向かうと、すぐにその後を追いかけてサージェスがやって来る。
「何だ? 仕事があるんじゃなかったのか?」
「だって久しぶりにルイちゃんと会えたわけだしねー。ウォルヴァンシアでの近況を聞かせて貰えないかなーと、思って。ご飯、食べてから帰る気なんでしょ?」
「……長居をする気はないんだがな」
「まぁまぁいいじゃない。俺とお昼をしてくれたら、ガデルフォーン国内で見つかった、新種の薬草について教えてあげるんだけどなー?」
「……新種か。……いいだろう」
魔術も医療も、決して変化のないものではない。
日々、その道を営む者が研鑽を積み、新しい術や、薬の調合法などを見付けては世に送り出している。
そして俺も、他国で見つかった新種の薬草とやらに興味がある。
……それに、今ウォルヴァンシアに帰っても、待っているのは仕事ぐらいのものだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「あいよ!! 大盛りジュヴァルダ丼のお待たせだよ!!」
「有難う、女将さん。……う~ん、今日も衰えのないサービス量だねぇ。ジュヴァルダってさ、ガデルフォーンでも荒くれ者の異名をとる動物のお肉なんだよね。専門の人達が狩りに行ってるらしいけど、無傷じゃ帰って来れなかっただろうなー」
ガデルフォーンの皇都にある、大食堂。
その店内、奥の席に座った俺達の目の前には、大きな丼ぶりに惜しみなく和の国から仕入れた米と、念入りに焼かれたジュヴァルダの肉が乗っており、美味そうな匂いが漂ってきている。
「はい、ルイちゃん。その生卵かけて食べてねー」
「あぁ」
小皿に入れて持って来られた卵を手に取り、俺はそれを皿の縁で割ると、ジュヴァルダ丼の上に垂れ落とした。
「栄養満点だし、滅多にメニューに並ぶもんでもないから、貴重なんだよね、これ。まぁ、自分で狩りに行けば良い話なんだけど、その為に出掛けるのも面倒だし。ん~……でも、これ、本当に美味しいね。熱々のジュヴァルダ肉にタレが良く沁み込んでる」
「美味いが……、量が多いのが難点だな」
「俺は丁度お腹減ってたし、軽いけどね」
「そういえば、魔竜は食欲には事欠かなかったな」
「そうそう。出された物は全部美味しく頂いちゃうからねー。……ところで、最近ウォルヴァンシアの方はどうなの? ユキちゃんは元気にやってるのかな?」
やはりな……。ウォルヴァンシアでの話を聞きたいというのは本当だったようだが、結局はユキの近況を聞きたかったのだろう。
ガデルフォーンに滞在し、ユキと出会わせてしまったせいで、今でもユキの事を気にかけている。
「生憎と、……今はウォルヴァンシアにはいない」
「え? どっか他国に旅行にでも行ってるの?」
「いや、この世界自体にいない」
「……どういう事?」
サージェスが箸を動かす手を止め、いつもの能天気な声音を低めた。
俺の方は箸を動かし肉を口に運ぶと、それを咀嚼しサージェスと視線を交わらせたまま数秒。
「……って、早く言おうよ。お肉もぐもぐしてる場合じゃないよね? 物凄く、ユキちゃんの行方が気になって仕方ないんだけどっ」
そう非難を受けるが、俺は気にしない。さらにもう二、三度噛み腹の中に肉を収めると、グラスに入っている水をごくりと飲み干す。
「……ふぅ」
「焦らしプレイなの? ルイちゃん……」
「いや、俺も腹が減っていたからな。一口腹に収めておきたかっただけだ」
「もう……、本当、マイペースだよねぇ、ルイちゃんは」
がくりと肩を落としたサージェスが頬を掻いているが、今から話す事を聞けばまた騒々しくなるのは目に見えているからな。腹ごなしを少しでもしておいた方が良いだろう。
「ユキは今……、前に暮らしていた世界に戻っている」
「えーと、前のっていうと、例の異世界?」
「そうだ。友達と約束があるとかでな。夏葉様と共に戻っている」
「……友達って、……女の子?」
「そうだろうな。恐らく……」
それについては何も聞いていないが、夏葉様が一緒にいるのなら、何も問題はないだろう。
元いた世界なら、ユキにとっては行動しやすい場所でもあるしな。
しかしサージェスは、箸を持つ手を小刻みに震わせて何かを呟いている。
「どうした」
「あのさ……、もし、ユキちゃんが会うお友達が、男だったらどうする?」
「男友達の一人ぐらいいるかもしれないが、別に何の問題もないだろう」
「甘いよ、ルイちゃん!! 久しぶりに会うのが男友達だったら、その男友達がユキちゃんとどうにかなろうと下心を出す事だってあるかもだよ!! って、痛っ」
「考えすぎだ。さっさと食事を続けろ」
持参していた本の角でサージェスの額を小突き、俺もまた二口目を味わう。
男友達か……。まぁ、いたとしてもおかしくはない。
ユキはあちらの世界で二十年の時を過ごしてきたのだ。交友関係もあるだろう。
だが、だからといって、再会する相手が仮に男だとしても、変な事になる確率は……。
そういえば、セレス姉さんが言っていたな。
ユキがやけに喜びながら帰還の支度をしていたと……。
(いや、アイツは初恋もまだのはずだ。好きな男がいるわけが……)
……パク。もう一口を口内で味わいながら、俺は天井を見つめた。
初恋ではなくても、憧れをもった相手……という可能性もある。
もしもそれが……恋に変わるような相手だった場合……。
(ふぅ……、サージェスに乗せられて、俺も阿保な事を考えているな)
ユキに俺の気持ちを伝え、もう二度と避けるなと言い含めてから一ヶ月……。
あれから特に進展はない。
一応俺を見ても逃げる事はなくなったが、やはり返せる答えがないのか、ユキは気まずげにしている。
そして、アレクとカインにも俺は宣戦布告をしている為、毎日大欲場で顔を合わせると、主に俺とカインの面倒な言い合いが始まるのも日常になっているのだが……。
アレクでもカインでも、まして、俺でもなく……また別のライバルが現れる可能性、か。
そうなったとしても、俺は手を抜く気も諦める気もないが……。
「久しぶりに会うってのがまた怖いんだよねー。ずっと会ってなかった反動で、恋に発展したりとか、久しぶりに会った相手が輝いて見えたり、とか。恋に発展する要素が発動しないか不安だよー」
「お前が不安がっても仕方ないだろう」
「いや、俺、ユキちゃんのお兄さん的立場だし」
「それは俺の立場だ。勝手に居座るな」
「じゃあ、恋人候補に……、あ、ルイちゃん、目が怖い」
ふざけた事を抜かしたサージェスをひと睨みした俺は、空になったグラスに用意されていた氷入りの水ポットの柄を掴み、追加を注いだ。
騒がしい昼食時間を過ごす客の姿が視界の端に映り、女将の愛想の良い大声が響き渡ってくる。
「兄的な立場も、恋人の立場も、お前にやる気はない」
「あれー……、ルイちゃん、もしかして……、ユキちゃんに本気モード?」
「もしかしなくても、俺は本気だが……、何か言いたい事でもあるのか?」
「何で教えてくれなかったのー!!」
「お前に報告する義務はない」
一刀両断し、また肉と米を口の中に放り込む。
滅多に食べられないジュヴァルダの肉とやらは、この食堂の調理人の腕が良い為か、噛む度に深い味わいが舌の上に広がり、文句なしに美味い。
それと、俺はサージェスと何でも教え合う仲になったつもりはない。
こいつにユキとの事を喋れば、こういう面倒な反応が返ってくるのはわかっていたからな。
「いつから!? いつから!? ねぇねぇ、ユキちゃんをいつからそういう感情で想ってたのー!?」
――ゴン!!
「痛ぁあっ」
「やかましい。大人しく食べろ」
「全く乱暴なお医者さんだよね、ルイちゃんは……。あぁ、痛かった。で? もう告白はしたのかな? どうだった? フラれちゃった?」
「さぁな。俺の想いは知っているが、何も動いてはいない」
「あはは、まぁ、そうだろうねぇ。ユキちゃんみたいなタイプだったら、ルイちゃん系の男性に告白されたら、まずときめく前に怖がっちゃうんじゃないかなー」
「どういう意味だ?」
箸を止め、サージェスに疑問を放る。
何故俺が怖がられなくてはならない……。
いや、苦手がられているのは帰還当時から知ってはいたが、記憶を取り戻してからは親しみやすくなっていたはずなんだがな……。
「だってルイちゃん。ユキちゃんの何倍も年上さんでしょ。年上の男が抱く愛情って、年下の経験少ない女の子からしたら、ある意味怖いものじゃないかな」
「……怖がらせた覚えは」
いや、前回避けられ続けた鬱憤が爆発し、強引に唇を奪いはしたが……。
「ルイちゃん、今口ごもったね? 何かユキちゃんを怖がらせる事したでしょ」
「……三週間も避けられたものでな。俺の本気を信じる事が出来ないと言い張るものだから、……塞いだ」
「何を?」
「……ユキの、唇をだ」
瞬間、サージェスが箸をカラン……、と取り落とし、頭を抱えてしまった。
人の事を確実に貶している言葉が漏れ聞こえるが、もう一度本の角で殴るべきか?
「あーあぁ……、やっちゃったよ。この人、自分の欲に従っちゃったよ……。年若い純な女の子の気持ちとか総無視しちゃったよ……。あぁ、面倒な大人っ」
「ユキにとって俺は、アレク以上に保護者としての印象が強いようだからな……。荒療治でもしない限りは、壁は突き崩せないだろう?」
「突き崩すどころか、女の子の純情大崩壊だよ!! ……まさか、ユキちゃんにとってファーストキスとかだったりしないよね?」
「俺やアレク達から恋愛感情を向けられて、戸惑ってばかりの娘だからな。男と付き合った経験もなければ、キスもまた然りだ」
「ルイちゃん……、どんな言い訳も意味をなさないくらいに、アウトだよ!!」
ダンッ!! と、テーブルを打ち付けたサージェスだったが、それで俺が罪悪の感情を抱けるような男ではない事くらいわかっているはずだ。
ユキには性急な事をしたと、そう振り返らないでもないが……、三週間もの間焦らしに焦らされ、俺の想いを、存在を避け続けたアイツにも非があるだろう?
自分の気持ちを自覚した以上、真剣に受け止めさせる為には、手段など選んでいられない。
箸を置き、左手の親指の腹で自分の唇の表面をなぞった俺は、一か月前に触れたユキの温もりを思い返した。
「……ユキ」
「ルイちゃーん……、全然反省してないね? らしいと言えばらしいけど。まぁ、狼王族の『少女期』に当たるユキちゃんに対しては、有効な手だけどね」
「別にそういう意図で触れたわけじゃない……」
狼王族の『少女期』とは、完全な大人の姿となる『成熟期』の前にあたる状態の事だ。
『成熟期』よりも不安定な、……特に、恋愛感情という部分においては、非常に迷いやすい時期でもある。異性から特別な感情を向けられたとしても、意識し困惑するばかりで自身の想いを定めようとしても、その生まれと時期故に、面倒な悩みを抱え込みやすい。
だが、ひとつだけ、強引な手段にはなるが、『少女期』にあたる者に自分だけを意識させ、恋という感情に溺れさせる手段があるのだ。
今の状態で言えば、アレクもカインもユキの心を優先して、自分という存在を必要以上に押し付けるという真似はしていない。ある程度の距離感を保ち、ユキの気持ちが目覚めるのを待っている。
(ユキにとってはそれが一番良い方法なんだろうが……)
その暗黙の距離感を崩し、ユキの迷惑も顧みず強引にでも迫り続ければ……、『少女期』の未熟な心を、想いを向けられて戸惑いやすいその意識を……、自分だけに強く向けさせる事が出来る。
まぁ、必ず両想いになれるというわけではないんだがな……。
「本当にー? ルイちゃんてば、大人のずるい面を使って、ユキちゃんを囲っちゃおうとか思ってない?」
「生憎と、ここから先は、アイツに振り向いて貰える努力をするだけだ。ユキの心を手にできずに一線を越えるような真似は、たとえ俺自身であっても……許しはしない」
「おやおや、ルイちゃん、腰をどっしり据えてユキちゃんを落とす気満々なわけだねー。アレク君以上に……、保護者としての立場が強いルイちゃんに希望は、あるのかな」
「さぁ、どうだろうな。初めての失恋というやつを経験してみるのも、一興かもしれないが」
テーブルに頬杖を着き、どこを見るともなしにユキの顔を思い浮かべながら笑う。
俺達狼王族やサージェス達魔竜の種族からすれば、ユキが幼かった日の事など昨日の事のようにも思えるものだというのに、俺にとっては違った……。
幼かったユキの記憶を大人の都合で封じたあの日から……、もう二度と会う事も出来ないと告げられたあの時から、俺の心は本来の時間の流れを心から忘れ去った。
別世界の人間として生きて行く為に、周りの者から浮かないようにとの配慮で封じられた記憶。
もうどんなに待っても、あの子供の声も、笑顔も、この身に感じられる事はないのだと、ユキがいなくなってからの日々の中で痛感した。
自分でも、らしくないほどに寂しい、辛い、と、そう感じたこの心……。
(ユキが再びこの世界に戻ってくる事を予感したあの日、色を失っていた俺の心は息を吹き返したように、その帰還を待ち望んだ)
まぁ、まさか……、女として意識する日が来ようとは、流石に思わなかったわけだが。
「ルイちゃん、失恋を覚悟してる人の顔じゃないよね? どう見ても、成就満々の顔だよ、それ」
「そうか? 俺にここまで欲しいと思わせる対象はなかなかないからな。当然……、全力で行かせて貰う気ではあるが」
「うわぁ……、ルイちゃん、ものすごーく愉しそうだねぇ……。でも、あんまり迫りすぎちゃ駄目だよ? ユキちゃんはまっさらな女の子なんだから」
「俺にも分別はある。……それよりも、相変わらず箸の使い方が不得手のようだな?」
ユキの兄を自称するサージェスの手元を見れば、以前にも見た事のある不慣れな様子が目に入った。サージェスは器用な奴ではあるが、何故か箸だけには弱い。
本人は、持ち方が難しいのだと言い訳をするが、ただその系統の食事をする事が稀だからだろう。
一か月ほど全て和食にしてやれば嫌でも慣れる。
「さて、俺はそろそろウォルヴァンシアに戻る。またな」
「うん、またねー。それと、ユキちゃんがこっちに帰って来た時に、『私、彼氏できちゃいました!』的な事になってない事を祈っとくよ、って、うわっ」
それは、反射的な衝動だった。
余計な事を口にしたサージェスの丼を一瞬で氷漬けにした俺は、無言のままその引き攣った笑みを纏う顔に背を向けた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
――Side 幸希
「ふぅ、一週間だけの帰省だったけど、楽しかったなぁ」
元いた世界である地球に一時的な帰省をしていた私は、お母さんと一緒に再びウォルヴァンシアの地へと戻って来た。
手には皆さんへのお土産を携えてある。あちらの食べ物や雑貨も結構好評のようで、毎回ではないけれどお土産を買って帰って来る事もある。
アレクさんには、初めて出会った時に気に入って貰えたお店のレア焼き菓子。
カインさんからは、私の元いた世界で流行っている音楽を聴きたいという希望を聞いていたので、友達に相談に乗って貰いながら選んだCDが何枚か袋に入っている。
魔術が発達しているこの世界においては、専用の機械がなくても魔術で再生が可能という便利な仕様だから、多分、この中に一枚くらいは気に入ってくれるかもしれない。
他にも、レイフィード叔父さんやレイル君、騎士団の人達や、セレスフィーナさんへのお土産もある。少し部屋で休んだら届けに行こう。
「ユキ、一度ユーディスの許に顔を見せに行きましょう」
「うん。お父さんに頼まれた本もあるし、早く行った方が良いよね」
中庭を抜け、お母さんと一緒に回廊へと向かう。
もうそろそろ日も暮れる時間帯のせいか、王宮内から美味しそうな夕食の支度をしている気配と匂いが漂ってくる。
お父さんに顔を見せて、部屋に戻ってから休んだら、すぐに夕食の時間になる、かな。
やっぱりお土産は明日にした方がいいだろうかと思い直した私は、袋のひとつに目をとめた。
一応……、ルイヴェルさんにも、お土産を買ってきたのだけど……。
アレクさんとカインさんに続いて、ルイヴェルさんまで私に恋愛感情があるのだと明かされてから、すでに何か月かが経つ。
一時期はルイヴェルさんの存在から逃げるように避け続けていた私だけど、あの人の腕に掴まったあの日、今から丁度一か月ほど前……。
『アレクとカイン、あの二人と俺の違いはなんだ? 逃げるほどに……、俺の想いは嫌悪されるべきものだったのか?』
心底辛そうに……、私から避けられ続けた事を悲しみ感情を少しだけ露わにしたルイヴェルさん。
あの人は私にとって、昔お世話になったお兄さんのような人で……。
不意に、私は無意識の仕草で自分の唇に触れていた。
アレクさんとカインさんにも、まだ自分の想いを返せていないのに……。
二人とは違う、あの人の言葉と……、私に触れた温もりが唇に甦るかのように、頬に熱が集まる。
「ユキ?」
「あ、ご、ごめんなさい、お母さんっ。い、行こっか」
回廊から王宮内に続く道に入りかけていたお母さんが、立ち止まっていた私を振り返り声をかけてきた。私ったら……、別に今あの人の事を思い出さないでもいいじゃない。
今はお父さんやレイフィード叔父さんに帰還の挨拶をしないといけないのに……。
慌てて唇から指先を離し、私はお母さんの許へと走って行く。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「おや、戻ったのかい? 夏葉、幸希」
「ユキ……」
王宮内の三階にあるお父さんとお母さんの部屋に辿り着いた私は、その場所にまさかのルイヴェルさんの姿まで見つけてしまった。
な、なんで……、お父さんの部屋にルイヴェルさんが。
先に部屋の中に入った笑顔のお母さんとは反対に、私は情けなくも一歩足を後退させてしまった。
一週間前と変わらない……、普段通りの冷静さを絵に描いたような表情だけど、今私が逃げ腰になってしまった事に、その銀フレームの眼鏡の奥で感情の揺らぎを僅かに見せた深緑の双眸が私を射抜いた。
逃げるなと、避けるなと……、あれほど言い聞かせただろう? そう、静かに怒れるお言葉が聞こえてくるかのようだ。
「ユーディス様、ナツハ様、申し訳ありませんが、ユキ姫様を少々お借りしてもよろしいでしょうか?」
「どうぞ~。夕食までだったら大丈夫ですよ~」
「お母さんっ!!」
どうしてそんな風に簡単に娘を差し出せるの!!
あきらかに、私とルイヴェルさんの間にある何かを感じ取っているお母さんが、ニコニコと悪意のない笑みで許可を出してしまう。
お父さんの方は……、少しだけルイヴェルさんと視線を交わらせ、「あまり無理はさせないように」と、諦めたような声音で同じく許可を出してしまった。
ルイヴェルさんはそれを合図に私の方へと近寄って来ると、ずぅぅぅん……と、大魔王様のような気配で私の前に立ち、「参りましょうか……、ユキ姫様?」と、似合わない爽やかな笑みをひとつ。
「あ、あの……、る、ルイヴェル、さ、んっ。きゃあっ」
ぷるぷるとある種の恐怖に苛まれた私をその腕の中に抱き上げ、ルイヴェルさんは絶対に逃げられないように力を込めて、私を連行してしまう。
まるでお姫様のように抱き上げられてしまった私は、半泣きの状態で「おろしてくださいっ」と懇願するけれど、一瞬でも逃げようとした私に、大魔王様は寛容ではなかった。
「俺の言い付けを破った物覚えの悪い奴には……、仕置きが必要だからな」
「ち、違うんですっ、わ、わざとじゃなくて、あの、お父さんの部屋にルイヴェルさんがいるって……その、し、知らなくて」
「同じ事だ。少しは俺に対して譲歩したかと思えば、またこれだからな……。昔は突き放しても自分から抱き着きに来ていたような奴のする事じゃないだろう?」
そ、それは、まだ幼かった頃の話で、決してルイヴェルさんの事が嫌いで逃げ腰になったわけじゃない。ただ、やっぱり……、私に対してこの人が抱いている感情の事を思うと……。
「わ、私は、……知ってると思いますけど、初恋もまだなんです。だから……、その、こ、こんな風に、強引な事をされると……」
「意識し過ぎて困る、か?」
「は、はい……」
今だって、心臓がばくばくと緊張と羞恥で爆発しそうなのに、ルイヴェルさんに触られているかと思うと、どこかに逃げ出したくて堪らなくなってしまう。
これがまだ、恋愛感情抜きのものであったなら……、少しは平気だったのかもしれないけれど。
私が困っているというのに、ルイヴェルさんは喉の奥で小さな笑いを漏らすと、額を合わせてきた。
「安心しろ……。一ヶ月前のような事はしない。あれはあくまで、お前に俺の事を真剣に考えて貰う為の本気を見せただけだからな」
「ほ、本当……、ですか?」
「あぁ。お前の心がいつか俺の事を一人の男として見るまで、あれ以上は進まない。だが、何も行動を起こさないというのも、意味がないからな。向き合って話をするぐらいの事は、当然、許してくれるんだろう?」
至近距離、ルイヴェルさんが望めば、また唇を塞がれてしまうかもしれない近さで甘く囁かれてしまった私は、見つめてくる深緑の双眸の熱に抗えず、こくりと頷きを返してしまった。
お父さんの部屋から離れ、階段を下りて向かった先は、憩いの庭園の中にある東屋。
逆さまの半月を思わせる、ぐるりと東屋の中に配された柔らかなソファー。
そこに腰を下ろしたルイヴェルさんが、私を腕に抱いたままで話を始めようとする。
「ルイヴェルさん、ふ、普通に座らせてくださいっ」
「お前はすぐ逃げるような奴だからな。話が終わるまでは檻に入れておく必要があるだろう?」
「お、檻、って……」
「個人的には……、永遠にこの腕の中に閉じ込めておきたいがな?」
「な、なななななな、何言ってるんですかっ」
真っ赤になって抗議する私を、ルイヴェルさんは愉しそうに頭を撫でながら、離す気はないと態度で示してくる。うぅ、この体勢は……、物凄く恥ずかしいし、顔も近いし。
幼い頃はいつもの事だったけど、大人になってからこうされると、もう恥ずかしくて堪らない。
「久しぶりの、もうひとつの故郷はどうだったんだ?」
「え?」
「友達とも会って来たんだろう? 土産話のひとつもないのか?」
「えっと……、ちゃ、ちゃんと、会えました。一緒に、遊園地に行ったり、ショッピングをしたり……」
本当に、ただ話をする気らしい。
ルイヴェルさんは地球であった事を話せと、積極的に私から聞き出そうとしてくる。
今までにも話した事がないわけじゃなかったけれど、なんだか、向こうの世界の事を聞きたい、というよりは、私がどんなものを見て、どんな風に過ごしたかと、それを知りたがっているような気もする。
私は視線を下に俯けながら、昔からの友達と遊んだ事や、ご近所だった人達とも町のお祭りに参加した事などを、ぽつりぽつりと説明してみせた。
魔術の代わりに科学が発達した、私が暮らしていた懐かしい世界……。
時々戻る事は出来るけれど、私が生きていくのは向こうの世界じゃない。このエリュセード……。
寂しいと……、思わない……わけはなくて。私が元の世界について語る時、そういう気配が、どうしても滲み出してしまう。
気持ちの整理はついているけれど、なかなか……。
「とっても……、楽しかったです」
「……寂しいのか?」
「いえ、それも、まぁ……、ありますけど、やっぱり向こうの世界に戻ると、懐かしさがあって……。でも、大丈夫ですよ! 私はこちらの世界も大好きですし、毎日がとても楽しいですから!!」
「別に無理をする必要はない。お前にとって長く過ごしたのは向こうの世界だ。それを懐かしく想い、焦がれる気持ちは当たり前のものだからな」
ルイヴェルさんは俯く私を振り向かす事はせず、私の心に寄り添おうとするかのように、私の頭を優しい手つきで撫でてくれた。
懐かしい……、子供の頃にも何度も撫でて貰った、ルイヴェルさんの大きな手。
とくりと、心が満たされるような鼓動を覚えた私は、顔を上げ、ルイヴェルさんに微笑んでみせる。
「有難うございます。だけど、本当に大丈夫なんですよ。一時的な感情というか、誰だって自分の故郷に帰れば、懐かしく思うものですし」
「世界そのものが違うんだ。ただ離れるのとはわけが違うだろう? お前の心は、たとえこちらに戻っても、あの世界を愛しているからこそ、涙を流すんだ」
「私の……、心が、ですか?」
「あぁ。世界だけではなく、その場所に生きる命、お前が関わった者、見たもの、感じたもの、全て、お前の一部となり、大切な故郷の姿となっていく……。だから、無理はするな。寂しいのならば、そう素直に吐き出せ」
そう言ってくれたルイヴェルさんの声が、とても優しい柔らかな気配に満ちていて……、私は少し恥ずかしくなりながらも、その胸に頬を摺り寄せた。
どんなに時が経っても、ルイヴェルさんは、……ルイお兄ちゃんは、変わらない。
意地悪な事を言ったり、からかうような素振りを見せても、昔から……、私が悲しんだり傷ついている時には、静かにその胸を貸してくれるのだ。
「……やっぱり、ルイヴェルさんって、お兄さん、……みたい、ですよね」
「一応はな。この世界における、お前の保護者的な仕事も数多くこなしてきたが……。お前……、それを今の俺に言うのは酷というものだと思うがな?」
「あ……」
お兄さんのような優しい眼差しに、求められるような熱の揺らぎを感じた私は、気まずげに小さく謝った。自分に想いを向けてくれている人に、言うべき言葉じゃなかった。
だけど、私にとって、ルイヴェルさんがお兄さんのような存在である事は、変え様のない事実……なんだけ、ど。
「あ、あの……」
「お前はすぐに俺の気持ちから逃げようとする傾向がある」
私の唇を指先で意味深になぞり、暮れゆく夕日の優しいオレンジの光を受けながら、ルイヴェルさんは、遠き日に私を可愛がってくれたルイお兄ちゃんの顔ではなく、私を一人の女性として求める男性の顔を見せ始めた。
「『少女期』には個人差があるが、お前はただでさえ迷い悩みやすい奴だからな……。俺やアレク、カインの想いに困り切っている事はよくわかっているつもりだ、が」
「……が?」
「遠慮ばかりしていては、いつまで経っても進歩もないだろう。その証拠に、お前を尊重して心の距離感を保っているアレクとカインは見事に進展なしの状態だ」
「は、はぁ……」
「ライバルを出し抜くには……、違う事をすべきだろう?」
ち、違う事って……、何だか物凄く嫌な予感が!!
で、でも、私に対して一ヶ月前みたいな危ない真似はしないって約束してくれたし!!
まさか、私を安心させる為の嘘なんじゃ……、そう潤む視界の先にあるルイヴェルさんの妖しい気配を醸し出す美貌に慄く。
「あ、あの……、ちゃ、ちゃんと、考えますから。ルイヴェルさんからの告白、なかった事なんかしませんから……っ」
「なかった事になどした日には、お前に似合いの罰を考えてあるから安心しろ」
にこっ。……だから、そういう爽やかな笑みは似合わないんですって!!
キラキラと星屑や花が飛び交うかのような背景がルイヴェルさんの後ろに見えた気がするけれど、きっと私の精神状態が追いつめられているせいに違いない。
たらたらと冷や汗を掻く私とは反対に、ルイヴェルさんは私の耳元に唇を寄せて低く微かな笑い声を漏らした。
一体何をされてしまうのか、物凄く心配……を通り越して、気絶してしまいそうなのだけど!!
「お前が俺の気持ちを忘れないように、定期的に言い含める必要があるとみた」
「……え」
「勿論、お前の心が俺のものになるまでは、絶対に無理強いをする気はない。だが、言葉でなら……、構わないだろう?」
「あ、あのっ、そ、それって」
「――好きだ」
「!!!!!!!」
それは、ただの言葉などではなくて、たった一言だけど、ルイヴェルさんの中に秘められた私への恋心が深く沁み込んでくるかのような響きだった。
元々、どこか艶めいた心地の良い低い声を発する人だから、耳元でそんな甘い囁きを零されてしまったら……。頭の奥まで痺れてしまいそうな疼きに身体が震えてしまう。
「ユキ、お前が俺の想いから逃げられないように、鎖をつけてやる……。俺はお前が好きだ……。この世界で唯ひとり、妹でもなく、ひとりの女として、好きになった」
「る、ルイヴェルさんっ」
やめてやめてー!! こんな耳のすぐ傍で、そんな甘い声で切なそうに囁かないでー!!
ルイヴェルさんの腕から早くも逃れようと身を捩ると、身体を抱く腕に力がこもり、さらに深く抱き込まれてしまう。
これは間違いなく、私を逃がす気は微塵もないという意思表示!!
ふぅっと耳の奥に吹き込まれた吐息の熱さに、ルイヴェルさんの本領発揮を感じずにはいられない。
「んっ……、あの、こ、こういうのはっ、ま、また後日っ」
「勿論、今後もやっていく気だが? 定期的に、お前が忘れないように、何度でも」
「ご遠慮します!! こ、こんな心臓に悪すぎる告白を何度もなんてっ、うぅっ、身が持ちませんっ」
「安心しろ。お前の身体はそこまで脆くはない。俺がこの想いを伝える度に……、心に馴染んでいくはずだからな」
馴染まなくていいですからああああああ!!
うぅっ、こんな艶めいた甘い低音を何度も囁かれるなんて、拷問です、拷問!!
もうやめてほしいと涙目で訴えるけれど、そうと決めたこの人が途中で許してくれるわけもなく。
絶対に聞き逃す事など出来ないように、私に対する想いを囁き続ける。
「好きという言葉では弱すぎるな……。お前の事を考える度に胸の奥が疼き、早く自分のものにしたいと、俺の心が訴える。ユキ……、その心に消えない痕を残させろ。愛しているんだ……、お前の全てを」
アレクさんとカインさんとも違う。私の心が定まるのを待つと言ってくれたくせに、ルイヴェルさんの囁きは、その奥に潜む熱は、私を内側から奪い尽くすような気配を孕んでいる。
確かに前回のような真似はしていないけれど、言葉だけでも凶器だった……。
「わ、わかりました、からっ、も、もうっ、ゆ、許してくださいっ」
「俺は自分の気持ちを素直に伝えているだけだろう? 繊細な男心を踏み躙られないように……、何度も、な」
「い、意地悪ですよ……、こんなのっ、何度もなんて、耐えられませんっ」
「じゃあ、俺に落ちるか?」
落ちる……。それはつまり、ルイヴェルさんを私の相手と定めて心を委ねるという事で……。
だけど、こんななし崩し的なのなんて絶対に嫌だ。
私は目に涙を溜め込みながらも、抵抗するように身を捩った。
まだ、誰に対して私の想いが育っているのか、それを把握出来ていないのに、好きだと確信していないのに、ルイヴェルさんのものになる事は出来ない。
「無理、です。私はまだ……」
「……だろうな」
「ルイヴェルさん?」
微かに愉しそうな笑いが漏れ聞こえた。
ルイヴェルさんは私の耳元から顔を上げると、してやったりの笑みを表情に刻み、私を見下ろしてくる。
「そう簡単に落ちて貰っても面白くはないからな。だが、昔よりも意思が強くなっているようで……、少なからず安心したぞ?」
「……もしかして、……からかいました?」
「いや? お前を想う感情も、さっきの言葉も全て真実だ。安心しろ」
「うぅっ、それが嘘だったらどんなにいいかっ」
「ほぉ……、嘘にしたいわけか? いい度胸だな。日がどっぷりと暮れるまで、お前の小さな耳の奥に絶えず囁き続けてやってもいいんだぞ?」
「絶対に嫌です!!」
大人の本気の悪ふざけに心臓を捧げて堪るものですか!
むっと頬を膨らまして恨みがましい目を向けてみると、それさえも面白いと言わんばかりの笑みが深まった。私を愛していると口にするくせに、私で遊ぶ事も忘れない意地悪な人。
蒼い髪を指先で弄ばれながら、「つれない事を言うお姫様だな、お前は」と苦笑するルイヴェルさんから、ぷいっと顔を背けた。
「意地悪な人は嫌いですっ」
「なんだ? 優しい言葉の類を並べ立てられたいのか? お前が望むなら、姫君に傅く騎士や王子のように、敬意を表してやってもいいんだがな?」
「いりません!!」
やっぱりルイヴェルさんは意地悪な人だ。
昔、散々な目に遭わされた光景が幾つの頭の中で浮かんでいく。
もしかしたら、あの頃よりもさらにレベルアップしているかもしれない……。
私は話の最中に緩んだルイヴェルさんの腕の力に気づくと、その場から急いで逃げた。
多分、逃がしたのはわざと……。東屋の扉に逃げた私をルイヴェルさんが追う事はなく、愉しそうに笑う気配だけが聞こえたから。
東屋を飛び出して、私は自分の部屋に向かって全力で走り抜けて行く。
ルイヴェルさんの気が変わって追いかけて来ても、追いつけないように。
あの人の想いが、私を呑み込んでしまわないように……、早く、早く。
「あんな人……、好きになんか」
昔お世話になった意地悪だけど面倒見の良いお兄さん、それで十分……、の、はず。
それなのに、どうして頭の中からルイヴェルさんの存在が消えてくれないのだろう。
耳元で囁かれた愛の言葉、一ヶ月前の辛そうな顔、幼い頃の記憶と、この世界に戻って来てから見てきたあの人との記憶を、胸の奥で騒がしい鼓動と共に感じながら、私は頬の熱が消えない事に困惑しながらも、自分の部屋へと向かって逃げ込んで行くのだった。
まだ、ルイヴェル→幸希への片想い設定です。
――Side ルイヴェル
「すみません、ルイヴェル殿。確かに、この書類は全て漏れなくお預かりいたしました」
「いや、丁度こちらに来る用事もあったからな。特に礼には及ばない」
頼まれていた資料を纏めた書類を、ガデルフォーンの宰相シュディエーラに渡し終わった俺は、茶の席を提案されたが、それを断り、踵を返した。
これからガデルフォーンの城下で昼食をとり、それが終わったらすぐにウォルヴァンシアに戻る。
まだあちらに仕事も残っているからな。
――ガチャ。
「あれ? ルイちゃんじゃない。こっちに来てたんだねー」
「サージェスか。相変わらずストレスのなさそうな顔をしているな」
「あはは……、そうは言うけどね。最近仕事が忙しくて俺も色々大変なんだよ。あ、シュディエーラ、これ騎士団からの報告書。ちゃんと目を通しといてね」
「ご苦労様です。丁度今、ルイヴェル殿をお茶の席にお誘いしたのですが、断られてしまいましてね。貴方の時間が良ければ、いかがですか?」
「うーん、俺としては……、ちょっとまだ仕事が残ってるから、遠慮しとくよ。ごめんね」
「そうですか……。では、『私達』だけでお茶の時間を過ごすしかありませんね」
シュディエーラが自分の足下へと声をかけると、その影から大量の触手が首をもたげ上へと這い出てきた……。
麗しき宰相殿のペット……、もとい、友人である触手達のおでましだ。
シュディエーラに同意を示すように擦り寄り、見た目に反した愛らしい声で泣く様に違和感を覚えずにはいられない。俺が扉へと向かうと、すぐにその後を追いかけてサージェスがやって来る。
「何だ? 仕事があるんじゃなかったのか?」
「だって久しぶりにルイちゃんと会えたわけだしねー。ウォルヴァンシアでの近況を聞かせて貰えないかなーと、思って。ご飯、食べてから帰る気なんでしょ?」
「……長居をする気はないんだがな」
「まぁまぁいいじゃない。俺とお昼をしてくれたら、ガデルフォーン国内で見つかった、新種の薬草について教えてあげるんだけどなー?」
「……新種か。……いいだろう」
魔術も医療も、決して変化のないものではない。
日々、その道を営む者が研鑽を積み、新しい術や、薬の調合法などを見付けては世に送り出している。
そして俺も、他国で見つかった新種の薬草とやらに興味がある。
……それに、今ウォルヴァンシアに帰っても、待っているのは仕事ぐらいのものだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「あいよ!! 大盛りジュヴァルダ丼のお待たせだよ!!」
「有難う、女将さん。……う~ん、今日も衰えのないサービス量だねぇ。ジュヴァルダってさ、ガデルフォーンでも荒くれ者の異名をとる動物のお肉なんだよね。専門の人達が狩りに行ってるらしいけど、無傷じゃ帰って来れなかっただろうなー」
ガデルフォーンの皇都にある、大食堂。
その店内、奥の席に座った俺達の目の前には、大きな丼ぶりに惜しみなく和の国から仕入れた米と、念入りに焼かれたジュヴァルダの肉が乗っており、美味そうな匂いが漂ってきている。
「はい、ルイちゃん。その生卵かけて食べてねー」
「あぁ」
小皿に入れて持って来られた卵を手に取り、俺はそれを皿の縁で割ると、ジュヴァルダ丼の上に垂れ落とした。
「栄養満点だし、滅多にメニューに並ぶもんでもないから、貴重なんだよね、これ。まぁ、自分で狩りに行けば良い話なんだけど、その為に出掛けるのも面倒だし。ん~……でも、これ、本当に美味しいね。熱々のジュヴァルダ肉にタレが良く沁み込んでる」
「美味いが……、量が多いのが難点だな」
「俺は丁度お腹減ってたし、軽いけどね」
「そういえば、魔竜は食欲には事欠かなかったな」
「そうそう。出された物は全部美味しく頂いちゃうからねー。……ところで、最近ウォルヴァンシアの方はどうなの? ユキちゃんは元気にやってるのかな?」
やはりな……。ウォルヴァンシアでの話を聞きたいというのは本当だったようだが、結局はユキの近況を聞きたかったのだろう。
ガデルフォーンに滞在し、ユキと出会わせてしまったせいで、今でもユキの事を気にかけている。
「生憎と、……今はウォルヴァンシアにはいない」
「え? どっか他国に旅行にでも行ってるの?」
「いや、この世界自体にいない」
「……どういう事?」
サージェスが箸を動かす手を止め、いつもの能天気な声音を低めた。
俺の方は箸を動かし肉を口に運ぶと、それを咀嚼しサージェスと視線を交わらせたまま数秒。
「……って、早く言おうよ。お肉もぐもぐしてる場合じゃないよね? 物凄く、ユキちゃんの行方が気になって仕方ないんだけどっ」
そう非難を受けるが、俺は気にしない。さらにもう二、三度噛み腹の中に肉を収めると、グラスに入っている水をごくりと飲み干す。
「……ふぅ」
「焦らしプレイなの? ルイちゃん……」
「いや、俺も腹が減っていたからな。一口腹に収めておきたかっただけだ」
「もう……、本当、マイペースだよねぇ、ルイちゃんは」
がくりと肩を落としたサージェスが頬を掻いているが、今から話す事を聞けばまた騒々しくなるのは目に見えているからな。腹ごなしを少しでもしておいた方が良いだろう。
「ユキは今……、前に暮らしていた世界に戻っている」
「えーと、前のっていうと、例の異世界?」
「そうだ。友達と約束があるとかでな。夏葉様と共に戻っている」
「……友達って、……女の子?」
「そうだろうな。恐らく……」
それについては何も聞いていないが、夏葉様が一緒にいるのなら、何も問題はないだろう。
元いた世界なら、ユキにとっては行動しやすい場所でもあるしな。
しかしサージェスは、箸を持つ手を小刻みに震わせて何かを呟いている。
「どうした」
「あのさ……、もし、ユキちゃんが会うお友達が、男だったらどうする?」
「男友達の一人ぐらいいるかもしれないが、別に何の問題もないだろう」
「甘いよ、ルイちゃん!! 久しぶりに会うのが男友達だったら、その男友達がユキちゃんとどうにかなろうと下心を出す事だってあるかもだよ!! って、痛っ」
「考えすぎだ。さっさと食事を続けろ」
持参していた本の角でサージェスの額を小突き、俺もまた二口目を味わう。
男友達か……。まぁ、いたとしてもおかしくはない。
ユキはあちらの世界で二十年の時を過ごしてきたのだ。交友関係もあるだろう。
だが、だからといって、再会する相手が仮に男だとしても、変な事になる確率は……。
そういえば、セレス姉さんが言っていたな。
ユキがやけに喜びながら帰還の支度をしていたと……。
(いや、アイツは初恋もまだのはずだ。好きな男がいるわけが……)
……パク。もう一口を口内で味わいながら、俺は天井を見つめた。
初恋ではなくても、憧れをもった相手……という可能性もある。
もしもそれが……恋に変わるような相手だった場合……。
(ふぅ……、サージェスに乗せられて、俺も阿保な事を考えているな)
ユキに俺の気持ちを伝え、もう二度と避けるなと言い含めてから一ヶ月……。
あれから特に進展はない。
一応俺を見ても逃げる事はなくなったが、やはり返せる答えがないのか、ユキは気まずげにしている。
そして、アレクとカインにも俺は宣戦布告をしている為、毎日大欲場で顔を合わせると、主に俺とカインの面倒な言い合いが始まるのも日常になっているのだが……。
アレクでもカインでも、まして、俺でもなく……また別のライバルが現れる可能性、か。
そうなったとしても、俺は手を抜く気も諦める気もないが……。
「久しぶりに会うってのがまた怖いんだよねー。ずっと会ってなかった反動で、恋に発展したりとか、久しぶりに会った相手が輝いて見えたり、とか。恋に発展する要素が発動しないか不安だよー」
「お前が不安がっても仕方ないだろう」
「いや、俺、ユキちゃんのお兄さん的立場だし」
「それは俺の立場だ。勝手に居座るな」
「じゃあ、恋人候補に……、あ、ルイちゃん、目が怖い」
ふざけた事を抜かしたサージェスをひと睨みした俺は、空になったグラスに用意されていた氷入りの水ポットの柄を掴み、追加を注いだ。
騒がしい昼食時間を過ごす客の姿が視界の端に映り、女将の愛想の良い大声が響き渡ってくる。
「兄的な立場も、恋人の立場も、お前にやる気はない」
「あれー……、ルイちゃん、もしかして……、ユキちゃんに本気モード?」
「もしかしなくても、俺は本気だが……、何か言いたい事でもあるのか?」
「何で教えてくれなかったのー!!」
「お前に報告する義務はない」
一刀両断し、また肉と米を口の中に放り込む。
滅多に食べられないジュヴァルダの肉とやらは、この食堂の調理人の腕が良い為か、噛む度に深い味わいが舌の上に広がり、文句なしに美味い。
それと、俺はサージェスと何でも教え合う仲になったつもりはない。
こいつにユキとの事を喋れば、こういう面倒な反応が返ってくるのはわかっていたからな。
「いつから!? いつから!? ねぇねぇ、ユキちゃんをいつからそういう感情で想ってたのー!?」
――ゴン!!
「痛ぁあっ」
「やかましい。大人しく食べろ」
「全く乱暴なお医者さんだよね、ルイちゃんは……。あぁ、痛かった。で? もう告白はしたのかな? どうだった? フラれちゃった?」
「さぁな。俺の想いは知っているが、何も動いてはいない」
「あはは、まぁ、そうだろうねぇ。ユキちゃんみたいなタイプだったら、ルイちゃん系の男性に告白されたら、まずときめく前に怖がっちゃうんじゃないかなー」
「どういう意味だ?」
箸を止め、サージェスに疑問を放る。
何故俺が怖がられなくてはならない……。
いや、苦手がられているのは帰還当時から知ってはいたが、記憶を取り戻してからは親しみやすくなっていたはずなんだがな……。
「だってルイちゃん。ユキちゃんの何倍も年上さんでしょ。年上の男が抱く愛情って、年下の経験少ない女の子からしたら、ある意味怖いものじゃないかな」
「……怖がらせた覚えは」
いや、前回避けられ続けた鬱憤が爆発し、強引に唇を奪いはしたが……。
「ルイちゃん、今口ごもったね? 何かユキちゃんを怖がらせる事したでしょ」
「……三週間も避けられたものでな。俺の本気を信じる事が出来ないと言い張るものだから、……塞いだ」
「何を?」
「……ユキの、唇をだ」
瞬間、サージェスが箸をカラン……、と取り落とし、頭を抱えてしまった。
人の事を確実に貶している言葉が漏れ聞こえるが、もう一度本の角で殴るべきか?
「あーあぁ……、やっちゃったよ。この人、自分の欲に従っちゃったよ……。年若い純な女の子の気持ちとか総無視しちゃったよ……。あぁ、面倒な大人っ」
「ユキにとって俺は、アレク以上に保護者としての印象が強いようだからな……。荒療治でもしない限りは、壁は突き崩せないだろう?」
「突き崩すどころか、女の子の純情大崩壊だよ!! ……まさか、ユキちゃんにとってファーストキスとかだったりしないよね?」
「俺やアレク達から恋愛感情を向けられて、戸惑ってばかりの娘だからな。男と付き合った経験もなければ、キスもまた然りだ」
「ルイちゃん……、どんな言い訳も意味をなさないくらいに、アウトだよ!!」
ダンッ!! と、テーブルを打ち付けたサージェスだったが、それで俺が罪悪の感情を抱けるような男ではない事くらいわかっているはずだ。
ユキには性急な事をしたと、そう振り返らないでもないが……、三週間もの間焦らしに焦らされ、俺の想いを、存在を避け続けたアイツにも非があるだろう?
自分の気持ちを自覚した以上、真剣に受け止めさせる為には、手段など選んでいられない。
箸を置き、左手の親指の腹で自分の唇の表面をなぞった俺は、一か月前に触れたユキの温もりを思い返した。
「……ユキ」
「ルイちゃーん……、全然反省してないね? らしいと言えばらしいけど。まぁ、狼王族の『少女期』に当たるユキちゃんに対しては、有効な手だけどね」
「別にそういう意図で触れたわけじゃない……」
狼王族の『少女期』とは、完全な大人の姿となる『成熟期』の前にあたる状態の事だ。
『成熟期』よりも不安定な、……特に、恋愛感情という部分においては、非常に迷いやすい時期でもある。異性から特別な感情を向けられたとしても、意識し困惑するばかりで自身の想いを定めようとしても、その生まれと時期故に、面倒な悩みを抱え込みやすい。
だが、ひとつだけ、強引な手段にはなるが、『少女期』にあたる者に自分だけを意識させ、恋という感情に溺れさせる手段があるのだ。
今の状態で言えば、アレクもカインもユキの心を優先して、自分という存在を必要以上に押し付けるという真似はしていない。ある程度の距離感を保ち、ユキの気持ちが目覚めるのを待っている。
(ユキにとってはそれが一番良い方法なんだろうが……)
その暗黙の距離感を崩し、ユキの迷惑も顧みず強引にでも迫り続ければ……、『少女期』の未熟な心を、想いを向けられて戸惑いやすいその意識を……、自分だけに強く向けさせる事が出来る。
まぁ、必ず両想いになれるというわけではないんだがな……。
「本当にー? ルイちゃんてば、大人のずるい面を使って、ユキちゃんを囲っちゃおうとか思ってない?」
「生憎と、ここから先は、アイツに振り向いて貰える努力をするだけだ。ユキの心を手にできずに一線を越えるような真似は、たとえ俺自身であっても……許しはしない」
「おやおや、ルイちゃん、腰をどっしり据えてユキちゃんを落とす気満々なわけだねー。アレク君以上に……、保護者としての立場が強いルイちゃんに希望は、あるのかな」
「さぁ、どうだろうな。初めての失恋というやつを経験してみるのも、一興かもしれないが」
テーブルに頬杖を着き、どこを見るともなしにユキの顔を思い浮かべながら笑う。
俺達狼王族やサージェス達魔竜の種族からすれば、ユキが幼かった日の事など昨日の事のようにも思えるものだというのに、俺にとっては違った……。
幼かったユキの記憶を大人の都合で封じたあの日から……、もう二度と会う事も出来ないと告げられたあの時から、俺の心は本来の時間の流れを心から忘れ去った。
別世界の人間として生きて行く為に、周りの者から浮かないようにとの配慮で封じられた記憶。
もうどんなに待っても、あの子供の声も、笑顔も、この身に感じられる事はないのだと、ユキがいなくなってからの日々の中で痛感した。
自分でも、らしくないほどに寂しい、辛い、と、そう感じたこの心……。
(ユキが再びこの世界に戻ってくる事を予感したあの日、色を失っていた俺の心は息を吹き返したように、その帰還を待ち望んだ)
まぁ、まさか……、女として意識する日が来ようとは、流石に思わなかったわけだが。
「ルイちゃん、失恋を覚悟してる人の顔じゃないよね? どう見ても、成就満々の顔だよ、それ」
「そうか? 俺にここまで欲しいと思わせる対象はなかなかないからな。当然……、全力で行かせて貰う気ではあるが」
「うわぁ……、ルイちゃん、ものすごーく愉しそうだねぇ……。でも、あんまり迫りすぎちゃ駄目だよ? ユキちゃんはまっさらな女の子なんだから」
「俺にも分別はある。……それよりも、相変わらず箸の使い方が不得手のようだな?」
ユキの兄を自称するサージェスの手元を見れば、以前にも見た事のある不慣れな様子が目に入った。サージェスは器用な奴ではあるが、何故か箸だけには弱い。
本人は、持ち方が難しいのだと言い訳をするが、ただその系統の食事をする事が稀だからだろう。
一か月ほど全て和食にしてやれば嫌でも慣れる。
「さて、俺はそろそろウォルヴァンシアに戻る。またな」
「うん、またねー。それと、ユキちゃんがこっちに帰って来た時に、『私、彼氏できちゃいました!』的な事になってない事を祈っとくよ、って、うわっ」
それは、反射的な衝動だった。
余計な事を口にしたサージェスの丼を一瞬で氷漬けにした俺は、無言のままその引き攣った笑みを纏う顔に背を向けた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
――Side 幸希
「ふぅ、一週間だけの帰省だったけど、楽しかったなぁ」
元いた世界である地球に一時的な帰省をしていた私は、お母さんと一緒に再びウォルヴァンシアの地へと戻って来た。
手には皆さんへのお土産を携えてある。あちらの食べ物や雑貨も結構好評のようで、毎回ではないけれどお土産を買って帰って来る事もある。
アレクさんには、初めて出会った時に気に入って貰えたお店のレア焼き菓子。
カインさんからは、私の元いた世界で流行っている音楽を聴きたいという希望を聞いていたので、友達に相談に乗って貰いながら選んだCDが何枚か袋に入っている。
魔術が発達しているこの世界においては、専用の機械がなくても魔術で再生が可能という便利な仕様だから、多分、この中に一枚くらいは気に入ってくれるかもしれない。
他にも、レイフィード叔父さんやレイル君、騎士団の人達や、セレスフィーナさんへのお土産もある。少し部屋で休んだら届けに行こう。
「ユキ、一度ユーディスの許に顔を見せに行きましょう」
「うん。お父さんに頼まれた本もあるし、早く行った方が良いよね」
中庭を抜け、お母さんと一緒に回廊へと向かう。
もうそろそろ日も暮れる時間帯のせいか、王宮内から美味しそうな夕食の支度をしている気配と匂いが漂ってくる。
お父さんに顔を見せて、部屋に戻ってから休んだら、すぐに夕食の時間になる、かな。
やっぱりお土産は明日にした方がいいだろうかと思い直した私は、袋のひとつに目をとめた。
一応……、ルイヴェルさんにも、お土産を買ってきたのだけど……。
アレクさんとカインさんに続いて、ルイヴェルさんまで私に恋愛感情があるのだと明かされてから、すでに何か月かが経つ。
一時期はルイヴェルさんの存在から逃げるように避け続けていた私だけど、あの人の腕に掴まったあの日、今から丁度一か月ほど前……。
『アレクとカイン、あの二人と俺の違いはなんだ? 逃げるほどに……、俺の想いは嫌悪されるべきものだったのか?』
心底辛そうに……、私から避けられ続けた事を悲しみ感情を少しだけ露わにしたルイヴェルさん。
あの人は私にとって、昔お世話になったお兄さんのような人で……。
不意に、私は無意識の仕草で自分の唇に触れていた。
アレクさんとカインさんにも、まだ自分の想いを返せていないのに……。
二人とは違う、あの人の言葉と……、私に触れた温もりが唇に甦るかのように、頬に熱が集まる。
「ユキ?」
「あ、ご、ごめんなさい、お母さんっ。い、行こっか」
回廊から王宮内に続く道に入りかけていたお母さんが、立ち止まっていた私を振り返り声をかけてきた。私ったら……、別に今あの人の事を思い出さないでもいいじゃない。
今はお父さんやレイフィード叔父さんに帰還の挨拶をしないといけないのに……。
慌てて唇から指先を離し、私はお母さんの許へと走って行く。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「おや、戻ったのかい? 夏葉、幸希」
「ユキ……」
王宮内の三階にあるお父さんとお母さんの部屋に辿り着いた私は、その場所にまさかのルイヴェルさんの姿まで見つけてしまった。
な、なんで……、お父さんの部屋にルイヴェルさんが。
先に部屋の中に入った笑顔のお母さんとは反対に、私は情けなくも一歩足を後退させてしまった。
一週間前と変わらない……、普段通りの冷静さを絵に描いたような表情だけど、今私が逃げ腰になってしまった事に、その銀フレームの眼鏡の奥で感情の揺らぎを僅かに見せた深緑の双眸が私を射抜いた。
逃げるなと、避けるなと……、あれほど言い聞かせただろう? そう、静かに怒れるお言葉が聞こえてくるかのようだ。
「ユーディス様、ナツハ様、申し訳ありませんが、ユキ姫様を少々お借りしてもよろしいでしょうか?」
「どうぞ~。夕食までだったら大丈夫ですよ~」
「お母さんっ!!」
どうしてそんな風に簡単に娘を差し出せるの!!
あきらかに、私とルイヴェルさんの間にある何かを感じ取っているお母さんが、ニコニコと悪意のない笑みで許可を出してしまう。
お父さんの方は……、少しだけルイヴェルさんと視線を交わらせ、「あまり無理はさせないように」と、諦めたような声音で同じく許可を出してしまった。
ルイヴェルさんはそれを合図に私の方へと近寄って来ると、ずぅぅぅん……と、大魔王様のような気配で私の前に立ち、「参りましょうか……、ユキ姫様?」と、似合わない爽やかな笑みをひとつ。
「あ、あの……、る、ルイヴェル、さ、んっ。きゃあっ」
ぷるぷるとある種の恐怖に苛まれた私をその腕の中に抱き上げ、ルイヴェルさんは絶対に逃げられないように力を込めて、私を連行してしまう。
まるでお姫様のように抱き上げられてしまった私は、半泣きの状態で「おろしてくださいっ」と懇願するけれど、一瞬でも逃げようとした私に、大魔王様は寛容ではなかった。
「俺の言い付けを破った物覚えの悪い奴には……、仕置きが必要だからな」
「ち、違うんですっ、わ、わざとじゃなくて、あの、お父さんの部屋にルイヴェルさんがいるって……その、し、知らなくて」
「同じ事だ。少しは俺に対して譲歩したかと思えば、またこれだからな……。昔は突き放しても自分から抱き着きに来ていたような奴のする事じゃないだろう?」
そ、それは、まだ幼かった頃の話で、決してルイヴェルさんの事が嫌いで逃げ腰になったわけじゃない。ただ、やっぱり……、私に対してこの人が抱いている感情の事を思うと……。
「わ、私は、……知ってると思いますけど、初恋もまだなんです。だから……、その、こ、こんな風に、強引な事をされると……」
「意識し過ぎて困る、か?」
「は、はい……」
今だって、心臓がばくばくと緊張と羞恥で爆発しそうなのに、ルイヴェルさんに触られているかと思うと、どこかに逃げ出したくて堪らなくなってしまう。
これがまだ、恋愛感情抜きのものであったなら……、少しは平気だったのかもしれないけれど。
私が困っているというのに、ルイヴェルさんは喉の奥で小さな笑いを漏らすと、額を合わせてきた。
「安心しろ……。一ヶ月前のような事はしない。あれはあくまで、お前に俺の事を真剣に考えて貰う為の本気を見せただけだからな」
「ほ、本当……、ですか?」
「あぁ。お前の心がいつか俺の事を一人の男として見るまで、あれ以上は進まない。だが、何も行動を起こさないというのも、意味がないからな。向き合って話をするぐらいの事は、当然、許してくれるんだろう?」
至近距離、ルイヴェルさんが望めば、また唇を塞がれてしまうかもしれない近さで甘く囁かれてしまった私は、見つめてくる深緑の双眸の熱に抗えず、こくりと頷きを返してしまった。
お父さんの部屋から離れ、階段を下りて向かった先は、憩いの庭園の中にある東屋。
逆さまの半月を思わせる、ぐるりと東屋の中に配された柔らかなソファー。
そこに腰を下ろしたルイヴェルさんが、私を腕に抱いたままで話を始めようとする。
「ルイヴェルさん、ふ、普通に座らせてくださいっ」
「お前はすぐ逃げるような奴だからな。話が終わるまでは檻に入れておく必要があるだろう?」
「お、檻、って……」
「個人的には……、永遠にこの腕の中に閉じ込めておきたいがな?」
「な、なななななな、何言ってるんですかっ」
真っ赤になって抗議する私を、ルイヴェルさんは愉しそうに頭を撫でながら、離す気はないと態度で示してくる。うぅ、この体勢は……、物凄く恥ずかしいし、顔も近いし。
幼い頃はいつもの事だったけど、大人になってからこうされると、もう恥ずかしくて堪らない。
「久しぶりの、もうひとつの故郷はどうだったんだ?」
「え?」
「友達とも会って来たんだろう? 土産話のひとつもないのか?」
「えっと……、ちゃ、ちゃんと、会えました。一緒に、遊園地に行ったり、ショッピングをしたり……」
本当に、ただ話をする気らしい。
ルイヴェルさんは地球であった事を話せと、積極的に私から聞き出そうとしてくる。
今までにも話した事がないわけじゃなかったけれど、なんだか、向こうの世界の事を聞きたい、というよりは、私がどんなものを見て、どんな風に過ごしたかと、それを知りたがっているような気もする。
私は視線を下に俯けながら、昔からの友達と遊んだ事や、ご近所だった人達とも町のお祭りに参加した事などを、ぽつりぽつりと説明してみせた。
魔術の代わりに科学が発達した、私が暮らしていた懐かしい世界……。
時々戻る事は出来るけれど、私が生きていくのは向こうの世界じゃない。このエリュセード……。
寂しいと……、思わない……わけはなくて。私が元の世界について語る時、そういう気配が、どうしても滲み出してしまう。
気持ちの整理はついているけれど、なかなか……。
「とっても……、楽しかったです」
「……寂しいのか?」
「いえ、それも、まぁ……、ありますけど、やっぱり向こうの世界に戻ると、懐かしさがあって……。でも、大丈夫ですよ! 私はこちらの世界も大好きですし、毎日がとても楽しいですから!!」
「別に無理をする必要はない。お前にとって長く過ごしたのは向こうの世界だ。それを懐かしく想い、焦がれる気持ちは当たり前のものだからな」
ルイヴェルさんは俯く私を振り向かす事はせず、私の心に寄り添おうとするかのように、私の頭を優しい手つきで撫でてくれた。
懐かしい……、子供の頃にも何度も撫でて貰った、ルイヴェルさんの大きな手。
とくりと、心が満たされるような鼓動を覚えた私は、顔を上げ、ルイヴェルさんに微笑んでみせる。
「有難うございます。だけど、本当に大丈夫なんですよ。一時的な感情というか、誰だって自分の故郷に帰れば、懐かしく思うものですし」
「世界そのものが違うんだ。ただ離れるのとはわけが違うだろう? お前の心は、たとえこちらに戻っても、あの世界を愛しているからこそ、涙を流すんだ」
「私の……、心が、ですか?」
「あぁ。世界だけではなく、その場所に生きる命、お前が関わった者、見たもの、感じたもの、全て、お前の一部となり、大切な故郷の姿となっていく……。だから、無理はするな。寂しいのならば、そう素直に吐き出せ」
そう言ってくれたルイヴェルさんの声が、とても優しい柔らかな気配に満ちていて……、私は少し恥ずかしくなりながらも、その胸に頬を摺り寄せた。
どんなに時が経っても、ルイヴェルさんは、……ルイお兄ちゃんは、変わらない。
意地悪な事を言ったり、からかうような素振りを見せても、昔から……、私が悲しんだり傷ついている時には、静かにその胸を貸してくれるのだ。
「……やっぱり、ルイヴェルさんって、お兄さん、……みたい、ですよね」
「一応はな。この世界における、お前の保護者的な仕事も数多くこなしてきたが……。お前……、それを今の俺に言うのは酷というものだと思うがな?」
「あ……」
お兄さんのような優しい眼差しに、求められるような熱の揺らぎを感じた私は、気まずげに小さく謝った。自分に想いを向けてくれている人に、言うべき言葉じゃなかった。
だけど、私にとって、ルイヴェルさんがお兄さんのような存在である事は、変え様のない事実……なんだけ、ど。
「あ、あの……」
「お前はすぐに俺の気持ちから逃げようとする傾向がある」
私の唇を指先で意味深になぞり、暮れゆく夕日の優しいオレンジの光を受けながら、ルイヴェルさんは、遠き日に私を可愛がってくれたルイお兄ちゃんの顔ではなく、私を一人の女性として求める男性の顔を見せ始めた。
「『少女期』には個人差があるが、お前はただでさえ迷い悩みやすい奴だからな……。俺やアレク、カインの想いに困り切っている事はよくわかっているつもりだ、が」
「……が?」
「遠慮ばかりしていては、いつまで経っても進歩もないだろう。その証拠に、お前を尊重して心の距離感を保っているアレクとカインは見事に進展なしの状態だ」
「は、はぁ……」
「ライバルを出し抜くには……、違う事をすべきだろう?」
ち、違う事って……、何だか物凄く嫌な予感が!!
で、でも、私に対して一ヶ月前みたいな危ない真似はしないって約束してくれたし!!
まさか、私を安心させる為の嘘なんじゃ……、そう潤む視界の先にあるルイヴェルさんの妖しい気配を醸し出す美貌に慄く。
「あ、あの……、ちゃ、ちゃんと、考えますから。ルイヴェルさんからの告白、なかった事なんかしませんから……っ」
「なかった事になどした日には、お前に似合いの罰を考えてあるから安心しろ」
にこっ。……だから、そういう爽やかな笑みは似合わないんですって!!
キラキラと星屑や花が飛び交うかのような背景がルイヴェルさんの後ろに見えた気がするけれど、きっと私の精神状態が追いつめられているせいに違いない。
たらたらと冷や汗を掻く私とは反対に、ルイヴェルさんは私の耳元に唇を寄せて低く微かな笑い声を漏らした。
一体何をされてしまうのか、物凄く心配……を通り越して、気絶してしまいそうなのだけど!!
「お前が俺の気持ちを忘れないように、定期的に言い含める必要があるとみた」
「……え」
「勿論、お前の心が俺のものになるまでは、絶対に無理強いをする気はない。だが、言葉でなら……、構わないだろう?」
「あ、あのっ、そ、それって」
「――好きだ」
「!!!!!!!」
それは、ただの言葉などではなくて、たった一言だけど、ルイヴェルさんの中に秘められた私への恋心が深く沁み込んでくるかのような響きだった。
元々、どこか艶めいた心地の良い低い声を発する人だから、耳元でそんな甘い囁きを零されてしまったら……。頭の奥まで痺れてしまいそうな疼きに身体が震えてしまう。
「ユキ、お前が俺の想いから逃げられないように、鎖をつけてやる……。俺はお前が好きだ……。この世界で唯ひとり、妹でもなく、ひとりの女として、好きになった」
「る、ルイヴェルさんっ」
やめてやめてー!! こんな耳のすぐ傍で、そんな甘い声で切なそうに囁かないでー!!
ルイヴェルさんの腕から早くも逃れようと身を捩ると、身体を抱く腕に力がこもり、さらに深く抱き込まれてしまう。
これは間違いなく、私を逃がす気は微塵もないという意思表示!!
ふぅっと耳の奥に吹き込まれた吐息の熱さに、ルイヴェルさんの本領発揮を感じずにはいられない。
「んっ……、あの、こ、こういうのはっ、ま、また後日っ」
「勿論、今後もやっていく気だが? 定期的に、お前が忘れないように、何度でも」
「ご遠慮します!! こ、こんな心臓に悪すぎる告白を何度もなんてっ、うぅっ、身が持ちませんっ」
「安心しろ。お前の身体はそこまで脆くはない。俺がこの想いを伝える度に……、心に馴染んでいくはずだからな」
馴染まなくていいですからああああああ!!
うぅっ、こんな艶めいた甘い低音を何度も囁かれるなんて、拷問です、拷問!!
もうやめてほしいと涙目で訴えるけれど、そうと決めたこの人が途中で許してくれるわけもなく。
絶対に聞き逃す事など出来ないように、私に対する想いを囁き続ける。
「好きという言葉では弱すぎるな……。お前の事を考える度に胸の奥が疼き、早く自分のものにしたいと、俺の心が訴える。ユキ……、その心に消えない痕を残させろ。愛しているんだ……、お前の全てを」
アレクさんとカインさんとも違う。私の心が定まるのを待つと言ってくれたくせに、ルイヴェルさんの囁きは、その奥に潜む熱は、私を内側から奪い尽くすような気配を孕んでいる。
確かに前回のような真似はしていないけれど、言葉だけでも凶器だった……。
「わ、わかりました、からっ、も、もうっ、ゆ、許してくださいっ」
「俺は自分の気持ちを素直に伝えているだけだろう? 繊細な男心を踏み躙られないように……、何度も、な」
「い、意地悪ですよ……、こんなのっ、何度もなんて、耐えられませんっ」
「じゃあ、俺に落ちるか?」
落ちる……。それはつまり、ルイヴェルさんを私の相手と定めて心を委ねるという事で……。
だけど、こんななし崩し的なのなんて絶対に嫌だ。
私は目に涙を溜め込みながらも、抵抗するように身を捩った。
まだ、誰に対して私の想いが育っているのか、それを把握出来ていないのに、好きだと確信していないのに、ルイヴェルさんのものになる事は出来ない。
「無理、です。私はまだ……」
「……だろうな」
「ルイヴェルさん?」
微かに愉しそうな笑いが漏れ聞こえた。
ルイヴェルさんは私の耳元から顔を上げると、してやったりの笑みを表情に刻み、私を見下ろしてくる。
「そう簡単に落ちて貰っても面白くはないからな。だが、昔よりも意思が強くなっているようで……、少なからず安心したぞ?」
「……もしかして、……からかいました?」
「いや? お前を想う感情も、さっきの言葉も全て真実だ。安心しろ」
「うぅっ、それが嘘だったらどんなにいいかっ」
「ほぉ……、嘘にしたいわけか? いい度胸だな。日がどっぷりと暮れるまで、お前の小さな耳の奥に絶えず囁き続けてやってもいいんだぞ?」
「絶対に嫌です!!」
大人の本気の悪ふざけに心臓を捧げて堪るものですか!
むっと頬を膨らまして恨みがましい目を向けてみると、それさえも面白いと言わんばかりの笑みが深まった。私を愛していると口にするくせに、私で遊ぶ事も忘れない意地悪な人。
蒼い髪を指先で弄ばれながら、「つれない事を言うお姫様だな、お前は」と苦笑するルイヴェルさんから、ぷいっと顔を背けた。
「意地悪な人は嫌いですっ」
「なんだ? 優しい言葉の類を並べ立てられたいのか? お前が望むなら、姫君に傅く騎士や王子のように、敬意を表してやってもいいんだがな?」
「いりません!!」
やっぱりルイヴェルさんは意地悪な人だ。
昔、散々な目に遭わされた光景が幾つの頭の中で浮かんでいく。
もしかしたら、あの頃よりもさらにレベルアップしているかもしれない……。
私は話の最中に緩んだルイヴェルさんの腕の力に気づくと、その場から急いで逃げた。
多分、逃がしたのはわざと……。東屋の扉に逃げた私をルイヴェルさんが追う事はなく、愉しそうに笑う気配だけが聞こえたから。
東屋を飛び出して、私は自分の部屋に向かって全力で走り抜けて行く。
ルイヴェルさんの気が変わって追いかけて来ても、追いつけないように。
あの人の想いが、私を呑み込んでしまわないように……、早く、早く。
「あんな人……、好きになんか」
昔お世話になった意地悪だけど面倒見の良いお兄さん、それで十分……、の、はず。
それなのに、どうして頭の中からルイヴェルさんの存在が消えてくれないのだろう。
耳元で囁かれた愛の言葉、一ヶ月前の辛そうな顔、幼い頃の記憶と、この世界に戻って来てから見てきたあの人との記憶を、胸の奥で騒がしい鼓動と共に感じながら、私は頬の熱が消えない事に困惑しながらも、自分の部屋へと向かって逃げ込んで行くのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
好感度0になるまで終われません。
チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳)
子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。
愛され続けて4度目の転生。
そろそろ……愛されるのに疲れたのですが…
登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。
5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。
いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。
そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題…
自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。
手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】
まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と…
「Ninagawa Queen's Hotel」
若きホテル王 蜷川朱鷺
妹 蜷川美鳥
人気美容家 佐井友理奈
「オークワイナリー」
国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介
血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…?
華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる