108 / 124
特別編
知乃視点・夢乃視点
しおりを挟む
● 知乃視点
「えみちゃん。あなたに婚約者が出来たわよ」
私が娘のえみちゃんにそう教えると、きょとんと見つめてきた。
「こんやくしゃ?」
「そう、婚約者。えみちゃんの結婚する人。お婿さんになる人よ」
「おむこさん!」
言った意味が通じたのか、えみちゃんは興奮したようだった。
「おむこさんって、えほんでみたシンデレラのおうじさまみたいなひとでしょう? あのおうじさまみたいにかっこいい?」
「そうね。将来絶対格好良くなるわ。えみちゃんも見たでしょう? 歩夢くんのことよ」
妹の夢乃とお婿さんのあの綺麗な楽くんの子だ。成長したら、格好良くなるに決まっている。
「おむこさんって、あゆむくんなの。かわいかったね。あゆむくんがおうじさまなのね」
どうやら私に似て、えみちゃんは王子様に憧れているようだ。私は苦笑した。
「そう。歩夢くんが王子様で、えみちゃんがお姫様。嬉しい?」
えみちゃんに問うと、にっこり笑った。
「うん! うれしい! あゆむくんがおうじさま。わたしがおひめさま。シンデレラのドレスがきられるかな」
シンデレラのドレスは消えてしまうけれど。えみちゃんが着る花嫁衣装は消えないだろう。
「ドレスは必ず着られるわ。消えないドレスが着られるわ。私の結婚式のときの写真をまた見る?」
えみちゃんは、私の結婚式のドレス姿が大好きだ。
「うん、みせて! あのドレスのおかあさま、おひめさまみたい。おとうさまはおうじさまみたいよね」
「そうよ。私がお姫様で、航平くんが王子様なのは、ずっと変わらないわ」
学生時代からずっと私がお姫様で、航平くんが王子様だ。
私は写真を取り出して、えみちゃんと一緒に楽しんだ。
♦ ♦ ♦
● 夢乃視点
まさか、楽くんのお父様の会社が倒産してしまうとは……。
いつも楽くんと一緒にいたけれど、予知出来なかった。
「ごめん、夢乃。俺、大学やめて働かないと。弟、せめて高卒くらいにはしてやりたいし、家の借金も返さないといけないし」
楽くんが大学やめて働くなら、恋人として私も役に立ちたい。
私も大学やめて働こう。更に予知夢の力を使えば、株の動きなども当てられるだろう。
「私も楽くんの力になりたいわ。大学やめて働くわ」
「夢乃……」
楽くんがじっと私を見下ろす。不思議な虹彩の綺麗な瞳。
「お前がそこまでする必要はない。俺の家の事情だ」
「それはそうだけれど。私が勝手に役に立ちたいだけなの。お願い、わかって」
「お前は……」
身体を抱き寄せられた。華奢に見えるけれど、結構力強い。
「夢乃……。昔から、俺の世話をする。そんな夢乃を愛しているんだ」
仰向くとキスが降ってきた。柔らかい口付け。
「私も楽くんのこと愛しているわ。力になりたい。手伝うわ。もう決めたわ」
楽くんに抱きしめられながら、心を決めた。
♦ ♦ ♦
そののち、楽くんの『資質』が父と同じくらいであることが判明して、婿に来てもらうことになった。
借金や学費は、一時的に祖父が立て替えてくれた。
結婚し、祖父から借りたお金を返す為に、毎日楽くんと働き続けた。
楽くんは過労になるのではないかと心配する程に働いた。
「そこまで働かなくても……」
「夢乃こそ。働いている上に、株取引もしているだろう」
子どもが生まれてからも、私達は一生懸命働き、やがて借金を完済した。
私と楽くんは、手を取り合って喜んだ。
「良かった……。頑張った甲斐があったわね」
「そうだな。夢乃がいてくれたおかげだ。運の悪い俺の、幸運の女神だ」
女神とまで言われると恥ずかしい。
少し余裕が出来た楽くんは、また油絵を描いていた。
「何の絵を描いているの?」
「勿論、夢乃の絵。俺の技術ありったけ使って、女神みたいに描く」
時間をかけて丁寧に描かれた、女神様のような私の絵が完成した。
「……相変わらず、私のこと美人すぎに描いてくれるのね」
「美人すぎじゃない。俺にはこう見えている。でも……夢乃。お前はこの絵より綺麗だ」
それこそ綺麗な楽くんに言われて、顔が熱くなりながらもお礼のキスをした。
「えみちゃん。あなたに婚約者が出来たわよ」
私が娘のえみちゃんにそう教えると、きょとんと見つめてきた。
「こんやくしゃ?」
「そう、婚約者。えみちゃんの結婚する人。お婿さんになる人よ」
「おむこさん!」
言った意味が通じたのか、えみちゃんは興奮したようだった。
「おむこさんって、えほんでみたシンデレラのおうじさまみたいなひとでしょう? あのおうじさまみたいにかっこいい?」
「そうね。将来絶対格好良くなるわ。えみちゃんも見たでしょう? 歩夢くんのことよ」
妹の夢乃とお婿さんのあの綺麗な楽くんの子だ。成長したら、格好良くなるに決まっている。
「おむこさんって、あゆむくんなの。かわいかったね。あゆむくんがおうじさまなのね」
どうやら私に似て、えみちゃんは王子様に憧れているようだ。私は苦笑した。
「そう。歩夢くんが王子様で、えみちゃんがお姫様。嬉しい?」
えみちゃんに問うと、にっこり笑った。
「うん! うれしい! あゆむくんがおうじさま。わたしがおひめさま。シンデレラのドレスがきられるかな」
シンデレラのドレスは消えてしまうけれど。えみちゃんが着る花嫁衣装は消えないだろう。
「ドレスは必ず着られるわ。消えないドレスが着られるわ。私の結婚式のときの写真をまた見る?」
えみちゃんは、私の結婚式のドレス姿が大好きだ。
「うん、みせて! あのドレスのおかあさま、おひめさまみたい。おとうさまはおうじさまみたいよね」
「そうよ。私がお姫様で、航平くんが王子様なのは、ずっと変わらないわ」
学生時代からずっと私がお姫様で、航平くんが王子様だ。
私は写真を取り出して、えみちゃんと一緒に楽しんだ。
♦ ♦ ♦
● 夢乃視点
まさか、楽くんのお父様の会社が倒産してしまうとは……。
いつも楽くんと一緒にいたけれど、予知出来なかった。
「ごめん、夢乃。俺、大学やめて働かないと。弟、せめて高卒くらいにはしてやりたいし、家の借金も返さないといけないし」
楽くんが大学やめて働くなら、恋人として私も役に立ちたい。
私も大学やめて働こう。更に予知夢の力を使えば、株の動きなども当てられるだろう。
「私も楽くんの力になりたいわ。大学やめて働くわ」
「夢乃……」
楽くんがじっと私を見下ろす。不思議な虹彩の綺麗な瞳。
「お前がそこまでする必要はない。俺の家の事情だ」
「それはそうだけれど。私が勝手に役に立ちたいだけなの。お願い、わかって」
「お前は……」
身体を抱き寄せられた。華奢に見えるけれど、結構力強い。
「夢乃……。昔から、俺の世話をする。そんな夢乃を愛しているんだ」
仰向くとキスが降ってきた。柔らかい口付け。
「私も楽くんのこと愛しているわ。力になりたい。手伝うわ。もう決めたわ」
楽くんに抱きしめられながら、心を決めた。
♦ ♦ ♦
そののち、楽くんの『資質』が父と同じくらいであることが判明して、婿に来てもらうことになった。
借金や学費は、一時的に祖父が立て替えてくれた。
結婚し、祖父から借りたお金を返す為に、毎日楽くんと働き続けた。
楽くんは過労になるのではないかと心配する程に働いた。
「そこまで働かなくても……」
「夢乃こそ。働いている上に、株取引もしているだろう」
子どもが生まれてからも、私達は一生懸命働き、やがて借金を完済した。
私と楽くんは、手を取り合って喜んだ。
「良かった……。頑張った甲斐があったわね」
「そうだな。夢乃がいてくれたおかげだ。運の悪い俺の、幸運の女神だ」
女神とまで言われると恥ずかしい。
少し余裕が出来た楽くんは、また油絵を描いていた。
「何の絵を描いているの?」
「勿論、夢乃の絵。俺の技術ありったけ使って、女神みたいに描く」
時間をかけて丁寧に描かれた、女神様のような私の絵が完成した。
「……相変わらず、私のこと美人すぎに描いてくれるのね」
「美人すぎじゃない。俺にはこう見えている。でも……夢乃。お前はこの絵より綺麗だ」
それこそ綺麗な楽くんに言われて、顔が熱くなりながらもお礼のキスをした。
0
あなたにおすすめの小説
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
Bravissima!
葉月 まい
恋愛
トラウマに悩む天才ピアニストと
俺様キャラの御曹司 かつ若きコンサートマスター
過去を乗り越え 互いに寄り添い
いつしか最高のパートナーとなる
『Bravissima!俺の女神』
゚・*:.。♡。.:*・゜゚・*:.。♡。.:*・゜
過去のトラウマから舞台に立つのが怖い芽衣は如月フィルのコンマス、聖の伴奏ピアニストを務めることに。
互いの音に寄り添い、支え合い、いつしか芽衣は過去を乗り超えていく。
✧♫•・*¨*•.♡。.:登場人物:.。♡.•*¨*・•♫✧
木村 芽衣(22歳) …音大ピアノ科4年生
如月 聖(27歳) …ヴァイオリニスト・如月フィルコンサートマスター
高瀬 公平(27歳) …如月フィル事務局長
イケメン副社長のターゲットは私!?~彼と秘密のルームシェア~
美和優希
恋愛
木下紗和は、務めていた会社を解雇されてから、再就職先が見つからずにいる。
貯蓄も底をつく中、兄の社宅に転がり込んでいたものの、頼りにしていた兄が突然転勤になり住む場所も失ってしまう。
そんな時、大手お菓子メーカーの副社長に救いの手を差しのべられた。
紗和は、副社長の秘書として働けることになったのだ。
そして不安一杯の中、提供された新しい住まいはなんと、副社長の自宅で……!?
突然始まった秘密のルームシェア。
日頃は優しくて紳士的なのに、時々意地悪にからかってくる副社長に気づいたときには惹かれていて──。
初回公開・完結*2017.12.21(他サイト)
アルファポリスでの公開日*2020.02.16
*表紙画像は写真AC(かずなり777様)のフリー素材を使わせていただいてます。
同居人の一輝くんは、ちょっぴり不器用でちょっぴり危険⁉
朝陽七彩
恋愛
突然。
同居することになった。
幼なじみの一輝くんと。
一輝くんは大人しくて子羊みたいな子。
……だったはず。
なのに。
「結菜ちゃん、一緒に寝よ」
えっ⁉
「結菜ちゃん、こっちにおいで」
そんなの恥ずかしいよっ。
「結菜ちゃんのこと、どうしようもなく、
ほしくてほしくてたまらない」
そんなにドキドキさせないでっ‼
今までの子羊のような一輝くん。
そうではなく。
オオカミになってしまっているっ⁉
。・.・*.・*・*.・。*・.・*・*.・*
如月結菜(きさらぎ ゆな)
高校三年生
恋愛に鈍感
椎名一輝(しいな いつき)
高校一年生
本当は恋愛に慣れていない
。・.・*.・*・*.・。*・.・*・*.・*
オオカミになっている。
そのときの一輝くんは。
「一緒にお風呂に入ったら教えてあげる」
一緒にっ⁉
そんなの恥ずかしいよっ。
恥ずかしくなる。
そんな言葉をサラッと言ったり。
それに。
少しイジワル。
だけど。
一輝くんは。
不器用なところもある。
そして一生懸命。
優しいところもたくさんある。
そんな一輝くんが。
「僕は結菜ちゃんのこと誰にも渡したくない」
「そんなに可愛いと理性が破壊寸前になる」
なんて言うから。
余計に恥ずかしくなるし緊張してしまう。
子羊の部分とオオカミの部分。
それらにはギャップがある。
だから戸惑ってしまう。
それだけではない。
そのギャップが。
ドキドキさせる。
虜にさせる。
それは一輝くんの魅力。
そんな一輝くんの魅力。
それに溺れてしまう。
もう一輝くんの魅力から……?
♡何が起こるかわからない⁉♡
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
友達婚~5年もあいつに片想い~
日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は
同僚の大樹に5年も片想いしている
5年前にした
「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」
梨衣は今30歳
その約束を大樹は覚えているのか
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる